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第32話 ステータス貧乳
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結局のところ、先日の巨乳モテはレッドソウルの利権に食い込みたい貴族の差し金だった。
リィリス達が親を動かした事で彼等は下がらざるを得なくなり、最低限の利権にも関われなくなってしまったのだ。
そりゃあ最大手の貴族達の娘にケンカを売りゃあそうもなるわな。
正に虚乳モテ……
◆
と、言う訳で今日も俺の周りは貧乳しか群がらなかった。
遠くでオウルがキラキラした笑顔でサムズアップしている。
ヤツとは一度話し合いが必要と見える。
「ライト、少し時間を貰えるか?」
と、珍しくラインハルトが俺の所にやって来る。
「かまわんがどうしたよ」
「少し二人で話したい」
ふむ、何か相談事かねぇ。
◆
俺とラインハルトは屋上に来ていた。
日本だったら危険だからと屋上には入れないが、こっちの世界では誰でも入れる。
闘気レーダーで確認すると、入り口の辺りから複数人の反応がある。
多分リィリス達だろう。
「なぁライト、お前は王都からの呼び出しを受けたか?」
「呼び出し?」
一体何の事だ?
「受けてないのか? いや、父上が言っていたんだが、今国王陛下が優秀な貴族の師弟を王都に集めているって話をしていたんだ。お前は……認めたくは無いが闘気に関しては大人も認めるレベルの才能を持っている。だから呼ばれるんじゃないかって思ってな」
「お前はどうなんだ?」
「俺か? そうだな……それなりに優秀だとは思うが、お前みたいなヤツでも呼ばれないのなら俺程度は呼ばれないだろうな」
意外な自己評価だ。
ちょっと前のコイツじゃ考えられないな。
それとも、あの夜の恐怖がコイツを大人にしたのか。
「変な事を聞いて悪かったな」
そう言ってラインハルトは屋上を後にした。
一人残された俺は空を眺める。
「王都か」
思い出すのはあの日であった少女の顔。
「ラーシュ」
王都に呼ばれればアイツとも再開する事になるだろうな。
次会ったら、俺はアイツにどう接すればいいんだろうか。
アイツは婚約者と別れるって言ってたけど、本気だろうか?
もしアイツがそれを実行したら、俺はアイツと結婚しなきゃならないのか?
だってお姫様だしなぁ、もし俺が原因でそうなったとバレたら、全周囲から恨みを買うのは間違いない。
せっかく異世界に転生して貴族の子供に生まれたんだ。
どうせならこのまま貴族として楽勝人生を満喫したい。
けど冒険者にもあこがれる。俺のもう1つのチート能力【闘気の極み】の力で最強クラスの奥義である【闘気顕現】が使えるのはとんでもないアドバンテージだ。
いうなれば最初から聖剣を持ってスライムを狩る様なもんだからな。
Lv1でスライム狩りをする勇者ヤバ過ぎ。
……そういえば、スライム狩りで思い出したがコレまだ使ってなかったな。
俺は魔法の袋から小さな腕輪を取り出す。
その腕はには赤と青の小さな宝石が付いていて、青の宝石はリングの平面側に、赤の宝石はリングの側面に側面についていた。
そう、コレはVIPオークションでラーシュに頼んで落札してもらった戦闘力を測定するマジックアイテム、その名も【タレントセンサー】だ。
「気分転換に試してみるかな」
俺は付属の説明書きを取り出して中を確認する。
「えーと、射程5m以内、対象にリングの青い宝石を向けて赤い宝石を押すと相手の闘気と魔力が分かるか。ふむふむ結構簡単だな」
では早速使ってみるか。
と、言っても知り合いに使うとコレの正体がバレるし、外に出て魔物に使ってみるか。
◆
着替える為に一旦屋敷に帰る事にする。
制服を汚す訳にも行かないしな。
「ご主人様お帰りなさーい!!」
部屋へと戻ってきた俺をリップが出迎える。
校長がリップの保護を約束してくれたのだが、リップは俺の元にいる事を強く望んだ。
