勇者のその後~地球に帰れなくなったので自分の為に異世界を住み良くしました~

十一屋 翠

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1巻

1-2

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  ◇


「まさか、トウヤが強くなりすぎたせいで帰れなくなっちゃうなんてね」

 俺の隣に座ったエアリアが、ため息を吐きながら辛い事実を口にする。
 だが、その口ぶりとは裏腹に、彼女の声は弾み、口角は緩み、俺の腕にがっしりとしがみついていた。
 言ってる内容と態度が違いすぎませんかね?

「私がトウヤさんが帰れないかもしれないと知った理由も、先ほどの話に出た過去の勇者様の伝承を大司教様よりお聞きしたからなのです」

 向かいの席に座ったミューラがため息を吐く。こちらは随分とつやっぽいため息だ。

「転移魔法を始めとした空間魔法は、空間をじ曲げて場所と場所を繋げる魔法。同じ世界間を行き来する分には安定していますが、遠く離れた異世界と繋げる事は非常に危険。そのため、魂が本能的に抵抗してしまうのが原因ではないか、というのが教会の専門家達の見解です」
「はぁ……どうしたモンかね」

 結局、魔法使い達が全力で俺が元の世界に帰れる方法を探すからそれまで待っていてほしいという事で、話は終わりになってしまった。なんとも世知辛せちがらい話ですよ。
 んで、そこで待つのは魔法使い達の邪魔だからと、バルザックが自分の屋敷に招待してくれたのだ。

「まぁ現状は待つしかないだろ。帰る方法が見つかるまでは俺の屋敷で暮らせばいいさ」
「助かるよ」
「という訳でだ、そろそろ飯にしようか」

 バルザックが指を鳴らすと、ドアが開いて何人もの女性が料理を運んでくる。

「まだ朝飯を食ってないだろ? 食って元気になれ!」

 そう言って自分のグラスに酒を注ぐバルザック。

「朝っぱらから酒かよ」
「はははっ、魔王退治の褒美でしばらくは騎士業も休みだからな!」

 なるほどね。けどまぁ、この世界で朝から酒を飲む人間は珍しくない。
 地球と水事情が違うこの世界では、井戸、湧き水、雨水の三つに飲み水が限られている。
 生水なまみずをそのまま飲むのはまずいので、一旦かして冷ますかお茶にして飲む。
 しかしお茶の葉は高価なので、庶民が飲むのは白湯さゆかバレアと呼ばれる木の皮をいぶしたお茶の代用品だ。
 さらに言えば、湯を沸かすにもまきが必要なので、大人は大抵薄めた安い酒を水代わりに飲む。
 あらかじめ冷ましたお湯で薄めた酒ならアルコール度数も少ないしね。

「おいトウヤ、これが俺の嫁が作った料理だ! 美味いぞ! 食ってみろ!」

 早速酔っ払ったのか、バルザックが俺の背中を叩きながら料理を勧めてくる。
 バルザックの気遣いがありがたい。
 こういう時は一人になりたいもんだが、それだと悪い方向にドンドン思考が向いてしまう。
 だから、バルザックはあえて騒がしくする事で俺の気を紛らわせようとしてくれたのだろう。

「俺の嫁の料理は世界一だからな!!」

 嫁さんを自慢したい訳ではないと思いたい。


 食事が終わった俺は、使用人に案内されて自分のために用意された部屋へやってきた。

「こちらのお部屋をご使用くださいませ。御用の際はベルでお呼びください」

 使用人はそれだけ言うとそそくさと去っていった。

「ふぅ」

 数少ない荷物をテーブルの上に置きベッドに倒れ込むと、ふかふかの布団が俺を優しく包んでくれる。
 旅の途中で泊まっていた安宿のベッドとは大違いの気持ち良さである。

「はぁ~」

 ため息が出る。それは陰鬱いんうつな気持ちを吐き出した訳ではなく、長い旅が終わった事で、ただただ気が抜けたからだ。
 俺は旅の記憶を思い出していた。
 旅が始まってから戦い詰めだった。苦しんでいる人を救い、魔族の作戦を破り、時に人間の陰謀もあばいた。
 ある時は反目はんもくする二つの種族を和解させ、またある時は船乗り達に恐れられる巨大な海魔かいまを倒した。
 とある軍事国家では選民思想が行きすぎていたが、それを利用していた魔族の存在を暴く事で国家を正しい方向へ導いた。
 地上の戦いに無関心だった孤高の種族達を説得して他人事ひとごとではないと理解させ、協力を得る事が出来た。深いダンジョンの中に眠る伝説の武器を手に入れたりもした。
 だが……

