クロヴァンの探偵日記

高松 津狼

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第二章 東の市場編

第14話 市場の東の宿

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日が完全に沈んだ頃、荒れた道を渡りきり私は遂に辿り着いた。
ヘンデンバイトンの東の市場に....

私は街の灯りが見えたことに少しホッとした。
すると肩の力が辺に抜け体がグッと重くなった気がした。

遠くに見えるタワー状の建物...眩しく輝く明るい町並み。
子供の頃よりも少し眩しくなって建物の数も増えた...気がする。
私も齢を取ったんだなぁ...

私は思わず吐息を漏らした。

  「はぁー...疲れたなー。」
「少し休みたいな...今日は」

そう思わず口からこぼすくらいに私の体はすでにボロボロになっていた。体は震えておりもはやこれ以上歩くのは困難を極めていた。
私にとってこの日は途方もなく長い1日だった。ヘンデンバイトンの東の市場を目指すために命の危険を冒して隣街に侵入して、なんとかこのヘンデンバイトンの東の市場にやってくることが出来たのだ。

私は少しよろめきながら道を歩き、町の灯りがある方向へ歩いていった。
どこかに宿はないか...と心の中で思っていながら歩いているとゴンッと頭をぶつけてしまった。

「痛っ...」

疲れていて注意が散漫としていたのだろう、私はついうっかり下を向きながら歩いていたらよくわからない看板にぶつかった。

看板から少し離れるとそこには『チョンカンカットへようこそ!』と書いてあった。
その看板の少し奥には大きな建物が見える。あれはきっと宿だろう。
私はそれを認識すると、なぜか少し元気が出た。

私は力を振り絞り、すでに限界を迎えている足を無理に動かして、宿の近くまで来た。
宿の豪華な細工がされた木のゲートをくぐり、大きなドアを開けて宿へたどり着いた。

中に入ると、洒落た空間が広がる広場があった。
広場の真ん中には焚き火があり、その周辺で踊っている人もいた。
その横には酒場があり、お酒を飲んで酔いつぶれている人もいた。
私はその少し見慣れない光景に、興味深さを覚えながらも焚き火の広場の奥にある受付にたどり着いた。

受付の人「ようこそ、チョンカンカット<東の端>の宿へ。本日はどんなご用件で?」
私「一晩泊まりたいのですが。」
受付の人「ご希望の部屋や階などはございますか?」
私「特にないです。」
受付の人「それでは、204号室にご案内いたしますので、400ペルをお願いいたします。」
私「わかりました。」

私はポケットから財布を取り出してお金を払うと、受付の人は、カウンターの下にあった鍵を取り出した。
受付の人は軽く会釈をすると、204号室へ案内をはじめてくれた。

田舎と違って受付がしっかりしてるなぁ...というか世間ではこれが普通なのか?
大きめな宿だからだろうか、部屋に行く途中の小さなお店が並んでいる。
私の故郷であるプロムクロムは全部丸投げだからなぁ...
案内とかもロクにしてくれない人もいるし、業務内容も最悪だしで全然楽しめなかったよな~。
まぁそもそも観光目的で私達は動きにくいからそれを目的に宿が作られてないんだろうけど。
いずれにせよ、東の市場の名を冠する場所なだけあって、おもてなしはしっかりしているなあ。

そんなことを私は心の中で思っていると、受付の人が階段の前にある広場で立ち止まり、店の案内をしてくれた。

受付の人「こちらの階段前の広場にあるお店は、お土産屋さんです。」
受付の人「ここでしか買えない果物や当宿で最も評判が高いアップルパイ、新作のレモンパイなんかも買えたりします。それだけじゃなくて、物語の本とか子供用のおもちゃなんてものも買えるんですよ。」
私「そうなんですね。品揃えが豊富なんですね。」
受付の人「はい。そうなんです。この宿は、近くのオソレカラス山の麓で取れるリンゴや、ボウンスラウサリ村で取れる小麦を使って色々な商品を作っているんですよ?。」
受付の人「そうそう。つい1週間前に、乾燥した風が常に吹き下ろす世界大峡谷ワールドグレートリヴァーで取れるレモンも取り寄せるようになったんです。だからレモンパイをはじめとする、レモン系のスイーツも食べれますよ!」
受付の人「ボロネーゼやピザなどのメインディッシュの後に食べると、お口の負担が和らぎますのでよかったら食べてみてくださいね♪」
私「ほえ~...おいしいそうですね~。(ジュル)」

むっちゃおいしそう~...私も食ってみたい....
じゃ な・く・て
この人、商売上手だろ!さすが受付の人って感じか?ついうっかり買ってしまいたくなる文言多くない?すげー...じ、時間があったら食べてみようかな。

受付の人の話術に私は感激していると、受付の人が階段を登り始めた。

階段を登り左手に曲がると部屋がいくつかあった。全部で部屋は12個。ギリギリ目視できる程度である。階段から左4つ目の部屋に来ると受付の人がポケットから鍵を出して、部屋の鍵を開けると鍵を私に手渡した。

受付の人「こちらの部屋が204号室となっております。よい1日を!」

受付の人は笑顔で私に手を振り、下へ帰っていった。

なんか最後まで完璧だったというか、あっという間の時間だったなぁと思わせるレベルで話術が高い人だった。ある意味怖いんだが...