当然リィリス達は猛反対したが、リップの教育の為にも信頼出来る人間の傍で暮らした方が良いという校長の勧めで引き続き俺のペットとして暮らす事となった。
なんかすごい説明だが、事実なので仕方ない。
「ちょっと出かけてくるわ」
俺はメイドに命じて着替えを用意させる。
「私も付いていきたいです!!」
メイドがいなくなってから人型に戻ったリップが俺にチッパイを押し付けながらおねだりしてくる。
「こらこら、今着替えてるんだから抱きつかない」
「ええー、ペットと触れ合ってくださいよー」
リップは離れようとせずに俺の体に頬ずりしたりぺろぺろと舌でなめてくる。
ちょっと野生に戻り過ぎじゃね。
「遊んでくださいよー。でないと寂しくって死んじゃいますよー」
リップの指が俺の肌をまさぐり、耳元に息を吹きかけてくる。
俺は後ろを振り向く事もせずにリップの尻尾を撫でる。
「ふきゃん!?」
そのままクルリと半回転してリップを抱き寄せ、左腕で拘束。右手でリップの尻尾の根元を少し強めになぞってやる。
「ふにゅうぅぅぅん」
力の抜けたリップの耳の付け根に舌を這わせるとリップの口から断続的に吐息があふれ出す。
「あっ、はっ、はっ、はぁぁぁ……」
抵抗できなくなったリップを抱きながらベッドに倒れ込み、上から覆いかぶさってリップのシッポを大きくなぞる。
さらにリップをひっくり返し、服をめくっておなかを露出させた。
「やぁっ」
おなかが丸見えになって恥ずかしがるリップ。
だが俺は容赦なくリップの腹を撫でた。
「くぅぅぅん」
リップがおなかをなでられる度に体を震わせ手足の動きが弱まっていく。
何度も何度もおなかをなでられたリップは次第にトロンとした目つきになっていき、ドンドンまぶたが下がっていく。
「リップ、寝るなら変化しなさい」
「はーい……むにゅ」
おなかをなでられ続けたリップはついにまぶたを閉じて眠ってしまった。
ふふふふっ、所詮ペットなどおなかとアゴをなでられれば眠ってしまうもの。
それは異世界でも変わらぬのだ!!
と、言う訳で無事に着替えを終えた俺は町の外へと脱出に成功するのだった。
◆
ドーレンの町から離れた俺はどこに行こうか迷った。
というのも、レッカの遺跡は既に閉鎖されているので魔物狩りには使えない。
目的地が無い以上、タレントセンサーを使うにはそこらの野良魔物を探さなくてはならなくなる。
「しゃーない、ちょっくら探してみるか」
俺は全身を闘気の鎧で包んでから足に闘気を集中させ噴射する。
闘気ジェットだ。更に両手の先と背中からも闘気を噴射させ姿勢を安定させる。
さーて魔物はいるかなーっと?
闘気ジェットを調整してぐるりと回転していく。
「お?」
とある方向を向いた所で黒い塊を発見する。
どうやら複数の魔物がいるみたいだ。
丁度いい。魔物が多ければステータスのサンプルも多く手に入る。
俺は闘気ジェットを噴射して魔物達の居る場所へと向かった。
◆
「馬を守れ!! 敵を馬車に近づけるな!!」
魔物の群れの上空にやって来た俺は想定もしていなかった事態に遭遇していた。
重厚な鎧を着た騎士達と、魔物が戦っているのだ。
どうやら先ほどの黒い塊は彼等の乱戦の光景だったらしい。
様子を見るに人間側が不利か。
援護をするべきか? だが騎士が苦戦するような相手との戦いに、俺みたいな子供が混ざっても足手まといになるだけなのでは?
……でもなぁ、何かあの魔物弱そうなんだよな。なんつーか動きも単純だし攻撃も大振りだ。
これなら俺でもいけそうなんだが。
対する騎士達の方はと言うと……
「【闘気剣】!! ハァ!!」
剣に闘気を纏わせ、騎士が魔物に切りかかる。
騎士の攻撃を受けた魔物は真っ二つとはいかなかったものの、苦しそうなうめき声を上げる。
魔物は雄たけびを上げ、今度は自分の番だとばかりに騎士に逆襲する。
ああ、あれなら動きも遅いし避けられるだろう。
と、思ったのだが、何故か騎士はノロノロとした回避運動をして回避に失敗する。
おいおい、あれは避けられるだろう。
何やってんだ?
