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第一章
デジャヴ
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デジャヴだ。
前世での出来事ではなく、今世でのデジャヴである。
私が小学生の時も似たようなことがあった。
あの時は鍋だったっけ…
部屋に鍋の箱がどんどん積み上がって、ある日崩れた。
ちょうど、母が彼氏その2と別れた頃である。
さみしさと焦りを、マルチ商法に傾倒する事で紛らわしているのかもしれない。
鍋の会社では販売成績が良い人は表彰されたり、広報誌に載ったりするらしかった。
部屋の隅に落ちていた広報誌をちらっと見たら、都内の有名な私立大学を出た主婦のインタビューが載っていた。
母や私とは違う人種だと思った。
こういうので活躍するのは、結局生まれつき地頭が良い人か、
元々の資産家のお遊びなのではないだろうか。
母は気づいていないのか。
本当は悟っているのに、気づかないふりをしているのか。
認めてしまえば、崩れてしまうのかもしれない。
小学生だった私は真っ向から鍋の仕事に反対して、母の逆鱗に触れた。
他人が指摘して、やたらに怒らせても、どうせ改めないとその時学んだ。
ちなみに半年もしたら、全然売れないと文句を言って自分からやめていた。
だから、今回も放っておこう。
貴族は宝石やアートを楽しむし、
私は美味しいモナカを食べるし、
母は今はアロマの気分なんだ。
みんな、何かを拠り所にして自分を慰めている。
今度は、少しは理解してみよう。
「ところで今日、初めてのお給料日よね!ちょっとアロマ買いすぎちゃって。今月ピンチだから少し貸しt…
「貸さねえし!!!」
無理無理!理解不能ですわ!
せめて余剰資金でやってくれよ。
まぁ私もそれフリマアプリで勝手に売り払ったんだけどね!
「お母さん…もっと自分に向いてる仕事しようよ。好きなことって何?」
「それは今アロマに夢中よー!」
「そのようだね…
じゃあ、自分の長所ってなんだと思う?」
そう問いかけると黙ってしまった。
私は続けた。
「お母さんの長所はね…」
母は息を呑んで、こちらを見つめた。
前世での出来事ではなく、今世でのデジャヴである。
私が小学生の時も似たようなことがあった。
あの時は鍋だったっけ…
部屋に鍋の箱がどんどん積み上がって、ある日崩れた。
ちょうど、母が彼氏その2と別れた頃である。
さみしさと焦りを、マルチ商法に傾倒する事で紛らわしているのかもしれない。
鍋の会社では販売成績が良い人は表彰されたり、広報誌に載ったりするらしかった。
部屋の隅に落ちていた広報誌をちらっと見たら、都内の有名な私立大学を出た主婦のインタビューが載っていた。
母や私とは違う人種だと思った。
こういうので活躍するのは、結局生まれつき地頭が良い人か、
元々の資産家のお遊びなのではないだろうか。
母は気づいていないのか。
本当は悟っているのに、気づかないふりをしているのか。
認めてしまえば、崩れてしまうのかもしれない。
小学生だった私は真っ向から鍋の仕事に反対して、母の逆鱗に触れた。
他人が指摘して、やたらに怒らせても、どうせ改めないとその時学んだ。
ちなみに半年もしたら、全然売れないと文句を言って自分からやめていた。
だから、今回も放っておこう。
貴族は宝石やアートを楽しむし、
私は美味しいモナカを食べるし、
母は今はアロマの気分なんだ。
みんな、何かを拠り所にして自分を慰めている。
今度は、少しは理解してみよう。
「ところで今日、初めてのお給料日よね!ちょっとアロマ買いすぎちゃって。今月ピンチだから少し貸しt…
「貸さねえし!!!」
無理無理!理解不能ですわ!
せめて余剰資金でやってくれよ。
まぁ私もそれフリマアプリで勝手に売り払ったんだけどね!
「お母さん…もっと自分に向いてる仕事しようよ。好きなことって何?」
「それは今アロマに夢中よー!」
「そのようだね…
じゃあ、自分の長所ってなんだと思う?」
そう問いかけると黙ってしまった。
私は続けた。
「お母さんの長所はね…」
母は息を呑んで、こちらを見つめた。
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