転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球

文字の大きさ
36 / 85
【第四章】学園祭は、あなたと

リリィの新たな噂――“聖女ステージ”の準備

しおりを挟む
舞踏会の方向性が一応決まった翌日、今度はリリィが“メインステージ”を使う企画を正式に申し込んだという話が広まった。
内容は「聖女として慈善活動を紹介し、学園に祝福をもたらす祈りの儀式を行う」とのこと。実際、リリィは平民出身ゆえに色々な慈善活動をこなしてきたという噂がある。そこに聖女としてのパフォーマンス要素を絡め、派手な“神聖”演出を加えるらしい。

「慈善って言っても、本当に彼女が主体的に何かしてきたのかしら?」
私は懐疑的だ。ノエルも同調するように口を開く。
「おそらく、実際には支援団体に名前を連ねているだけでしょう。ですが、彼女は ‘私が寄付や奉仕活動をしている姿をアピールしたい’ と考えているのでは? とにかく学園祭のメインステージでやるからには、大掛かりな仕掛けを用意しているはずです」

つまり、これはリリィにとって“絶好の自己アピールの場”というわけだ。乙女ゲーム的に言えば、ヒロインが大勢の前で健気さと正義感を見せつけ、攻略対象――つまり王子など――の好感度を一気に跳ね上げるイベントだったろう。
だが今の状況では、王子は舞踏会で私と組むと明言している。リリィは焦りからか、“慈善”や“聖女”の大義名分を使って周囲の支持を集めようとしているのではないか……。
実際、同情を買いやすい平民や、彼女を支援する一部の貴族にとっては、リリィが“ヒロイン”らしく華々しく振る舞うのは歓迎すべきことなのかもしれない。

(これ、放っておいたら、私のほうが“冷たい悪役”扱いされるかもしれない。学園祭でリリィが慈善だの奇跡だのを華々しく披露するのに対して、私が踊るだけの存在じゃインパクトが弱いわ)

考えてみると、先日の舞踏会準備でこそ私は皆をまとめ上げたが、それだけだと“気が利く公爵令嬢”くらいの評価でしかない。リリィのように派手な聖女ステージをぶち上げれば、観客の心は一気にそちらへ流れるだろう。
私は唇を噛みしめ、アレクシスに相談してみることにした。

放課後、校内の一角で合流したアレクシスに、私は率直に言う。
「リリィが祭のメインステージを独占するのは避けられないみたい。……私とあなたは舞踏会で目立つかもしれないけど、それ以外の時間帯はどうする? 正直、彼女の“聖女アピール”に対抗策が必要だと思うの」

すると、アレクシスはあまり思案する素振りを見せず「なるほど」と頷く。
「確かに、リリィに大きな顔をさせると、周囲が ‘やはりリリィこそが王子の隣にふさわしい’ と言い出すかもしれない。……なら、俺も何か祭の企画を作ってみようか」

「王子自ら、何か催しを?」

私が驚いて尋ねると、アレクシスは少し目を伏せて頬を掻く。
「恥ずかしながら、王子として公務以外の企画に参加するのは滅多にないんだが……。でも、学園祭なら多少の自由は許されるだろうし、俺もお前との連携を見せつけられる場が欲しい」

“お前との連携を見せつける”――そのストレートな言い回しに、胸が熱くなる。なんだか以前のアレクシスとは大違いだ。ゲームの王子像は、もっとクールで人を寄せ付けないはずだったのに……。
私は赤面しそうになるのを抑えながら、「いいわね。それなら、どんな企画なら王子が動いても自然かしら?」と話を膨らませる。

アレクシスは少し考えてから口を開く。
「たとえば……学園内の ‘バザー’ があるだろう? 毎年、生徒が作った工芸品や菓子を売っていると聞く。俺も貴族の一人として出品を用意し、客を呼び込むのはどうだ?」

なるほど、バザーで物品を売るのは、一般的な学園祭の光景だ。前世の感覚からしても、王子が店先に立って接客をするなら、それだけで大行列ができるだろう。
しかも、アレクシスと私が協力して何か手作り品を作ったり、特別な品を用意したりできたら……学園の注目は一気に集まるかもしれない。それに、リリィの慈善ステージと同じ“人を助ける”というコンセプトで売上を寄付する形にすれば、彼女の行動とも拮抗できそうだ。

「いいかもしれないわ。私たちも ‘売上を慈善団体に寄付します’ ってアピールすれば、リリィ一人がやってるわけじゃないってことになるし。聖女に独占される必要はない。賛同してくれる生徒も巻き込めば、かなり大きなプロジェクトになるかも」

私が熱を帯びて語ると、アレクシスも笑みを浮かべて同意する。
「よし、決まりだな。ノエルや周囲の生徒も誘って、大きく仕掛けよう。……名づけて‘王子と公爵令嬢によるバザー企画’だな」

「ちょっと、名前はもう少し考えてよね……。私ばかりが表に出るのは嫌だし」

苦笑しつつ、私たちは目を合わせて笑い合う。なんだか馬鹿みたいに楽しい。リリィと闘う、という緊迫感があるはずなのに、その陰でまるで学園祭の“普通の実行委員”のような活気が広がっていた。
――前世で文化祭を楽しめなかった反動か、私は今、この学園祭に本気でのめり込みたいと思い始めているのだ。

(これって、単なる“ゲームの破壊”だけじゃなくて……私自身が新しい道を作ろうとしている?)

自問自答するままに、アレクシスの隣で計画を練る。知らず知らずのうちに、私たちの距離は少しずつ縮まっている気がして――その事実に、私は戸惑いと心地よさを同時に味わっていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。 他小説サイトにも投稿しています。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

牢で死ぬはずだった公爵令嬢

鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。 表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。 小説家になろうさんにも投稿しています。

10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)

放浪人
恋愛
「もう、疲れました。貴方の顔も見たくありません」 公爵令嬢リーゼロッテは、婚約者である王太子アレクセイに処刑される人生を9回繰り返してきた。 迎えた10回目の人生。もう努力も愛想笑いも無駄だと悟った彼女は、断罪イベントの一ヶ月前に自ら姿を消すことを決意する。 王城の宝物庫から慰謝料(国宝)を頂き、書き置きを残して国外逃亡! 目指せ、安眠と自由のスローライフ! ――のはずだったのだが。 「『顔も見たくない』だと? つまり、直視できないほど私が好きだという照れ隠しか!」 「『探さないで』? 地の果てまで追いかけて抱きしめてほしいというフリだな!」 実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!? 物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる! ※表紙はNano Bananaで作成しています

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

処理中です...