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第1章
18話 カイトの手紙
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お昼時の生徒が賑わう食堂の真ん中で、クラスメイトのカイトを急に引っ張って行ってしまった僕は、あの後周りから変な目で見られたが。
カイトが「あー、何か勘違い?だったみたいだよー。」と軽く流してくれていたので、それ以上訝しまれずに済み、事無きを得た。
が、その日の下校時に、ニンマリと悪い顔で笑ったカイトから、小さく折られた紙きれをそっと渡された。
帰りの馬車の中で見てみると……。
『お昼は何か大変だったね、お疲れ様~。
取り敢えず、皆への誤魔化し方はあんな感じで大丈夫だよね?
でさぁ、どうせ派手にやっちゃったんだしさー、もうコソコソしなくてもよくね?
同じクラスメイトの友達なんだしさ!
で。
明日の休みだけど、俺ちょーど予定無いんだよね。
シリル、いつも休みの日は家に篭ってるだけって前に言ってたし、暇だよな?
明日お前ん家に泊まりに行くな!って事で( `・∀・´)ノヨロシク』
…………。
「————はあぁぁぁ?!」
「?!」
僕は広げた紙切れに書かれた内容を読みえると、柄にもなく大声を出し、その手紙をぐしゃりと握りつぶした。
向かいに座っていた従者のテオは、急に叫んだ僕の大声に心底ビックリした顔をして。
「ど…どうしたんです?シリル様…」
いつもと明らかに違う僕の様子に、テオは心配そうに尋ねて来るが。
僕はそんな彼の気遣いも思いやれない程怒り心頭だった。
「どうもこうもない!!アイツ、勝手に決めやがって!!最近大人しかったってのに、もうこれか!」
握りつぶした紙切れを今度は足下に投げ捨ててやろうかと思ったが、それを誰かに拾われ見られるのもまた困る為、仕方なく僕はぐしゃぐしゃに丸めて胸ポケットに押し込んだ。
イライラを隠さず腕を組んで座り直した僕に、テオはこれ以上突っ込まない方がいいのか迷っていたようだが、黙っていても仕方が無い。
盛大な溜息をついてから、僕は事情を説明した。
「学院の…僕のクラスメイトで、この前降臨した救世の巫子の事は、テオも知ってるだろ?」
「はい。とても慈悲深い巫子様らしいですね。いつも色んな場所に出向いて行かれて人々をお救いになられていらっしゃるって……。かなり色々回って下さっているみたいですね。いつか、クレイン公爵領の方にもお越し頂く事が出来れば僥倖ですが…。」
「……」
のほほんとした様子で僕に答えてくれたテオの返答に、僕は尚更不機嫌な様子を濃く滲ませた。
「?」
「……その巫子様が、来るんだって。明日屋敷に遊びに来るから宜しくだと。」
実に苦々しく言い捨てる僕に、テオはパッと表情を明るくした。
「えぇ?!シリル様、巫子様とお親しかったんですか!っていうか、友達いらしたんですね!」
「……」
……そりゃ、公爵令息の癖に、友人の一人も作っていなかったのは確かだが。
このタイミングで言われるのは何か腹立つ。
ってか、僕の家に来るって、それ……。
(また王太子に目を付けられる事にならないか?)
あれからやっと元に戻ったのに。
また変に警戒されるのは嫌だぞ。
次から次へと本当に……!
やっぱり奴は死神だ。
いや、そんな格好の良いもんじゃない。
ただの疫病神だっ!!
「面倒にも程がある!!」
「えー、折角ご学友のご訪問、どうぞ楽しんで下さい。で、俺にも紹介して下さいよ、お会いしてみたいです!」
嬉しそうに呑気にそう言うテオに、僕は益々嫌な顔をする。
「……そこまで言うなら。その代わり…テオ、お前は明日、僕と巫子の護衛しっかり頼むぞ。何事も無い様にキッチリ働いてもらうからな!」
「もちろんです!でも、何かあるんですか?お屋敷内でお会いになられる程度ですよね?」
「相手はあの救世の巫子だぞ。もし万が一にも何かあったら僕の首が飛ぶ。そうならない様に充分に注意しろって言ってるんだ。」
「わ、分かりました。」
本当にか?