余りにもお粗末な戦いに我慢できなくなった俺は顔を布で隠して上空から魔物を襲撃する。
騎士に止めを刺そうと振りかぶっていた魔物に思いっきり蹴りをお見舞いする。
当然俺の闘気の一撃で魔物の頭部は粉砕。
そのまま手加減して魔物の胴体を蹴り、後ろの敵に向けて吹き飛ばす。
ととっ、魔物の返り血が飛んできたので血を被らないように慌てて回避する。
「な、何者だ!?」
俺に助けられた騎士が後ろから問いかけてくるが、俺は無視する。
ヘタに答えたら子供だとバレるからな。
魔物の中に飛び込み闘気を発動させる。
「【紅蓮……っ!」
【紅蓮顕現】を発動させようとして素性がバレるかもしれないと気付き思いとどまる。
こんな時の為に買っておいたミスリルのショートソードを抜き放ち、魔物に切りかかる。
闘気で速度を上げた俺の動きに魔物達は追いつけない。
すり抜けざまにショートソードが魔物達の体を切り裂いていく。
悲鳴を上げる魔物達。
なかなかの切れ味。けどやっぱり【紅蓮顕現】ほどの威力は無いな。
けど使っちまうとバレるし、どうするか……そうだ!
俺は手にしたミスリルのショートソードに闘気をこめる。
「【闘気剣】」
ショートショ-ドが闘気に包まれる。
「【闘気剣】だと!?」
「熟練の闘士でないと扱う事の出来ない技を使えるのか!?」
いや、あんたらの仲間も使ってたじゃん。
まぁいい。
俺は【闘気剣】で魔物に切りかかる。
狙うはさっきの騎士が【闘気剣】で攻撃した魔物だ。
「はっ!」
気合を入れて剣を振り下ろす。
すると俺の【闘気剣】は目の前の魔物を何の抵抗も無く切り裂いた。
「おお?」
予想外に弱い。
「馬鹿な! ハードベアーをああもたやすく!!」
ああ、今の魔物ハードベアーって言うんだ。
そういやここには魔物のステータスを見に来たんだった。
俺はハードベアーに向けて青い宝石を向け、赤い宝石のスイッチを押した。
すると一瞬ハードベアーに青い光点が灯ったと共に俺の視界に文字が浮かび上がる。
《闘気90》《魔力10》
ほほう、コレがステータスか。
俺は他の魔物を攻撃しつつステータスを確認していく。
ゴブリン《闘気7》《魔力4》
モップドッグ《闘気7》《魔力3》
ホブゴブリン《闘気9》《魔力4》
弱いな。ハードベアーだけ飛びぬけて強いのか。
念の為騎士達もスキャンしてみよう。
バレない様に魔物達のかげからちょいっと。
《闘気60》《魔力25》
《闘気42》《魔力33》
《闘気30》《魔力44》
《闘気36》《魔力32》
微妙な数値だ。
一番闘気が高いのはさっきの【闘気剣】の使い手で、二番目に強いのが馬車を守れって言ってた人か。この人は指揮官っぽいな。
で、残りが部下かな。
とりあえずハードベアーを全部倒せば後は子の人達だけでなんとかなるだろ。
俺は【闘気剣】でハードベアーをまとめて切り裂いていく。
ゴブリン達雑魚は無視だ。
「おお、なんと言う剣の冴え……」
騎士達が感激してこちらを見ている。
褒められるのは悪い気しないけど、お前等も戦えよ。
俺は最後のハードベアーを倒すと、ドーレンの町とは反対方向に向かって駆け出していった。
騎士達が何か言っているみたいだが、ザコくらいは自分でナントカしてくれ。
◆
戦線から離脱した俺は、遠く離れた岩陰から騎士達の様子を見守っていた。
彼等は無事に魔物を撃退して移動を再開する。
無事魔物の撃退に成功して何よりだ。
俺も見つからない様に気をつけて帰るかな。
◆
屋敷に戻った俺は、うたた寝から目覚めたリップの相手をしていた。
そしてふと気になってリップをスキャンしてみる。
《闘気3》《魔力30》
