転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球

文字の大きさ
72 / 85
【第7章】転生者たちの決着と、本当の愛

72 王子への報告――一抹の不安と決意

しおりを挟む
翌日。アレクシスが学園へ視察に来るというので、私は図書館の裏口にて待ち合わせをし、集めた情報を彼に伝えることにした。
昼休み、控え室で再会したアレクシスは少し疲れた顔をしつつも、「詳しい話を聞かせてくれ」と座る。ノエルも控え、私が“調律石伝説”と“神殿遺跡”について説明すると、彼は深く考え込む。

「そんな伝説が本当にあるとは思えないが、リリィの禁術だって誰も信じていなかったのに実在した。この世界ならあり得るかもしれん……。第二王子派がそれを利用するなら、厄介だな」

「殿下はどう思う? ‘神殿遺跡へ行って確かめる’みたいな公式な動きは、できるかしら?」

私が尋ねると、アレクシスは渋い顔で首を振った。
「父王は今、リリィ事件の後始末と各地の魔物被害への対策で忙しい。そんな“伝説の石を探す遠征”を提案しても、真剣に取り合ってはもらえないだろう。まして、第二王子派の動向を探るのに正規の許可を取るのは難しい」

つまり、私たちが公的な立場で動くのは厳しいわけだ。
ならば、こっそりと調べに行くしかないのか……危険を伴うし、アレクシスが派手に出張るのも目立つ。何より、私の安全を心配する王子が“セレナ単独行動”を許すはずがないだろう。
私は唇を噛むが、アレクシスが先に口を開いた。

「……だったら、俺とお前で、非公式に偵察するしかないのか。だが、王宮を空けるにも限界があるし、学園の授業もある。短期間で行ける範囲か? 北方の遺跡は結構遠いぞ」

「そうね。地図で見る限り、馬車だと片道数日はかかるかも。私たちにそんな時間があるかしら……」

二人で思案していると、ノエルが一歩進み出る。
「殿下、セレナ様。私が先行して下見を行うという手はいかがでしょう? 私はセレナ様の従者ではありますが、王都や学園に縛られる立場ではございません。転生者の噂がどうこう言われても、私自身はさほど標的にならないでしょうし」

私とアレクシスは顔を見合わせる。確かに、ノエルが単独でこっそり北方へ行けば、私や王子ほど目立たないだろう。
アレクシスが慎重に口を開く。

「……なるほど。その案は現実的かもしれない。ノエル、お前一人の旅は危険だが、騎士としての腕前ならそこそこ守れるだろう。だが本当にやる気か?」

ノエルは静かな決意を宿して頷く。
「はい。セレナ様がいつまでも不安なままでは、私も落ち着きません。少しでも情報を得てくれば、次の一手も打ちやすくなるのではないでしょうか」

そう言われると、私も胸が痛む。ノエルを危険な目に遭わせることになるが、彼がここまで言うなら止める理由もない。むしろ、そこまで信頼してくれるのは嬉しいけれど、何か申し訳ない。
私は握った拳を軽く振りほどくようにしながら、ノエルの目をまっすぐ見つめた。

「……ありがとう、ノエル。でも、無理しないでね? もし第二王子派と鉢合わせることになったら、すぐ逃げて。私にはあなたが必要なのよ」

ノエルは少しだけ微笑み、「セレナ様がそうおっしゃるなら、必ず生きて帰りますよ」と優しく応じる。
それを聞いていたアレクシスは深くうなずき、目を伏せる。

「決まりだな。ノエル、頼む。何かあればすぐ伝書か魔術通信で報せてくれ。俺も可能な限り援軍を出す」

こうして、私たちはノエル単独の北方遺跡調査を決定した。――いよいよ、リリィを超えた“転生者の修正力”との戦いが本格化するのかもしれない。私もアレクシスもまだ自信はないが、ここまで来たなら逃げるわけにはいかない。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。 他小説サイトにも投稿しています。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

牢で死ぬはずだった公爵令嬢

鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。 表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。 小説家になろうさんにも投稿しています。

10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)

放浪人
恋愛
「もう、疲れました。貴方の顔も見たくありません」 公爵令嬢リーゼロッテは、婚約者である王太子アレクセイに処刑される人生を9回繰り返してきた。 迎えた10回目の人生。もう努力も愛想笑いも無駄だと悟った彼女は、断罪イベントの一ヶ月前に自ら姿を消すことを決意する。 王城の宝物庫から慰謝料(国宝)を頂き、書き置きを残して国外逃亡! 目指せ、安眠と自由のスローライフ! ――のはずだったのだが。 「『顔も見たくない』だと? つまり、直視できないほど私が好きだという照れ隠しか!」 「『探さないで』? 地の果てまで追いかけて抱きしめてほしいというフリだな!」 実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!? 物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる! ※表紙はNano Bananaで作成しています

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

処理中です...