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第1章
23話 カイト、クレイン家を満喫する
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「……二人とも、とっても可愛いね。シリルがあれだけ可愛い可愛い言ってたのも納得だよ。」
カイトの両腕にじゃれ付くシャーロットとリチャードを微笑ましく見つめていると、カイトは頭だけ僕の方を見上げて言って来た。
「そうだろう、そうだろう。」
「うんうん。それに、二人とも…シリルと同じ藍色の瞳なんだね~。綺麗だぁ~。」
宝石のサファイアみたいだ!と言ってくれるカイトに、彼にくっついていたシャーロットとリチャードが、その宝石の様な瞳をパッと輝かせた。
「本当?!えへへっありがとうお兄ちゃん!」
「あ、ありがとうございます。この瞳の色は、父様も、シリル兄さまのお父様も、お爺様も、そうだったんですって。」
シャーロットは、自分が宝石の様だと言われて、とっても喜んでいる。
瞳の色が淡い者の方が多いこの国では、濃い瞳の色をしているのに宝石に例えられるのは珍しく、余計に嬉しかった様だ。
リチャードもまんざらではないようで、照れながらも喜んで、カイトに教えていた。
「そうなんだ!クレイン家の血筋なのかな?」
子供二人にキャッキャッと懐かれながら、僕に尋ねて来るカイトに。
「さぁ?そうなのかもな?」
僕はと言えば、興味なく答えた。
考えた事も無かったし。
つれない言い方の僕に、カイトはえー、と口を尖らせるが。
僕は背後に気配を感じて。
子供二人にじゃれ付かれてしゃがんだままのカイトの肩を、僕は指でツンツンと軽くつついた。
「ん?」
「カイト、もう一人紹介するよ。僕の従者のテオドール。」
そう言って、僕は背後でうずうずしていたテオもちゃんと紹介してやる事にした。
「初めまして、カイト様!シリル様の護衛を担っております、従者のテオドール・ランベルトと申します。本日はお二人の護衛を仰せつかりました。この公爵邸にご滞在の間は、わたくしが御身をお守り致しますので、どうぞよろしくお願い致します。」
「へぇ!貴方がシリルの従者さんなんですねー。いつもシリルを守ってくれてるんだぁ。お勤めご苦労様です!今日は急に遊びに来ちゃって御免なさい。でも、こっちに来てから救済のお仕事以外で純粋に友達の家に遊びに行ける事ってなかなか無かったから、今日は本当に楽しみにしてたんだ。こちらこそどうぞよろしくお願いします。」
満を持して、喜び勇んで自己紹介をしたテオに、カイトは同じく明るい調子で答え、手を伸ばした。
一従者の自分にすら気を遣ってくれるカイトにテオは感激しながら、その手を握り握手を交わした。
カイトのこういう所は素直に凄いと思う。
さり気なく自然に相手の懐に入っていけるよな。
元々、救世の巫子という事で相手は好感や憧れを抱いている事が殆どだが、それに驕る事無く気さくに答え、更に相手の好感度は上がる。
身分や立場に関係なくそうするから、市井の民や身分の低い者などは特に感激する様だ。
テオもすっかりカイトの虜になってしまったらしい。
見たことも無い様なキラキラした顔で張り切っている。
その様子は、幼いシャーロットと大差なかった。
挨拶もそこそこに、邸内へ案内する僕の後ろに、カイト・リチャード・シャーロット・テオの順で付いてくる。
まるで親鳥に必死に付いてくる雛鳥の様で可笑しい。
カイトはへー、ほー、と感心しながら邸内を見回していた。
そのまま昼食を、となり。
カイトは学院での事、救済の仕事の事、王宮の暮らしにまだ慣れない事、叔父叔母やいとこらに色々話していた。
また、自分の話だけでなく、リチャードやシャーロットにも話を振り、二人は本当にご満悦の様だった。
