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婚姻して初めての王太子妃誕生日パーティーの席上で、王太子夫妻の留学が発表された。
国王の『少し長めの新婚旅行だと思ってくれ』という言葉に、祝いに駆け付けた貴族たちが拍手を送る。
揃いの衣装でファーストダンスを踊る王太子夫妻の顔はにこやかだったが、交わしている言葉はなかなかシビアだ。
「ルル、勝手に決めてごめん。どうしてもモネ公爵が滞在されている間にって焦ったんだ」
ルルーシアは貼り付けた笑顔のままで言葉を吐いた。
「そうね、そういうところよ。あなたはいつもそう。言葉が足りないの。それに思いついたらすぐ動くのも悪い癖だわ。動く前にもう一度考えるくらいしてほしいものだわね」
アマデウスがきゅっと唇を萎めた。
「うん、そうだよね。僕の悪い癖だ。でも今回は……どうか許してほしい」
「だからもう返事はしたわ」
「勝手にしろって?」
「そうよ、どうぞご勝手になさってくださいまし。私も勝手にさせていただくわ。そしてお互いに実りのある1年にしましょう。1年なんてあっという間でしょう? 私は憧れの学生生活にワクワクしているの。先ほどおじい様の側近に聞いたのだけれど、男女共学で全寮制なんですって」
「男女共学……全寮制……アリアも同じ学校だよね?」
「ええ、アリアとは同室にしてもらえるよう頼んだわ、アリアもその方が良いって言ってくれたし」
「だったら安心だ。僕も全力で頑張るよ」
「1年間は会わないわ」
「うっ……」
「それが暴走癖のあるあなたへの罰よ」
「う……わかった」
「もしこの1年であなたが浮気をしたら、そこでおしまいにしましょう」
「君は? ルルだって好きな人が……いや、ダメだ。ルルが僕以外の男に心を移すなんて許せないよ。もしそんなことがあっても絶対に取り戻してやる」
「まあ、殿下ったら」
「ねえルル。ダンスが終わったら少し時間をくれないか? ルルに贈りたいものがあるんだ」
「あら! お誕生日のプレゼントかしら?」
「そうだよ。それを受け取ってからでいいから聞いてほしことがある」
「先にお伺いしても?」
「うん、1年後の僕がルルの心を掴めたら、本当の夫婦になってほしい」
ルルーシアの顔が一瞬で真っ赤に染まった。
「そして、プレゼントが気に入ってくれたなら……僕を名前で呼んでくれないか」
「わかりました。楽しみにしておきます」
曲が終わり、貴族たちが次々にホールへと流れ込んできた。
その波に身を任せながら王族席の方へと移動するふたり。
入れ違うようにホールへと向かったのはアランとアリアだ。
今日のアリアは侯爵令嬢らしく着飾っている。
「アリア、俺はこれからの1年で王太子殿下を本当の意味で守れる強さを身につけてみせる。君も頑張ってくれ」
「もちろんよ。この命に代えてもルルを守るわ。でもルルが憧れの学生に戻れるなんて、本当に嬉しい。彼女は古典文学を選択するって言ってたけれど、私はどうしようかなぁ」
「どんな学部があるの?」
「医学と経済学、古典文学と数学だったかな」
「どれに興味がある? まあ数学は無いだろうけど」
「強いて言うなら経済かな。古典文学でも良いんだけれど、少しくらいはルルから離れてあげないと、彼女も息苦しくなっちゃうでしょ?」
「そうかもね。まあ心配しなくてもモネ公爵の護衛がびっしりついてるだろうし、メリディアン侯爵も対策はするだろうからね」
「あなたと1年も離れるのは初めてね」
「うん……ねえアリア。戻ってきたら俺と結婚して欲しい。ロックス侯爵が俺では力不足だと言ったとしても、俺の妻になってくれ」
「喜んでお受けするわ。でも私はロックス侯爵家の一人娘よ。あの家を離れるわけにはいかないの。だから絶対に頑張ってパパに認めさせてちょうだい」
「ああ、任せとけ。絶対に幸せだとお前に言わせてみせるよ」
「楽しみにしているわ」
急に動きを止めたアランが胸ポケットから小さな箱を取り出した。
「アリア、愛している」
箱から取り出したのは美しい宝石のついた指輪だった。
それをアリアの指にはめているアランを見ながら、ロックス侯爵が言った。
「あっ! あの野郎! やりやがった」
「おめでとう。立派な跡継ぎができたじゃないか。しかもその当人を舅であるお前が鍛えるなんて、アランが気の毒だとしか言いようがない」
「フンッ! 情け容赦という言葉を捨てるぞ! 俺は」
フェリシア侯爵が吹き出しながらいう。
「お前が情け容赦という言葉を知っていたということの方が驚きだが、まあ死なない程度に頼むよ」
「ああ、任せておけ。死の淵は覗かせるがな。それにしてもあの指輪、給料の三か月分くらいの価値はあるんだろうな?」