「戦った記憶しかないなぁ」

 俺の思い出の中にあるのは、戦いの記憶ばかりだった。そこには、戦い以外何もない。
 この世界はどんな世界なのか。様々な種族が何を考え、何を食べ、何を楽しんでいるのか。そういった記憶がほとんどなかった。

「そうだな、そういうのもアリか」

 ふと俺は思いつく。どうせする事がなくなってしまったのなら……

「地球に帰るアテが出来るまで、この世界をもう一度見て回るのもアリかな」

 元の世界に戻るまでの暇つぶし。少なくともその時は、本気でそう思っていた。


 俺はバルザックの屋敷を出て、城下町を散策していた。
 勇者だとバレると面倒なので、服装はこの世界の普通の平服だ。

「勇者様が世界を救った記念に、今日の串焼きは銅貨一枚分おまけだよ!!」
「たった一枚かよ!」

 安売りをうたう店主に客が冷やかしの声を上げる。

「一枚でも安い方がいいに違いねぇだろうが!」
「違いねぇや。親父二本くれ!」
「あいよ!」

 どうやら冷やかしと言っても、本当に非難している訳ではなかったらしい。
 客が集まりだし、それに対抗するように他の店も安売りを始める。

「ウチの串の方が美味いよ! ウチも銅貨一枚安くするよ!」
「いやいやウチの方が美味いよ!」

 と言いつつも、値段はそこまで下げようとはしない。あまり安くしたらもうからないからだろう。
 地球でも安売りをウリにしていたファストフードが、後年それが原因で苦労していたからな。

「俺も二本くれ」
「毎度! っと、兄ちゃん見ない顔だな。旅の人かい?」
「ああ、たまたまこの国に来たらこの騒ぎさ」

 嘘は言ってない。騒ぎの原因は俺だけどな。

「そりゃあいいタイミングで来たな! なにせ勇者様が魔王を倒した祝いの日だ!」
「魔王を倒したって!? ホントの話なのか?」

 とぼけたふりして聞いてみる俺。

「おうともよ! 王様がお触れを出したんだ。魔王を退治しに旅に出た勇者様が魔王の首を持って帰ってきたってな」

 まぁ間違いではない。首から下も持ってきたが。
 倒した相手の死体を持ってくるのは少々気が引けたが、ちゃんと証拠がないと皆安心出来ないもんな。
 一応王様には、見せしめが終わったら、魔王の死体は綺麗にして埋葬してほしいと頼んである。
 敵ではあったが、正々堂々とした戦士だったし、命を懸けて戦った相手の死体をはずかしめる事はしたくなかったのだ。
 本当ならさらし首にするのも反対だったのだが、これまで魔王の被害に遭った民の心の傷をいやすのに必要だと言われては納得するしかなかった。
 この世界には生命保険なんてものはないし、裁判を行って慰謝料を取る事も出来やしない。だからせめて鬱憤うっぷんを晴らしてやる必要があるんだろう。
 そんな事を考えながら、俺はふとある事を思いついて屋台の店主に追加注文をする。

「悪いけど、あと二〇本追加で頼む」
「あいよ!」

 挨拶しておきたい人がいたのを思い出したのだ。


  ◇


「すみませー……」
「さぁ溜まった借金、まとめて支払ってもらおうか!!」

 ドアを開けたら、なんだかテンプレな台詞が聞こえてきた。
 これは返事を期待出来そうもないと思ったので、俺は勝手に建物の中へ入る。

「もう少しだけ待ってください!」
「そう言って何ヶ月だ!? もう待てないんだよ!」

 典型的な借金取り立ての会話だ。
 確かにこの建物はボロボロで、隙間風は入り放題。雨が降ったら雨漏りでおけだらけになる。とても借金を返すどころではないだろう。
 けど、ここの主は以前俺が来た時には借金をしている素振りなどなかったんだがなぁ。

