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第115話 勇者、会議の後にチベスナ顔で見られる
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「これより、国家連合会議を開催いたします」
ハジメデ王国の仕切りによって極秘の国際会議が開催される。
本来ならファブリズ【第三王子】の婚姻の直後に行われるはずだったその会議は、ファブリズ王子が突如謎の病によって倒れた事で無期延期となった。
もっとも、この無期延期はそう遠くないうちにファブリズ王子の健康上の問題で婚約破棄になる訳だが、その事を知っているのは現状俺とハイジアン王子の二人だけだ。
「では各国間での同盟についての詳細な条件ですが……」
会議が進み、条件面でのすり合わせが始まる。
しかしこの時各国の大使が注目していたのは、司会であるハジメデ王国の貴族ではなく、隣国の第二王子であり、ファブリズの凶行によって命の危険に晒されたジンク王子だった。
「……以上が有事の際に各国が負担する予算配分となります。意義のある方は?」
司会の発言が終わった後に、短い沈黙が訪れる。
皆ジンク王子の発言を待っているのだ。
彼はファブリズ王子によって命を脅かされた。国家間の関係において、他国の王子に襲い掛かると言う事は、宣戦布告に等しい蛮行である。
しかも今回のジンク王子の来訪目的は表向きはファブリズ王子の結婚を祝福する為。
そして本来の目的は各国間での非戦同盟を結成する為だ。
どちらの意味においてもファブリズの行いは両国間の関係を破滅的な状況とするに十分すぎる愚行。
大事な会議の前にそんな行いを許してしまったハジメデ王国は、ツギノ王国の同意を得る為にどんな不平等な条件であっても結ばねばならない。
その筈だった。
「……」
だというのに、ジンク王子は何も言葉を発しなかった。
「意義のある方はいらっしゃらないようですので、条件面に関しての同意を頂けたものとします」
結局、ジンク王子は会議が終わるまで一度も異議を申し立てる事は無かった。
◇
「一体どうした事だ⁉ 何故ジンク王子はハジメデ王国に譲歩を迫らなかったのだ⁉」
各国の大使達は想定外の終幕に困惑していた。
彼らはジンク王子がハジメデ王国に譲歩を迫り、ハジメデ王国が負い目から譲歩した瞬間を狙ってツギノ王国だけに譲歩するのは平等ではない、我が国にも譲歩するべきだろうと責めるつもりだったのだ。
しかし結果は真逆であり、ジンク王子が発言しない事で、「我が国があえて譲歩を求める事を我慢しているのに、よもや貴公らが譲歩を強請るような真似はすまいな?」と言外に脅されている様に感じたのだ。
結局、ジンク王子の言葉を待っていた各国の大使達は、彼が何も言わなかった為に自らも言葉を発する事が出来ないまま会議を終えてしまった。
「結果としてはハジメデ王国の仕切りのまま会議は終わってしまった。これではツギノ王国はハジメデ王国に味方したのと同じではないか」
大使の一人の発言に、別の大使がハッとなる。
「まさかあの凶行は仕込みか⁉」
その発言に周囲に居た大使達が振り返る。
「どういう事だ⁉」
「そのままの意味だ! ツギノ王国は初めからハジメデ王国と繋がっていたのだ! でなければ王子の凶行などという異常な醜聞が起きる筈もあるまい!?」
「言われてみれば……」
あまりにも衝撃的な内容が現実に起きた為、各国の大使達はそれが仕込みではないのかという当然考えるべき疑問に思い至らなかった事に愕然となる。すいませんねぇ、実はアレ仕込みではないんですよ。
「そうだ、常識的に考えてそんな事が起こる訳がない!」
すいません、起こっちゃったんですよ。アレホントに常識が無いバカだったんで。