結構あるなぁ。リップは魔法特化型か。
「何ですかそれ?」
リップがタレントセンサーを興味深そうに見る。
「もしかしてマジックアイテムですか!?」
良くわかったな……ああそうか、もともとリップは強盗団の一員。
親の仕事でマジックアイテムを見た事があるのかもしれない。
「皆には秘密だぞ」
「リィリス様達にもですか?」
「ああ」
コレを手にい入れるまでの過程を知られたくないからな。
「分かりました!!」
何故かやたらと嬉しそうにリップが了解の返事をする。
ああ、そうだ。せっかくだからリップに俺のステータスを見てもらおう。
「使ってみたいか?」
「いいんですか!?」
めちゃくちゃいい反応である。
「いいか、ここをだな……」
俺はリップにタレントセンサーの使い方を教える。
「じゃあ使ってみろ」
「はい!! …………ご主人様? なんだか目の前に変な文字が浮かんできました」
「なんて書いてある?」
「分かりません」
もしかしてコイツ文字が読めないのか?
「じゃあコレにその文字を書いてくれ」
リップに紙とペン、それにインクを渡す。
読めなくてもトレスする事は出来るだろう。
とはいえ、リップにも読み書きを教えておいた方がよさそうだ。
校長に相談してみるかな。
「かけました!!」
「どれどれ……!?」
「どうかしましたか、ご主人様?」
リップが俺を見る。
「リップ、ここに書いてある数字は間違いないか? ここの数を間違えてないか?」
「んー?」
リップがもう一度タレントセンサーを発動させ俺のステータスを確認する。
「合ってますよ」
マジか。
リップが測定した俺のステータス。
その数値は……
「《闘気65535》《魔力10》だって……?」
リィリス達が親を動かした事で彼等は下がらざるを得なくなり、最低限の利権にも関われなくなってしまったのだ。
そりゃあ最大手の貴族達の娘にケンカを売りゃあそうもなるわな。
正に虚乳モテ……
◆
と、言う訳で今日も俺の周りは貧乳しか群がらなかった。
遠くでオウルがキラキラした笑顔でサムズアップしている。
ヤツとは一度話し合いが必要と見える。
「ライト、少し時間を貰えるか?」
と、珍しくラインハルトが俺の所にやって来る。
「かまわんがどうしたよ」
「少し二人で話したい」
ふむ、何か相談事かねぇ。
◆
俺とラインハルトは屋上に来ていた。
日本だったら危険だからと屋上には入れないが、こっちの世界では誰でも入れる。
闘気レーダーで確認すると、入り口の辺りから複数人の反応がある。
多分リィリス達だろう。
「なぁライト、お前は王都からの呼び出しを受けたか?」
「呼び出し?」
一体何の事だ?
「受けてないのか? いや、父上が言っていたんだが、今国王陛下が優秀な貴族の師弟を王都に集めているって話をしていたんだ。お前は……認めたくは無いが闘気に関しては大人も認めるレベルの才能を持っている。だから呼ばれるんじゃないかって思ってな」
「お前はどうなんだ?」
「俺か? そうだな……それなりに優秀だとは思うが、お前みたいなヤツでも呼ばれないのなら俺程度は呼ばれないだろうな」
意外な自己評価だ。
ちょっと前のコイツじゃ考えられないな。
それとも、あの夜の恐怖がコイツを大人にしたのか。
「変な事を聞いて悪かったな」
そう言ってラインハルトは屋上を後にした。
一人残された俺は空を眺める。
「王都か」
思い出すのはあの日であった少女の顔。
「ラーシュ」
王都に呼ばれればアイツとも再開する事になるだろうな。
次会ったら、俺はアイツにどう接すればいいんだろうか。
アイツは婚約者と別れるって言ってたけど、本気だろうか?
