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第109話 勇者、第二王子と取引をする
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「答えてもらおうか、勇者トウヤよ」
俺の正体を察したハジメデ王国第二王子ハイジアン王子は、不祥事を起こした己の弟の凶行を止め、更にはここへと連れてきた真意を問い正す。
「はて、何か勘違いしていませんか? 俺はあくまで唯の通りがかりですよ」
まぁ素直に答える義理なんてないんだけどね。
「あくまでシラを切る気か。いやいいだろう。それならば通りがかりの若者よ、君の真意を教えてもらおう。貴族同士の諍いなど君にはなんの係わり合いもない事だろう?」
こちらの正体に関して問い詰める事を早々に止めたハイジアン王子は俺の目的を知る事だけに焦点を絞って会話を再開する。
なかなかにロジカルな人物だ。
正直王家の中で一番まともなのではないだろうか?
だがまぁ交渉しやすいというのはありがたい事だ。
「いえね、たまたまあの町に足を運びましたら、なにやら領主様が結婚するとの事ではないですか。幼い領主様が結婚されるとはよほどお似合いの若様かなと思っていたのですが、まさか町で乱暴狼藉の限りを尽くしていた横暴なオッサン貴族がお相手ご本人とは思いもよりませんでしたよ」
「……乱暴狼藉の限り?」
ハイジアン王子がこめかみを引くつかせて俺の言葉を確認してくる。
「ええ、町の料理屋に入れば大声で不味いと料理に文句をこぼし、買い物に出かければ店員客かまわず女性の尻を揉みしだき、街中を歩けば近づく人々が自分から避けていく程に町の皆さんから嫌われていらっしゃいました」
「……」
ハイジアン王子が俯いて眉間のしわを指で押さえる。
正直気持ちは分かる。
「……王家の、復権がかかっているこの大事な時期に……民の反感を買う様な行為を? それも挙式をした直後に?」
おっと、そのあたりまだ情報が届いてないみたいだな。
誤解が無いようにちゃんと教えてさしあげないとね。
「いえ、まだ結婚はされていないみたいですよ」
「何っ? アレの挙式は既に終わっている筈だぞ!?」
やはり延期になった事を知らないみたいだな。
「実は結婚式が予定されていた日からしばらくの間、嵐によって式が中断されておりまして、ようやく嵐が去ったと思ったら式場が壊れていたそうです。ですので現在は式場の修復に大忙しだとか」
「……まだ、挙式も上げていない状態で醜態を晒し続けた? では周辺国の招待客達は……?」
俺の報告で隣国の王子が襲われた事を聞いていたはずなのにハイジアン王子はその質問をしてくる。
それは困惑するあまりその事に気付いていないのか、それとも確認のためか、はたまた一縷の望みをかけてか。
まぁ素直に教えちゃうよ。
「嵐の後ですからね、それに式場の修復もそれほど掛からないとの事でしたので、もちろん皆さんバラサの町で待機しておいででしたよ」
「……」
あ、机に突っ伏した。
うん分かったぞ。この王子苦労性だ。
「な、なんという事だ。せっかく結婚していない王位継承権の高いアレを有力貴族とつける事で他国へのけん制に出来ると思ったと言うのに……」
むむ? 結婚していない? あのアホ王子が? どう見てもオッサンだし、てっきり他の貴族娘も沢山妻にしていると思ったんだが。その辺の情報がないのよな。
それにレイリィとの結婚で他国とのけん制になる?
確かに大穀倉地帯の主となったレイリィと結婚すれば王家の力は増すだろうけど、レイリィは武力に秀でた私兵を持っている訳でもないはずだが。
まぁここは素直に聞いてみよう。
「それは一体どういう意味ですか?」
「……いいだろう、寧ろ君に聞いてもらった方が都合が良いかもしれん」
都合が良い?
