全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第1章

12話 王太子の視線

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カイトのストレス爆発の一件があってから、アイツは更に僕に声を掛けて絡んで来ようとしてる気がする。

今日さっきも、休憩時間にカイトにじゃれつかれて、仕方なく相手をしてやっていると、向かいの廊下から王太子とその取り巻き達に出逢った。

「カイト、お疲れ。」

ニッコリと微笑むその様は、それだけで絵になるな。
そんな事を思っていると、それまで隣でじゃれていたカイトが、若干引き攣った声で。

「ゆ、ユリウス殿下、お疲れ様です。」

どうした?明らかにさっきまでとは違うぎこちなさだぞ。
取り敢えず、僕も公爵令息として、隣から最低限の挨拶だけし、2人の邪魔にならない様に少し離れようとしたが、何故か後ろからカイトにジャケットの裾を掴まれてしまい、動けなくなった。

「今日は一緒に帰れそうかな?」
「い、いえ…今日は学校の後、ミーア孤児院に行く予定がありまして…。」
「あぁ、そうだったね。孤児院の皆もきっと喜ぶだろう。でも、あんまり無理をしては駄目だよ?この前みたいに倒れさせる訳にはいかないからね。」
「あ、はは。俺も大分力の使い方が分かってきましたから、もう大丈夫ですよ。無理しません。殿下こそ、学業に政務にとお忙しいでしょうが、無理しないで下さいね。」
「うん、ありがとう。」

そんな無難な会話を交わし、王太子は去って行った。
去り際に、殿下は僕の方を見て、その晴れ渡った空の様な爽やかな青色の瞳をスゥッと細めたかと思うと、フッと笑って去って行った。

(え…え…何だ?僕、何もしてないぞ?……てか。)

「おい。」
「ひっ」
「いつまで掴んでやがる。いい加減放せ!」

僕のジャケットを!
皺が寄るじゃないか。

ムッとした顔でカイトの手から離れると、彼は何やらもの言いたげな目で見上げて来る。
……なんだ、その捨てられて心細く哀れに啼いている子犬の様な目は。

「……前々から思ってたが、お前、僕の事ナメてるだろ。」
「なんでさ?!」
「そんな顔したって絆されないぞ。その顔が僕に効くのは、うちの幼いいとこくらいだ。」
「そんなつれない事言わないで~!俺も入れてよう!」

うわぁぁん!と縋りつく様にカイトに泣きつかれる。
ちょ、それやめろ。

騒ぐカイトの声に、クラスメイトがざわつきながら寄って来る。
これでは僕が巫子を泣かせたみたいに思われるではないか。

「~~~~わかった、わかった!後で、昼休みの時に、聞いてやるから。いい加減離れろっ」
「本当だな?!やっぱ無しはナシだからな!」

そう言い、カイトはようやく僕を解放してくれた。
もー本当に、なんだと言うんだ。

そして、2コマ目の授業を終えた後、昼休みに入った途端、僕は早速カイトに拉致……もとい、あの空き教室へ連れ込まれた。
救世の巫子は常に人の注目の的だ。その一挙手一投足が常に噂になる。
だから、誰にも聞かれたくない話をしたいなら、こうするしかなかったのだ。

わかってはいる。
……わかってはいるが。
これはこれで、周囲に誤解されるのでは?
それはそれで恐ろしいのだが。
分かっているのか、コイツは。

だが、また目を潤ませてこちらを伺う様に見て来るカイトに、僕は折れるしかなかった。

「……言いたい事は色々あるが、今はやめておこう。…で、どうしたんだ?カイト。」

彼の強引さに溜息をつきつつ、早く話す様にカイトを促す。
しかし、いざとなったらカイトはもごもごと口ごもった。
が、僕が呆れてこの教室から出ようとすると、ようやく踏ん切りがついたのか、カイトが口を開けた。
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