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第150話 勇者、エリクサーを作る

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かなりお待たせしました。
お久しぶりの更新です。

このまま週一か隔週ペースで更新していきたいと思います。

あと宣伝ですが、勇者のその後の文庫版がアルファライト文庫より発売となりました。

本日2月7日に出荷されましたので、早ければ明日には発売していると思います。
お値段もお手頃ですよー。

それでは久しぶりの本編をどうぞ。

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「よし、それじゃあエリクサーを作るぞ!」

 真なる魔王に体を乗っ取られたシルファリアを救うため、俺達はエリクサーの作製を開始した。
 ……つっても作るのはメルクリオとゴールド頼みなんだけどな。

「という訳で頼むメルクリオ、ゴールド」

「うむ、まかせよ」

 メルクリオがテーブルの上に乗った素材を見つめる。
 それらは皆で必死になって集めた貴重な素材ばかりだ。
 それがようやくエリクサーとして一つになろうとしている。

「……どうやって作るんじゃったかのう?」

「「「「「オイコラ」」」」」

 思わず皆の心が一つになった。

「あのなお前。エリクサーの作り方を知ってるんだろ!? 知ってるんじゃなかったのか!?」

「いや知っとるよ。むかしメッチャ作ったからのう。ただ最近とんと作っておらなんだから、ちょーっと作り方を忘れとるだけじゃ」

「何よソレ! もしかして私達に採りに行かせた材料も適当に言っただけなんじゃないでしょうね!」

 っていうかよく考えたら最初にメルクリオが言った材料って、聖杯と賢者の石、それに霊水、最後にこの霊域だったはずだよな。
 それが戻ってきたら足りないから集めさせておいたとか言われたけど、もしかしてうっかり言い忘れたから集めさせてたのか?

「そんなわけあるかい! 単にド忘れしとるだけじゃ! すぐに思い出すわい!」

 エアリアの追求にメルクリオが反論し、腕を組みながらうぬぬとうなり声を上げる。
 いやそれホントにうっかりじゃん。
 マジで大丈夫なのか?

「ぬぬぬ……」

「ちょっと、本当に覚えているんでしょうね」

「無理なら何かでショックを与えた方が良いのではないかしら? とりあえずメイス辺りで」

 すっとミューラが懐から棘付きのメイスを取り出す。

「怖いこと言うでないわ! 思い出すどころか記憶ごと頭部が粉砕されるわ! お主それでも僧侶か!?」

 これ絶対材料集めで苦労させられた私怨が入ってるよな。
 そして再びうなりだすメルクリオ。

「ええと確か、霊水にアウストレア草の根を浸して……」

「月光に三日晒したナイフで皮を剥く」

「そうじゃそうじゃ。そんで賢者の石とオディバ輝石を粉末にして……」

「正しくは賢者の石をオディバ輝石1に対して1/4の量を粉末にする」

「そうじゃそうじゃってゴールド! 知っておるなら最初から言わんか!」

「たまには自分で頭を使わないとボケる」

 などとメルクリオとゴールドがボケ漫才を始める。
 というかゴールド作り方知ってるのかよ。

「すまんゴールド、エリクサーの作り方を教えてくれ」

「任せろ」

 なんというか、意外とフランクだよな、この合法ロリドラゴン。
 いや、意外じゃないか。
 これまでの行動を見ていれば……

「ではさっさと作るか。時間のかかるモノは既に用意してある」

 と、懐から更に材料を取り出す。
 え? 何この手際の良さ? ドラゴン三分間クッキング?
 さすがに完成品は用意してないよね?

 ゴールドはメルクリオを横にどけると、テーブルの上に並べられた素材をてきぱきと加工していく。

「なんか儂の扱い雑じゃないかの?」

 事実雑だと思います。

「サクサクサク……トントントン」

 エリクサーを作る作業をしている筈なのに、なんだか料理を作っている様にも見えるな。

「クツクツクツ……ザーッ」

 何で作業工程を擬音で説明するんだろう?
 高位のドラゴンってそういう種族なのか?

「出来た」

「「「「早っっっ!?」」」」」

 え!? マジ!? もう出来たの!?

「お、おいおいおい、本当に出来たのか!?」

「イエス、会心の出来だ。非の打ちどころのないエリクサー」

 マジかー、今までの苦労とかなんだったのーってくらいあっさり完成しちゃったよ。

「え? ちょ、ホントに!? ホントにエリクサーが完成したの!? エリクサーなんでしょ!? 伝説の霊薬なんでしょ!?」

 エアリアがマジで!? って顔でゴールドに詰め寄る。
 まぁ気持ちは分かる。
 エアリアの専門は本来薬草学だし、それこそ彼女がいつも作っているポーションよりも簡単に完成してしまったのではないだろうか?
 魔法使いのプライド的にちょっと納得がいかないのも無理はない。

「パーフェクト、これ以上ない出来だ」

 しかしゴールドはえっへんと胸を張って自慢げだ。
 そしてじーっと俺に視線を寄越してくる。

「えーっと、あ、ありがとうゴールド。凄く助かった」

「うむ。お礼は三倍返しで良い」

 ちゃっかりしてらっしゃる。

「それにしても驚きました。まさかこんなに簡単にエリクサーが完成するなんて」

「ええ、私ももっと大変だと思っていました」

「これなら材料さえあれば私にもエリクサーを作れそうですね」

 ミューラやサシャ、それにクロエさんも目をパチクリとさせてエリクサーを見つめている。

『ではさっそく味見を』

 そう言ってウォーターゴーレムのエリーがテーブルの上に置かれたエリクサーの容器に手を突っ込む。

「……って何してんだお前ぇぇぇぇぇぇ!?」

 あまりにも自然に手を突っ込んだから一瞬スルーする所だったろうが!?

