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第19話 鉱山・襲撃
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「それでは皆さんよろしいですか?」
小声で話すアリシアに対し、その場に集まった総勢43人の老兵達が頷く。
タカヤ達は鉱山近くの森に潜んでいた。
その目的は鉱山に囚われた人々の救出である。
「まずオレとアリシアが突入して門を破壊する。そして敵の騎士を引き付けている間に爺さん達は捕まっている人達を救出して欲しい」
老兵達が武器を握り締めて頷く。
「この作戦で一番重要なのは捕まっている人達を救い出す事だ。それさえ出来れば最悪鉱山の奪回は出来なくても良い」
「鉱山を奪い返さなくても良いんですかい?」
老兵の一人がタカヤに確認してくる。
「ああ。鉱山は後でもう一度攻め込めるが捕まっている人達が人質に取られたらどうしようもない。だから作戦通りに頼む」
「分かりました。作戦通りですね」
老兵達覚悟を決めた表情で頷く。
「よし、行くぞ!」
◆
『キングの搭乗を確認。ナイトライド、スタンバイ』
何度も聞いてすでに慣れて来たマシンボイス。
『へヴィーナイト・アリシアセットアップ。キングゲーマー・ゴーライド』
「行くぞアリシア!」
「はい!」
ヘヴィナイトへと変化したアリシアが鉱山へと駆け出す。
鉱山の入り口である門の前にオーラが立ち上る。
騎士が居たのだ。
「さすがに警戒してるわな。けどこっちは!」
「はい! タカヤ様が居ます!」
オーラの中から現れたナイトボディが敵を探す。
だが視界の中には先ほどまで居た筈のアリシアの姿が無い。
「何処に隠れた!?」
「ここだよ!」
声は上から聞こえてきた。
声を聞いた騎士が上を見ると、その目に映ったのは目前まで迫った刃の先端であった。
敵騎士の兜に剣が深々と突き刺さる。
騎士は数度痙攣した後、全身の力を失って地に崩れ落ちた。
タカヤはすかさず剣を抜いて門を破壊する。
戦いはスピードが命だ。
足で門の近くの大きな建物を踏み潰す、蹴り飛ばす。
破壊された建物のスキマから兵士達が吹き飛び地面に落ちる。
顔を動かさずに視線だけで後方を確認すると走って近づいてくる老兵達の姿が見える。
タカヤは彼等の壁を減らす為に。腕に固定された盾を取り外し屈みながら雪かきの要領で走り出した。
迫り来る盾に建物が兵士が掻きあげられ、そしてかき集めた雪を捨てるように遠くへと吹き飛ばされた。
「随分と好き勝手にやってくれたな!」
タカヤ達の前に緑の騎士が現れる。更にその後ろには茶色の小さな騎士、スクワイヤクラスが10体ほど控えていた。
「ヘヴィナイトといえどこの数の騎士を前に勝てるかな? お前達やってしま……え?」
緑の騎士が号令をあげる前に飛び込んできたアリシアによって一体が踏み潰される。
その勢いを利用して首元に剣が突き刺さる。
飛び込んだ勢いを消さないよう斜め前方に向かって跳躍、鉱山の壁を蹴ってバク転しながら落下地点に居たスクワイヤクラスに剣を突き刺す。
「な、なな……」
アリシアの異常な戦闘機動に混乱する緑の騎士。
瞬く間に仲間を2人殺されたスクワイヤクラスの騎士達の動きに怯えが混じる。
その隙を逃すタカヤでなはい。
再び盾を外すとフリスビーの要領で盾をスクワイヤ達に投げつけ吹き飛ばす。
スクワイヤ達の視線が吹きとばされた仲間に移った瞬間を狙って一番近い位置にいた敵の首を刎ねる。
スクワイヤ達が気がついた時にはまたしても仲間が死んでいる。
この時点で彼等は恐慌状態に陥っていた。
彼等は我先にと入り口に向けて逃げ出す。
「おい貴様等! 誇り高きピーシェンの騎士が逃げるとは何事だ!! 敵前逃亡は即死罪だ……ごぷっ」
緑の騎士の胸から純白の剣が生えている。
タカヤは逃げる味方に気をとられていた緑の騎士に突き刺した剣を引き抜いて逃げたスクワイヤ達を追いかけた。