もしアイツがそれを実行したら、俺はアイツと結婚しなきゃならないのか?
だってお姫様だしなぁ、もし俺が原因でそうなったとバレたら、全周囲から恨みを買うのは間違いない。
せっかく異世界に転生して貴族の子供に生まれたんだ。
どうせならこのまま貴族として楽勝人生を満喫したい。
けど冒険者にもあこがれる。俺のもう1つのチート能力【闘気の極み】の力で最強クラスの奥義である【闘気顕現】が使えるのはとんでもないアドバンテージだ。
いうなれば最初から聖剣を持ってスライムを狩る様なもんだからな。
Lv1でスライム狩りをする勇者ヤバ過ぎ。
……そういえば、スライム狩りで思い出したがコレまだ使ってなかったな。
俺は魔法の袋から小さな腕輪を取り出す。
その腕はには赤と青の小さな宝石が付いていて、青の宝石はリングの平面側に、赤の宝石はリングの側面に側面についていた。
そう、コレはVIPオークションでラーシュに頼んで落札してもらった戦闘力を測定するマジックアイテム、その名も【タレントセンサー】だ。
「気分転換に試してみるかな」
俺は付属の説明書きを取り出して中を確認する。
「えーと、射程5m以内、対象にリングの青い宝石を向けて赤い宝石を押すと相手の闘気と魔力が分かるか。ふむふむ結構簡単だな」
では早速使ってみるか。
と、言っても知り合いに使うとコレの正体がバレるし、外に出て魔物に使ってみるか。
◆
着替える為に一旦屋敷に帰る事にする。
制服を汚す訳にも行かないしな。
「ご主人様お帰りなさーい!!」
部屋へと戻ってきた俺をリップが出迎える。
校長がリップの保護を約束してくれたのだが、リップは俺の元にいる事を強く望んだ。
当然リィリス達は猛反対したが、リップの教育の為にも信頼出来る人間の傍で暮らした方が良いという校長の勧めで引き続き俺のペットとして暮らす事となった。
なんかすごい説明だが、事実なので仕方ない。
「ちょっと出かけてくるわ」
俺はメイドに命じて着替えを用意させる。
「私も付いていきたいです!!」
メイドがいなくなってから人型に戻ったリップが俺にチッパイを押し付けながらおねだりしてくる。
「こらこら、今着替えてるんだから抱きつかない」
「ええー、ペットと触れ合ってくださいよー」
リップは離れようとせずに俺の体に頬ずりしたりぺろぺろと舌でなめてくる。
ちょっと野生に戻り過ぎじゃね。
「遊んでくださいよー。でないと寂しくって死んじゃいますよー」
リップの指が俺の肌をまさぐり、耳元に息を吹きかけてくる。
俺は後ろを振り向く事もせずにリップの尻尾を撫でる。
「ふきゃん!?」
そのままクルリと半回転してリップを抱き寄せ、左腕で拘束。右手でリップの尻尾の根元を少し強めになぞってやる。
「ふにゅうぅぅぅん」
力の抜けたリップの耳の付け根に舌を這わせるとリップの口から断続的に吐息があふれ出す。
「あっ、はっ、はっ、はぁぁぁ……」
抵抗できなくなったリップを抱きながらベッドに倒れ込み、上から覆いかぶさってリップのシッポを大きくなぞる。
さらにリップをひっくり返し、服をめくっておなかを露出させた。
「やぁっ」
おなかが丸見えになって恥ずかしがるリップ。
だが俺は容赦なくリップの腹を撫でた。
「くぅぅぅん」
リップがおなかをなでられる度に体を震わせ手足の動きが弱まっていく。
何度も何度もおなかをなでられたリップは次第にトロンとした目つきになっていき、ドンドンまぶたが下がっていく。
「リップ、寝るなら変化しなさい」
「はーい……むにゅ」
おなかをなでられ続けたリップはついにまぶたを閉じて眠ってしまった。
ふふふふっ、所詮ペットなどおなかとアゴをなでられれば眠ってしまうもの。
それは異世界でも変わらぬのだ!!
