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第136話 勇者、神剣にお願いする
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「お久しぶりですわ主様!」
人の姿へと変身した神剣ミカガミノツルギは、俺の胸へと飛び込んできた。
そしてまるで猫の様に体全体を俺に擦り付けてくる。
まるで動物がな縄張りを主張するかの如く。
ただし全裸で。
「あー、久しぶりなのは良いけど、とりあえず服を着てくれ」
としか言えなかった。
さすがに本体が剣だとしても、今は人の姿をしているのだから。
◆
「改めましてお久しぶりです主様!」
キュウさんの侍女が用意した着物チックな衣装を着たミカガミノツルギが、再び俺に抱き着かんと飛び込んでくる。
「おっとそこまでです!」
だが今度の突撃は俺の前に飛び降りて来た陰に阻まれる。
うん、さっき屋敷の柱に突き刺さった聖剣フェルクシオンだ。
「あら邪魔なナマクラが居ますわね」
「それはこちらのセリフです。魔王も倒せない神剣さんはお帰り下さい!」
「あら倒せないなんて言っていませんわよ? 寧ろ貴女こそ自分が選ばれた存在だと勘違いしているのではなくて?」
なんか聖剣と神剣が女の争いを繰り広げているんだが……
「それよりも、何か俺に伝えたかった事があるんじゃないのか?」
このままでは再びフェルクシオンとミカガミノツルギによる伝説の剣対決が始まりそうだったので、俺は早々に軌道を修正する。
「あらそうでしたわ」
気を取り直したミカガミノツルギはフェルクシオンを無視すると俺に向き直って言った。
「ミカドの血族ですが、生き残りの姫は他にも居ますわよ」
「マジで!?」
このタイミングでミカガミノツルギが人の姿になったのでそうだったら良いなーとは思っていたのだが、本当にそう言って貰えるととても嬉しい。凄く嬉しい!
「あ、でもまたババァとか無いよね?」
「さぁ、わたくしに分かるのは血族の女がいると言う事くらいです」
うわぁー確率1/2!! 若いかババァの二択かよ!!
まぁ若すぎても困るんだが。
「と、ともかく見つかっていない姫が居る事が分かったのはありがたい。その子を探して……」
「結婚されるんですか?」
と、クロワさんが聞いてきた。
ええと、どうしよう?
ババァが嫌だからって残った姫と結婚するってのは失礼な話だよなぁ。
願わくばその姫様がミカガミノツルギを抜く事が出来ると助かるんだけど……
いや待てよ?
「なぁ、ちょっと頼みたい事があるんだが……」
俺はミカガミノツルギにある事を耳打ちする。
「あのさ、その姫が見つかったら、わざと抜かれてくれないか?」
そう、俺が考えたのはミカガミノツルギにわざと抜かれて貰う事だ。
この方法ならその姫が新たなミカドになるので、望んでいない相手に結婚を強要する必要もなくなるし、俺もババァと結婚しなくて済む。
皆が幸せになれる妙案である。
「……だ、駄目ですよそんなの! ズルじゃありませんか!」
しかし俺の提案をミカガミノツルギはダメだと突っぱねる。
「そこを何とか!」
「そんな事をしたらわたくしの沽券に関わります! わたくしは選定の神剣でもあるのですよ!」
「でも普段ミカドを決める時は神剣を抜いたりしないんだろ?」
「それでもです! というか本来は私を抜くのが義務なんです! 人間達が色々理由をつけて私を抜かなくても良いルールを勝手に作っただけですー!」
そうだったのか。だが俺も諦めるわけには行かない。
ババァと結婚させられるかどうかの瀬戸際なんだ。
「頼むって、なっ、この通り!」
「ですからぁ……いえ、そうですね……」
と、ミカガミノツルギは何かを思いついたのか、己の顎に手をやって考え出す。
「本来なら許される事ではありませんが、わたくしを抜いた主様のお願いなら特別に抜け道を用意してもよいかもしれませんね」
「おお、助かる!」
「ただし! これは限りなく反則に近い行為です。ですので相応の罰則を受けて頂きますがよろしいですか?」
「罰則?」
「ええ、ですが痛い事ではありませんのでご安心ください」
「まぁ、俺に出来る事なら。それで、どんな罰則なんだ?」
俺が罰則の内容を聞くと、ミカガミノツルギは唇の前に人差し指を立ててにこやかに笑う。
「それは事が終わってからお教えしますわ」
うう、後が怖いなぁ。
けどこれもシルファリアを救う為。
仮にも神剣なんだからそうそう酷い事は要求してこないだろう。
「うふふ」
し、信じてるからな?