その場に残ったのは、地に臥した緑色の鉄塊だけだった。
◆
「危ない危ない」
無事逃げるスクワイヤ達をしとめたタカヤは再び鉱山の奥に向かう。
「何も逃げる相手を殺す必要は無かったのでは?」
アリシアが非難がましい声を上げる。
「おいおい、このまま逃げられたら爺さん達と顔を付き合わせるところだったんだぞ」
「あっ!」
タカヤに言われて漸く気付くアリシア。
「そうでした」
「訓練したって言っても爺さん達は戦闘経験の無い素人だ。可能な限り戦わせたくない」
「そうですね。そこまで考えて騎士を相手にしていたなんて、さすがタカヤ様です!」
「いやいやいや」
といっても、それはタカヤにとってそう難しい事ではなかった。
今のタカヤの行動はゲームで言えば要人救出の為の強襲作戦に近い。それも救出チームは別に居るので自分がする事は陽動だけで良い。だが予想外に敵が弱いかった為、老兵達のサポートも考えて戦いを進めていた。
「それにしてもオリビアの作った武器はすごいな。切れ味が以前戦った時よりも明らかに良くなってる」
「はい、私も驚いています」
今のアリシアの武装はオリビアが作ったものだった。
と、言ってもアリシアのナイトボディ用に作ったものではない。
そんな大きな剣を作る事はオリビアの工房では不可能だ。
オリビアが作ったのは人間大の剣と盾だった。
理屈は不明だが、騎士が装備した武具はナイトフォームに変身すると連動して変化するらしい。
ちなみに老兵達の長槍と大盾もオリビアとエルが作った物だ。
「まだ藍色の騎士が居ないな」
「はい、それに他にも騎士が居る可能性もあります」
「どうかなぁ? ここは砦とかって訳でもないし、そこまで重要とも思えないんだよな」
「そうでしょうか?」
「だって騎士って貴重なんだろ? もうナイトクラスを2体、それにスクワイヤを10体倒した。確認されている藍色の騎士を合わせると13体。そんなに要るのか?」
「そう言われれば」
話を続ける間もタカヤは盾で建物を破壊して行く。
鉱山を更地にする勢いだ。
「そもそもこんな所に兵士よりも強い騎士を13体も置く理由が分からない。脱走者に対しては兵士で十分だし、騎士もスクワイヤが2、3人居れば十分だろ。そもそもファーコミンはピーシェンに負けて騎士も居ない訳だし」
「……そう……ですね」
そこでタカヤは自分の失言に気付いた。アリシアに対してファーコミンが負けたと言ってしまったのだ。
(しまったー! これじゃ好感度ダウンじゃねーか! なんかいい話題はないか? 話題話題話題……そうだ!)
「つ、つまりさ、ここには鉱山以外の目的があるから騎士達が居るんじゃないかなって思ったのさ」
「鉱山以外ですか?」
「例えば、この地下に迷宮があるとかさ」
「……迷宮、ですか?」
アリシアが黙り込む。その沈黙にタカヤはアリシアを怒らせてしまったのではないかと心配になる。
「そういえば聞いた事があります。わが国の何処かに迷宮があると。それにウルザも良く城を留守にしていました。そのウルザがこのような所に居たと言う事は……」
「……」
アリシアの言葉に今度はタカヤが落ち込む。
(えー、まーたウルザさんですかー。今はオレがアリシアの中に居るのにさー)
「どうかされましたかタカヤ様?」
突然黙り込んだタカヤをアリシアが気遣う。
「……ん? あ、いやなんでもない。確かこの鉱山の最下層には魔物がいるって話だから、やっぱりそうなのかなって」
「魔物が、やはりそ……タカヤ様。来ました」
アリシアが警戒の声を上げる。
気が付けばアリシアの視線の先には藍色の騎士が居た。
いや、それだけではなかった。藍色の騎士の横にもう一体の騎士が居たのだ。
「あれは……青い騎士?」
「そ、そんな……」
アリシアの引きつった声が聞こえる。
「どうしたアリシア?」
「嘘でしょ?」
「アリシア!?」
青い騎士がアリシアに近づいてくる。
タカヤは距離を保とうとアリシアを下がらせるが、何故かアリシアの動きが鈍い。
「何で貴方が?」
「久しいなアリシア」
