全てを諦めた公爵令息の開き直り

key

文字の大きさ
上 下
42 / 369
第1章

42話 翻弄 ※

しおりを挟む
ぺろっ、と。
僕の涙をその赤い舌で舐めとられた。

てっきりまた痛みが来るのではないかと怯えていた僕は、優しくもいやらしい、彼の行為に翻弄されるしか無くて。

「えっ……?……って、うぁっ!」

僕の瞼から離れていったその舌は、今度はさっき噛まれた所を舐めていた。
ぴちゃぴちゃと音をたてて、傷を舐め上げられていく。
ジンジンと痛い筈だったその場所は、執拗に舐めとられて、痛いだけではなくなってきて。

「ふ……んぁっ」

堪らず顔を背ける僕は、自分の口から今まで聞いたことも無い、鼻にかかった甲高い声を出し。
その事に衝撃を受けていた。

(えっ……ちょっ…何?!)

どうしてしまったんだ、僕は。
こんな声、聞いたことも無い。
女だった時だって、こんな声、出た事なんてなかったぞ。

それに、彼に舐められている部分がぞわぞわする。
くすぐったいだけでない、変な感覚が。
訳が分からず。
ただただ恥ずかしくて、頭が沸騰しそう。

真っ赤に染まった僕の顔を見て、アルベリーニ卿はニッと笑みを零した。
その彼を見て、僕はまた顔から湯気が出そうになるほど熱くなる。

……マズい。
これ以上は非常にマズい!

漠然とした危機感が、僕を無性に急き立てる。
これ以上舐め回されたら、とんでもない事になってしまいそうな気がする!
ドクンドクンと嫌にうるさい心臓の音が、明確に僕に警鐘を鳴らしている。
今更ながらに感じる焦燥に、僕は思わず音を上げそうになる。

「あ、アルベリーニ卿っ!も、それ以上はっ」

また泣きそうになる僕の顔を見たアルベリーニ卿は、整った綺麗な顔でニッコリと微笑んだ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった

たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」 大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

処理中です...