クロヴァンの探偵日記

高松 津狼

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第二章 東の市場編

第21話 母の手紙

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「これがお母さんの隠れ家...!」

私は母の隠れ家を久しぶりに訪れたのだが、やはりこの仕掛けはいつ見ても感動するものだ。
その昔、母の4代前の人が考えた仕組みらしい。一体どんな仕組みなんだろうか...私にはわからないけれど、自動で動くっていうのはすごいことだ!

私は興奮しつつ中へ入ると、急に勝手に灯火がついた。これもよく仕組みがわからない...が、とっても興味深いものである。どうやったらこのように灯火がつくのか、ぜひとも母に聞きたかった。

「ゲホッ..!ゲホッ!」

恐らく人が入ったのは相当久しぶりなのだろう、ホコリがかなり溜まっており、吸い込んでしまった私は咳き込んだ。

私は部屋のスミにある作業台の上に置いてある2つの手紙と、母の手帳を見つけた。
私は間違いなくそれが母が遺した全てだということを察した。
2つの手紙のうちの一つは私の名前が書いてあったことに気づいた。

私は自分の名前が書いてある手紙を恐る恐る開けて中身を確認した。すると中には2つの紙が入っていた。


= 手紙の内容 =

拝啓
私の愛娘まなむすめのスマウメックへ。

この手紙を見る頃にはきっとスマウは大人になっているかな。それともまだ二十歳を迎える前かな。

昔、黒い星のお話をしたこと覚えているかな?
実はお母さん、黒い星の正体が分かったの。
黒い星の正体は240階からなる巨大なタワーの別称だったのよ。この世界の全ての情報を知ることが出来る巨大な装置がそこにはあるらしくて、それに触れれば宝物が見つかるらしいとも街の人から聞いたわ。
お母さんは地図を見つけることは出来たけれど、その大陸に行くためには果てしない海をずっと渡らなきゃいけないの。

だけどお母さんには時間がなくて無理だった。
だからスマウ。お願いがあるの。

お母さんの代わりに黒い星まで行ってきてくれないかしら...

------------

ここで手紙は終わっているが、私は黒い星が実在していたことにものすごく驚いた。てっきりおとぎ話なのかと思っていたが...どうもこれが私の新しい任務...というよりやるべきことになりそうだ。それに宝物が見つかる...?か。ここには余り興味はないけれど、巨大な装置...か。なにか意味はあるんだろう。そっちのほうがよっぽど気になる。それに...この手紙...どこかおかしい。

母はいつもこの世界を覆う闇について追っていたはず...なのにそのことについて一言も書いていない。この手紙...実はなにか深い意味があるんじゃ...

それと...この手紙の包装には一緒に地図が入っていた。これが手紙に書いてあった黒い星の位置について記してある地図なのだろうか。

地図を開いてみると手紙の通り赤いインクで星印を記した場所に黒い星と書いてあった。地図の下にはサムガット大陸と書かれていた。地図には南回帰線が書かれており、日付変更線と呼ばれる日にちが更新される場所もかかれていた。

「これが黒い星の位置...?でもこれってどこだろう?」

私にはこの地図の示している場所が全く分からなかった。そもそも見たことがないし、この位置には大陸どころか島もなかったはず。なのに母が見つけた地図にはしっかり港らしき場所があるし、それどころかかなり計画的に作られた都市が発達しているようだ。これはまるで青髪青年伝説に登場するような未来都市だ...。

母の手紙いわく240階もの巨大なタワーの別称が黒い星と呼ばれるものらしい。そこにはこの世のありとあらゆる情報を手に触れるとすべて手に入れることが出来る装置があると記されている...。そしてそれこそが宝の正体に近づけるものらしいが。

私は更に母が遺したメッセージを読もうと折りたたまれているもう一つの手紙を読んだ。

これはなんだろう?メラさん宛てのメッセージだ。 ゆーえすびー?と書いてある。ぱーそなるこんぴゅーたーに接続して...と書いてあるがなにを言ってるのかわからない。なんか聞いたことがない言葉がたくさんある。そしてこの下にあるのはなんだろうか?見たことがないくらいに綺麗に加工された金属と金の皮膜?っぽいなにかを囲うように黒いが軽いなぞの物質がある。母はこれをぷらすちっく?と呼んでいたらしいことも、この手紙からわかるが...

