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第1章
24話 泊りの目的
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「…で、いい加減話せ。」
「え?何を?」
「急に泊まりに来た目的だよ。」
「だから、友達ん家に遊びに来たかっただけだって。」
「……本当にそれだけか?」
ジロリと睨みつける僕に、カイトはキョトンとした顔をしていた。
「それだけだよ?積もる話もあったしさ。」
それだよ、ソレ!
さっさと話せ!
凄んでみせる僕に、カイトは若干引いていた。
「そんな急かさんでもっ」
そうぼやきながらも、僕が気にしていたであろう事をカイトは話してくれた。
「昨日のロレンツォ殿下の被害者?の件、多分だけど…シリルの考えた通りだ。サフィル……えっと、アルベリーニ子爵令息の方だった。殿下にそれとなく聞いたから。」
「ユリウス殿下に聞いたのか。」
大丈夫なのか?それは。
他国から留学中の王子様が暴力沙汰を起こした…らしい?なんて、軽々に話していいものなのか。
下手に事を大きくすると、ただの生徒間のいざこざだけで済まなくなるぞ。
心配する僕に、カイトはパチッとウインクをして笑った。
「大丈夫。殴られて?倒れてたって所は伏せといたから。なんか、シリルがロレンツォ殿下と同国人っぽい人が言い争ってるらしい所を耳にして、喧嘩になりそうで俺が呼ばれたっぽい。って言っといたし。」
「それならそんなに大事にならずに済むかな。でかした。」
「やったーシリルに褒められた~」
うわぁい!とお茶らけて喜ぶカイトに、折角本当に褒めてやろうと思ったのに、やめておこう。
「ユリウス殿下曰く、昨日の午後の授業にサフィルが欠席していたから、そうだろうって。でも、下校時には三人一緒に居たのを見たから、仲直りしたのかな?って。」
まぁ十中八九、サフィル・アルベリーニ子爵令息の方が折れたのだろうが。
帰る頃には普通に歩いていたのなら、まぁ、大丈夫だったのかな?
なら、良かったのだが。
ただの又聞きだし、本当にもう大丈夫だったのかは分からないが、それでも。
元々接点がない御仁なだけに、これ以上自分に出来る事は何も無さそうだ。
ふう。と僕が息を吐くと。
カイトがニンマリと笑った。
「何々?なんかめちゃくちゃ気にしてるじゃん、子爵令息の事。」
「当たり前だろう。気を失う程だなんて、尋常じゃない。」
「まーそうなんですけど!な~んか怪しい~」
「何が。」
「……いや、何でもない。」
ニヤニヤしながら僕の顔を覗いて来ていたカイトだったが、怪訝な顔を崩さない僕を見て、これ以上は埒が明かないと諦めた様子だった。
そして、それよりも。
「そだ!聞いて、聞いて!」
「何を。」
「ユリウス殿下の事!」
「?」
嬉しそうに言って来るカイトに、僕は首を傾げた。
カイトと言えば、王太子の事は常に悩みの種で、何度も愚痴を聞いたのに。
随分晴れやかな顔をしている。
「殿下とは何事も無く、無事に過ごせていけそうでっす!」
「ふーん。」
「だからぁ、もうちょっと興味持って?」
「持ってる持ってる。殿下の事でしょっちゅう泣きべそかいてた癖に、一体どういう風の吹き回しだ?」
相変わらず塩対応な僕に、カイトはまるでシャーロットやリチャードの様に、自分の話を聞く様にとせがんで来る。
面倒くさく思いながらも先を促すと、カイトはむぅ。と拗ねた顔を見せたが、直ぐに気を取り直して話し始めた。
「殿下の距離感があんまり近いからさ~。思い切って正直に言ったんだよ。殿下は俺の事どう思ってるんですか?って。」
「へぇ。」
「そしたら、殿下がさぁ……“弟”みたいで可愛いだってさ。」
「はぁ。」
「第2王子は異母弟で、ほら、側室の子で母親が違うからさー。」
「それは知ってる。」
「普通の兄弟みたいに仲良く出来ないから。だから、カイトは素直で慕ってくれるし、弟を可愛がれたらこんな感じかなぁ~って。ついつい甘やかしたくなっちゃったんだって。」
「あ、そう。」
「だから、殿下の俺へのスキンシップは弟に対するものって感じで、恋愛対象じゃなかったって事!」
よかったぁ~とカイトは胸を撫で下ろしていた。
……馬鹿らし。
そんな事で僕はカイトに泣きつかれて、いつ王太子に恨みを買うかとヒヤヒヤしながらも、救世の巫子の反感を買わない為に、常に何が引き金になるか分からないまま機嫌取りをしていたって事か。
僕のあの生きた心地がしなかった、あの苦労を返して欲しい。
やっぱりコイツ、馬小屋に放り込んじゃ駄目かなぁ?
でもまぁ、これでコソコソ隠れて話を聞いてやる必要もなくなったし、王太子の視線に過敏にならずに済む。
残り少ない学院生活を無事にやり過ごせそう。
それから、僕はカイトの下らないお喋りに付き合ってやり。
晩餐にはまた叔父達や子供達と和気あいあいと食事を楽しんで。
カイトを来賓用の部屋まで送って行った後、自室に戻って来た僕はようやく一息ついた。
「え?何を?」
「急に泊まりに来た目的だよ。」
「だから、友達ん家に遊びに来たかっただけだって。」
「……本当にそれだけか?」
ジロリと睨みつける僕に、カイトはキョトンとした顔をしていた。
「それだけだよ?積もる話もあったしさ。」
それだよ、ソレ!