『いえ、今の私は疑似エリクサーですので、オリジナルエリクサーと接触すればその薬効を確認できるかと思いまして』

「思いましてってお前な、勝手に触って薬効が変わったらどうするつもりなんだ」

 今のお前の体は薬なんだぞ!?

『その心配は不要です。私は一種のスライムボディですので、表面張力を利用して私の体液をエリクサーに混ぜない様に気を付けています』

「そ、そうなのか?」

「そうなんです」

 無駄に高性能だな。

『そして吸収したエリクサーの薬効を確認しました』

「それでどうだった?」

『正直良く分かりませんでした。元々私は薬なので、解析機能とか無いですし』

 役に立たねぇーっ!

「つーかそれだったら何のために触ったんだ!?」

『ちょっとした好奇心で』

 駄目だこのゴーレム、変に知恵を持った所為で薬としての本分から逸脱し過ぎだろ。

『ただ、この薬から感じる力は、明らかに私以上の薬効を感じました。単純な薬としての力は私以上でしょう』

 そう言うのは分かるのか……というか薬の力ってなんだ?
 一千万薬パワーとかあるんだろうか?

 と、そこでメルクリオとゴールドが前に出て来る。

「ともあれ、これでエリクサーは完成した。まだ真なる魔王の魂が定着して居ない今ならば、偽りの魔王の娘の魂を救う事が出来るであろう」

「あとは勇者達次第。私達に手伝えるのはここまでだ」

「いや、十分だ。助かったよ二人共」

 本来ならエリクサーの作り方を調べなおす羽目になっていたんだからな。
 その時間を稼いでくれた二人には感謝の言葉しかない。
 おもにゴールドに。

「うむ、感謝せぇよ」

 俺はエアリア達に向き直ると、皆も俺を見つめ返す。

「聖剣を手に入れ、エリクサーも用意できた。あとはシルファリアを助けるだけだ」

「けど彼女がどこに居るのか分かるの? 私達は相手の本拠地を知らないのよ?」

 エアリアの疑問に、皆があっと驚きの顔になる。
 だが俺は慌てない。

「いや、大丈夫だ。真なる魔王がどこに居るのかは簡単に分かる」

「それは、どこなんですか?」

 ミューラが分からないと首をかしげる。

「簡単な推理だよミューラ。相手は真なる魔王、魔王なんだ。だったら魔王が居る場所といったら?」

「あっ、そういう事ですか」

 サリアが手をポンと叩いて納得の声を上げる。

「そう、魔王の居場所と言ったら魔王城さ」

 相手は真なる魔王だ。
 だったらヤツが居るのは魔王城の玉座に他ならない。

「成程、当たり前すぎて逆に思いつかなかったわ」

「ですね、今までの闘いから、敵はこちらから身を隠すのが当然と思って魔王城の事を意識から除外してしまっていました」

 これはミューラの言う通り、これまでの魔族達との戦いは相手の正体や本拠地を暴く事を第一に考えて行動していたからな。
 だが相手は魔族の王、そもそも隠れる必要すらない相手だ。

「そういう事」

 真なる魔王の居場所は既に割れている、あとはこちらから出向くだけだ。

「トウヤさん」

 とサリアが前に出る。

「私はミナミッカ群島に戻ります。残念ながら、戦闘用の魔法に長けていない私では足手まといになってしまいますから」

「私も同じですね。元皇帝の権力も魔王との戦いでは役に立ちそうもありません。もう少し時間があれば現皇帝に掛け合って戦力を出してもらう事も出来たんですけど」

 とクロワさんも居残りを宣言する。
 まぁ二人は仕方ない。
 本人たちが言うとおり戦闘は不向きだからな。

「私は行くわよ。元々魔王と戦う為についてきたんだからね」

「私もです。相手が真なる魔王だというのであれば、聖女である私がトウヤさんの力になるのは当然です」

 エアリアとミューラが前に出る。

「真なる魔王との戦いには役に立たないかもしれないけど、そこに至るまでの露払いは出来るわ」

「ええ、その為の神聖魔法です」

「……ああ、頼りにさせてもらうよ、二人とも」

「ええ、任せて!」

「はい! 任せてください!」

「王女達は我らに任せるが良い。無事にお主達の仲間のもとに送ってやろう」

 とメルクリオがサリア達をミナミッカ群島に送る事を提案してくれる。

「助かるよメルクリオ」

「うむ、頑張るのじゃぞ」

「よし、それじゃあ行くぞ二人とも!! 最終決戦だ!!」

「「ええっ!」」

 真なる魔王との決着をつける為、シルファリアを救う為、俺達は三度魔王城へと向かうのだった。
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