だがそんな真相を知らない彼等は自分達の発見した驚愕の真実に次々と憶測を重ねてゆく。
「おそらくハジメデ王国とツギノ王国は会議に横やりが入らない様に意図的に醜聞を起こす事を考えたのだ。そして我々がその醜聞を利用しようとタイミングを計るであろう事を利用し、会議をつつがなく終える事を計画したのだ!」
「なんという事だ!我々は既にハメられていたのか!」
誰一人としてその衝撃の事実(笑)に疑問を抱く事無くハジメデ王国とツギノ王国の恐るべき連携に驚愕する。
考えすぎだお前等。
「まさかその為に自分達の王子達を傷つけ合わせるとは……ではファブリズ王子のこれまでの素行の悪さも仕込みだったのか⁉」
おいおい、なんかファブリズのアレっぷりまで仕込み説が出て来たぞ。
やめろお前等、必死で貴族の御付きの振りをして場に紛れ込んでる俺を笑い殺す気か。
「さすがは勇者を最初に呼び出した国、という訳か」
なんか知らんが大使達はようやく納得がいったのか、それ以上騒ぐ事をやめて考え込み始める。
なんだもう終わりか。このコント結構面白かったんだが。
「はぁ、この件をどうやって陛下に説明するべきか……」
「不平等な条件にならなかっただけマシか……」
会議において何一つ有意義な結果を得る事が出来なかったという不甲斐ない事実を、自分達の王に報告しなければいけない憂鬱に溜息を吐きながら、彼らは肩を落として帰路へと就くのだった。
◆
「という訳で、会議は無事終了。第二王子のハイジアン王子が王位を継ぐ事が決定し、そのハイジアン王子からレイリィの結婚は白紙、政略結婚でレイリィが望まない相手と結婚されられない様に手を回してくれる事になった」
会議場であったレイリィの館から戻って来た俺は、エアリア達を集めて事のあらましを説明していた。
「めでたしめでたしですね」
自身が政略結婚をさせられそうになったサリアは、レイリィの結婚が白紙になった事を我が事の様に喜ぶ。
「ハイジアン王子と手を結んだから、秘密裏にレイリィと会う事は黙認してもらえる事になったよ。今後のハジメデ王国との関係に関してはこれから詰めていく予定だ。悪いんだけど、サリアにシルファリア、それにクロワさんにはそこら辺の条件面の打ち合わせに同行してくれないかな? 俺だけだと貴族との交渉には不安だからさ」
「はい! 喜んで協力させて頂きます!」
「うむ、任せろ。魔族流の交渉術をみせてやる!」
「ええ、お任せください。お飾りの皇帝でしたが、トウヤさんのお役に立つべく頑張らせて頂きます!」
おいおいシルファリア、魔族流の交渉って何する気だ? 交渉(物理)とか簡便してくれよ。
「私達はパスね。政治の事は分からないし。私は引き続き逆召喚の研究をする事にするわ」
「そうですね。私も移住したばかりの人々の不安を取り除く為に神の教えを広めなければいけません。適材適所、政治に関しては皆さんにお任せしましょう」
エアリアとミューラは政治に関しては完全にノータッチを決め込み、逆召喚魔法の研究とイナカイマの安定に専念するつもりの様だ。
正直そっちにも集中して欲しいから助かる。
「でもよくあんな事件を納める事が出来たわね。どんな魔法を使って王子様をなだめた訳?」
エアリアは会議が無事終わったという政治的な事よりも、俺がどうやってジンク王子の協力を取り付けたかの方が気になったらしい。
「ああ、簡単さ。前に手に入れた財宝の要らないヤツをジンク王子にあげたんだよ」
「一体何を差し上げたんですか? 一国の王子が国のメンツを放り出しても構わない財宝なんて想像もつきませんが……」
「べつに大したものじゃないさ。絵とか装飾品を山程譲っただけだよ。確かサバルの絵画とか、マサイラ朝のなんとかとか……」
「「「え?」」」
と、なぜかサリア達が声をそろえてこちらを見る。
「ま、まさかサバルの絵画ですか……?」
「うん、確かそれの幻の新作とか言ってた」
