25 / 38
9月3日火曜日 【ディアファン】
しおりを挟む
久しぶりに日記を開いて、やっと再開したんだなって実感したよ。
手紙も良いけれど、やっぱり日記っていうのは読み返せるし、より親密な感じがして心が弾みます。
昨日はるかちゃんの学校にいました。
はるかちゃんの頑張る姿を見て、なんだか誇らしくなって、一生懸命に発言する君に応援の声をかけそうになってしまったよ。
ボクたちの意見は概ね君が昨日言った通りなんだ。
無理に制服を着る必要はないと思っているし、安全の確保のための巡回員だと思ってる。
ボクたち透明人間は、そこにいるという認識を持ってもらいたいとは考えていないんだ。
むしろ気付かれない方が安心できるしね。
だから「クラスメイトに透明人間がいるけれど見たことはない」で正解なんだよ。
手を上げても当てられることはないよね? それでいいんだ。
もしわからないことがあって、そのままにしたくないと思えば、その子は声を出すだろうし、もし出せなくても後で職員室に聞きに行くと思う。
それって透明人間だからじゃないでしょ? きっと不透明な子でもそうするでしょ?
だから特別に気にかけて貰う必要は無いんだよ。
あの職員会議のあと、校長先生と教頭先生、6年と4年の学年主任と担任になる二人の先生が集まったんだ。
こちらからは巡回員になる二人と、ヴィレッジの代表と生徒の親が出席した。
これは君の発言があったからこその集まりだ。
結論から言うと、会議室で相対した不透明人間たちの戸惑いが凄かった(笑)
まあ当たり前だよね。
でも彼らは(というか、あの法案を通した人たちは)それを子供にさせようとしている。
それを言ったら愕然とした表情を浮かべたんだよね。
改めて現実を直視したって感じかな。
彼らの戸惑いは理解できるし、普通のリアクションだと思う。
だから子供たちが同じことをするのも簡単に想像できるし、先生たちにそれを咎める権利はないよね。
だから「ちゃんと登校はするけれど、関わろうとはしなくて良いですよ」って言ったよ。
もし必要ならこちらから先生に言いますよって言ったら、あからさまに安心した顔をしてたから笑ってしまった。
戸惑っているのは同じなんだよね。
それと、報告が遅くなったけれどボクは巡回員になることにしました。
でも不定期に交代することになったから、必ずしも毎日学校にいるわけではないんだ。
誰かは必ず付き添っているっていう感じだね。
主には保護者が行くと思うけれど、これは内緒だよ。
ボクらは幼いころから声を出さないという訓練を受けているんだ。
だからめったに発言はしないだろうし、困ったことでも余程のことでないと言わない。
遠慮とかではなく、習慣としてそうなんだということは理解してほしいな。
授業中に発言しなくても悩まないでほしいんだ。
それは一応伝えたけれど、あまり理解はしてない感じだったから念のために君にも伝えておきます。
もし相談されたらそう言ってあげて。
でもそうなると、なぜ君が透明人間のことに詳しいのかってことになると思う。
知り合いがいるって言っても構わないけれど、きっと根掘り葉掘り聞かれちゃうよね。
だから無理はしないでほしい。
もしそんな話になったら、奈穂美さんから聞いたっていうのが一番無難な回答だと思うよ。
不透明は人たちはボクら透明人間のことはほとんど知らないでしょ?
でも透明人間たちは意外と不透明な人たちのことを理解しているんだ。
だってずっとその中で生きてきたんだもの。
だからそちらの習慣に合わせることには慣れているんだよ。
それにボクら透明人間は絶対にルールは守るから、その点は信じてほしいと思う。
なぜそんなことを言うかって?
