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第1章
32話 卒業パーティー
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次の日はもう卒業パーティーで。
まさか、こんな気持ちがぐちゃぐちゃのまま、この日を迎える事になるなんて。
僕は同級生の皆と同じ様に、パーティー用の煌びやかな衣装を身に纏っていたが。
その目は今までになく澱んでいたのだった。
皆パーティーを楽しんだり、もう卒業かと涙ぐんだり。
仲の良い者同士で固まって歓談していたが。
僕はまぁ、そんな様子で一人違う空気を醸し出して、壁の花となっていた。
しばらくすると、わぁ!と歓声が上がり、会場の扉が開いた。
王太子殿下のご入場だ。
王太子は、昨日僕が言った通り、婚約者のオースティン侯爵令嬢を見事にエスコートしている。
王太子の腕に寄り添い、侯爵令嬢は今までになく美しく幸せそうな笑みを浮かべていた。
良かったな。
…そう思うのに。
心臓がズキンと痛むのだ。
これはシルヴィアの痛みだ。
本当は、彼女があそこに居る筈だったのに。
それを死に戻らされて見せつけられて。
けれども、男に生まれ変わってしまった僕には、どうしてあげる事も出来ないんだ。
だから、どうかもう諦めてくれ。
何もしてやれなくて、すまない。
僕はただ、この痛みだけしか残せなかったシルヴィアに、心の中で謝るしかなかった。
飲み物を配っている給仕から適当にグラスを受け取ると、口を付けるでもなく、手にしたグラスをクルクルと弄んでいた。
「あー綺麗だよぅクリスちゃんー」
すると、背後からいつもの呑気な声が聞こえ、何の気なしに振り返ると。
「最後までその呼び方だったな。」
カイト。
と、僕はため息交じりで答える。
彼はというと、美しくドレスアップして優雅に微笑むクリスティーナ嬢に釘付けだ。
「やっぱ可愛いわぁ、クリスちゃん!……ちぇっ!ユリウス殿下ってば、クリスちゃん泣かせたら許さないからなー!」
おー!と拳を振り上げている。
「……そんなに好きなら奪えばよかったのに。」
心にもない事を投げやりに言ってやる。
すると、ようやくこちらを向いたカイトは、僕の顔を見た途端ビックリした表情を見せた。
「いやいや、そんなんじゃないって……。殿下が羨ましいだけで、別に奪いたい訳じゃ……。って、シリルどうしたの?!その顔!」
「そんなに酷いか。」
「いや、顔色が悪過ぎるよ。折角その衣装決まってるのにー!」
心此処に在らずな僕の様子を心配しながらも、カイトは隣からいつもの様に朗らかに話しかけて来る。
コイツは本当に、いつも変わらないな。
「お前もまぁ……馬子にも衣装かな?」
「まぁた、減らず口は相変わらずだけど、どうしたの?具合悪そうだよ。あ、お酒ちゃんぽんしたでしょー?駄目だよー、無理して飲んじゃ。」
彼はいつものラフなものとは違う、キチンとした華やかな衣装で。
流石、王太子殿下。
彼の明るい爽やかな雰囲気を損なわない様に気を付けながらも、薄水色を基調とした気品ある礼服に仕立てられている。
僕の宵闇を思わせる紫紺にほんの少し金を施した衣装とは、対極の趣きだ。
素直に褒めるも癪なので、適当にあしらってやると。
カイトはまたぷう。と頬を膨らませて拗ねて見せたが、すぐ気を取り直して。
僕の体調をすぐさま心配してきた。
しかし。
まさか、こんな気持ちがぐちゃぐちゃのまま、この日を迎える事になるなんて。
僕は同級生の皆と同じ様に、パーティー用の煌びやかな衣装を身に纏っていたが。
その目は今までになく澱んでいたのだった。
皆パーティーを楽しんだり、もう卒業かと涙ぐんだり。
仲の良い者同士で固まって歓談していたが。
僕はまぁ、そんな様子で一人違う空気を醸し出して、壁の花となっていた。
しばらくすると、わぁ!と歓声が上がり、会場の扉が開いた。
王太子殿下のご入場だ。
王太子は、昨日僕が言った通り、婚約者のオースティン侯爵令嬢を見事にエスコートしている。
王太子の腕に寄り添い、侯爵令嬢は今までになく美しく幸せそうな笑みを浮かべていた。
良かったな。
…そう思うのに。
心臓がズキンと痛むのだ。
これはシルヴィアの痛みだ。
本当は、彼女があそこに居る筈だったのに。
それを死に戻らされて見せつけられて。
けれども、男に生まれ変わってしまった僕には、どうしてあげる事も出来ないんだ。
だから、どうかもう諦めてくれ。
何もしてやれなくて、すまない。
僕はただ、この痛みだけしか残せなかったシルヴィアに、心の中で謝るしかなかった。
飲み物を配っている給仕から適当にグラスを受け取ると、口を付けるでもなく、手にしたグラスをクルクルと弄んでいた。
「あー綺麗だよぅクリスちゃんー」
すると、背後からいつもの呑気な声が聞こえ、何の気なしに振り返ると。
「最後までその呼び方だったな。」
カイト。
と、僕はため息交じりで答える。
彼はというと、美しくドレスアップして優雅に微笑むクリスティーナ嬢に釘付けだ。
「やっぱ可愛いわぁ、クリスちゃん!……ちぇっ!ユリウス殿下ってば、クリスちゃん泣かせたら許さないからなー!」
おー!と拳を振り上げている。
「……そんなに好きなら奪えばよかったのに。」
心にもない事を投げやりに言ってやる。
すると、ようやくこちらを向いたカイトは、僕の顔を見た途端ビックリした表情を見せた。
「いやいや、そんなんじゃないって……。殿下が羨ましいだけで、別に奪いたい訳じゃ……。って、シリルどうしたの?!その顔!」
「そんなに酷いか。」
「いや、顔色が悪過ぎるよ。折角その衣装決まってるのにー!」
心此処に在らずな僕の様子を心配しながらも、カイトは隣からいつもの様に朗らかに話しかけて来る。
コイツは本当に、いつも変わらないな。
「お前もまぁ……馬子にも衣装かな?」
「まぁた、減らず口は相変わらずだけど、どうしたの?具合悪そうだよ。あ、お酒ちゃんぽんしたでしょー?駄目だよー、無理して飲んじゃ。」
彼はいつものラフなものとは違う、キチンとした華やかな衣装で。
流石、王太子殿下。
彼の明るい爽やかな雰囲気を損なわない様に気を付けながらも、薄水色を基調とした気品ある礼服に仕立てられている。
僕の宵闇を思わせる紫紺にほんの少し金を施した衣装とは、対極の趣きだ。
素直に褒めるも癪なので、適当にあしらってやると。
カイトはまたぷう。と頬を膨らませて拗ねて見せたが、すぐ気を取り直して。
僕の体調をすぐさま心配してきた。
しかし。
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