食後には庭の案内をしていると、ボール遊びをしようと言い出して。
シャーロットが両手で一生懸命投げたボールを軽々掴んだリチャードが、怪我などをさせない様に気を遣いつつ、ふんわりとカイトに投げると。
ボールを受け取ったカイトは、片手でそのボールを何度も地面に叩きつけて弾ませ、それから走りながら弾ませていき、近くの木の枝にボールを投げる。
投げられたボールはその木の幹と枝の間を抜けて、落ちて来たボールを着地点に移動していたカイトが見事キャッチして見せた。
「……す、すごぉい!!」
流れるような一連の動作に、シャーロットは思わず感嘆して手を叩いた。
リチャードもめちゃくちゃ感動した様子で、尊敬の眼差しでカイトを褒めた。
テオまでも、「すごいです!!」と興奮していた。
「えっへへー!これでも元の世界でバスケしてたからね。ちょっとバウンドしづらいけど、このくらいならね!」
カイトはまんざらでもない様子で笑っていた。
単なるボール遊びと思ったが、それでもここまで情熱と技術を持ち合わせていたとは。
未だによく分からない。
しばらくして皆でお茶をし、お菓子を美味しいと喜ぶカイトに、シャーロットがこれもあげる、あれもあげる、とまるで自分が作ったかの様にカイトにお菓子をあげようとする様が可愛かった。
シャーロット手ずから頂けるのだ、有難く食べる事だな。
はしゃぎすぎて疲れたのか、シャーロットの瞼が重くなってきていた。
乳母にお昼寝を促され、「いやー!もっと遊ぶのー!」とシャーロットは愚図ったが、カイトもあくびをし、「俺もお腹一杯で眠たくなっちゃった……。起きたらまた遊ぼうね。」と言われ、渋々頷いた。
おねむのシャーロットも可愛い。
子供達と一旦離れ、僕の部屋にやって来たカイトは、侍女のレイラの美貌にパッチリ目を見開いたが。
挨拶もそこそこに、部屋の外で待機するように言いつけたテオと共に、部屋を後にした彼女を物凄く残念そうに見送っていた。
全く、この女好きは。
カイトの両腕にじゃれ付くシャーロットとリチャードを微笑ましく見つめていると、カイトは頭だけ僕の方を見上げて言って来た。
「そうだろう、そうだろう。」
「うんうん。それに、二人とも…シリルと同じ藍色の瞳なんだね~。綺麗だぁ~。」
宝石のサファイアみたいだ!と言ってくれるカイトに、彼にくっついていたシャーロットとリチャードが、その宝石の様な瞳をパッと輝かせた。
「本当?!えへへっありがとうお兄ちゃん!」
「あ、ありがとうございます。この瞳の色は、父様も、シリル兄さまのお父様も、お爺様も、そうだったんですって。」
シャーロットは、自分が宝石の様だと言われて、とっても喜んでいる。
瞳の色が淡い者の方が多いこの国では、濃い瞳の色をしているのに宝石に例えられるのは珍しく、余計に嬉しかった様だ。
リチャードもまんざらではないようで、照れながらも喜んで、カイトに教えていた。
「そうなんだ!クレイン家の血筋なのかな?」
子供二人にキャッキャッと懐かれながら、僕に尋ねて来るカイトに。
「さぁ?そうなのかもな?」
僕はと言えば、興味なく答えた。
考えた事も無かったし。
つれない言い方の僕に、カイトはえー、と口を尖らせるが。
僕は背後に気配を感じて。
子供二人にじゃれ付かれてしゃがんだままのカイトの肩を、僕は指でツンツンと軽くつついた。
「ん?」
「カイト、もう一人紹介するよ。僕の従者のテオドール。」
そう言って、僕は背後でうずうずしていたテオもちゃんと紹介してやる事にした。
「初めまして、カイト様!シリル様の護衛を担っております、従者のテオドール・ランベルトと申します。本日はお二人の護衛を仰せつかりました。この公爵邸にご滞在の間は、わたくしが御身をお守り致しますので、どうぞよろしくお願い致します。」