人の姿へと変身した神剣ミカガミノツルギは、俺の胸へと飛び込んできた。
そしてまるで猫の様に体全体を俺に擦り付けてくる。
まるで動物がな縄張りを主張するかの如く。
ただし全裸で。
「あー、久しぶりなのは良いけど、とりあえず服を着てくれ」
としか言えなかった。
さすがに本体が剣だとしても、今は人の姿をしているのだから。
◆
「改めましてお久しぶりです主様!」
キュウさんの侍女が用意した着物チックな衣装を着たミカガミノツルギが、再び俺に抱き着かんと飛び込んでくる。
「おっとそこまでです!」
だが今度の突撃は俺の前に飛び降りて来た陰に阻まれる。
うん、さっき屋敷の柱に突き刺さった聖剣フェルクシオンだ。
「あら邪魔なナマクラが居ますわね」
「それはこちらのセリフです。魔王も倒せない神剣さんはお帰り下さい!」
「あら倒せないなんて言っていませんわよ? 寧ろ貴女こそ自分が選ばれた存在だと勘違いしているのではなくて?」
なんか聖剣と神剣が女の争いを繰り広げているんだが……
「それよりも、何か俺に伝えたかった事があるんじゃないのか?」
このままでは再びフェルクシオンとミカガミノツルギによる伝説の剣対決が始まりそうだったので、俺は早々に軌道を修正する。
「あらそうでしたわ」
気を取り直したミカガミノツルギはフェルクシオンを無視すると俺に向き直って言った。
「ミカドの血族ですが、生き残りの姫は他にも居ますわよ」
「マジで!?」
このタイミングでミカガミノツルギが人の姿になったのでそうだったら良いなーとは思っていたのだが、本当にそう言って貰えるととても嬉しい。凄く嬉しい!
「あ、でもまたババァとか無いよね?」
「さぁ、わたくしに分かるのは血族の女がいると言う事くらいです」
うわぁー確率1/2!! 若いかババァの二択かよ!!
まぁ若すぎても困るんだが。
「と、ともかく見つかっていない姫が居る事が分かったのはありがたい。その子を探して……」
「結婚されるんですか?」
と、クロワさんが聞いてきた。
ええと、どうしよう?
ババァが嫌だからって残った姫と結婚するってのは失礼な話だよなぁ。
願わくばその姫様がミカガミノツルギを抜く事が出来ると助かるんだけど……
いや待てよ?
「なぁ、ちょっと頼みたい事があるんだが……」
俺はミカガミノツルギにある事を耳打ちする。
「あのさ、その姫が見つかったら、わざと抜かれてくれないか?」
そう、俺が考えたのはミカガミノツルギにわざと抜かれて貰う事だ。
この方法ならその姫が新たなミカドになるので、望んでいない相手に結婚を強要する必要もなくなるし、俺もババァと結婚しなくて済む。
皆が幸せになれる妙案である。
「……だ、駄目ですよそんなの! ズルじゃありませんか!」
しかし俺の提案をミカガミノツルギはダメだと突っぱねる。
「そこを何とか!」
「そんな事をしたらわたくしの沽券に関わります! わたくしは選定の神剣でもあるのですよ!」
「でも普段ミカドを決める時は神剣を抜いたりしないんだろ?」
「それでもです! というか本来は私を抜くのが義務なんです! 人間達が色々理由をつけて私を抜かなくても良いルールを勝手に作っただけですー!」
そうだったのか。だが俺も諦めるわけには行かない。
ババァと結婚させられるかどうかの瀬戸際なんだ。
「頼むって、なっ、この通り!」
「ですからぁ……いえ、そうですね……」
と、ミカガミノツルギは何かを思いついたのか、己の顎に手をやって考え出す。
「本来なら許される事ではありませんが、わたくしを抜いた主様のお願いなら特別に抜け道を用意してもよいかもしれませんね」
「おお、助かる!」
「ただし! これは限りなく反則に近い行為です。ですので相応の罰則を受けて頂きますがよろしいですか?」
「罰則?」
「ええ、ですが痛い事ではありませんのでご安心ください」
「まぁ、俺に出来る事なら。それで、どんな罰則なんだ?」
俺が罰則の内容を聞くと、ミカガミノツルギは唇の前に人差し指を立ててにこやかに笑う。
「それは事が終わってからお教えしますわ」
うう、後が怖いなぁ。
けどこれもシルファリアを救う為。
仮にも神剣なんだからそうそう酷い事は要求してこないだろう。
「うふふ」
し、信じてるからな?
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