上 下
62 / 352
第2章

62話 ゲーム

しおりを挟む
「…でもね。やっぱり私達、協力するなら側に居た方が良いと思うの。」

このクレイン公爵邸で二人の巫子を受け入れる事が決まり、頭を抱えていた僕に、カレンは遠慮がちに口を開いた。

振り返ると、ソファーに腰を下ろしたまま、机に向かっている僕の方を見つめてくる。
僕は席を立つと、カレンが座るソファーの方に腰を下ろした。

「どうした?」
「……シリルは正直に話してくれたでしょう?死に戻りの事。だから、私も話そうと思って。救世の巫女の事。」

真面目な顔をして言うカレンに、側に居たカイトも横に居住まいを正した。
テオも僕のすぐ後ろに控える。

「私達が異世界人だっていうのは、知っているわよね?」

彼女にそう問われて、僕はコクリと頷く。

それは、カレンだけでなくカイトの時も、自身の口から以前に直接聞いた事があるからだ。
でも、それだけじゃないの……。と、カレンは口にする。

「私達、この世界を“知っている”の。だから、すぐにここが異世界だって分かった。」
「…?どういう事だ。」

カレンの言葉に、僕は首を傾げ、後ろのテオと顔を見合わせる。
すると、カレンは少し逡巡したが、横のカイトが強く頷くと、意を決して話し出した。

「私達からすると、この世界は……ゲームの中の世界なの。救世の巫女は、そのゲームの主人公で、ゲームのストーリーを順に攻略していって、エンディングを迎えて、クリア出来るのよ。」
「そのゲームはカレンがよくやってて、僕はCMで見るくらいしか知らなかったから、カレンの方が詳しいんだけど……この世界は、そのゲームの世界によく似てるんだ。」

“双生の巫女と巫子 ~あなたが紡ぐその世界~”
そのゲームの世界に私達は主人公として迷い込んで来たのよ。と、カレンは言う。
そして、カイトもコマーシャルで見たから、その存在は知っていた。と言うのだが。

「ゲームって、どういう事だ?……チェスとか、カードゲームとかじゃなくて?そんなものに主人公も何もないだろう?ギャンブルなら、胴元のディーラーとプレイヤーがいるが……」
「……えっとぉ…」

全然話が噛み合っていないのは、分かる。
頭にハテナを浮かべる僕とテオを見て、カイトは困った顔をしていた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

処理中です...