と、言う訳で無事に着替えを終えた俺は町の外へと脱出に成功するのだった。
◆
ドーレンの町から離れた俺はどこに行こうか迷った。
というのも、レッカの遺跡は既に閉鎖されているので魔物狩りには使えない。
目的地が無い以上、タレントセンサーを使うにはそこらの野良魔物を探さなくてはならなくなる。
「しゃーない、ちょっくら探してみるか」
俺は全身を闘気の鎧で包んでから足に闘気を集中させ噴射する。
闘気ジェットだ。更に両手の先と背中からも闘気を噴射させ姿勢を安定させる。
さーて魔物はいるかなーっと?
闘気ジェットを調整してぐるりと回転していく。
「お?」
とある方向を向いた所で黒い塊を発見する。
どうやら複数の魔物がいるみたいだ。
丁度いい。魔物が多ければステータスのサンプルも多く手に入る。
俺は闘気ジェットを噴射して魔物達の居る場所へと向かった。
◆
「馬を守れ!! 敵を馬車に近づけるな!!」
魔物の群れの上空にやって来た俺は想定もしていなかった事態に遭遇していた。
重厚な鎧を着た騎士達と、魔物が戦っているのだ。
どうやら先ほどの黒い塊は彼等の乱戦の光景だったらしい。
様子を見るに人間側が不利か。
援護をするべきか? だが騎士が苦戦するような相手との戦いに、俺みたいな子供が混ざっても足手まといになるだけなのでは?
……でもなぁ、何かあの魔物弱そうなんだよな。なんつーか動きも単純だし攻撃も大振りだ。
これなら俺でもいけそうなんだが。
対する騎士達の方はと言うと……
「【闘気剣】!! ハァ!!」
剣に闘気を纏わせ、騎士が魔物に切りかかる。
騎士の攻撃を受けた魔物は真っ二つとはいかなかったものの、苦しそうなうめき声を上げる。
魔物は雄たけびを上げ、今度は自分の番だとばかりに騎士に逆襲する。
ああ、あれなら動きも遅いし避けられるだろう。
と、思ったのだが、何故か騎士はノロノロとした回避運動をして回避に失敗する。
おいおい、あれは避けられるだろう。
何やってんだ?
余りにもお粗末な戦いに我慢できなくなった俺は顔を布で隠して上空から魔物を襲撃する。
騎士に止めを刺そうと振りかぶっていた魔物に思いっきり蹴りをお見舞いする。
当然俺の闘気の一撃で魔物の頭部は粉砕。
そのまま手加減して魔物の胴体を蹴り、後ろの敵に向けて吹き飛ばす。
ととっ、魔物の返り血が飛んできたので血を被らないように慌てて回避する。
「な、何者だ!?」
俺に助けられた騎士が後ろから問いかけてくるが、俺は無視する。
ヘタに答えたら子供だとバレるからな。
魔物の中に飛び込み闘気を発動させる。
「【紅蓮……っ!」
【紅蓮顕現】を発動させようとして素性がバレるかもしれないと気付き思いとどまる。
こんな時の為に買っておいたミスリルのショートソードを抜き放ち、魔物に切りかかる。
闘気で速度を上げた俺の動きに魔物達は追いつけない。
すり抜けざまにショートソードが魔物達の体を切り裂いていく。
悲鳴を上げる魔物達。
なかなかの切れ味。けどやっぱり【紅蓮顕現】ほどの威力は無いな。
けど使っちまうとバレるし、どうするか……そうだ!