「へぇ!貴方がシリルの従者さんなんですねー。いつもシリルを守ってくれてるんだぁ。お勤めご苦労様です!今日は急に遊びに来ちゃって御免なさい。でも、こっちに来てから救済のお仕事以外で純粋に友達の家に遊びに行ける事ってなかなか無かったから、今日は本当に楽しみにしてたんだ。こちらこそどうぞよろしくお願いします。」
満を持して、喜び勇んで自己紹介をしたテオに、カイトは同じく明るい調子で答え、手を伸ばした。
一従者の自分にすら気を遣ってくれるカイトにテオは感激しながら、その手を握り握手を交わした。
カイトのこういう所は素直に凄いと思う。
さり気なく自然に相手の懐に入っていけるよな。
元々、救世の巫子という事で相手は好感や憧れを抱いている事が殆どだが、それに驕る事無く気さくに答え、更に相手の好感度は上がる。
身分や立場に関係なくそうするから、市井の民や身分の低い者などは特に感激する様だ。
テオもすっかりカイトの虜になってしまったらしい。
見たことも無い様なキラキラした顔で張り切っている。
その様子は、幼いシャーロットと大差なかった。
挨拶もそこそこに、邸内へ案内する僕の後ろに、カイト・リチャード・シャーロット・テオの順で付いてくる。
まるで親鳥に必死に付いてくる雛鳥の様で可笑しい。
カイトはへー、ほー、と感心しながら邸内を見回していた。
そのまま昼食を、となり。
カイトは学院での事、救済の仕事の事、王宮の暮らしにまだ慣れない事、叔父叔母やいとこらに色々話していた。
また、自分の話だけでなく、リチャードやシャーロットにも話を振り、二人は本当にご満悦の様だった。
食後には庭の案内をしていると、ボール遊びをしようと言い出して。
シャーロットが両手で一生懸命投げたボールを軽々掴んだリチャードが、怪我などをさせない様に気を遣いつつ、ふんわりとカイトに投げると。
ボールを受け取ったカイトは、片手でそのボールを何度も地面に叩きつけて弾ませ、それから走りながら弾ませていき、近くの木の枝にボールを投げる。
投げられたボールはその木の幹と枝の間を抜けて、落ちて来たボールを着地点に移動していたカイトが見事キャッチして見せた。
「……す、すごぉい!!」
流れるような一連の動作に、シャーロットは思わず感嘆して手を叩いた。
リチャードもめちゃくちゃ感動した様子で、尊敬の眼差しでカイトを褒めた。
テオまでも、「すごいです!!」と興奮していた。
「えっへへー!これでも元の世界でバスケしてたからね。ちょっとバウンドしづらいけど、このくらいならね!」
カイトはまんざらでもない様子で笑っていた。
単なるボール遊びと思ったが、それでもここまで情熱と技術を持ち合わせていたとは。
未だによく分からない。
しばらくして皆でお茶をし、お菓子を美味しいと喜ぶカイトに、シャーロットがこれもあげる、あれもあげる、とまるで自分が作ったかの様にカイトにお菓子をあげようとする様が可愛かった。
シャーロット手ずから頂けるのだ、有難く食べる事だな。
はしゃぎすぎて疲れたのか、シャーロットの瞼が重くなってきていた。
乳母にお昼寝を促され、「いやー!もっと遊ぶのー!」とシャーロットは愚図ったが、カイトもあくびをし、「俺もお腹一杯で眠たくなっちゃった……。起きたらまた遊ぼうね。」と言われ、渋々頷いた。
おねむのシャーロットも可愛い。
子供達と一旦離れ、僕の部屋にやって来たカイトは、侍女のレイラの美貌にパッチリ目を見開いたが。
挨拶もそこそこに、部屋の外で待機するように言いつけたテオと共に、部屋を後にした彼女を物凄く残念そうに見送っていた。
全く、この女好きは。
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