「心配するな。ワートルから買い取った鉱山で、最近また良質のダイヤが出るようになったんだ。偶然って恐ろしいよな?」
メリディアンとロックスが同時にシラケた目でフェリシアを見た。
国王の『少し長めの新婚旅行だと思ってくれ』という言葉に、祝いに駆け付けた貴族たちが拍手を送る。
揃いの衣装でファーストダンスを踊る王太子夫妻の顔はにこやかだったが、交わしている言葉はなかなかシビアだ。
「ルル、勝手に決めてごめん。どうしてもモネ公爵が滞在されている間にって焦ったんだ」
ルルーシアは貼り付けた笑顔のままで言葉を吐いた。
「そうね、そういうところよ。あなたはいつもそう。言葉が足りないの。それに思いついたらすぐ動くのも悪い癖だわ。動く前にもう一度考えるくらいしてほしいものだわね」
アマデウスがきゅっと唇を萎めた。
「うん、そうだよね。僕の悪い癖だ。でも今回は……どうか許してほしい」
「だからもう返事はしたわ」
「勝手にしろって?」
「そうよ、どうぞご勝手になさってくださいまし。私も勝手にさせていただくわ。そしてお互いに実りのある1年にしましょう。1年なんてあっという間でしょう? 私は憧れの学生生活にワクワクしているの。先ほどおじい様の側近に聞いたのだけれど、男女共学で全寮制なんですって」
「男女共学……全寮制……アリアも同じ学校だよね?」
「ええ、アリアとは同室にしてもらえるよう頼んだわ、アリアもその方が良いって言ってくれたし」
「だったら安心だ。僕も全力で頑張るよ」
「1年間は会わないわ」
「うっ……」
「それが暴走癖のあるあなたへの罰よ」
「う……わかった」
「もしこの1年であなたが浮気をしたら、そこでおしまいにしましょう」
「君は? ルルだって好きな人が……いや、ダメだ。ルルが僕以外の男に心を移すなんて許せないよ。もしそんなことがあっても絶対に取り戻してやる」
「まあ、殿下ったら」
「ねえルル。ダンスが終わったら少し時間をくれないか? ルルに贈りたいものがあるんだ」
「あら! お誕生日のプレゼントかしら?」
「そうだよ。それを受け取ってからでいいから聞いてほしことがある」
「先にお伺いしても?」
「うん、1年後の僕がルルの心を掴めたら、本当の夫婦になってほしい」
ルルーシアの顔が一瞬で真っ赤に染まった。
「そして、プレゼントが気に入ってくれたなら……僕を名前で呼んでくれないか」
「わかりました。楽しみにしておきます」
曲が終わり、貴族たちが次々にホールへと流れ込んできた。
その波に身を任せながら王族席の方へと移動するふたり。
入れ違うようにホールへと向かったのはアランとアリアだ。
今日のアリアは侯爵令嬢らしく着飾っている。
「アリア、俺はこれからの1年で王太子殿下を本当の意味で守れる強さを身につけてみせる。君も頑張ってくれ」
「もちろんよ。この命に代えてもルルを守るわ。でもルルが憧れの学生に戻れるなんて、本当に嬉しい。彼女は古典文学を選択するって言ってたけれど、私はどうしようかなぁ」
「どんな学部があるの?」
「医学と経済学、古典文学と数学だったかな」
「どれに興味がある? まあ数学は無いだろうけど」
「強いて言うなら経済かな。古典文学でも良いんだけれど、少しくらいはルルから離れてあげないと、彼女も息苦しくなっちゃうでしょ?」
「そうかもね。まあ心配しなくてもモネ公爵の護衛がびっしりついてるだろうし、メリディアン侯爵も対策はするだろうからね」
「あなたと1年も離れるのは初めてね」
「うん……ねえアリア。戻ってきたら俺と結婚して欲しい。ロックス侯爵が俺では力不足だと言ったとしても、俺の妻になってくれ」
「喜んでお受けするわ。でも私はロックス侯爵家の一人娘よ。あの家を離れるわけにはいかないの。だから絶対に頑張ってパパに認めさせてちょうだい」
「ああ、任せとけ。絶対に幸せだとお前に言わせてみせるよ」
「楽しみにしているわ」
急に動きを止めたアランが胸ポケットから小さな箱を取り出した。
「アリア、愛している」
箱から取り出したのは美しい宝石のついた指輪だった。
それをアリアの指にはめているアランを見ながら、ロックス侯爵が言った。
「あっ! あの野郎! やりやがった」
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「フンッ! 情け容赦という言葉を捨てるぞ! 俺は」
フェリシア侯爵が吹き出しながらいう。
「お前が情け容赦という言葉を知っていたということの方が驚きだが、まあ死なない程度に頼むよ」
「ああ、任せておけ。死の淵は覗かせるがな。それにしてもあの指輪、給料の三か月分くらいの価値はあるんだろうな?」
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