全く意味がわからない。ヤシューマさんと母は一体なにを見てきたんだろうか...知らない言葉がいっぱい並んでいた。というか人の手紙を勝手に読んでしまった私...ちょっと失礼なことをやってしまった...あとでヤシューマさんに謝っておこう。

私はこの2つの手紙と地図をしまってヤシューマさんの家へ届けようと部屋を出ようとしたとき、地下室の上で兵士がなにかを叫んでいるのを聞いた。

「クロヴァン・スマウメックがこのエリアのどこかにいるはずだ。そいつを逃すんじゃない!」

なるほど。遂に私の情報がこの街にも知れ渡ったということか...これはもうひと悶着ありそうだな...

私は覚悟を決めて部屋から出てると、すぐに小路を突っ走りネンチェイムの滝と呼ばれる市場のかなり東にある大きな滝を目指して走り続けた。昔、母が市場で巡回兵に追われたらそこに向かって走れと口酸っぱく言われていたので、それを覚えていたのだ。とはいえそこまで2キロメートルある。運が悪ければ巡回兵に見つかってしまうだろう。

しかし、母が教えてきた小路を蛇のようにくねくねと通過し続けることで、巡回兵にバレずに市場の中央通りから脱することが出来た。ほどなくすると、滝への道とかかれた看板があった。私はそれを急いでかけてのぼっていった。

かなり険しく、滝が近づくにつれてあたりが湿っぽくなっており、足場は非常に悪くなっていた。うっかり足を滑らせると骨折してしまいそうだ...

さっきまで朝日が昇っていたはずなのにあたりを見回すと、昼になっていたことに気づいた。

お腹空いたなぁ...さっき宿で貰ったオレンジでもむいて食べようかな~...

謎の男性「お~!クロヴァンちゃん。君もここに居たんだ!」

私は聞き覚えのある声が聞こえたので後ろを振り返ってみると、そこにはプノムクロムを出る前にあった依頼主さんだった。

依頼主さん「あ、そうそう。もしかしてあの叫び声の正体わかったかい...?」

依頼主にそう聞かれると私は少しビクッとしたが、ポケットの中にあるメモを取り出して、結果を渡した。

依頼主さん「なるほどね...まぁなんとなくそうだと思ってはいたんだよ...多分クロヴァンちゃんは今頃...ヒョウタン人に追われてるんだよね...多分。」

察しが良すぎるでしょ...まぁ確かにそうなんだけど。

私「はい...恥ずかしながら実はヒョウタン人に追われてるんです...」
依頼主さん「それならさっきボウンスラウサリにヤシューマさんとか言う人が、心配して来てたから訪れてみるといいよ。」
私「え?ヤシューマさんが?」

私はヤシューマさんが近くに来ていることにビックリした。というかボウンスラウサリってあの昨日宿で出たパイ生地に使われた小麦を生産してるところだったはずなのだが、そんなところになぜヤシューマさんがいるのだろうか。

依頼主さん「ヤシューマさんは金具屋さんにいるって話だから言ってみるといいよ。」
私「わかりました。ところでボウンスラウサリってどこにあるんですか?」
依頼主さん「ああそれならこれからボウンスラウサリにいくところなんだよかったら一緒に行くかい?」
私「え?いいんですか!?」
依頼主さん「いいよ。この峠を下りていくとボウンスラウサリだからね。そんなに遠くないし。」

(なんて運がいいんだ。ボウンスラウサリがどこか探す手間が省けた...)


私は依頼主さんと共に峠を下りボウンスラウサリにたどり着くと、そこには新しく建ったであろう店が色々ならんでいた...
見たことがない食べ物やパンもある。どれも美味しそうだ。
他にも便利そうな家具やオシャレなペンなんかもあった。欲しい。

色々街をキョロキョロと見ていると、金属を打つ音が聞こえてきた。

「あそこが金具屋さんだ。」

依頼主さんがそう言うと、その前にはヤシューマさんがいた。
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