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第2章
68話 暴力王子、再び
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「おい!それでどうなんだよ。」
高圧的な声が聞こえて来る。
……この声は。
ロレンツォ殿下だ。
「救世の巫女ってのは本物なんだろ?二人も居るんだ、一人くらい…連れて来る事も出来ないのか?!」
……カレン…。
やっぱり、優しいなんて嘘だろう?
アイツ、あわよくばお前を連れ去ろうとしているぞ。
僕は、やっぱりカレンの話していた殿下の人物像を認める事が出来ない。
取り敢えず、もう少し情報を得られないか、僕はしばらく影で耳を澄ましていた。
「……ですが殿下。彼らは普通科で、我々は専学科です。科が違うと授業も被る事が無いので、そもそも接点を作る機会がございません。」
躊躇いがちに返答していたのは……。
僕はその声を耳にした途端、ドクンと心臓の音が響いた。
————彼だ。
紛れもない彼の、声だ。
ギュッと胸が苦しくなるのを感じる。
どうすればいいんだろう?
死に戻ったなら、また彼も居る事は分かっていた筈なのに。
思った以上に戸惑う自分に、どうすればいいのか分からなくなる。
混乱して動けないでいると、彼らのやり取りがまた不穏になっていく。
「だーかーらー、接点なんぞチマチマ作らんでも、サッサと連れて来ればいいだろうがっ」
「此処は本国では無いのですよ。エウリルスが手厚く保護している巫子様達です。当然監視の目も厳しい。それを無理矢理連れ去るなんて、どう頑張っても無理です。」
「それをやるのがお前の役割だろう?それとも……もう辞めるか?その代わり、お前の妹の身の安全は保障しないがな?」
「……っ」
かなり際どい事を話している。
ロレンツォ殿下はどんな手を使っても救世の巫子を手に入れたい様だ。
それに対し、サフィルは……苦々しい様子で反対しているが。
彼は、家族を……妹を人質に取られていたのか……。
それできっと。
前世でも今世でも、随分嫌な役目を負わされているのか。
なんて酷い。
僕はギュッと拳を握った。
その瞬間だった。
「いっ!」
サフィルの呻く声がして、僕は思わず振り返る。
影から覗き見ると、彼が地面に尻もちをついていた。
突き飛ばされたのか。
「必要な人出なら準備してやると言っているんだ。女でも男でもどちらでもいい。必ず巫子を俺の前に連れて来い。必ずだ。」
「……」
冷酷に言い渡す殿下に、サフィルは苦しげに睨み付けていた。
「やっぱり嗜虐趣味の暴力王子……」
「「?!」」
駄目だとは思いつつ、口を出さずにはいられなくて。
倉庫裏の影から、僕は気付けば殿下をねめつける様に目を細めて呟いていた。
その声に、二人はかなり驚いて僕の方を見やる。
聞かれていた……!!
二人はしまった、という顔をしていたが。
前世と同じ様なシチュエーションに、僕は何の驚きも見せない。
ただロレンツォ殿下を恨みがましく睨み付けた。
「どうされた?……君は確か、普通科のクレイン公子ですよね?」
さっきの横暴さは何処へやら。
殿下は人好きのする笑顔で僕ににこやかに話し掛けるが。
僕は表情を緩めなかった。
「取り繕わなくて結構ですよ、ロレンツォ殿下。先程のお二人の言い争い、この耳でしかとお聞き致しました。……救世の巫子達へのあんな不敬な話、こんな所でペラペラとお話になって、警戒心が無さ過ぎるのでは?」
厭味ったらしく僕が答えると、殿下の顔は見る見るイライラして。
「ふん。聞いていたのは君だけだろう?どうせ。」
「知らないんですか?巫子達は、僕の屋敷で暮らしているのですが。」
高圧的な声が聞こえて来る。
……この声は。
ロレンツォ殿下だ。
「救世の巫女ってのは本物なんだろ?二人も居るんだ、一人くらい…連れて来る事も出来ないのか?!」
……カレン…。
やっぱり、優しいなんて嘘だろう?
アイツ、あわよくばお前を連れ去ろうとしているぞ。
僕は、やっぱりカレンの話していた殿下の人物像を認める事が出来ない。
取り敢えず、もう少し情報を得られないか、僕はしばらく影で耳を澄ましていた。
「……ですが殿下。彼らは普通科で、我々は専学科です。科が違うと授業も被る事が無いので、そもそも接点を作る機会がございません。」
躊躇いがちに返答していたのは……。
僕はその声を耳にした途端、ドクンと心臓の音が響いた。
————彼だ。
紛れもない彼の、声だ。
ギュッと胸が苦しくなるのを感じる。
どうすればいいんだろう?
死に戻ったなら、また彼も居る事は分かっていた筈なのに。
思った以上に戸惑う自分に、どうすればいいのか分からなくなる。
混乱して動けないでいると、彼らのやり取りがまた不穏になっていく。
「だーかーらー、接点なんぞチマチマ作らんでも、サッサと連れて来ればいいだろうがっ」
「此処は本国では無いのですよ。エウリルスが手厚く保護している巫子様達です。当然監視の目も厳しい。それを無理矢理連れ去るなんて、どう頑張っても無理です。」
「それをやるのがお前の役割だろう?それとも……もう辞めるか?その代わり、お前の妹の身の安全は保障しないがな?」
「……っ」
かなり際どい事を話している。
ロレンツォ殿下はどんな手を使っても救世の巫子を手に入れたい様だ。
それに対し、サフィルは……苦々しい様子で反対しているが。
彼は、家族を……妹を人質に取られていたのか……。
それできっと。
前世でも今世でも、随分嫌な役目を負わされているのか。
なんて酷い。
僕はギュッと拳を握った。
その瞬間だった。
「いっ!」
サフィルの呻く声がして、僕は思わず振り返る。
影から覗き見ると、彼が地面に尻もちをついていた。
突き飛ばされたのか。
「必要な人出なら準備してやると言っているんだ。女でも男でもどちらでもいい。必ず巫子を俺の前に連れて来い。必ずだ。」
「……」
冷酷に言い渡す殿下に、サフィルは苦しげに睨み付けていた。
「やっぱり嗜虐趣味の暴力王子……」
「「?!」」
駄目だとは思いつつ、口を出さずにはいられなくて。
倉庫裏の影から、僕は気付けば殿下をねめつける様に目を細めて呟いていた。
その声に、二人はかなり驚いて僕の方を見やる。
聞かれていた……!!
二人はしまった、という顔をしていたが。
前世と同じ様なシチュエーションに、僕は何の驚きも見せない。
ただロレンツォ殿下を恨みがましく睨み付けた。
「どうされた?……君は確か、普通科のクレイン公子ですよね?」
さっきの横暴さは何処へやら。
殿下は人好きのする笑顔で僕ににこやかに話し掛けるが。
僕は表情を緩めなかった。
「取り繕わなくて結構ですよ、ロレンツォ殿下。先程のお二人の言い争い、この耳でしかとお聞き致しました。……救世の巫子達へのあんな不敬な話、こんな所でペラペラとお話になって、警戒心が無さ過ぎるのでは?」
厭味ったらしく僕が答えると、殿下の顔は見る見るイライラして。
「ふん。聞いていたのは君だけだろう?どうせ。」
「知らないんですか?巫子達は、僕の屋敷で暮らしているのですが。」
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