なんか嫌な予感がするなぁ。
「無駄な前置きを省いて説明すれば、レイリィ嬢との結婚は手っ取り早く王家の権威を回復する手段だ。あの式典で勇者逆召喚術式の真相が暴露された件で、各国の王家が勇者を使い捨てにしようとしていたと民に知られ、多くの王族の威信が揺らいだ。その中でも勇者召喚の盟主である我が国の受けた被害は最も大きかった」
ああ、俺が拡声魔法で王都中に聞こえる様に喋ったからな。
それにしては他国にも広まるのが早かったのが気になるが。
他国のスパイにしても自国にどれだけのダメージになるか分からない案件だからな。
ハジメデ王国だけに大ダメージが及んで自分達が軽症で済むとは限らない。
あ、いや、そういえば王都の中には人間以外の種族のスパイがいたんだっけ。
多種族はともかく、間違いなく魔族のスパイはこの話題を言いふらしそうだもんな。
そう考えれば、情報が早く広く流布した事も納得が行く。
魔族は空が飛べるし、スパイだから通信魔法で情報を迅速に広げる事ができた事だろう。
「このまま王家の求心力が下がったままでは、他国から侵略を受けた際に兵を集める事が出来なくなる。既に動きのある国が複数居たからな。まぁ中には他国に併合された弱国の民が勇者を持て遊んだ報いだと反乱を起こしてそれどころではないみたいだが」
くくく、と苦笑するハイジアン王子。
どうやら復興に失敗した国の領土を取り込みすぎた国が内側から食い破られているみたいだ。
「潰れた国の中には新興の小国も多くあった。連中は歴史の浅さゆえに勇者召喚の儀式を教えて貰えていなかった。だからこそこの件は我等を攻め立てる絶好の機会なのだよ」
完全に自業自得ですやん。
「そんな中で生き残った小国が連合を組んでいるとの情報もある。世界を救った勇者に報いる為の聖戦だという耳障りの良い大義を振りかざしているそうだ。君はどう思う?」
俺に振るなよ。
「知った事ではありませんね。どうせその国も勇者の名前を利用したいだけでしょ?」
ハイジアン王子が大きく頷く。
「その通りだ。だが民は違う。民はそこまで考えない。騙された勇者の為という言葉に騙される。そうなれば国防の為の軍の徴集に集る民は減り、勇者を救う為の正義の軍隊を王都に喜んで招き入れるだろう。勇者を騙した国の民がどうなるかも考えずに」
普通に考えれば悪の国の民は悪の民って考えますよね。戦争の基本は坊主憎けりゃ袈裟まで憎いだと歴史の先生も言っていた。国の上層部が戦争を起こしていて、善良な民が居ても相手国からは子供に至るまで邪悪な国だとみなされるのが戦争というものだと。
まぁこれは俺もこの目で見てきましたわ。たくさんね、
「それゆえに、大領主の町を支配すればその町の民を軍として使える。更にバラサの町は大穀倉地帯だ、兵站の補充が非常に容易になる。前線に多くの兵を養える食料があれば、兵の維持も容易となり周辺国もおいそれと攻める事は出来なくなるからな」
つまりレイリィとの結婚は王家の権威を増やす事よりも、他国との戦争をしない為の準備をする事が重要だったのか。
「けど現状は逆効果と」
ふたたびハイジアン王子が眉間に指を強く押し当てる。
「……他国との戦争をしない為の結婚だったというのに、あのアホの所為で戦争の火種どころか燃え盛る大火が出来てしまった!!」
ですよねー、隣国の王子に怪我させるなんて宣戦布告に等しい行為だもんね!
「民の謎の失踪によって生産力も税も減っているわが国では、この大問題を穏便に収めるだけの財力もない!」
なんか謎の失踪のところを強調された気がしたけど気付かなかった事にしよう。
「困りましたねぇ」
「ああ、困っているのだ!」
成る程、俺に聞かせた方が良いというのはそういう事か。
お人よしの俺なら、何か良いアイデアがあるかも知れないと、レイリィを気遣って出てきたのなら、何か妙案を出せという事かな?
「いっそ第三王子の首を差し出しては? そこまでされたら相手国も納得せざるを得ないでしょう」
我ながら物騒な発言だが、昔の日本でも戦争に負けた国が詫びとして、親分が切腹するからこれで許してねってやる事例はよくあったからね。
「寧ろそうしたい所だが、間違いなく現地では大事になっているだろう。唯詫びをして許しを請うだけではいかんのだ。この挙式は他国と互いに友誼を結び合う場所を提供する意味もあったのだからな」
……ああ、そういう事か!