「っ⁉」
サリアが絶句する。
「お、おい。いまマサイラ朝とか言ったな? マサイラ朝のなんだって?」
「えっと、凄い綺麗な状態の装飾品とか言ってたぞ」
「っ⁉」
次いでシルファリアが硬直する。
「ええと……いろいろとか仰りましたけど、もしかしてカバンチャの彫刻とかあったりしました?」
クロワさんがなんとも言えない微妙な表情で聞いてくる。
「あー、そういえばそんなんもあるって叫んでたな」
「……」
あ、黙った。
他にもサリア達はポツポツと作品の作者らしい名前を聞いてきたので、俺は先日のジンク王子達の会話から聞き覚えのある名前を思い出してそれに答えていた。
そしてその答えを聞く度に、サリア達の目が驚きから微妙な感じの無表情になっていく。
あ、そうか。あの表情どこかで見た事あると思ったら、チベットスナギツネの表情に似てるんだ。略してチベスナ顔。
「ねぇ、なんでサリア達あんなに驚いてるの? もしかして金目のモノだったりするの?」
後ろでエアリアとミューラがボソボソと小声で会話をしている。
「ええと、私も詳しくは知らないんですが、教会に居た頃によく寄付をしてくださった貴族の方が嬉しそうにサバルの絵画を手にれたとおっしゃっていたので、おそらくはかなりの値打ち物だと……」
うむむ? もしかして俺はとんでもない品をぽーんとくれてやってしまったのだろうか?
なんか聞くのが怖いなぁ。
「もしかして気軽に出さなかった方が良かったのかな?」
「今更遅いわよ!」
エアリアが呆れた様子で俺を叱る。
「そうですね……もう既に譲ってしまった後ですからね」
サリアが絞り出す様に掠れた声をだす。そんなにショックやったんか。
「あー、沢山あったからなぁ、べつにちょっと位譲っても問題ないかなーって思ったんだが」
「「「「「全部見せて!」ください!」」」見せろ!」
エアリア達が凄い剣幕で俺につかみかかって来る。怖ぇよ。
「わ、分かった分かった」
こうして、俺はこれまでゲットしてきたお宝をエアリア達に見せる事になったのだった。
こりゃあレイリィの所に行くのはもちっと先になりそうだな。
ハジメデ王国の仕切りによって極秘の国際会議が開催される。
本来ならファブリズ【第三王子】の婚姻の直後に行われるはずだったその会議は、ファブリズ王子が突如謎の病によって倒れた事で無期延期となった。
もっとも、この無期延期はそう遠くないうちにファブリズ王子の健康上の問題で婚約破棄になる訳だが、その事を知っているのは現状俺とハイジアン王子の二人だけだ。
「では各国間での同盟についての詳細な条件ですが……」
会議が進み、条件面でのすり合わせが始まる。
しかしこの時各国の大使が注目していたのは、司会であるハジメデ王国の貴族ではなく、隣国の第二王子であり、ファブリズの凶行によって命の危険に晒されたジンク王子だった。
「……以上が有事の際に各国が負担する予算配分となります。意義のある方は?」
司会の発言が終わった後に、短い沈黙が訪れる。
皆ジンク王子の発言を待っているのだ。
彼はファブリズ王子によって命を脅かされた。国家間の関係において、他国の王子に襲い掛かると言う事は、宣戦布告に等しい蛮行である。
しかも今回のジンク王子の来訪目的は表向きはファブリズ王子の結婚を祝福する為。
そして本来の目的は各国間での非戦同盟を結成する為だ。
どちらの意味においてもファブリズの行いは両国間の関係を破滅的な状況とするに十分すぎる愚行。
大事な会議の前にそんな行いを許してしまったハジメデ王国は、ツギノ王国の同意を得る為にどんな不平等な条件であっても結ばねばならない。
その筈だった。
「……」
だというのに、ジンク王子は何も言葉を発しなかった。
「意義のある方はいらっしゃらないようですので、条件面に関しての同意を頂けたものとします」