俺は手にしたミスリルのショートソードに闘気をこめる。
「【闘気剣】」
ショートショ-ドが闘気に包まれる。
「【闘気剣】だと!?」
「熟練の闘士でないと扱う事の出来ない技を使えるのか!?」
いや、あんたらの仲間も使ってたじゃん。
まぁいい。
俺は【闘気剣】で魔物に切りかかる。
狙うはさっきの騎士が【闘気剣】で攻撃した魔物だ。
「はっ!」
気合を入れて剣を振り下ろす。
すると俺の【闘気剣】は目の前の魔物を何の抵抗も無く切り裂いた。
「おお?」
予想外に弱い。
「馬鹿な! ハードベアーをああもたやすく!!」
ああ、今の魔物ハードベアーって言うんだ。
そういやここには魔物のステータスを見に来たんだった。
俺はハードベアーに向けて青い宝石を向け、赤い宝石のスイッチを押した。
すると一瞬ハードベアーに青い光点が灯ったと共に俺の視界に文字が浮かび上がる。
《闘気90》《魔力10》
ほほう、コレがステータスか。
俺は他の魔物を攻撃しつつステータスを確認していく。
ゴブリン《闘気7》《魔力4》
モップドッグ《闘気7》《魔力3》
ホブゴブリン《闘気9》《魔力4》
弱いな。ハードベアーだけ飛びぬけて強いのか。
念の為騎士達もスキャンしてみよう。
バレない様に魔物達のかげからちょいっと。
《闘気60》《魔力25》
《闘気42》《魔力33》
《闘気30》《魔力44》
《闘気36》《魔力32》
微妙な数値だ。
一番闘気が高いのはさっきの【闘気剣】の使い手で、二番目に強いのが馬車を守れって言ってた人か。この人は指揮官っぽいな。
で、残りが部下かな。
とりあえずハードベアーを全部倒せば後は子の人達だけでなんとかなるだろ。
俺は【闘気剣】でハードベアーをまとめて切り裂いていく。
ゴブリン達雑魚は無視だ。
「おお、なんと言う剣の冴え……」
騎士達が感激してこちらを見ている。
褒められるのは悪い気しないけど、お前等も戦えよ。
俺は最後のハードベアーを倒すと、ドーレンの町とは反対方向に向かって駆け出していった。
騎士達が何か言っているみたいだが、ザコくらいは自分でナントカしてくれ。
◆
戦線から離脱した俺は、遠く離れた岩陰から騎士達の様子を見守っていた。
彼等は無事に魔物を撃退して移動を再開する。
無事魔物の撃退に成功して何よりだ。
俺も見つからない様に気をつけて帰るかな。
◆
屋敷に戻った俺は、うたた寝から目覚めたリップの相手をしていた。
そしてふと気になってリップをスキャンしてみる。
《闘気3》《魔力30》
結構あるなぁ。リップは魔法特化型か。
「何ですかそれ?」
リップがタレントセンサーを興味深そうに見る。
「もしかしてマジックアイテムですか!?」
良くわかったな……ああそうか、もともとリップは強盗団の一員。
親の仕事でマジックアイテムを見た事があるのかもしれない。
「皆には秘密だぞ」
「リィリス様達にもですか?」
「ああ」
コレを手にい入れるまでの過程を知られたくないからな。
「分かりました!!」
何故かやたらと嬉しそうにリップが了解の返事をする。
ああ、そうだ。せっかくだからリップに俺のステータスを見てもらおう。
「使ってみたいか?」
「いいんですか!?」
めちゃくちゃいい反応である。
「いいか、ここをだな……」
俺はリップにタレントセンサーの使い方を教える。
「じゃあ使ってみろ」
「はい!! …………ご主人様? なんだか目の前に変な文字が浮かんできました」
「なんて書いてある?」
「分かりません」
もしかしてコイツ文字が読めないのか?
「じゃあコレにその文字を書いてくれ」
リップに紙とペン、それにインクを渡す。
読めなくてもトレスする事は出来るだろう。
とはいえ、リップにも読み書きを教えておいた方がよさそうだ。
校長に相談してみるかな。
「かけました!!」
「どれどれ……!?」
「どうかしましたか、ご主人様?」
リップが俺を見る。
「リップ、ここに書いてある数字は間違いないか? ここの数を間違えてないか?」
「んー?」
リップがもう一度タレントセンサーを発動させ俺のステータスを確認する。
「合ってますよ」
マジか。
リップが測定した俺のステータス。
その数値は……
「《闘気65535》《魔力10》だって……?」
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そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
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転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
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「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界をスキルブックと共に生きていく
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神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
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若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
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