周辺国も反勇者召喚国連合を恐れているという事か。
その為に勇者召喚をしてきた国同士で新たに同盟を結びなおそうと考えていた訳だな。
何しろ基本国同士というのは内心ではお互いを侵略したい、領土を広げたいと考えている。
だから小競り合いを繰り返す中の悪い国も多くあった。
今回の結婚式では、その中の悪い国同士が目の前の敵を倒す為にとりあえず休戦しましょうねって約束を取り付ける場所だったという事なのだろう。
だというのに、その場所を提供する国の王子が他国の王子を率先して襲ってしまった。
すげぇな、そんな大事な使命があったのにアイツは全てを台無しにしたのか。
「よくもまぁそんな大事な役割のある挙式を台無しにできましたねぇ」
酒の力って凄いな。飲んでも飲まれるなの精神ですわ。
「いや、アレは挙式の真の意味を知らぬ」
おや?
「挙式の裏で行われる会合についてはアレは知らぬ。アレはあくまでも自分が大領主となっていずれ自分がこの国の王になると本気で信じていただけだ」
おやー? どういう事だ? 結婚する本人が結婚式の真の意味を知らない?
「なんでまた教えなかったんですか? 教えていたらここまで話がこじれる事は無かったと思うのですが」
「決まっている、アレが無能だからだ。アレに真意を教えたら自分が会合を仕切ろうとするだろう。偉大なる国家連合の盟主としてな」
あー……目に見えるわ。あのアホがドヤ顔で場を取り仕切ろうとする光景が。周囲をイラつかせながら。
「知ってしまえばアレが何をするか分からん以上アレには全てを秘匿して置くしかない。その為に領主の館の中に軟禁させていたというのに……」
成る程、領主の館の中でじっとさせていたのは、護衛の問題ではなく問題を起こさせないようにだったのか。
それも無駄に終わった訳だが。
「そこでだ、アレを連れてきてくれた君に問いたい。何か良い案はないかね?」
凄ぇ事聞いてくるなぁこの人。
それ一人じゃどうしようもない問題だよ。
「そうですねぇ。現状周辺国のこの国への信頼は地に堕ちていますから……」
だが上手くやればレイリィを利用させない方向に動く事が出来るのではないだろうか?
1つ試してみるか。
「私に良い考えがあります」
俺の正体を察したハジメデ王国第二王子ハイジアン王子は、不祥事を起こした己の弟の凶行を止め、更にはここへと連れてきた真意を問い正す。
「はて、何か勘違いしていませんか? 俺はあくまで唯の通りがかりですよ」
まぁ素直に答える義理なんてないんだけどね。
「あくまでシラを切る気か。いやいいだろう。それならば通りがかりの若者よ、君の真意を教えてもらおう。貴族同士の諍いなど君にはなんの係わり合いもない事だろう?」
こちらの正体に関して問い詰める事を早々に止めたハイジアン王子は俺の目的を知る事だけに焦点を絞って会話を再開する。
なかなかにロジカルな人物だ。
正直王家の中で一番まともなのではないだろうか?
だがまぁ交渉しやすいというのはありがたい事だ。
「いえね、たまたまあの町に足を運びましたら、なにやら領主様が結婚するとの事ではないですか。幼い領主様が結婚されるとはよほどお似合いの若様かなと思っていたのですが、まさか町で乱暴狼藉の限りを尽くしていた横暴なオッサン貴族がお相手ご本人とは思いもよりませんでしたよ」
「……乱暴狼藉の限り?」
ハイジアン王子がこめかみを引くつかせて俺の言葉を確認してくる。
「ええ、町の料理屋に入れば大声で不味いと料理に文句をこぼし、買い物に出かければ店員客かまわず女性の尻を揉みしだき、街中を歩けば近づく人々が自分から避けていく程に町の皆さんから嫌われていらっしゃいました」
「……」
ハイジアン王子が俯いて眉間のしわを指で押さえる。
正直気持ちは分かる。
「……王家の、復権がかかっているこの大事な時期に……民の反感を買う様な行為を? それも挙式をした直後に?」
おっと、そのあたりまだ情報が届いてないみたいだな。
誤解が無いようにちゃんと教えてさしあげないとね。
「いえ、まだ結婚はされていないみたいですよ」
「何っ? アレの挙式は既に終わっている筈だぞ!?」
やはり延期になった事を知らないみたいだな。
「実は結婚式が予定されていた日からしばらくの間、嵐によって式が中断されておりまして、ようやく嵐が去ったと思ったら式場が壊れていたそうです。ですので現在は式場の修復に大忙しだとか」
「……まだ、挙式も上げていない状態で醜態を晒し続けた? では周辺国の招待客達は……?」
俺の報告で隣国の王子が襲われた事を聞いていたはずなのにハイジアン王子はその質問をしてくる。
それは困惑するあまりその事に気付いていないのか、それとも確認のためか、はたまた一縷の望みをかけてか。
まぁ素直に教えちゃうよ。
「嵐の後ですからね、それに式場の修復もそれほど掛からないとの事でしたので、もちろん皆さんバラサの町で待機しておいででしたよ」
「……」
あ、机に突っ伏した。
うん分かったぞ。この王子苦労性だ。
「な、なんという事だ。せっかく結婚していない王位継承権の高いアレを有力貴族とつける事で他国へのけん制に出来ると思ったと言うのに……」
むむ? 結婚していない? あのアホ王子が? どう見てもオッサンだし、てっきり他の貴族娘も沢山妻にしていると思ったんだが。その辺の情報がないのよな。
それにレイリィとの結婚で他国とのけん制になる?