結局、ジンク王子は会議が終わるまで一度も異議を申し立てる事は無かった。
◇
「一体どうした事だ⁉ 何故ジンク王子はハジメデ王国に譲歩を迫らなかったのだ⁉」
各国の大使達は想定外の終幕に困惑していた。
彼らはジンク王子がハジメデ王国に譲歩を迫り、ハジメデ王国が負い目から譲歩した瞬間を狙ってツギノ王国だけに譲歩するのは平等ではない、我が国にも譲歩するべきだろうと責めるつもりだったのだ。
しかし結果は真逆であり、ジンク王子が発言しない事で、「我が国があえて譲歩を求める事を我慢しているのに、よもや貴公らが譲歩を強請るような真似はすまいな?」と言外に脅されている様に感じたのだ。
結局、ジンク王子の言葉を待っていた各国の大使達は、彼が何も言わなかった為に自らも言葉を発する事が出来ないまま会議を終えてしまった。
「結果としてはハジメデ王国の仕切りのまま会議は終わってしまった。これではツギノ王国はハジメデ王国に味方したのと同じではないか」
大使の一人の発言に、別の大使がハッとなる。
「まさかあの凶行は仕込みか⁉」
その発言に周囲に居た大使達が振り返る。
「どういう事だ⁉」
「そのままの意味だ! ツギノ王国は初めからハジメデ王国と繋がっていたのだ! でなければ王子の凶行などという異常な醜聞が起きる筈もあるまい!?」
「言われてみれば……」
あまりにも衝撃的な内容が現実に起きた為、各国の大使達はそれが仕込みではないのかという当然考えるべき疑問に思い至らなかった事に愕然となる。すいませんねぇ、実はアレ仕込みではないんですよ。
「そうだ、常識的に考えてそんな事が起こる訳がない!」
すいません、起こっちゃったんですよ。アレホントに常識が無いバカだったんで。
だがそんな真相を知らない彼等は自分達の発見した驚愕の真実に次々と憶測を重ねてゆく。
「おそらくハジメデ王国とツギノ王国は会議に横やりが入らない様に意図的に醜聞を起こす事を考えたのだ。そして我々がその醜聞を利用しようとタイミングを計るであろう事を利用し、会議をつつがなく終える事を計画したのだ!」
「なんという事だ!我々は既にハメられていたのか!」
誰一人としてその衝撃の事実(笑)に疑問を抱く事無くハジメデ王国とツギノ王国の恐るべき連携に驚愕する。
考えすぎだお前等。
「まさかその為に自分達の王子達を傷つけ合わせるとは……ではファブリズ王子のこれまでの素行の悪さも仕込みだったのか⁉」
おいおい、なんかファブリズのアレっぷりまで仕込み説が出て来たぞ。
やめろお前等、必死で貴族の御付きの振りをして場に紛れ込んでる俺を笑い殺す気か。
「さすがは勇者を最初に呼び出した国、という訳か」
なんか知らんが大使達はようやく納得がいったのか、それ以上騒ぐ事をやめて考え込み始める。
なんだもう終わりか。このコント結構面白かったんだが。
「はぁ、この件をどうやって陛下に説明するべきか……」
「不平等な条件にならなかっただけマシか……」
会議において何一つ有意義な結果を得る事が出来なかったという不甲斐ない事実を、自分達の王に報告しなければいけない憂鬱に溜息を吐きながら、彼らは肩を落として帰路へと就くのだった。
◆
「という訳で、会議は無事終了。第二王子のハイジアン王子が王位を継ぐ事が決定し、そのハイジアン王子からレイリィの結婚は白紙、政略結婚でレイリィが望まない相手と結婚されられない様に手を回してくれる事になった」
会議場であったレイリィの館から戻って来た俺は、エアリア達を集めて事のあらましを説明していた。
「めでたしめでたしですね」
自身が政略結婚をさせられそうになったサリアは、レイリィの結婚が白紙になった事を我が事の様に喜ぶ。