「ともかく、金が返せないのならあんたの体で払ってもらおうか!」
「いやっ! 放して!」

 おっと、悠長にしてられないみたいだ。そろそろ突入しないと。

「そこら辺にしといてもらおうか」

 俺ははかったようなタイミングで会話に割り込む。

「なんだ手前てめぇは!」

 部屋の中にいたのは十代後半くらいの女の子が一人と、三十代くらいの目つきの悪いオッサン二人だった。

「ここの関係者ですよ」

 そう言って俺は女の子の前に立って、オッサン達から守る姿勢を見せる。

「関係者だぁ?」
「っ! 貴方は!?」

 女の子の方は俺の顔を見て、すぐ気づいてくれたみたいだ。
 たった数日の付き合いだったが、ちゃんと覚えててくれたと思うと嬉しい。

「一体これは何事ですか? 神聖な教会でシスターに乱暴なんてしたら神罰が下りますよ」

 そう、目の前の女の子はシスターだった。
 紺色の衣装を纏い、髪をベールで隠す典型的なシスターの格好だ。まぁ、地球のシスターの服とはちょっとデザインが違うが。

「けっ、こんな貧乏教会で何が神罰だ! 文句があるのなら借金を返してから言えってんだ!」

 まぁ道理だわな。金貸しも慈善事業じゃない訳だし。

「返済の契約はどうなってるんですか?」
「借金は金貨が二〇枚。月々銀貨五枚返済でそのうち利息は銀貨一枚だ。だが、ここんところ支払いがとどこおってるから滞納分の銀貨二〇枚をまとめて払ってもらうぜ」

 つまり四ヶ月支払いを滞納してる訳か。そら借金取りも怒るわ。

「分かりました。俺が銀貨二〇枚を支払いましょう」
「え? で、でも」
「おお、そいつはありがてぇ。それじゃあ銀貨二〇枚今すぐ支払ってくれ」

 困惑するシスターをよそに、借金取りは金さえ貰えれば相手は誰でも良いとばかりに手を出してくる。
 俺は魔法の袋から銀貨二〇枚を取り出すと、借金取りに差し出す。

「へへ、毎度あり! 良かったな姉ちゃん。これでしばらく身売りの心配はなくなったじゃねぇか。次の支払いもよろしく頼むぜ」

 それだけ言うと、借金取り達は上機嫌で教会を出ていった。

「大丈夫かい?」

 俺はシスターに声をかける。

「あ、ありがとうございます。何とお礼を言ってよいやら。その、お借りしたお金は必ず返しますので!」

 だがシスターは、まるで俺が借金取りかのようにペコペコと頭を下げてくる。

「気にしなくていいですよ。俺はここの神父さんに助けられましたから」

 そうなのだ。
 かつて俺は、王都近くで起きている騒動を治めるために奔走ほんそうし、この教会の神父に助けられたのである。
 ここに来たのも、その時の礼をするためだったのだ。
 ついでに言えば、シスターとはその時にほんの少しだけ顔を合わせていた。

「ところで神父さんは?」
「……」

 だがなぜか、シスターは神父の事を聞いたとたん口をつぐんでしまう。

「もしかして……」
「……神父様は、数週間前に起きた魔物の大発生の際、子供達を守るために戦われ、そのまま……」

 なんてこった。
 数週間前の魔物の大発生というのは、魔王四天王最後の一人である風のバーストンが魔界大儀式を行って魔界とのトンネルを開け、世界中の魔物を活性化させた出来事だ。
 あの儀式によって魔物達は強化され、大暴れした。俺達が儀式を中断させ、トンネルを閉じるまでかなりの被害が出たと聞いている。その時の被害がこの国にも及んでいたのか。いや、常識で考えれば出ないはずがない。気づかないように自分をごまかしていただけだ。

