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第31話 エロス・寸止め

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「タカヤ様。まだ起きていらっしゃいますか?」

  カミーラの声がドアの外から聞こえる。

 (キキキキキタァーーーーーーーーーー!!)

 「あ、ああ。まだ起きてるにょろ」

  緊張のあまり言葉遣いがおかしくなっているがそれにも気付かない程タカヤは興奮していた。

 「失礼致します」

  そっとドアを開けてカミーラがタカヤの部屋に入ってくる。
  その姿は透け透けのネグリジェであった。

 「おっぱぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

  思わず声が出た。

 「きゃっ!」

  突然の奇声にカミーラが驚きの声を上げる。

 「しー、大きな声を出すと皆が起きてしまいますわ」

  カミーラに嗜まれて慌てて両手で口を塞ぐタカヤ。

 「タカヤ様、私タカヤ様にお礼をさせて頂く為に参りましたの」

  タカヤは口を塞いだまま頷く。

 「タカヤ様のお陰で私は弟を取り戻す事ができました。それだけではなく、この町までも開放して頂いて……本当になんとお礼を言えばよいのやら」

  カミーラはベッドに腰かけタカヤを上目遣いで見る。
  目は潤み、頬は赤く染まり、ネグリジェを大きく膨らませるオッパイはスケスケでバインバインでカミーラが身をくねらせる度ににゅるんにゅるんと二の腕からタカヤに助けを求める。

 「ですので、是非ともタカヤ様にお礼をさせてください」

 『カミーラ=リトレーナーの条件が一段階解除されました。カミーラ=リトレーナーとの接触条件が一部緩和されました。カミーラ=リトレーナーのステータスが上昇しました。キングLvが3から4にレベルアップしました。ボーナスポイントを10入手しました』


  更にカミーラが身を寄せる。
  カミーラの胸がタカヤに触れ、タカヤの理性がエレクトリックスパークする。

 (極薄スケスケネグリジェオッパイがポニョンポニョンでプルンプルンでタプンタプンで御座いますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!)

  カミーラが全身をベッドに乗せ、タカヤの正面に這う様に滑り込む。
  まるで大蛇の様に這う動きはタカヤに自らの体を押し付けたがっている様だった。
  いや、実際押し付けられた。
  指が、腕が、オッパイが、太ももが、頬が、髪が、足が、タカヤの全身に触れる。
  既にタカヤのブロードソードは抜刀されており、密着しているカミーラにもタカヤの剣が己を切り裂こうとしているのが伝わっている筈だった。
  にもかかわらずカミーラはタカヤを恐れる所か更に体を密着させてきた。甘い吐息が耳に掛かる。
  ゾクリと体を震わせると、その動きで密着したカミーラオッパイが頬ずりをしてくる。
  まるでオッパイが独立した生き物になったかのようだ。

 「タカヤ様」

  甘える様な、誘うような掠れた声でカミーラが囁いた。
  頬に右手が、太ももに左手が当てられ、ギリギリ触れるか触れないかの微妙な力加減でなぞられてゆく。

 「おおおおぉぉぉぉ……」

  背筋が粟立った。

 「タカヤ様」

  少しだけ高くなったカミーラの言葉が彼女の感情の高まりを教えてくれる。

 「このカミーラをタカヤ様の好きにして下さい。私は貴方様に全てを捧げる覚悟で御座います」

  タカヤは衣服から脱出した。

 「アァウゥス!ツィエェェェン!!!」

  ドイツ語で脱衣を意味する言葉を叫びながらタカヤが己を拘束する服から解放される。
  0.05秒でパンツ一丁となったタカヤはカミーラのオッパイに向けて決死の戦いを挑んだ。
  その時だった。

 「ストップです!!」

 「え?」

  突然の静止によって狙いが逸れ、タカヤはあらぬ方向に突撃してしまう。

 「ひゃぁぁぁぁぁあん!?」

  そこはカミーラの太ももと太ももの間だった。
  タカヤの鼻先に非常に触り心地の良い布地が当たる。

 「モゴ?」

 「ひゃう! タ、タカヤ様、そこは…………」

  先ほどまでと違い、カミーラが切羽つまった声を上げる。
  タカヤが突っ込んだのはカミーラの股間だった。
  目測が狂ったタカヤは、カミーラのオッパイではなく股間に突撃してしまったのだ。
  タカヤはとりあえず匂いを嗅いだ。

 「タカヤ様、離れてください」

  後ろから引っ張られてあっという間に楽園から追放されるタカヤ。
  タカヤを引っ張ったのはアリシアだ。
  カミーラに借りたのだろうか? かなりエロエロなネグリジェ姿である。
  しかもカミーラの方が胸が大きいのでネグリジェにスキマができてアリシアの谷間がはっきりと見える。
  ネグリジェで透けていても、スキマから見える部分は別腹なのだ。

 「おぉう」

  思わず声を出してアリシアの谷間を凝視するタカヤ。
  アリシアはタカヤに凝視されている事を自覚し、頬を赤く染めながらもカミーラからタカヤを引き離す。
  アリシアのオッパイがタカヤの二の腕と背中に押し付けられる。
  風呂に入った後なのだろうか、石鹸の匂いがタカヤを更に興奮させた。

 「カミーラ、何のつもりですか! タカヤ様はお疲れなのです」

  カミーラを糾弾するアリシア。しかしカミーラは何処吹く風といった具合にタカヤへ己の体をアピールする。

 「ええ、だからお疲れのタカヤ様を癒して差し上げようと思ったの。私のマッサージでね」

 「「マッサージ!?」」

  タカヤとアリシアが異口同音の声を上げる。
  最もそのトーンは正反対だ。

 (えー? エロエロな事じゃないの? ここでただのマッサージとか期待はずれにも程があるだろ!!)

