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第37話 迎撃・準備

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 タカヤは準備をしていた。
  ピーシェンとの大規模戦闘の準備だ。

  王の館に帰ってきたタカヤは増えたボーナスポイントでスキルを確認していた。
  それはカミーラから聞いたピーシェンの情報を聞いたからだ。
  ピーシェンの騎士はおおよそ300。
  カミーラの目算ではスクワイヤ240、ナイト57、ヘヴィナイト2、将軍1との事だった。
  この世界において騎士は圧倒的にスクワイヤが多く、ヘヴィナイトになるとほとんど居ない。
  将軍に至っては一人居れば多いという事実をタカヤはここで初めて聞いた。
  そう言う意味ではヘヴィナイト2、将軍1のピーシェンはなかなかの戦力といえる。

  圧倒的な数の差、だが数だけはどうやっても埋めようが無い。
  ゲームとは違う。圧倒的に不利なファーコミンに仕えようなんていう酔狂なフリーの元騎士なんて居る筈が無かった。
  だからタカヤはその差をスキルで埋めようと考えた。

  現在出せる戦力はヘヴィナイトに変身できるアリシア、それにナイトのカミーラ。あとはカミーラの部下のスクワイヤが10名。絶望的な戦力差だ。
  タカヤはこの数の差をいかにして覆すかに全神経を割いていた。
  タカヤが見ているのは索敵スキル、移動スキル、そして情報伝達スキルだった。
  敵と戦う以上、索敵能力は必須だった。敵の部隊の位置を察知し有利な場所で戦う為だ。
  そしてそれを可能とする為の移動スキル。アリシアのスキルと同じスキルを他の騎士達にもつけたい。
  移動範囲の広いユニットが有利なのはどのゲームでも一緒だ。
  そして敵が多方向から複数近づいてくる時の事を考え、情報を伝えるスキルも欲しい。
  そうして見つけたのは、【領域探知】スキルと【伝心】スキルだった。

 「カミーラに【速度上昇】で3P、【領域探知】と【伝心】はキングスキルだからそれぞれ10P、合計23P。あとカミーラの部下にも【速度上昇】を覚えさせるか? いや、町の守りも欲しい。全員を動かす訳には行かない」

  ボーナスポイントは有限だ。タカヤは慎重にスキルを探っていった。


  結果タカヤが選択したスキルは【速度上昇】【領域探知】【伝心】【傷薬作成】の4つだった。
  【傷薬作成】は【速度上昇】と共に一番足の速いスクワイヤに与える。回復補助専門の部下だ。
  アリシアとカミーラが戦いでダメージを負ったら、戦闘後部下が薬で傷を癒す。

 「回復役は必須だからな」

  スキルの詳細がわからない事でスキルの取得に消極的であったが、コレまでの戦いでボーナスポイントが45Pまで溜まっていた事から気になるスキルを使ってみる事にしたタカヤだった。

 「問題はこの薬がどの位効果があるかだな。さすがにゲームみたいに直ぐ治るとは思えんが、異世界だし俺達の世界よりは早く治ると信じよう」

  最低限の迎撃準備をしたタカヤは他に有益なスキルが無いかチェックする。
  攻撃力上昇、防御力上昇、拠点防衛、有益なスキルは多い。だがポイントは有限だ。
  このスキルを取得する前にもっと有益なスキルは無いか?
  このスキルは予想通りの効果を発揮できるだろうか?
  不確定要素を排除しつつ取得するスキルを選択していく。

  そして二つのキングスキルに辿り着いた。

 「【勧誘】と【緊急避難】?」

  それは、これからのタカヤの運命を決定づけたスキル達の名であった。
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