確かに大穀倉地帯の主となったレイリィと結婚すれば王家の力は増すだろうけど、レイリィは武力に秀でた私兵を持っている訳でもないはずだが。
まぁここは素直に聞いてみよう。
「それは一体どういう意味ですか?」
「……いいだろう、寧ろ君に聞いてもらった方が都合が良いかもしれん」
都合が良い?
なんか嫌な予感がするなぁ。
「無駄な前置きを省いて説明すれば、レイリィ嬢との結婚は手っ取り早く王家の権威を回復する手段だ。あの式典で勇者逆召喚術式の真相が暴露された件で、各国の王家が勇者を使い捨てにしようとしていたと民に知られ、多くの王族の威信が揺らいだ。その中でも勇者召喚の盟主である我が国の受けた被害は最も大きかった」
ああ、俺が拡声魔法で王都中に聞こえる様に喋ったからな。
それにしては他国にも広まるのが早かったのが気になるが。
他国のスパイにしても自国にどれだけのダメージになるか分からない案件だからな。
ハジメデ王国だけに大ダメージが及んで自分達が軽症で済むとは限らない。
あ、いや、そういえば王都の中には人間以外の種族のスパイがいたんだっけ。
多種族はともかく、間違いなく魔族のスパイはこの話題を言いふらしそうだもんな。
そう考えれば、情報が早く広く流布した事も納得が行く。
魔族は空が飛べるし、スパイだから通信魔法で情報を迅速に広げる事ができた事だろう。
「このまま王家の求心力が下がったままでは、他国から侵略を受けた際に兵を集める事が出来なくなる。既に動きのある国が複数居たからな。まぁ中には他国に併合された弱国の民が勇者を持て遊んだ報いだと反乱を起こしてそれどころではないみたいだが」
くくく、と苦笑するハイジアン王子。
どうやら復興に失敗した国の領土を取り込みすぎた国が内側から食い破られているみたいだ。
「潰れた国の中には新興の小国も多くあった。連中は歴史の浅さゆえに勇者召喚の儀式を教えて貰えていなかった。だからこそこの件は我等を攻め立てる絶好の機会なのだよ」
完全に自業自得ですやん。
「そんな中で生き残った小国が連合を組んでいるとの情報もある。世界を救った勇者に報いる為の聖戦だという耳障りの良い大義を振りかざしているそうだ。君はどう思う?」
俺に振るなよ。
「知った事ではありませんね。どうせその国も勇者の名前を利用したいだけでしょ?」
ハイジアン王子が大きく頷く。
「その通りだ。だが民は違う。民はそこまで考えない。騙された勇者の為という言葉に騙される。そうなれば国防の為の軍の徴集に集る民は減り、勇者を救う為の正義の軍隊を王都に喜んで招き入れるだろう。勇者を騙した国の民がどうなるかも考えずに」
普通に考えれば悪の国の民は悪の民って考えますよね。戦争の基本は坊主憎けりゃ袈裟まで憎いだと歴史の先生も言っていた。国の上層部が戦争を起こしていて、善良な民が居ても相手国からは子供に至るまで邪悪な国だとみなされるのが戦争というものだと。
まぁこれは俺もこの目で見てきましたわ。たくさんね、
「それゆえに、大領主の町を支配すればその町の民を軍として使える。更にバラサの町は大穀倉地帯だ、兵站の補充が非常に容易になる。前線に多くの兵を養える食料があれば、兵の維持も容易となり周辺国もおいそれと攻める事は出来なくなるからな」
つまりレイリィとの結婚は王家の権威を増やす事よりも、他国との戦争をしない為の準備をする事が重要だったのか。
「けど現状は逆効果と」
ふたたびハイジアン王子が眉間に指を強く押し当てる。
「……他国との戦争をしない為の結婚だったというのに、あのアホの所為で戦争の火種どころか燃え盛る大火が出来てしまった!!」
ですよねー、隣国の王子に怪我させるなんて宣戦布告に等しい行為だもんね!