青い騎士の発した声は女のものだった。
「カミーラ……」
その名はアリシアのかつての友の名だった。
小声で話すアリシアに対し、その場に集まった総勢43人の老兵達が頷く。
タカヤ達は鉱山近くの森に潜んでいた。
その目的は鉱山に囚われた人々の救出である。
「まずオレとアリシアが突入して門を破壊する。そして敵の騎士を引き付けている間に爺さん達は捕まっている人達を救出して欲しい」
老兵達が武器を握り締めて頷く。
「この作戦で一番重要なのは捕まっている人達を救い出す事だ。それさえ出来れば最悪鉱山の奪回は出来なくても良い」
「鉱山を奪い返さなくても良いんですかい?」
老兵の一人がタカヤに確認してくる。
「ああ。鉱山は後でもう一度攻め込めるが捕まっている人達が人質に取られたらどうしようもない。だから作戦通りに頼む」
「分かりました。作戦通りですね」
老兵達覚悟を決めた表情で頷く。
「よし、行くぞ!」
◆
『キングの搭乗を確認。ナイトライド、スタンバイ』
何度も聞いてすでに慣れて来たマシンボイス。
『へヴィーナイト・アリシアセットアップ。キングゲーマー・ゴーライド』
「行くぞアリシア!」
「はい!」
ヘヴィナイトへと変化したアリシアが鉱山へと駆け出す。
鉱山の入り口である門の前にオーラが立ち上る。
騎士が居たのだ。
「さすがに警戒してるわな。けどこっちは!」
「はい! タカヤ様が居ます!」
オーラの中から現れたナイトボディが敵を探す。
だが視界の中には先ほどまで居た筈のアリシアの姿が無い。
「何処に隠れた!?」
「ここだよ!」
声は上から聞こえてきた。
声を聞いた騎士が上を見ると、その目に映ったのは目前まで迫った刃の先端であった。
敵騎士の兜に剣が深々と突き刺さる。
騎士は数度痙攣した後、全身の力を失って地に崩れ落ちた。
タカヤはすかさず剣を抜いて門を破壊する。
戦いはスピードが命だ。
足で門の近くの大きな建物を踏み潰す、蹴り飛ばす。
破壊された建物のスキマから兵士達が吹き飛び地面に落ちる。
顔を動かさずに視線だけで後方を確認すると走って近づいてくる老兵達の姿が見える。
タカヤは彼等の壁を減らす為に。腕に固定された盾を取り外し屈みながら雪かきの要領で走り出した。
迫り来る盾に建物が兵士が掻きあげられ、そしてかき集めた雪を捨てるように遠くへと吹き飛ばされた。
「随分と好き勝手にやってくれたな!」
タカヤ達の前に緑の騎士が現れる。更にその後ろには茶色の小さな騎士、スクワイヤクラスが10体ほど控えていた。
「ヘヴィナイトといえどこの数の騎士を前に勝てるかな? お前達やってしま……え?」
緑の騎士が号令をあげる前に飛び込んできたアリシアによって一体が踏み潰される。
その勢いを利用して首元に剣が突き刺さる。
飛び込んだ勢いを消さないよう斜め前方に向かって跳躍、鉱山の壁を蹴ってバク転しながら落下地点に居たスクワイヤクラスに剣を突き刺す。
「な、なな……」
アリシアの異常な戦闘機動に混乱する緑の騎士。
瞬く間に仲間を2人殺されたスクワイヤクラスの騎士達の動きに怯えが混じる。
その隙を逃すタカヤでなはい。
再び盾を外すとフリスビーの要領で盾をスクワイヤ達に投げつけ吹き飛ばす。
スクワイヤ達の視線が吹きとばされた仲間に移った瞬間を狙って一番近い位置にいた敵の首を刎ねる。
スクワイヤ達が気がついた時にはまたしても仲間が死んでいる。
この時点で彼等は恐慌状態に陥っていた。
彼等は我先にと入り口に向けて逃げ出す。
「おい貴様等! 誇り高きピーシェンの騎士が逃げるとは何事だ!! 敵前逃亡は即死罪だ……ごぷっ」
緑の騎士の胸から純白の剣が生えている。
タカヤは逃げる味方に気をとられていた緑の騎士に突き刺した剣を引き抜いて逃げたスクワイヤ達を追いかけた。
その場に残ったのは、地に臥した緑色の鉄塊だけだった。
◆
「危ない危ない」
無事逃げるスクワイヤ達をしとめたタカヤは再び鉱山の奥に向かう。
「何も逃げる相手を殺す必要は無かったのでは?」
アリシアが非難がましい声を上げる。