「ハイジアン王子と手を結んだから、秘密裏にレイリィと会う事は黙認してもらえる事になったよ。今後のハジメデ王国との関係に関してはこれから詰めていく予定だ。悪いんだけど、サリアにシルファリア、それにクロワさんにはそこら辺の条件面の打ち合わせに同行してくれないかな? 俺だけだと貴族との交渉には不安だからさ」
「はい! 喜んで協力させて頂きます!」
「うむ、任せろ。魔族流の交渉術をみせてやる!」
「ええ、お任せください。お飾りの皇帝でしたが、トウヤさんのお役に立つべく頑張らせて頂きます!」
おいおいシルファリア、魔族流の交渉って何する気だ? 交渉(物理)とか簡便してくれよ。
「私達はパスね。政治の事は分からないし。私は引き続き逆召喚の研究をする事にするわ」
「そうですね。私も移住したばかりの人々の不安を取り除く為に神の教えを広めなければいけません。適材適所、政治に関しては皆さんにお任せしましょう」
エアリアとミューラは政治に関しては完全にノータッチを決め込み、逆召喚魔法の研究とイナカイマの安定に専念するつもりの様だ。
正直そっちにも集中して欲しいから助かる。
「でもよくあんな事件を納める事が出来たわね。どんな魔法を使って王子様をなだめた訳?」
エアリアは会議が無事終わったという政治的な事よりも、俺がどうやってジンク王子の協力を取り付けたかの方が気になったらしい。
「ああ、簡単さ。前に手に入れた財宝の要らないヤツをジンク王子にあげたんだよ」
「一体何を差し上げたんですか? 一国の王子が国のメンツを放り出しても構わない財宝なんて想像もつきませんが……」
「べつに大したものじゃないさ。絵とか装飾品を山程譲っただけだよ。確かサバルの絵画とか、マサイラ朝のなんとかとか……」
「「「え?」」」
と、なぜかサリア達が声をそろえてこちらを見る。
「ま、まさかサバルの絵画ですか……?」
「うん、確かそれの幻の新作とか言ってた」
「っ⁉」
サリアが絶句する。
「お、おい。いまマサイラ朝とか言ったな? マサイラ朝のなんだって?」
「えっと、凄い綺麗な状態の装飾品とか言ってたぞ」
「っ⁉」
次いでシルファリアが硬直する。
「ええと……いろいろとか仰りましたけど、もしかしてカバンチャの彫刻とかあったりしました?」
クロワさんがなんとも言えない微妙な表情で聞いてくる。
「あー、そういえばそんなんもあるって叫んでたな」
「……」
あ、黙った。
他にもサリア達はポツポツと作品の作者らしい名前を聞いてきたので、俺は先日のジンク王子達の会話から聞き覚えのある名前を思い出してそれに答えていた。
そしてその答えを聞く度に、サリア達の目が驚きから微妙な感じの無表情になっていく。
あ、そうか。あの表情どこかで見た事あると思ったら、チベットスナギツネの表情に似てるんだ。略してチベスナ顔。
「ねぇ、なんでサリア達あんなに驚いてるの? もしかして金目のモノだったりするの?」
後ろでエアリアとミューラがボソボソと小声で会話をしている。
「ええと、私も詳しくは知らないんですが、教会に居た頃によく寄付をしてくださった貴族の方が嬉しそうにサバルの絵画を手にれたとおっしゃっていたので、おそらくはかなりの値打ち物だと……」
うむむ? もしかして俺はとんでもない品をぽーんとくれてやってしまったのだろうか?
なんか聞くのが怖いなぁ。
「もしかして気軽に出さなかった方が良かったのかな?」
「今更遅いわよ!」
エアリアが呆れた様子で俺を叱る。
「そうですね……もう既に譲ってしまった後ですからね」
サリアが絞り出す様に掠れた声をだす。そんなにショックやったんか。
「あー、沢山あったからなぁ、べつにちょっと位譲っても問題ないかなーって思ったんだが」
「「「「「全部見せて!」ください!」」」見せろ!」
エアリア達が凄い剣幕で俺につかみかかって来る。怖ぇよ。
「わ、分かった分かった」
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