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プルスア山脈編
魔物の山
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「山には登らん方がええよ。おっかない魔物が住み着いちまったでねぇ」
旅の疲れを癒す為、そして山越えをする為の物資の補給をする目的で寄った町で、俺達はそんな警告を受けた。
「魔物?」
「そーだー。あの魔物が現れちまってからっちゅーもの、すっかり山ぁ登るモンはおらんくなっちまったよ。みーんな魔物に襲われて向こうから山を越えて来るモンもおらんくなっちまった」
宿の店主は商売上がったりだと手を振りながら椅子の背もたれにもたれかかる。
ふむ、かなり危険な魔物みたいだな。
「冒険者ギルドや騎士団にたのまないのかよ?」
タカユキがズバリ確信を突いた質問をする。
「もちろん頼んださぁ。けんどギルドも騎士団も負けちまった。騎士団は適当な事言って我慢して迂回しろって言って帰っちまったよ。ギルドは賞金かけちゃいるが、たまに身の程知らずの冒険者が向かっていってそのまま帰ってこねぇ有様よ」
「迂回ルートはどんな道なんですか?」
迂回ルートが安全なら無理をする必要も無いだろう。
「迂回するにゃあメリケ国との国境の近くを通る必要があるよ。あっちは麓にマッドベアーの群れさいるから、道もそれを避けてグネグネしとるんよ。山越えずにメシコンさいくんなら、馬さ居ても半年はかかるかもなぁ」
よし、迂回は無しだ。半年もメリケ国の近くを歩くなんてゴメンである。
◆
宿に荷物を置いた俺達は食堂で食事をしながら今後の計画を立てていた。
「方針としては三つですね。①魔物を倒して山を越える。②迂回する。③待機する」
「待機ってどういう意味だよ」
タカユキがケンジに方針の意図を問う。
「店主が言っていたろ。魔物は他所から流れてきたと。プルスア山脈の主になれる位の魔物なら天敵から逃げてきたって事はないだろう。だとすれば、待っていればいつか出て行くかもしれない。そう言う意味だ」
成程、わざわざ危険を危険を冒す必要は無いと言う事か。
確かにその通りだ。
「私としては迂回は選びたくありませんね。山越えか待機を希望します」
「山越えか待機ですか。では数日程この町で様子を見て、それでどうなるか見てみましょうか」
「そうですね」
俺達はケンジの案を採用して暫くこの町に滞在する事にした。
◆
「居なくなりませんねぇ」
「そうですねぇ」
「出ていかねぇなぁ」
魔物が町から出て行ったという情報が届く気配は無かった。
俺達がこの町に滞在して早10日。
その間にも魔物退治に向かう人達は居たし、少しだけ入って魔物がいるのか調べてくると探索に向かった人達も戻ってこなかった。
つまり全滅だ。
山へと向かった者達は決して弱くない。関係者の話では結構な実力者だって居たらしい。
だが戻ってこなかった。
その事から魔物が相当な強さであると言う事が理解できた。
正直山越えもしたくないなぁ。
ここは一旦道を戻って別の国に向かうのも手ではないだろうか?
その事を2人に言おうとした時だった。
「なら俺達で倒すしかないな」
「だな」
こともあろうにタカユキ達は魔物を倒すと言い出した。
「え?」
「イルミナさん、貴方には秘密にしていましたが、実は俺達はスキル持ちだったんですよ」
知ってたよ。
「え? す、スキル?」
けど礼儀として驚いた振りをしてやらなければ。
「そう、俺のスキルは【金剛体】全身をダイヤモンド並の固さにできる無敵の防御スキルなんです!!」
凄いフラグが立った気がします。
「俺のスキルは【魔法威力倍化】です。魔法の威力を倍に出来ます」
多分この世界的には凄いスキルなんだろうな。
「「俺達が居れば魔物なんて怖くはありませんよ」」
だ・め・だ。
どう考えてもフラグが立っているとしか思えないノリだ。
どうしよう。どうやすれば俺が日本人では無いとバレずにこのフラグを降ろさせる事が出来るんだ?