「おいおい、このまま逃げられたら爺さん達と顔を付き合わせるところだったんだぞ」
「あっ!」
タカヤに言われて漸く気付くアリシア。
「そうでした」
「訓練したって言っても爺さん達は戦闘経験の無い素人だ。可能な限り戦わせたくない」
「そうですね。そこまで考えて騎士を相手にしていたなんて、さすがタカヤ様です!」
「いやいやいや」
といっても、それはタカヤにとってそう難しい事ではなかった。
今のタカヤの行動はゲームで言えば要人救出の為の強襲作戦に近い。それも救出チームは別に居るので自分がする事は陽動だけで良い。だが予想外に敵が弱いかった為、老兵達のサポートも考えて戦いを進めていた。
「それにしてもオリビアの作った武器はすごいな。切れ味が以前戦った時よりも明らかに良くなってる」
「はい、私も驚いています」
今のアリシアの武装はオリビアが作ったものだった。
と、言ってもアリシアのナイトボディ用に作ったものではない。
そんな大きな剣を作る事はオリビアの工房では不可能だ。
オリビアが作ったのは人間大の剣と盾だった。
理屈は不明だが、騎士が装備した武具はナイトフォームに変身すると連動して変化するらしい。
ちなみに老兵達の長槍と大盾もオリビアとエルが作った物だ。
「まだ藍色の騎士が居ないな」
「はい、それに他にも騎士が居る可能性もあります」
「どうかなぁ? ここは砦とかって訳でもないし、そこまで重要とも思えないんだよな」
「そうでしょうか?」
「だって騎士って貴重なんだろ? もうナイトクラスを2体、それにスクワイヤを10体倒した。確認されている藍色の騎士を合わせると13体。そんなに要るのか?」
「そう言われれば」
話を続ける間もタカヤは盾で建物を破壊して行く。
鉱山を更地にする勢いだ。
「そもそもこんな所に兵士よりも強い騎士を13体も置く理由が分からない。脱走者に対しては兵士で十分だし、騎士もスクワイヤが2、3人居れば十分だろ。そもそもファーコミンはピーシェンに負けて騎士も居ない訳だし」
「……そう……ですね」
そこでタカヤは自分の失言に気付いた。アリシアに対してファーコミンが負けたと言ってしまったのだ。
(しまったー! これじゃ好感度ダウンじゃねーか! なんかいい話題はないか? 話題話題話題……そうだ!)
「つ、つまりさ、ここには鉱山以外の目的があるから騎士達が居るんじゃないかなって思ったのさ」
「鉱山以外ですか?」
「例えば、この地下に迷宮があるとかさ」
「……迷宮、ですか?」
アリシアが黙り込む。その沈黙にタカヤはアリシアを怒らせてしまったのではないかと心配になる。
「そういえば聞いた事があります。わが国の何処かに迷宮があると。それにウルザも良く城を留守にしていました。そのウルザがこのような所に居たと言う事は……」
「……」
アリシアの言葉に今度はタカヤが落ち込む。
(えー、まーたウルザさんですかー。今はオレがアリシアの中に居るのにさー)
「どうかされましたかタカヤ様?」
突然黙り込んだタカヤをアリシアが気遣う。
「……ん? あ、いやなんでもない。確かこの鉱山の最下層には魔物がいるって話だから、やっぱりそうなのかなって」
「魔物が、やはりそ……タカヤ様。来ました」
アリシアが警戒の声を上げる。
気が付けばアリシアの視線の先には藍色の騎士が居た。
いや、それだけではなかった。藍色の騎士の横にもう一体の騎士が居たのだ。
「あれは……青い騎士?」
「そ、そんな……」
アリシアの引きつった声が聞こえる。
「どうしたアリシア?」
「嘘でしょ?」
「アリシア!?」
青い騎士がアリシアに近づいてくる。
タカヤは距離を保とうとアリシアを下がらせるが、何故かアリシアの動きが鈍い。
「何で貴方が?」
「久しいなアリシア」
青い騎士の発した声は女のものだった。
「カミーラ……」
その名はアリシアのかつての友の名だった。
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