 「そうよ、だから貴方は出ていきなさい。貴方に見張られていたらタカヤ様もリラックスできないでしょう?」

  カミーラに窘められたアリシアがしどろもどろになる。

 「そ、それは…………ってそれならそんないやらしい恰好をする必要なんて無いじゃないですか!! タカヤ様だって男の方なんですよ!!」

 (むしろ積極的にして欲しいです)

 「あら、殿方を見た目でも楽しませるのは淑女の嗜みよ。それに貴方だって同じ服を着ているじゃない」

  そう、アリシアもまたカミーラと同じネグリジェを着ていた。カミーラは情熱的な赤をアリシアは純白の白を、どちらも大変エロかった。

 「これは貴方が用意したんじゃないですか!!」

  アリシアの反論にコロコロと笑うカミーラ。

 「あらごめんなさい。私にとってはこの程度恥ずかしがる程のものでもないから」

 (この服なら恥ずかしがって出て来れないと思ったのだけれど、この子を侮っていたわね。もっと凄いの渡すんだったわ)

  カミーラが内心で己の計算違いを悔やむ。

 「と、とにかくタカヤ様にマッサージをするのなら私がします!! カミーラは弟さんと寝てあげてください!! せっかく助け出したのだからその方が弟さんも喜ぶでしょう!!」

  しかしその言葉を受けてカミーラの様子が変わる。
  タカヤは部屋の中にピリッとした空気が広がった錯覚を覚える。

 「そんな事を言って、本当はタカヤ様の寵愛を独り占めしたいだけじゃないの?」

 「な、何を?」

 「今のファーコミンの王はタカヤ様なのでしょう? だったら王の寵愛を得た者がファーコミンの王妃になる。そうは思わない?」

 「そ、それは……」

  カミーラの言葉は間違いではない。ファーコミンの王であるタカヤが最も愛した女性が后となるのは当然の理屈だ。

 「でも私はそれを求めないわ。誰がタカヤ様の后になってもかまわない。私はただタカヤ様にお礼がしたいだけなのよ。私と、弟と、この町の恩人であるタカヤ様に」

  ため息を吐く様に、うっとりと語るカミーラ。

 「……そうなの?」

 「ええ」

  躊躇いなく肯定するカミーラ。

 「分かったわ。そういう事なら……」

  渋々受け入れるアリシア。

 「タカヤ様、何かありましたらすぐに呼んでください」

 「ああ。分かったよ」

  アリシアが部屋を出て行く。
  残ったのはタカヤとカミーラだけだ。
  二人の耳にはアリシアが離れて行く足音だけが聞こえていた。
  そしてアリシアの足音が消えた頃になって……

「ではタカヤ様、私をお好きになさってください」

  カミーラが肩をはだけた。

 「え? い、いいいいいの?」

  言葉こそ躊躇しているが、その手はカミーラに触れる寸前だ。

 「勿論です。お疲れのタカヤ様には、私の体でたっぷりと疲れを癒してくださいませ」

  タカヤは躊躇いと理性とモラルを全力で放り投げカミーラに抱きついた。

 (やった! これで私もタカヤ様の力でヘヴィナイトになれる!!)

  タカヤを誘う事に成功したカミーラの本心はそれであった。
  アリシアをヘヴィナイトたらしめる力の源。
  それはアリシアの中から現れたタカヤだとカミーラは確信していた。
  そしてそれは正しい。

 (ヘヴィナイトの力を手に入れれば二度とクルスを敵に奪われる事もない)

  弟を守る為、その為の力が欲しい。
  カミーラがタカヤに近づいた理由の根源がここにあった。
  そしてその理由ゆえにカミーラの目論見は崩れ去った。

 「いっただっきまぁぁぁぁぁぁぁぁぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

  歓喜の声が一瞬で絶叫に変わる。
  カミーラに抱きついたタカヤが悲鳴を上げて苦しみだしたのだ。

 「え? な、何?」

 『カミーラ=リトレーナーは条件を満たしていない為、これ以上の接触行為を認められません』

  犯人はいつものマシンボイスだった。

 「タカヤ様!!」

  タカヤの悲鳴を聞いたアリシアがオッパイを揺らしながら部屋に飛び込んでくる。

 「カミーラ! 一体タカヤ様に何をしたの!?」

 「し、知らないわよ! 私に触れた途端、急に悲鳴を上げて苦しみ始めたのよ!!」

 「知らないじゃないでしょ!!」

 「ホントに知らないのよ!!」

  アリシア達が口論する姿が遠ざかる。

 (ああ、コレがあるのを忘れてた。くそぉぉぉ、目の前にオッパイがあるのに。あんなにブルンブルン揺れてるのに触る事が出来ないなんて…………絶対、絶対エロい事が出来るようになってやるからなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

  薄れ行く意識の中、タカヤは強く決意した。
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