「ケンジのスキルで敵をおびき寄せ攻撃を集中させている間に、俺の魔法で敵を一網打尽にします。最悪ケンジが囮になっている間に山脈を越える事だって出来ます。攻撃を無効化できるケンジとは山脈を越えた先の町で合流すれば良いんですからね」
そう言われるとイケるような気がしてきた。
うーん、やはり山越えに挑んだ方が良いのかなぁ。
っつーのにも理由がある。
それはこの町に風俗が無いからだ。
いや、俺が行く訳じゃない。
ケンジとタカユキが俺に対する下心を暴走させない為だ。
だがこの町は町と名乗ってはいるものの、実際にはちょっと大きい村程度だ。
食堂と宿屋以外は品揃えの悪い道具屋がある位だ。
元々プルスア山脈越えはそれほど厳しい道のりではない。
なので山脈を越える為の食料を確保する為、山脈を越えるには夜遅くなった時の宿が欲しい時、メシコン国から山脈を越えてやって来た旅人が疲れを癒す為の宿。
その程度の用途でしかない村だったからだ。
だからこれ以上2人に禁欲生活をさせるのは不味い。
「分かりました。山脈越えをしましょう」
俺は決断した。
◆
そして死んだ。
山脈の魔物は俺達の想像を遥かに越える強さを持っていた。
ケンジの【金剛体】を軽々と破壊する威力のツメ。
タカユキの【魔法威力倍化】で強化した魔法を容易に防ぐ鱗。
魔物の王ドラゴンに俺達はあっさりと殺された。
「グギャウウウウ(いやー、まいったねぇ)」
そして俺はドラゴンの体に憑依してしまったのだった。
魔物にも憑依できたんだねー。ビックリだ。
旅の疲れを癒す為、そして山越えをする為の物資の補給をする目的で寄った町で、俺達はそんな警告を受けた。
「魔物?」
「そーだー。あの魔物が現れちまってからっちゅーもの、すっかり山ぁ登るモンはおらんくなっちまったよ。みーんな魔物に襲われて向こうから山を越えて来るモンもおらんくなっちまった」
宿の店主は商売上がったりだと手を振りながら椅子の背もたれにもたれかかる。
ふむ、かなり危険な魔物みたいだな。
「冒険者ギルドや騎士団にたのまないのかよ?」
タカユキがズバリ確信を突いた質問をする。
「もちろん頼んださぁ。けんどギルドも騎士団も負けちまった。騎士団は適当な事言って我慢して迂回しろって言って帰っちまったよ。ギルドは賞金かけちゃいるが、たまに身の程知らずの冒険者が向かっていってそのまま帰ってこねぇ有様よ」
「迂回ルートはどんな道なんですか?」
迂回ルートが安全なら無理をする必要も無いだろう。
「迂回するにゃあメリケ国との国境の近くを通る必要があるよ。あっちは麓にマッドベアーの群れさいるから、道もそれを避けてグネグネしとるんよ。山越えずにメシコンさいくんなら、馬さ居ても半年はかかるかもなぁ」
よし、迂回は無しだ。半年もメリケ国の近くを歩くなんてゴメンである。
◆
宿に荷物を置いた俺達は食堂で食事をしながら今後の計画を立てていた。
「方針としては三つですね。①魔物を倒して山を越える。②迂回する。③待機する」
「待機ってどういう意味だよ」
タカユキがケンジに方針の意図を問う。
「店主が言っていたろ。魔物は他所から流れてきたと。プルスア山脈の主になれる位の魔物なら天敵から逃げてきたって事はないだろう。だとすれば、待っていればいつか出て行くかもしれない。そう言う意味だ」
成程、わざわざ危険を危険を冒す必要は無いと言う事か。
確かにその通りだ。
「私としては迂回は選びたくありませんね。山越えか待機を希望します」
「山越えか待機ですか。では数日程この町で様子を見て、それでどうなるか見てみましょうか」
「そうですね」
俺達はケンジの案を採用して暫くこの町に滞在する事にした。
◆
「居なくなりませんねぇ」
「そうですねぇ」
「出ていかねぇなぁ」
魔物が町から出て行ったという情報が届く気配は無かった。
俺達がこの町に滞在して早10日。
その間にも魔物退治に向かう人達は居たし、少しだけ入って魔物がいるのか調べてくると探索に向かった人達も戻ってこなかった。
つまり全滅だ。
山へと向かった者達は決して弱くない。関係者の話では結構な実力者だって居たらしい。
だが戻ってこなかった。
その事から魔物が相当な強さであると言う事が理解できた。
正直山越えもしたくないなぁ。
ここは一旦道を戻って別の国に向かうのも手ではないだろうか?
その事を2人に言おうとした時だった。
「なら俺達で倒すしかないな」
「だな」
こともあろうにタカユキ達は魔物を倒すと言い出した。
「え?」
「イルミナさん、貴方には秘密にしていましたが、実は俺達はスキル持ちだったんですよ」
知ってたよ。
「え? す、スキル?」
けど礼儀として驚いた振りをしてやらなければ。
「そう、俺のスキルは【金剛体】全身をダイヤモンド並の固さにできる無敵の防御スキルなんです!!」
凄いフラグが立った気がします。
「俺のスキルは【魔法威力倍化】です。魔法の威力を倍に出来ます」
多分この世界的には凄いスキルなんだろうな。
「「俺達が居れば魔物なんて怖くはありませんよ」」
だ・め・だ。
どう考えてもフラグが立っているとしか思えないノリだ。
どうしよう。どうやすれば俺が日本人では無いとバレずにこのフラグを降ろさせる事が出来るんだ?
「ケンジのスキルで敵をおびき寄せ攻撃を集中させている間に、俺の魔法で敵を一網打尽にします。最悪ケンジが囮になっている間に山脈を越える事だって出来ます。攻撃を無効化できるケンジとは山脈を越えた先の町で合流すれば良いんですからね」
そう言われるとイケるような気がしてきた。
うーん、やはり山越えに挑んだ方が良いのかなぁ。
っつーのにも理由がある。
それはこの町に風俗が無いからだ。
いや、俺が行く訳じゃない。
ケンジとタカユキが俺に対する下心を暴走させない為だ。
だがこの町は町と名乗ってはいるものの、実際にはちょっと大きい村程度だ。
食堂と宿屋以外は品揃えの悪い道具屋がある位だ。
元々プルスア山脈越えはそれほど厳しい道のりではない。
なので山脈を越える為の食料を確保する為、山脈を越えるには夜遅くなった時の宿が欲しい時、メシコン国から山脈を越えてやって来た旅人が疲れを癒す為の宿。
その程度の用途でしかない村だったからだ。
だからこれ以上2人に禁欲生活をさせるのは不味い。
「分かりました。山脈越えをしましょう」
俺は決断した。
◆
そして死んだ。
山脈の魔物は俺達の想像を遥かに越える強さを持っていた。
ケンジの【金剛体】を軽々と破壊する威力のツメ。
タカユキの【魔法威力倍化】で強化した魔法を容易に防ぐ鱗。
魔物の王ドラゴンに俺達はあっさりと殺された。
「グギャウウウウ(いやー、まいったねぇ)」
そして俺はドラゴンの体に憑依してしまったのだった。
魔物にも憑依できたんだねー。ビックリだ。
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