クロヴァンの探偵日記

高松 津狼

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第一章 はじまりの時

第4話 謎の地下通路

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なにか長い棒さえあれば、簡単に鍵を開けることが出来る。
私はポケットに手を突っ込み、適当に長そうなものを探した。

「なんかあったかな~?」
「これは時計...これは日記帳...」

暗闇の中ポケットを漁っていると、なにか手にゴワゴワとした違和感を感じた。

「ん?なんだこれ。」

それをポケットから出して見てみると。
いつぞやに拾った木の棒が見つかった。
普段から道に落ちていたものを拾う癖がここで役に立ったようだ。

「これで開くといいんだけどな~。」

取り敢えずその木の棒を鍵穴に差し込むと、鍵はカチャンと開いた。
そして小さな扉を開けると、そこには地下へと続きそうな道が現れた。

「うわ...真っ暗だ...どうやって進もう?」

道は余りにも暗く、地面がヌルヌルしており少しでも滑ったりすると怪我を負いそうな危険な道となっていた。
私は道を歩いてるときに転ばないように、さっきポケットから出した木の棒を部屋の端にあったランタンに突っ込み、木の棒の先端をボォーッと燃やして松明のようにし、明かりを手に入れた。

「よしこれで、準備オッケー。」

私は覗き込むように、暗い道の中を覗いた。

「この先になにがあるのかなぁ。」

私は木の棒を持ちながら扉の向こう側に続くジメジメとした暗い道へと足を踏み入れた。
ジメジメとした暗い道を歩いていると、段々と水のせせらぎの音が近づいて来た。
空気がだんだんと冷たくなってきて、ヌメヌメとしていた道は、水が滴れ流れる湿気った道となった。

私はサラサラと流れるせせらぎの音に耳を澄ませてみた。

すると、道の向こう側から聞こえてくる。生活確保の為の水源なのだろうか?
ということはここは水道管理局だったのだろうか?そもそも現在も使われているのだろうか?
私は考えを頭の中で巡らせて、この場所の正体を探りながら歩き続けた。

もう少し歩いていくと道の終わりが見えてきた。道の終わりには明かりが灯っているようだった。それと共に水のせせらぎの音がさらに近づいていた。これは明らかに水道管理系のなにかに違いない。私はそう確信した。
しかし、出口付近まで来てみるととても意外なものが見えた。

『檻の部屋、水路、樽、堅いレンガ造りの壁』

明らかに水道管理局のようなものではなく、もっと物騒なものだった。
血の匂い、腐敗した食べ物の匂い、そして項垂れたような人の声も聞こえた。
どうやら、現在進行形で使われている地下牢だったようだ。


カン...カン...カン...カン。


どうやらヒョウタン帝国の巡回兵もいるようだ。
私は潜入するのには余りにも危険な場所だと思ったが、それに見合う重要なことが隠されているに違いないとも思った。私は今すぐにでもこの施設を調査して日記に記したい...
でも...

やはりヒョウタン人に見つかるリスクが高いことを考えると少し降りて調べるのには抵抗があった。

私は下に降りて調べることを戸惑っていると、さっきの本を手にいれたときの高揚感をふと思い出した。
なにか重要そうな証拠を手にいれたときの満足感。まだ誰も知らない真実を見つけてしまったような感じがして好きなのだ。


カン...カン...カン...カン


ヒョウタン帝国の巡回兵の歩く音がまた再び聞こえた。

私は一瞬その音を聞いて正気に戻ったが、すぐにさっきの高揚感を思い出した。
危険を冒してでも情報を手に入れたいという私の探索欲はとうとう抑えきれなくなっていた。

「あーもうダメ!なにがこの先にあるのか知りたい。知りたくて知りたくて堪らない!」

私はなにを思ったのか、なにも考えずに衝動的に小道の出口から降りてしまった。

ボタッ!ゴン!

「痛たたた...」

着地に失敗して樽に体をぶつけてしまった。
大きな音をならしてしまったが、巡回兵にバレてないと思いたい。


ガン!!


ヒョウタン帝国軍人がなにかに気づいたのか槍を構えて地面を大きく突いたような音を鳴らした。音的に武器を持っているらしい。

巡回兵「なにものだ!?」

ガン...ガン...ガン...ガン!!

重い金属の音が今までにないスピードで迫ってくる。
この音は間違えなく私の方向に近づいている。
やっぱりバレていた。
まずい。早く隠れないと。殺されてしまう!

なにか隠れるものはないだろうか。
私は急いで当たりを見渡した。

さっきでた小道の出口の下に大きな樽の山があったはず!
そうだ!

私はとっさにその樽の山の中に隠れた。

ガンガンガンガン!!

(おー怖い怖い....この樽がなかったらもう死んでたかも...)

そう安心したのもつかの間、兵士がたてる音が大きくなるにつれていき段々と怖くなってきた。
私の鼓動は早くなり、いつバレてもおかしくないこの状況にハラハラしていたのだ。

(え?なに?こっち見てない?)

そしてとうとう巡回兵が小道の出口がある道付近にまで来たところで一度立ち止まった。

巡回兵「そこか...!、曲者め!」

真っ直ぐに樽の山がある方向へ向かってきている。
まずい、バレているのだろうか。。。
兵士が悍ましい目でこちらの方向を見つめている。
私の背中を悪寒が襲った。


「ミャ~オ。」


と、その時、猫が私の横で鳴いた。

巡回兵「なんだ~驚かせるなよ。猫ちゃん!こっちおいで!」

巡回兵は、腰を少しおろした後、猫が腕に上って来れるように構えた。
すると猫は巡回兵のところへ行き、腕を伝って首ら辺まで登った。

巡回兵「いい子だ。さぁお家へ帰ろう。」

猫を抱きかかえた後、巡回兵は、また歩き始めてどこかへ行った。

(はー!危なかった...)
(猫がいなければ死んでたかも知れなかった...)

私はそう心のなかでつぶやくとすっと肩をなでおろした。

もし今バレていたらきっと殺されていただろう。
ましてやここは牢獄。見つかっていたら即刻ぶちこまれていた。
想像するだけで恐怖を覚える。

私は樽からひょっこりと顔を出して、巡回兵がいないことを確認すると樽の外へ出た。
やはり少し空気がじめじめしている。さっき小道の出口にうっかり落ちたときよりも
ずっとキツい血の匂いがする。もしかすると、死刑が執行されてる場所があるのかもしれない。

さっき正面にあった小道の分かれ道へ来た。

小道の分かれ道は十字路になっており、一つは私が来た方向。もう一つは横に通ずる道でさっき巡回兵が通った道だ。
私は巡回兵の後をこっそりと追うことも考えたが、それ以上にこの十字路の更に奥にはなにがあるのかが気になった。もしかすると『プレイバイトン』に関する資料があるかもしれない。

私は結局悩んだ末にそのまま通路を直進し、更に奥に進むことにした。
道を進むと今度は道がカーブになっていった。そして程なくしてT字路に着いた。

巡回兵に見つからないよう、通路に顔をひょこっと出して、通路を確認した。
右側は松明を持っていないと探索は不可能なくらい暗い道で、左側は、同じような広さの鉄の柵で囲われた牢獄が、先が見えなくなるほどにずっと続いている大きなの道だった。

私は、右側の道も気になったがそれ以上に牢獄がずっと並んでいる左側の通路に純粋に興味が湧いた。この罪人の中に緑樹人るしゅじんが混じっていれば、なにかしらの手掛かりが得られるかもしれないし、この牢獄が何のために使われているのかがわかるだろう。
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