「民の謎の失踪によって生産力も税も減っているわが国では、この大問題を穏便に収めるだけの財力もない!」
なんか謎の失踪のところを強調された気がしたけど気付かなかった事にしよう。
「困りましたねぇ」
「ああ、困っているのだ!」
成る程、俺に聞かせた方が良いというのはそういう事か。
お人よしの俺なら、何か良いアイデアがあるかも知れないと、レイリィを気遣って出てきたのなら、何か妙案を出せという事かな?
「いっそ第三王子の首を差し出しては? そこまでされたら相手国も納得せざるを得ないでしょう」
我ながら物騒な発言だが、昔の日本でも戦争に負けた国が詫びとして、親分が切腹するからこれで許してねってやる事例はよくあったからね。
「寧ろそうしたい所だが、間違いなく現地では大事になっているだろう。唯詫びをして許しを請うだけではいかんのだ。この挙式は他国と互いに友誼を結び合う場所を提供する意味もあったのだからな」
……ああ、そういう事か!
周辺国も反勇者召喚国連合を恐れているという事か。
その為に勇者召喚をしてきた国同士で新たに同盟を結びなおそうと考えていた訳だな。
何しろ基本国同士というのは内心ではお互いを侵略したい、領土を広げたいと考えている。
だから小競り合いを繰り返す中の悪い国も多くあった。
今回の結婚式では、その中の悪い国同士が目の前の敵を倒す為にとりあえず休戦しましょうねって約束を取り付ける場所だったという事なのだろう。
だというのに、その場所を提供する国の王子が他国の王子を率先して襲ってしまった。
すげぇな、そんな大事な使命があったのにアイツは全てを台無しにしたのか。
「よくもまぁそんな大事な役割のある挙式を台無しにできましたねぇ」
酒の力って凄いな。飲んでも飲まれるなの精神ですわ。
「いや、アレは挙式の真の意味を知らぬ」
おや?
「挙式の裏で行われる会合についてはアレは知らぬ。アレはあくまでも自分が大領主となっていずれ自分がこの国の王になると本気で信じていただけだ」
おやー? どういう事だ? 結婚する本人が結婚式の真の意味を知らない?
「なんでまた教えなかったんですか? 教えていたらここまで話がこじれる事は無かったと思うのですが」
「決まっている、アレが無能だからだ。アレに真意を教えたら自分が会合を仕切ろうとするだろう。偉大なる国家連合の盟主としてな」
あー……目に見えるわ。あのアホがドヤ顔で場を取り仕切ろうとする光景が。周囲をイラつかせながら。
「知ってしまえばアレが何をするか分からん以上アレには全てを秘匿して置くしかない。その為に領主の館の中に軟禁させていたというのに……」
成る程、領主の館の中でじっとさせていたのは、護衛の問題ではなく問題を起こさせないようにだったのか。
それも無駄に終わった訳だが。
「そこでだ、アレを連れてきてくれた君に問いたい。何か良い案はないかね?」
凄ぇ事聞いてくるなぁこの人。
それ一人じゃどうしようもない問題だよ。
「そうですねぇ。現状周辺国のこの国への信頼は地に堕ちていますから……」
だが上手くやればレイリィを利用させない方向に動く事が出来るのではないだろうか?
1つ試してみるか。
「私に良い考えがあります」
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