そんなことよりも私は部屋の中が気になっていたので、手に持ってる鍵を使ってさっさと鍵穴に鍵を刺してドアを明けた。
部屋のドアを開けると、そこにはしっかりとした作りの部屋があった。
部屋は広くて、すみにしっかりとしたベットがあり、部屋の真ん中にはテーブルがある。

なんていい部屋なんだろう。
私が田舎者だからかもしれないが、普通宿と言うと狭い部屋にベットがありそれ以外はなにもないというのが当たり前なのだ。

私はドアを閉めると真っ先にベットに横になり、ウトウトしながら自分の過去の日記を読んでいた。

そう言えばメラさんは真紅の守り人と名乗っていた気がする。
今ふと思い出したが日記の最初の方にそれに関する情報を書いた気がした。
私は過去のページをめくり続け真紅の守り人に関する情報を書いていないか探し続けた。

すると...

--10月24日---

真紅の守り人は、その昔メラメドウと呼ばれる地域にいた勇者「メラ」のことを指す。この「メラ」は文字通り赤いという意味である。
現在ではこのメラという苗字は色々な人に使われており、人々の間では太古の人が作り出した神話と信じられている。しかし、実際にはメラと名乗る勇者がいたことは事実であることが、このヒョウタン人が落とした「危険人物登録本」より分かった。

だとすれば、この星のはるか南の海にある別の大陸の中にメラと名乗る人物がいるのかもしれない。そのうちの一人が...本物の勇者の末裔ということ?

—----

私はこの記述に少しハッとした。ヒョウタン人を圧倒する身のこなし、どこか余裕そうで落ち着いている様子のあのメラ・ヤシューマと名乗る女性。
実は彼女こそその勇者の末裔なのではないかということに気づいた。

だとしたら、なぜ私の前に現れたのだろうか。少しウトウトしていた私だが、この興味深い事実に目が覚めた。私は更に深まった謎を解こうと考えていると、ドアがコンコンと突然ノックされた。

受付の人「お食事が出来ましたので、届けに参りました。」
私「は~い。入ってどうぞ!」

受付の人が部屋に入ると、部屋へ入りテーブルの上に食事を置いた。

「本日のお食事は、ボウンスラウサリ村で採れた小麦を使ったパスタに大峡谷水瀑グレートバレーウォーターフォール付近の村で取れた卵を使った、カルボナーラとオソレカラス川の上流で採れたジュワッと甘いリンゴを使ったアップルパイとなっています。」

受付の人はそう言い終え、一礼をしたあと部屋を後にした。

ボウンスラウサリ...プノムクロムに住まうものなら誰もが知っているあの農耕で栄えている村のことだ。あの地域の食べ物はとてもしっかりしてておいしいのである。
もう一つはオソレカラス山のリンゴを使ったパイらしい。これはあのおじさんが言っていたリンゴと同じものかな?パイにしたらどんな味になるんだろうか。

「いただきます。」

私はトレイの上にあるフォークを右手に持ちスプーンでパスタを絡め取り、口に運ぶとチーズの香りが口いっぱいにホワッと広がった。クリーミーだけど塩気が強いチーズが舌に絡まる。これがまたよいのだ。
私はそれをゆっくりと味わいながら食べた。

次はアップルパイだ。さっきのお店で打っていたリンゴと恐らく同じもの。きっとおいしいに違いない。

最初のひとくちを口に運ぶと、パイ生地がふわふわと口を包み、パイの中にあった温かいリンゴはシャキシャキとしていた。しかしその2つが口の中で上手くハーモニーを奏でている。うまい。うますぎるッッ!!

私はあっという間に2つの料理を食べきりお腹を満たした。
なんだか、体がポカポカしてきた...きっともう体が悲鳴をあげているのだろう。
2日連続で走ったのだそろそろ体も休みたいのだろう。

そう、こんな難しい言葉で形容しなくても私の頭の中にある今の文字はただ2つ。

>>眠い<<

私はさっきのメラに関する考察をもっとするために休憩しようとベットに腰をおろしたのだが、ベットに横になると途端に意識が飛ぶように寝てしまった。

zzz…

—-真夜中----
zzz…


女性A「きゃー!?」

突然静けさを破って悲鳴が聞こえ、私はそれにびっくりして飛び起きた。
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