全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第1章

44話 淫蕩 ※

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「……あっ」

そして、逃げる様に顔を背けていた僕は、気付けば、とうとう下の衣服も剥ぎ取られていた。
ズボンだけでなく、下着もずり下ろされて。
暴かれた秘所は、外気に晒されて、ひくっと震えた。

「ひっ?!」
「ここ、蜜が溢れてきてる。気持ち良かったですか?」
「え、何で…こんなっ」

アルベリーニ卿は、僕の粗末な陰茎をその大きな手でやわやわと握ると、親指で鈴口をグリッと押し開く様にして攻め立てた。
そんな、他人の陰部を平然と掴めるなんて。
それだけでも衝撃なのに。

その刺激に反応して溢れる透明な液は、何。
触れられて嬉しい、嬉しい、と溢れ出てきて止まらない。
排泄をする事しか知らなかったそこが、それとは違うモノを垂れ流している。
それだけでも恐ろしくて仕方が無いのに。

彼は自分の愛撫に対する感想を強要して来る。
……そんなもの。
言わなくても分かるだろう!
大体、何て言えばいいんだ。

「あ、アルベリーニ卿っ————んあぁっ!?」
「“サフィル”と、そうお願いしたでしょう?」

彼に、本当にちょっと勘弁してもらいたくて、呼んだのに。
キチンと言われた通りに名前を呼ばなかった為、彼は握っていた僕の陰茎の鈴口を更に強く引っ掻いて。
僕は予想外の快感に、顎を反らして仰け反った。

「フフッ……甘イキしました?」
「あ、う、さ…サフィルッ!もう、いいから!!」

僕は止めどなく押し寄せた快感の波に呑まれて、涙でぐちゃぐちゃになっていた。

「もう、僕の事はいいからっ!」
「では、私の手を取って下さいますか?」

とうとう堕ちてくれたかと、実に爽やかな笑顔でサフィルは問うて来た。
先程まで、実に淫猥な事をしていたはずなのに。
どうして、そんな。

彼と目が合うと、胸が苦しくなる。
あの王太子殿下に対しての、それよりも…ずっと。
もっと、強く胸を掻き毟られる衝動。

こんな地下の牢の中で。
陥れる為に、凌辱をされているというのに。
だって、容赦がないのに……彼の触れて来る手は、唇は。
これでもかという程、愛おしそうに触れて来るから。

————勘違いしてしまいそうになる。

体どころか心まで。
堕とされているよ、もう充分に。

例え……これが偽りでも。
人を好きになるってこういう事なのかって、否応なしに分からせられる。

だから、何も考えずに済むのなら。
なりふり構わずに済むのなら。
ただ、貴方の手だけを掴んで、その腕にドロドロに溺れてしまいたかった。

けれど。

「……いや、それは無い。」

貴方の手を取る事は出来ない。
自分だけ、楽な道を選べるほど、僕の神経は図太く無いんだ。

……貴方の手は、諦める。

「……っ————なら、仕方ありません。」

酷く落胆した声音で、サフィルは声を絞り出した。

御免なさい。
……思わず、そう言って安易に許しを請いたくなった僕は、顔を上げたサフィルと目が合って……凍り付いた。
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