きっと学校に行ったらわかるよ。
千葉の学校で問題が起こっているんだよね。
ボクらから言わせたらバカバカしいの一言だけれど、証明のしようがないのも確かだから。
「透明人間に着替えを覗かれました」
「透明人間にお金を盗られました」
「透明人間に背中を押されて階段から落ちました」
絶対に無いから(笑)
まあ信じてもらうしかないのだけれど。
でもこんなことが続くと、きっとお互いのために良くないと思う。
どうなる事やら……
はるかちゃん、無理はしないでね。
立場を悪くしてまでボクらを庇う必要はないから。
何か困ったことがあったらすぐに言ってね。
ボクが登校する日は、百葉箱に月桂樹の枝を差しておきます。
なぜ月桂樹なのか……それはまた次回。
ではまたね。
次回も楽しみにしています。
手紙も良いけれど、やっぱり日記っていうのは読み返せるし、より親密な感じがして心が弾みます。
昨日はるかちゃんの学校にいました。
はるかちゃんの頑張る姿を見て、なんだか誇らしくなって、一生懸命に発言する君に応援の声をかけそうになってしまったよ。
ボクたちの意見は概ね君が昨日言った通りなんだ。
無理に制服を着る必要はないと思っているし、安全の確保のための巡回員だと思ってる。
ボクたち透明人間は、そこにいるという認識を持ってもらいたいとは考えていないんだ。
むしろ気付かれない方が安心できるしね。
だから「クラスメイトに透明人間がいるけれど見たことはない」で正解なんだよ。
手を上げても当てられることはないよね? それでいいんだ。
もしわからないことがあって、そのままにしたくないと思えば、その子は声を出すだろうし、もし出せなくても後で職員室に聞きに行くと思う。
それって透明人間だからじゃないでしょ? きっと不透明な子でもそうするでしょ?
だから特別に気にかけて貰う必要は無いんだよ。
あの職員会議のあと、校長先生と教頭先生、6年と4年の学年主任と担任になる二人の先生が集まったんだ。
こちらからは巡回員になる二人と、ヴィレッジの代表と生徒の親が出席した。
これは君の発言があったからこその集まりだ。
結論から言うと、会議室で相対した不透明人間たちの戸惑いが凄かった(笑)
まあ当たり前だよね。
でも彼らは(というか、あの法案を通した人たちは)それを子供にさせようとしている。
それを言ったら愕然とした表情を浮かべたんだよね。
改めて現実を直視したって感じかな。
彼らの戸惑いは理解できるし、普通のリアクションだと思う。
だから子供たちが同じことをするのも簡単に想像できるし、先生たちにそれを咎める権利はないよね。
だから「ちゃんと登校はするけれど、関わろうとはしなくて良いですよ」って言ったよ。
もし必要ならこちらから先生に言いますよって言ったら、あからさまに安心した顔をしてたから笑ってしまった。
戸惑っているのは同じなんだよね。
それと、報告が遅くなったけれどボクは巡回員になることにしました。
でも不定期に交代することになったから、必ずしも毎日学校にいるわけではないんだ。
誰かは必ず付き添っているっていう感じだね。
主には保護者が行くと思うけれど、これは内緒だよ。
ボクらは幼いころから声を出さないという訓練を受けているんだ。
だからめったに発言はしないだろうし、困ったことでも余程のことでないと言わない。
遠慮とかではなく、習慣としてそうなんだということは理解してほしいな。
授業中に発言しなくても悩まないでほしいんだ。
それは一応伝えたけれど、あまり理解はしてない感じだったから念のために君にも伝えておきます。
もし相談されたらそう言ってあげて。
でもそうなると、なぜ君が透明人間のことに詳しいのかってことになると思う。
知り合いがいるって言っても構わないけれど、きっと根掘り葉掘り聞かれちゃうよね。
だから無理はしないでほしい。
もしそんな話になったら、奈穂美さんから聞いたっていうのが一番無難な回答だと思うよ。
不透明は人たちはボクら透明人間のことはほとんど知らないでしょ?
でも透明人間たちは意外と不透明な人たちのことを理解しているんだ。
だってずっとその中で生きてきたんだもの。
だからそちらの習慣に合わせることには慣れているんだよ。
それにボクら透明人間は絶対にルールは守るから、その点は信じてほしいと思う。
なぜそんなことを言うかって?