「じゃあ借金ってのは」
「ええ、神父様がくなった事で借金を返すアテがなくなってしまって……ここのところの魔物の増加で薬草を採るのに難儀していて、借金の返済どころではなく……」

 くそ、もう少し早く魔界とのトンネルを閉じていれば……いや、あの時はあれで精一杯だった。あれ以外に方法はなかったんだ。今考えるのは借金を返済する事だ。

「お姉ちゃん、アイツ等帰った?」

 と、そこに現れたのは、ボロボロの服を着た子供達。

「あ、ご、ごめんなさいね。お客様がいらしてたから」

 シスターは慌てて立ち上がり、子供達に駆け寄る。

「……あ! あの時のお兄ちゃんだ!」

 お、どうやら子供達も俺の顔を覚えていたみたいだ。

「よう、久しぶり。お土産持ってきたぞ」

 俺は顔見知りの子供に串焼きの入った袋を差し出す。

「わー! お肉だー! ありがとうお兄ちゃん!!」
「皆で分けるんだぞ!」
「うん!!」

 串焼きを受け取った子供が、奥の部屋にいるとおぼしき仲間達のところに串焼きを運んでいく。

「お土産まで頂いて、なんとお礼を言っていいか」

 またしてもシスターが深々と頭を下げてきた。

「いいって。気にしないで」

 「なるほどねぇ」
 俺はシスターと子供達と共に、串焼き肉を食べながら話をしていた。といっても、肉は串から外され皿に盛られている。孤児院の子供達が多すぎて串焼きの数が足りなかったのだ。
 なんだか居酒屋で焼き鳥の串を抜いて皆で食べるみたいな光景だ。

「魔物の襲撃で親を亡くした子供はドンドン増えていきまして、遂にはこの人数です。働ける子は安い仕事でもいいからと働いてもらっているのですが、それでも焼け石に水で……」

 だろうなぁ。幼い孤児に出来る仕事などたかが知れている。それに報酬だって足元を見られているのは間違いない。数人がかりでやっと一人分の給料ってところだろうなぁ。
 子供達の痩せ細った姿がそれを物語っている。

「ですので、借金の返済を立て替えていただいた事には本当に感謝しているのです」

 これはなんと言うか、地球に帰れなかったのが功を奏したって事だよな。
 あのまま帰っていたら、今頃シスターは体で借金を返済する事になっていた訳で……
 ちょっとシスターが体で借金を返すところを想像してしまったのは内緒だ。

「あの? どうかなさいましたか?」
「い、いえ何でも!」

 何を考えていたのかは永遠に内緒にしておこう。ソレよりも今は、考えないといけない事がある。
 それは、どうやって借金を返すかだ。
 俺が借金を返してもいいが、それでは俺がいなくなったらまた新しい借金を抱えてしまうのは目に見えている。
 だから、俺がいなくても借金を返せるだけの収入を得られるようにしてやらないといけない。
 俺は子供達に問いかける。

「皆がしている仕事ってどんな仕事なんだ?」

 まずは子供にどんな仕事が任されているのかを知る事にしよう。

「えーとね、薬用の毒蛇どくへび取り!」

 いきなりヘビーなの来た。

「あとはー、荷物運び」

 まぁ健全か。

「薬の実験台」

 ソレはヤバイ!

「食べられる草を採ってくる!」

 食料は必須だからな。

「前は神父様と一緒に薬草を探してた」
「前は?」
「魔物が増えてきたせいで森に入る事が禁止されたのです。ですが、勇者様の手で魔王が退治された今となれば、森での狩りや採取に許可が下りると思います。薬草採取さえ出来れば教会秘伝のポーションを作れるようになるので、ゆっくりとですが、借金の返済は可能になりそうです」