さっさと話せ!
凄んでみせる僕に、カイトは若干引いていた。
「そんな急かさんでもっ」
そうぼやきながらも、僕が気にしていたであろう事をカイトは話してくれた。
「昨日のロレンツォ殿下の被害者?の件、多分だけど…シリルの考えた通りだ。サフィル……えっと、アルベリーニ子爵令息の方だった。殿下にそれとなく聞いたから。」
「ユリウス殿下に聞いたのか。」
大丈夫なのか?それは。
他国から留学中の王子様が暴力沙汰を起こした…らしい?なんて、軽々に話していいものなのか。
下手に事を大きくすると、ただの生徒間のいざこざだけで済まなくなるぞ。
心配する僕に、カイトはパチッとウインクをして笑った。
「大丈夫。殴られて?倒れてたって所は伏せといたから。なんか、シリルがロレンツォ殿下と同国人っぽい人が言い争ってるらしい所を耳にして、喧嘩になりそうで俺が呼ばれたっぽい。って言っといたし。」
「それならそんなに大事にならずに済むかな。でかした。」
「やったーシリルに褒められた~」
うわぁい!とお茶らけて喜ぶカイトに、折角本当に褒めてやろうと思ったのに、やめておこう。
「ユリウス殿下曰く、昨日の午後の授業にサフィルが欠席していたから、そうだろうって。でも、下校時には三人一緒に居たのを見たから、仲直りしたのかな?って。」
まぁ十中八九、サフィル・アルベリーニ子爵令息の方が折れたのだろうが。
帰る頃には普通に歩いていたのなら、まぁ、大丈夫だったのかな?
なら、良かったのだが。
ただの又聞きだし、本当にもう大丈夫だったのかは分からないが、それでも。
元々接点がない御仁なだけに、これ以上自分に出来る事は何も無さそうだ。
ふう。と僕が息を吐くと。
カイトがニンマリと笑った。
「何々?なんかめちゃくちゃ気にしてるじゃん、子爵令息の事。」
「当たり前だろう。気を失う程だなんて、尋常じゃない。」
「まーそうなんですけど!な~んか怪しい~」
「何が。」
「……いや、何でもない。」
ニヤニヤしながら僕の顔を覗いて来ていたカイトだったが、怪訝な顔を崩さない僕を見て、これ以上は埒が明かないと諦めた様子だった。
そして、それよりも。
「そだ!聞いて、聞いて!」
「何を。」
「ユリウス殿下の事!」
「?」
嬉しそうに言って来るカイトに、僕は首を傾げた。
カイトと言えば、王太子の事は常に悩みの種で、何度も愚痴を聞いたのに。
随分晴れやかな顔をしている。
「殿下とは何事も無く、無事に過ごせていけそうでっす!」
「ふーん。」
「だからぁ、もうちょっと興味持って?」
「持ってる持ってる。殿下の事でしょっちゅう泣きべそかいてた癖に、一体どういう風の吹き回しだ?」
相変わらず塩対応な僕に、カイトはまるでシャーロットやリチャードの様に、自分の話を聞く様にとせがんで来る。
面倒くさく思いながらも先を促すと、カイトはむぅ。と拗ねた顔を見せたが、直ぐに気を取り直して話し始めた。
「殿下の距離感があんまり近いからさ~。思い切って正直に言ったんだよ。殿下は俺の事どう思ってるんですか?って。」
「へぇ。」
「そしたら、殿下がさぁ……“弟”みたいで可愛いだってさ。」
「はぁ。」
「第2王子は異母弟で、ほら、側室の子で母親が違うからさー。」
「それは知ってる。」
「普通の兄弟みたいに仲良く出来ないから。だから、カイトは素直で慕ってくれるし、弟を可愛がれたらこんな感じかなぁ~って。ついつい甘やかしたくなっちゃったんだって。」
「あ、そう。」
「だから、殿下の俺へのスキンシップは弟に対するものって感じで、恋愛対象じゃなかったって事!」
よかったぁ~とカイトは胸を撫で下ろしていた。
……馬鹿らし。
そんな事で僕はカイトに泣きつかれて、いつ王太子に恨みを買うかとヒヤヒヤしながらも、救世の巫子の反感を買わない為に、常に何が引き金になるか分からないまま機嫌取りをしていたって事か。
僕のあの生きた心地がしなかった、あの苦労を返して欲しい。
やっぱりコイツ、馬小屋に放り込んじゃ駄目かなぁ?
でもまぁ、これでコソコソ隠れて話を聞いてやる必要もなくなったし、王太子の視線に過敏にならずに済む。
残り少ない学院生活を無事にやり過ごせそう。
それから、僕はカイトの下らないお喋りに付き合ってやり。
晩餐にはまた叔父達や子供達と和気あいあいと食事を楽しんで。
カイトを来賓用の部屋まで送って行った後、自室に戻って来た僕はようやく一息ついた。
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