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第1章
37話 侵入者
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「へー!もっと暴れててもおかしくない筈なのに、随分大人しいじゃないか!」
この陰鬱な地下牢に似つかわしくない、嫌に明るい声が響いた。
「殿下、あまり時間はありません。急がれませんと。」
明るい声の主に、隣に仕える騎士が告げる。
「うるさいな、そう急かすなよ。こんな面白そうな事、そうそう逃したくないんだからさ。」
不敵に嗤う王子様を見上げて、僕は眉を顰めた。
「貴方は……ロレンツォ殿下?」
掠れた声でそう呟いた僕に、彼の隣で俯いていた男が、僕の惨めな姿を目にして表情を大きく崩す。
あの男(ひと)、見たことがある……。
前にこの眼前で不遜に笑っている殿下に恐らく打ちのめされて、倉庫裏で倒れていた、あの人だ————…。
(確か、サフィル・アルベリーニ子爵令息……。)
前回は彼が倒れていて、僕が彼を見つけたが。
今回は立場が逆になったなぁ…。
なんて、呑気に考えていると。
彼の隣のロレンツォ殿下の後ろに控えている護衛騎士が進み出て、牢の錠に手をやった。
「えっ?」
何をする気だ?
頭に疑問符を浮かべながら見つめていると。
鍵穴に針金を突っ込んで、少し弄くっていた様だったが。
何と、彼は牢の錠を開けてしまった。
「さっすが、ジーノ!あっという間だな。」
「なっ…どうし———うっ!」
解錠した途端、彼らは無遠慮に牢の中に入って来たのだった。
呆気に取られる僕に近付いて来たロレンツォ殿下は、いきなり僕の顎を掴み上げた。
横たわってた体を無理矢理起こされて、その力が全て掴まれた手に集中し、僕は苦しさに呻くしかなかったが、殿下はそんな僕の姿さえ面白がっていた。
「フハハッ!救世の巫子を殺そうとした大罪人が、こんな可愛い顔をしていたなんてなぁ!なぁ、そう思わないか、サフィル」
「う…うぐ…」
「……そう…ですね。」
ロレンツォ殿下はまるで、僕ではなくアルベリーニ子爵令息を煽る様にそう言うと、彼は暗い目をして絞り出すような声で答えた。
「アハハッ!そう、その顔!最っ高!その屈辱に満ちた顔。あー、久々に本当にイイもん見れたわ~。」
ロレンツォ殿下は実に愉快そうだ。
独り悦に入っている。
満足なさったなら、いい加減離してくれません?その手。
貴方だって重いでしょうに。
苦し気に呻くも、暴れない僕を見て、殿下は急に熱が冷めた目をした。
「もう少し抵抗しろよ。詰まらん奴だなっ」
「いっ!」
「っ」
ロレンツォ殿下は僕を要らなくなったおもちゃの様に、乱暴に投げ捨てる。
強い力で床に叩きつけられて、僕は口内に鉄の味が滲んだ。
口の中を切ったのか。
この陰鬱な地下牢に似つかわしくない、嫌に明るい声が響いた。
「殿下、あまり時間はありません。急がれませんと。」
明るい声の主に、隣に仕える騎士が告げる。
「うるさいな、そう急かすなよ。こんな面白そうな事、そうそう逃したくないんだからさ。」
不敵に嗤う王子様を見上げて、僕は眉を顰めた。
「貴方は……ロレンツォ殿下?」
掠れた声でそう呟いた僕に、彼の隣で俯いていた男が、僕の惨めな姿を目にして表情を大きく崩す。
あの男(ひと)、見たことがある……。
前にこの眼前で不遜に笑っている殿下に恐らく打ちのめされて、倉庫裏で倒れていた、あの人だ————…。
(確か、サフィル・アルベリーニ子爵令息……。)
前回は彼が倒れていて、僕が彼を見つけたが。
今回は立場が逆になったなぁ…。
なんて、呑気に考えていると。
彼の隣のロレンツォ殿下の後ろに控えている護衛騎士が進み出て、牢の錠に手をやった。
「えっ?」
何をする気だ?
頭に疑問符を浮かべながら見つめていると。
鍵穴に針金を突っ込んで、少し弄くっていた様だったが。
何と、彼は牢の錠を開けてしまった。
「さっすが、ジーノ!あっという間だな。」
「なっ…どうし———うっ!」
解錠した途端、彼らは無遠慮に牢の中に入って来たのだった。
呆気に取られる僕に近付いて来たロレンツォ殿下は、いきなり僕の顎を掴み上げた。
横たわってた体を無理矢理起こされて、その力が全て掴まれた手に集中し、僕は苦しさに呻くしかなかったが、殿下はそんな僕の姿さえ面白がっていた。
「フハハッ!救世の巫子を殺そうとした大罪人が、こんな可愛い顔をしていたなんてなぁ!なぁ、そう思わないか、サフィル」
「う…うぐ…」
「……そう…ですね。」
ロレンツォ殿下はまるで、僕ではなくアルベリーニ子爵令息を煽る様にそう言うと、彼は暗い目をして絞り出すような声で答えた。
「アハハッ!そう、その顔!最っ高!その屈辱に満ちた顔。あー、久々に本当にイイもん見れたわ~。」
ロレンツォ殿下は実に愉快そうだ。
独り悦に入っている。
満足なさったなら、いい加減離してくれません?その手。
貴方だって重いでしょうに。
苦し気に呻くも、暴れない僕を見て、殿下は急に熱が冷めた目をした。
「もう少し抵抗しろよ。詰まらん奴だなっ」
「いっ!」
「っ」
ロレンツォ殿下は僕を要らなくなったおもちゃの様に、乱暴に投げ捨てる。
強い力で床に叩きつけられて、僕は口内に鉄の味が滲んだ。
口の中を切ったのか。
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