転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球

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【第8章】転生して、ようやく“本当の私”になれた

83 崩れゆく神殿――悪役令嬢の決断

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「急いで外へ逃げるんだ! ここはもう長く持たない……!」
アレクシスが騎士たちに叫ぶ。彼らは私兵と交戦する気力も失せ、みな命からがら奥から脱出を試みる。
しかし、セレナは混乱の中で気づいてしまった。――光の渦の奥、穴の底にかすかに輝く“結晶体”らしきものがある。それが、まさに“調律石”なのではないか。
このまま放置すれば、世界がどう変わるか分からないし、いずれ第二王子派が再び狙うかもしれない。

「アレクシス、私、石を破壊する……」
セレナは決意を込めた言葉で宣言する。アレクシスが目を丸くして振り返る。

「ば、馬鹿を言うな! そんなことどうやって――危険すぎる!」

確かに、セレナは強力な攻撃魔法を使えるわけではない。だが今、この渦の中心に近づけるとしたら、“転生者”である自分にしかできない気がした。――ゲームの“歪み”を作った当事者だからこそ、干渉できる可能性がある。
周囲の崩落が一段と激しくなる。騎士たちが瓦礫を避けつつ叫ぶ。「殿下、急いで脱出を……!」
アレクシスは苦しげに唇を噛み、セレナを抱き寄せるように腕を掴んだ。

「セレナ、駄目だ……お前が死んだら、何の意味もない!」

「でも、放置すればいつかまた誰かが掘り起こして、同じことが起きるわ。リリィがいなくなったのに、私はまた修正されるかもしれない……。こんな世界調律の力なんて消してしまいたいの!」

涙混じりの言葉が荒れ狂う風にかき消されそうになる。アレクシスは葛藤に満ちた表情を浮かべ、最終的に小さく頷いた。
「……わかった。なら一緒に行こう。お前一人じゃ心配だ。俺が守る。最後まで……」

二人で穴の縁へ向かうと、そこには吹き荒ぶ光と瓦礫が旋回している。ノエルは離れた場所で「セレナ様!」と叫ぶが、どうすることもできない模様だ。
ライオネルは震えながらその場に座り込んでいたが、アレクシスが「お前も逃げろ、ライオネル!」と怒鳴ると、表情を歪めて「ちっ……!」と苦々しげに走り去った。私兵たちも追従する形でホールを脱出し、神殿遺跡の外へ向かう。

(みんなが逃げたなら、ここで私たちが調律石を破壊しても巻き添えはない……!)

そう確信し、セレナとアレクシスは崩落の穴へ下りるため、揺れる石のステップを使って慎重に降り始める。吹き荒れる光が肌を刺し、呼吸もままならない。
予想以上の熱気と圧迫感にセレナはめまいを覚えるが、アレクシスの手を握り締めて耐える。

「くっ……なんて強い力なの……!」
穴の底には、蛍光のようにきらめく青い結晶体が埋まっていた。直径は人の頭より少し大きいほどで、脈動しながら光を放っている。それを目にした瞬間、セレナの頭に“語りかける声”が響いたような気がした。――

『……歪みを排除する。運命に従えない者は修正を……』

身震いするような圧力が脳を締めつけ、セレナの意識が一瞬遠のきかける。アレクシスが必死に「セレナ!」と呼びかける声でギリギリ踏みとどまった。
そして、セレナは最後の力を振り絞り、魔力を高める。大した破壊魔法は使えないが、限界まで力を込めれば、結晶をひび割らせることくらいはできるかもしれない。

「……私は悪役令嬢でも、転生者でも、絶対にこの世界から排除されない……!」
つぶやきと共に手をかざす。青い結晶体に全力で魔力を放出し、内面から破壊を試みる。
結晶が鋭い音を立てて振動し、光がさらに激しさを増す。周囲の空間が歪み、セレナは頭痛に襲われるが、決して諦めない。

「セレナ、俺も……!」
アレクシスが剣を振りかざし、結晶に狙いを定める。魔力をまとわせた一撃を叩き込み、青い光の外殻が砕け始めた。――バリンッという破裂音が響き、眩い閃光が二人を包み込む。

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