きっと学校に行ったらわかるよ。
千葉の学校で問題が起こっているんだよね。
ボクらから言わせたらバカバカしいの一言だけれど、証明のしようがないのも確かだから。
「透明人間に着替えを覗かれました」
「透明人間にお金を盗られました」
「透明人間に背中を押されて階段から落ちました」
絶対に無いから(笑)
まあ信じてもらうしかないのだけれど。
でもこんなことが続くと、きっとお互いのために良くないと思う。
どうなる事やら……
はるかちゃん、無理はしないでね。
立場を悪くしてまでボクらを庇う必要はないから。
何か困ったことがあったらすぐに言ってね。
ボクが登校する日は、百葉箱に月桂樹の枝を差しておきます。
なぜ月桂樹なのか……それはまた次回。
ではまたね。
次回も楽しみにしています。
2
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
野良インコと元飼主~山で高校生活送ります~
浅葱
ライト文芸
小学生の頃、不注意で逃がしてしまったオカメインコと山の中の高校で再会した少年。
男子高校生たちと生き物たちのわちゃわちゃ青春物語、ここに開幕!
オカメインコはおとなしく臆病だと言われているのに、再会したピー太は目つきも鋭く凶暴になっていた。
学校側に乞われて男子校の治安維持部隊をしているピー太。
ピー太、お前はいったいこの学校で何をやってるわけ?
頭がよすぎるのとサバイバル生活ですっかり強くなったオカメインコと、
なかなか背が伸びなくてちっちゃいとからかわれる高校生男子が織りなす物語です。
周りもなかなか個性的ですが、主人公以外にはBLっぽい内容もありますのでご注意ください。(主人公はBLになりません)
ハッピーエンドです。R15は保険です。
表紙の写真は写真ACさんからお借りしました。
花に祈り
海乃うに
ライト文芸
森に囲まれたヴィラ・フロレシーダは、すこし離れたところに位置する大きな町ジャルディン・ダ・ライーニャの名家バレット家が管理する静かで美しい村である。ある日その村にエリザベス・バレットというひとりの女性が越してくることになった。バレット家の当主ローズ・バレットの手紙によればエリザベスは療養のため自然の多いところで暮らす必要があるのだという。しかし実際にやってきたエリザベスには病気らしいところは見受けられない。彼女はすこしずつ村人たちと打ち解けヴィラ・フロレシーダでの暮らしを楽しんでいた。
エリザベスの身の回りの世話係には村いちばんの料理上手と言われるアゼリア・メロが選ばれた。アゼリアの料理と優しさに触れるうち、エリザベスはすこしずつ彼女に心を開くようになってゆき、またエリザベスの身の上を知ったアゼリアはなんとか彼女の心に寄り添おうとする。
ある日、アゼリアは春になったら一緒に雪を見ようとエリザベスに持ちかけた。雪の積もらないヴィラ・フロレシーダでそれも春に、ということにエリザベスは首を傾げたが、約束の日アゼリアはエリザベスを連れ出した。目の前に広がる雪景色のあまりの美しさに胸を打たれたエリザベスは、その景色を見せてくれたアゼリアとの出会いに感謝するのだった。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
僕が伯爵と呼ばれる7日の間に
五十五 望 <いそい ぼう>
ライト文芸
固く閉ざされた館の扉が1年に2日間だけ開く、レ・ジュルネ・デュ・パトリモアンヌ。
その日、パリ市内に位置する17世紀の城館を訪れたその人は、悲鳴を上げた。
———なかったからだ。そこにあるべき絵が。
自分のジェンダー感覚の違和感に揺らぐ一人の男と、彼が唯一執着を覚える17世紀の女性。
そしてその面影を持つ、謎の女……
そこに生まれるものは、果たして愛なのか? それとも……
バロック時代に描かれた1枚の肖像画を巡って交錯する、迷える男女の心の物語を、作者オリジナルの挿絵を交えて紡ぎ出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる