17 / 20
16
しおりを挟む
「市長! よろしいのですか? 私の方で対応しますよ?」
「ええ、構わないわ」
そのやり取りに驚く小春。
「し、市長? おばさんが?」
「初めまして。市長の早島璃子と申します。市民の方がわからないようでは私もまだまだですね。どうぞこちらでお話しを伺いましょう」
「は、はい(市長って女だったっけ・・・・・・)」
ゴリ押ししたことなど忘れ、どぎまぎしながら後をついていく小春。
『気圧されるでない! お前には吾がついておるぞ』
七緒の声に励まされた小春は、ソファーに座るなり話し始めました。
「さっきは失礼な事を言ってごめんさい。こうなったら全部話しちゃいますが、信じてもらえますでしょうか」
市長が苦笑いを浮かべます。
「それは話を聞いてみないとわからないわね。まずは話してみてくれる?」
小春は今までのことを全て話しました。
七緒が入ってきたことも全て、包み隠さず曝け出します。
市長はずっと黙って聞いていました。
「その七緒さんは今もあなたの中にいるの?」
「はい、います。私の中で語り掛けています。市長の許可を待っています」
「そうですか……わかりました。あなたの話を信じましょう。30分の延長を認めます。教育委員会の方には、私から話しておきます」
小春が目を見開きました。
「あっ……ありがとうございます!」
ひとつ頷いてから市長が口を開きました。
「ただし条件があります。発表会には私も参加します。そしてあなたの舞の後、私も一緒に黙祷させてください。市の代表者として、過去の悲しい出来事で犠牲になった方々に哀悼の意を表したいのです」
「もちろんです! 市長といえばこの地域のお殿様ですよね? お殿様自ら祈って下さるのなら、きっと犠牲となった方達も喜んでくれますね。そうかぁ今の時代は女性でも城主になれるんだぁ……すごいよね、七緒」
何度も頭を下げて礼を言う小春を見送りながら、市長が呟きました。
「お殿様かぁ。面白い子ねぇ」
ニヤニヤする市長に秘書が言いました。
「市長、あのような荒唐無稽な話、信じられたのですか?」
「問題はそんなことではないでしょ? あの子の眼を見ましたか? まっすぐに自分の信じたことを貫く覚悟をもった眼だったわ。あんな眼をした若者を妨げるような大人がこの国を疲弊させていくのです。私も元は教員。しかし久しぶりにあんな眼をした子をみたわね。ああいう子が増えてくれるようにますます頑張らなくちゃ」
庁舎を出ても興奮冷めやらぬ小春に七緒が話しかけます。
『小春、見事じゃ。お前のその行動力……我が家臣に迎えたいほどじゃな』
小春が照れたように言いました。
『私は七緒の気持ちを伝えただけだよ。七緒の思いがそれだけ強かったって事だね』
『何か礼をせねばならんのぅ』
『え? 何かくれるの? 昔の大判小判とか? ハハハ!』
屈託なく笑う小春に七緒は言いました。
『ことが成れば、きっと吾は成仏できるであろう。その時には必ずやお前に礼をしようそ』
『成仏? ああ……そうだよね。七緒はずっと独りぼっちだったもんね』
『独りぼっちとな? いや、吾にはお前がおったぞ? お前の中は実に心地よい』
『じゃあずっといて良いよ。私も独りぼっちだから』
その声には答えない七緒。
小春は頑張った自分が誇らしく、七緒が黙ったことに気付いてはいませんでした。
「ええ、構わないわ」
そのやり取りに驚く小春。
「し、市長? おばさんが?」
「初めまして。市長の早島璃子と申します。市民の方がわからないようでは私もまだまだですね。どうぞこちらでお話しを伺いましょう」
「は、はい(市長って女だったっけ・・・・・・)」
ゴリ押ししたことなど忘れ、どぎまぎしながら後をついていく小春。
『気圧されるでない! お前には吾がついておるぞ』
七緒の声に励まされた小春は、ソファーに座るなり話し始めました。
「さっきは失礼な事を言ってごめんさい。こうなったら全部話しちゃいますが、信じてもらえますでしょうか」
市長が苦笑いを浮かべます。
「それは話を聞いてみないとわからないわね。まずは話してみてくれる?」
小春は今までのことを全て話しました。
七緒が入ってきたことも全て、包み隠さず曝け出します。
市長はずっと黙って聞いていました。
「その七緒さんは今もあなたの中にいるの?」
「はい、います。私の中で語り掛けています。市長の許可を待っています」
「そうですか……わかりました。あなたの話を信じましょう。30分の延長を認めます。教育委員会の方には、私から話しておきます」
小春が目を見開きました。
「あっ……ありがとうございます!」
ひとつ頷いてから市長が口を開きました。
「ただし条件があります。発表会には私も参加します。そしてあなたの舞の後、私も一緒に黙祷させてください。市の代表者として、過去の悲しい出来事で犠牲になった方々に哀悼の意を表したいのです」
「もちろんです! 市長といえばこの地域のお殿様ですよね? お殿様自ら祈って下さるのなら、きっと犠牲となった方達も喜んでくれますね。そうかぁ今の時代は女性でも城主になれるんだぁ……すごいよね、七緒」
何度も頭を下げて礼を言う小春を見送りながら、市長が呟きました。
「お殿様かぁ。面白い子ねぇ」
ニヤニヤする市長に秘書が言いました。
「市長、あのような荒唐無稽な話、信じられたのですか?」
「問題はそんなことではないでしょ? あの子の眼を見ましたか? まっすぐに自分の信じたことを貫く覚悟をもった眼だったわ。あんな眼をした若者を妨げるような大人がこの国を疲弊させていくのです。私も元は教員。しかし久しぶりにあんな眼をした子をみたわね。ああいう子が増えてくれるようにますます頑張らなくちゃ」
庁舎を出ても興奮冷めやらぬ小春に七緒が話しかけます。
『小春、見事じゃ。お前のその行動力……我が家臣に迎えたいほどじゃな』
小春が照れたように言いました。
『私は七緒の気持ちを伝えただけだよ。七緒の思いがそれだけ強かったって事だね』
『何か礼をせねばならんのぅ』
『え? 何かくれるの? 昔の大判小判とか? ハハハ!』
屈託なく笑う小春に七緒は言いました。
『ことが成れば、きっと吾は成仏できるであろう。その時には必ずやお前に礼をしようそ』
『成仏? ああ……そうだよね。七緒はずっと独りぼっちだったもんね』
『独りぼっちとな? いや、吾にはお前がおったぞ? お前の中は実に心地よい』
『じゃあずっといて良いよ。私も独りぼっちだから』
その声には答えない七緒。
小春は頑張った自分が誇らしく、七緒が黙ったことに気付いてはいませんでした。
3
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

さいごの法律
赤木 さわと
児童書・童話
へんてこになっていく今の世の中見ていてたまらなくなって書きました
過激な童話です
みんな死んじゃいます
でも…真実は一つです
でも…終末の代わりに産まれるものもあります
それこそが、さいごの法律です
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ママのごはんはたべたくない
もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん
たべたくないきもちを
ほんに してみました。
ちょっと、おもしろエピソード
よんでみてください。
これをよんだら おやこで
ハッピーに なれるかも?
約3600文字あります。
ゆっくり読んで大体20分以内で
読み終えると思います。
寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。
表紙作画:ぽん太郎 様
2023.3.7更新


悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる