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第1章
28話 卒業前日
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あれからは本当に何事も無く、穏やかな日々が過ぎて行った。
カイトは相変わらず救済に奔走していたし、僕は時々魔術同好会に顔を出して、他のメンバーに遠巻きにされながらも少し会話も交わせたし。
同好会に入った後輩に、緊張されながらも後を託す事が出来た。
卒業も目前となってくると、もう授業もほとんどなく学業などそっちのけで、皆パーティーの話で盛り上がっていた。
先生も準備に追われていて、毎日大変そうだ。
数少ない女子らは、どんなドレスにしようかと、各々話に花を咲かせている。
デビュタントも控えているので尚更だ。
心躍らずにはいられないのだろう。
僕は相変わらず、興味なさげに窓の外を見やる日々。
シルヴィアの時は、あの落ち着かない浮かれた感覚、確かに自分も感じていたのに。
今は、ただ静かに時が過ぎるのを待っているだけだった。
そうして、この学院での最後の生活も過ぎて行ったのだった。
学院での最後の授業を終えた後。
明日にはもう、卒業パーティーだ。
遂に来る、審判の時が。
でも、ただただ怖くて、何事もひたすら避けて無難にやり過ごそうとしてたのに。
今となっては、それだけじゃ無い。
色々な思い出が出来てしまった。
名残惜しいとすら、思える程の。
この空き教室だって。
此処で何度、カイトの泣き言を聞いた事か。
そうして一人思い出に浸っていると。
不意に人の気配を感じた。
何故だ。
普段は使われていない、物置き場の様になっている部屋なのに。
驚いて扉の方を振り返ると、そこに居たのはカイトではなく。
……王太子だった。
「どうされたのですか?殿下。こんな所に…」
「君が入って行くのが見えたからね。君こそどうしたの?こんな所で…」
いつもと変わらずニッコリと微笑んでおられた、が。
後ろ手でパタンと扉を閉められた。
何故閉めるのか…と問うより前に、以前にされた、スゥーッと細めた目で視線を囚われる。
「あぁ、因みにカイトは来ないよ。さっき先生に呼ばれて教員室に行ったからね。」
「…何故、そこでカイトが出てくるのです?」
出来る限り平静を装う様努めたが、声が上擦っていなかっただろうか?
背中に嫌な汗が流れる。
対する王太子は、余裕を崩さない。
むしろ、僕を試す様な視線を向けて来て。
「フフッ。隠していたつもりなんだろうけど、知っているよ?君、カイトとは度々此処で会っていただろう?」
「え…」
どうしよう。
否定するか、誤魔化すか。
何か言わないと。
そう、思うのに、言葉が喉の奥で渦巻いて、上手く出て来てくれない。
焦る僕を嘲笑う様に、王太子はその饒舌な口を開いた。
「見くびられているのかな?私は王太子なんだよ?自分が在籍する学院くらい、いくらでも知り得る”目”はある。」
想像以上に監視の目はあったのか。
…当たり前か。
自国民だけでなく、他国からの王族も留学に来ているくらいだ。
彼らに”もしも”などといった事がない様に。
いつでも情報を把握しておく必要がある。
救世の巫子だって、同じ事。
僕らのちょっとした隠し事なんて……此処でカイトと会っていた事なんて、王太子には最初からバレバレだったんだ。
カイトは相変わらず救済に奔走していたし、僕は時々魔術同好会に顔を出して、他のメンバーに遠巻きにされながらも少し会話も交わせたし。
同好会に入った後輩に、緊張されながらも後を託す事が出来た。
卒業も目前となってくると、もう授業もほとんどなく学業などそっちのけで、皆パーティーの話で盛り上がっていた。
先生も準備に追われていて、毎日大変そうだ。
数少ない女子らは、どんなドレスにしようかと、各々話に花を咲かせている。
デビュタントも控えているので尚更だ。
心躍らずにはいられないのだろう。
僕は相変わらず、興味なさげに窓の外を見やる日々。
シルヴィアの時は、あの落ち着かない浮かれた感覚、確かに自分も感じていたのに。
今は、ただ静かに時が過ぎるのを待っているだけだった。
そうして、この学院での最後の生活も過ぎて行ったのだった。
学院での最後の授業を終えた後。
明日にはもう、卒業パーティーだ。
遂に来る、審判の時が。
でも、ただただ怖くて、何事もひたすら避けて無難にやり過ごそうとしてたのに。
今となっては、それだけじゃ無い。
色々な思い出が出来てしまった。
名残惜しいとすら、思える程の。
この空き教室だって。
此処で何度、カイトの泣き言を聞いた事か。
そうして一人思い出に浸っていると。
不意に人の気配を感じた。
何故だ。
普段は使われていない、物置き場の様になっている部屋なのに。
驚いて扉の方を振り返ると、そこに居たのはカイトではなく。
……王太子だった。
「どうされたのですか?殿下。こんな所に…」
「君が入って行くのが見えたからね。君こそどうしたの?こんな所で…」
いつもと変わらずニッコリと微笑んでおられた、が。
後ろ手でパタンと扉を閉められた。
何故閉めるのか…と問うより前に、以前にされた、スゥーッと細めた目で視線を囚われる。
「あぁ、因みにカイトは来ないよ。さっき先生に呼ばれて教員室に行ったからね。」
「…何故、そこでカイトが出てくるのです?」
出来る限り平静を装う様努めたが、声が上擦っていなかっただろうか?
背中に嫌な汗が流れる。
対する王太子は、余裕を崩さない。
むしろ、僕を試す様な視線を向けて来て。
「フフッ。隠していたつもりなんだろうけど、知っているよ?君、カイトとは度々此処で会っていただろう?」
「え…」
どうしよう。
否定するか、誤魔化すか。
何か言わないと。
そう、思うのに、言葉が喉の奥で渦巻いて、上手く出て来てくれない。
焦る僕を嘲笑う様に、王太子はその饒舌な口を開いた。
「見くびられているのかな?私は王太子なんだよ?自分が在籍する学院くらい、いくらでも知り得る”目”はある。」
想像以上に監視の目はあったのか。
…当たり前か。
自国民だけでなく、他国からの王族も留学に来ているくらいだ。
彼らに”もしも”などといった事がない様に。
いつでも情報を把握しておく必要がある。
救世の巫子だって、同じ事。
僕らのちょっとした隠し事なんて……此処でカイトと会っていた事なんて、王太子には最初からバレバレだったんだ。
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