 俺が質問すると、シスターが答えてくれた。なるほど、返済のアテはあるようだ。
 となると、採取許可が出るまでのツナギの仕事が必要になる訳だが……何か良い仕事はないものかな。中世レベルの世界で子供でもそれなりに儲けられる仕事、しかも他の大人の仕事と競合しない内容でないと……
 ああ、それに危険な事もさせられないな。可能なら室内で出来て手間もかからない方法で……って、そんなのある訳ないわ! 借金返済をするならそれなりの稼ぎがいる。希少度の高い商品でも売らないと不可能だ。
 たとえば、ポーションを作るための薬草を容易に手に入れられれば……いや、それは無理だな。

「待てよ」

 そこで俺は気づいた。
 薬草を手に入れるのが困難なら、いっそ栽培してしまえば良いのではないか。

「あの、どうかされたのですか?」

 突然黙り込んだ俺に、シスターが話しかけてくる。

「ああ、借金を返済するため、いや借金をしないで済むための策を思いついたんだ」
「ええ!? 本当ですか!?」
「また後日来るよ」 

 俺は思いついたアイデアを実行するために教会を飛び出した。


  ◇


「シスターいるかい?」

 数日後、準備が出来た俺は再び教会へやってきた。

「あ、いらっしゃ……なんですか、その大量の荷物は!?」

 迎えてくれたシスターが驚きの声を上げる。

「ああ、教会で安全にポーションを作るための道具さ」

 俺は持ち込んだ木箱を開け、中身をテーブルの上に出した。

「これは……水晶の容器ですか?」

 シスターが荷物の中の透明な容器をじっと見つめる。

「ああ、それは薬草を栽培するためのれ物さ」
「これが? 薬草を栽培?」

 何が始まるのか分からないシスターは、水晶の容器を見ながら首をかしげている。

「これから行うのは、水耕栽培というものさ」
「水耕栽培ですか?」

 そう、俺が行おうとしているのは、地球でもそれなりに流行はやった、土を使わずに水だけで作物を育てるという栽培方法だ。
 一昔前は一部の農家や企業がやっているだけだったが、最近はガーデニングなんかが好きな主婦でも出来るくらいお手軽になっている。俺はそれで薬草を栽培しようと考えたのだ。
 これなら子供達が森に薬草を採取しに行く必要もないので、森に入る事を禁止されていても問題ない。

「この方法がいいのは水と肥料だけで済むところだ。さらに土はいらない」
「水と肥料だけ!? それだけで植物が育つんですか!?」

 シスターが驚くのも無理はない。この世界の人間にとって植物とは、土の中で育つものだからな。

「水草やこけがあるんだ、土がなくても育つ植物があってもおかしくないだろ」
「あ、そういえばそうですね」

 俺の言葉に納得したのか、とりあえずシスターは説明を聞く気になったみたいだ。

「やり方は簡単だ。この中に薬草のなえを入れ、根っこの半分まで水を注ぐ。あとは肥料としてポーションを希釈きしゃくした液体を入れれば完了だ。ポーションは出来が悪くて客に出せないヤツを利用すればいい」
「それだけですか!?」

 シスターがまた驚く。だが水耕栽培自体そういうものなのだ。まぁ、肥料は有機肥料では駄目ってしばりはあるけどな。有機肥料だと水が腐って根が傷むからだ。
 最初俺は、この肥料をどうしようか悩んだ。異世界に無機肥料なんてないからだ。
 それを解決してくれたのは、ミューラとエアリアだった。
 俺は水耕栽培に必要な道具を揃えるためにバルザックに相談したのだが、その際にエアリア達に話を聞かれてしまった。
 そして――

「水臭いのよ!!」

 とエアリアに怒られたのは、シスターには内緒である。
 そうした経緯から、栽培に適した形状の容器の選別はエアリアがやってくれ、肥料に関してはミューラからポーションそのものを使ってはどうかとのアドバイスがあった。もともとミューラの所属する教会本部でも薬草の栽培を考えており、肥料としてポーションを使う研究をしていたらしい。
 で、俺はその詳細な情報と引き換えに、教会にも水耕栽培の使用許可を与える事になった。
 まぁシスターのところも教会繋がりだし、問題ないだろう。

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