ポカンとした顔で見つめて来るテオに、僕は溜息をつくしかなかった。
カイトが「あー、何か勘違い?だったみたいだよー。」と軽く流してくれていたので、それ以上訝しまれずに済み、事無きを得た。
が、その日の下校時に、ニンマリと悪い顔で笑ったカイトから、小さく折られた紙きれをそっと渡された。
帰りの馬車の中で見てみると……。
『お昼は何か大変だったね、お疲れ様~。
取り敢えず、皆への誤魔化し方はあんな感じで大丈夫だよね?
でさぁ、どうせ派手にやっちゃったんだしさー、もうコソコソしなくてもよくね?
同じクラスメイトの友達なんだしさ!
で。
明日の休みだけど、俺ちょーど予定無いんだよね。
シリル、いつも休みの日は家に篭ってるだけって前に言ってたし、暇だよな?
明日お前ん家に泊まりに行くな!って事で( `・∀・´)ノヨロシク』
…………。
「————はあぁぁぁ?!」
「?!」
僕は広げた紙切れに書かれた内容を読みえると、柄にもなく大声を出し、その手紙をぐしゃりと握りつぶした。
向かいに座っていた従者のテオは、急に叫んだ僕の大声に心底ビックリした顔をして。
「ど…どうしたんです?シリル様…」
いつもと明らかに違う僕の様子に、テオは心配そうに尋ねて来るが。
僕はそんな彼の気遣いも思いやれない程怒り心頭だった。
「どうもこうもない!!アイツ、勝手に決めやがって!!最近大人しかったってのに、もうこれか!」
握りつぶした紙切れを今度は足下に投げ捨ててやろうかと思ったが、それを誰かに拾われ見られるのもまた困る為、仕方なく僕はぐしゃぐしゃに丸めて胸ポケットに押し込んだ。
イライラを隠さず腕を組んで座り直した僕に、テオはこれ以上突っ込まない方がいいのか迷っていたようだが、黙っていても仕方が無い。
盛大な溜息をついてから、僕は事情を説明した。
「学院の…僕のクラスメイトで、この前降臨した救世の巫子の事は、テオも知ってるだろ?」
「はい。とても慈悲深い巫子様らしいですね。いつも色んな場所に出向いて行かれて人々をお救いになられていらっしゃるって……。かなり色々回って下さっているみたいですね。いつか、クレイン公爵領の方にもお越し頂く事が出来れば僥倖ですが…。」
「……」
のほほんとした様子で僕に答えてくれたテオの返答に、僕は尚更不機嫌な様子を濃く滲ませた。
「?」
「……その巫子様が、来るんだって。明日屋敷に遊びに来るから宜しくだと。」
実に苦々しく言い捨てる僕に、テオはパッと表情を明るくした。
「えぇ?!シリル様、巫子様とお親しかったんですか!っていうか、友達いらしたんですね!」
「……」
……そりゃ、公爵令息の癖に、友人の一人も作っていなかったのは確かだが。
このタイミングで言われるのは何か腹立つ。
ってか、僕の家に来るって、それ……。
(また王太子に目を付けられる事にならないか?)
あれからやっと元に戻ったのに。
また変に警戒されるのは嫌だぞ。
次から次へと本当に……!
やっぱり奴は死神だ。
いや、そんな格好の良いもんじゃない。
ただの疫病神だっ!!
「面倒にも程がある!!」
「えー、折角ご学友のご訪問、どうぞ楽しんで下さい。で、俺にも紹介して下さいよ、お会いしてみたいです!」
嬉しそうに呑気にそう言うテオに、僕は益々嫌な顔をする。
「……そこまで言うなら。その代わり…テオ、お前は明日、僕と巫子の護衛しっかり頼むぞ。何事も無い様にキッチリ働いてもらうからな!」
「もちろんです!でも、何かあるんですか?お屋敷内でお会いになられる程度ですよね?」
「相手はあの救世の巫子だぞ。もし万が一にも何かあったら僕の首が飛ぶ。そうならない様に充分に注意しろって言ってるんだ。」
「わ、分かりました。」
本当にか?
ポカンとした顔で見つめて来るテオに、僕は溜息をつくしかなかった。
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