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 側近たちが協力して準備万端整えたお陰で、滞りなくロマニア国との会議は終了し、大きな行事を無事に終えた褒美として、王太子夫妻と側近たちは三日間の休暇を賜った。
 さっそく実家に戻ったアリアが父親に捲し立てた。

「どうやら変な欲が出てきたみたい。でもまだ具体的には動かないわ。早く処理しないとメリディアンスイーツが思う存分食べられないのに!」

「思ったより行動が遅いな。お前が相当牽制していたんだろう」

「牽制って言うか、ふたりになるチャンスをつぶしていただけよ。あっちの動きは?」

「怪しさ満載だが、証拠なしってところだ」

 話しているところに私服のアランとマリオがやってきた。

「ご苦労だな。掴めたか?」

「ええ、このところ頻繫に「ばったり出会って立ち話」をしているようです」

 そう言ったアランにアリアが聞く。

「この休暇でカレンは養子家に行かなくちゃいけないようにしたから、動くならその後だと思うわ」

 マリオが呆れた声を出した。

「かなり良くできたストーリーだったけれど、ふたりはすぐに齟齬に気づいたんでしょ? 俺もおかしいとは思ったんだよね。だって王太子の動きが早すぎるもの。協力者がいないと絶対に無理だよ」

 ロックス侯爵が笑いながら言った。

「そりゃそうさ。自分の領地を売ろうとした王太子に「側妃にするのが一番良い」と助言した奴が全て段取りしてから誘いこんだんだもの」

「そこまでしてルルーシア様との仲を裂きたかったってことですよね」

 ロックス侯爵の呆れたような声に、マリオが顔を向けた。

「自分の娘をねじ込む魂胆だろうが、最初は欲が無かったサマンサ……いや、今はカレンも、ズルいことを考え始めたんだろうな。でもまだ迷いがあるのか動きが中途半端だよ」

 アリアが頷く。

「うん。彼女はふたりが両片思いって知らないからね。ホントにじれったいわ」

「夜会でも変な動きをしてたもんな。さっさと動いてくれたら、こちらもやりようがあるが、視線を飛ばすだけじゃ咎めようがない」

 マリオが呆れたような声で言った。

「まあ殿下はまったく気付いていなかったけどね。それに彼女がどんなに頑張ってもルルーシア様とアリアに挟まれたんじゃ、大輪のバラの横に咲くぺんぺん草にしかなれないさ」

 アランが珍しく辛辣な言葉を吐いた。
 眉を下げて笑ったアリアが続ける。

「そう言えば見た? 宰相のところの娘。あの子は本当に昔から変わらないわよね」

 マリオが頷く。

「うん、本当に変わらない。あの子もアマデウス殿下の正妃候補だったんだろ?」

「そうよ。でも彼女はなぜか嫌がって辞退したのよね。宰相が慌てて取り消したけれど、後の祭りよ」

「身分で言えば君も候補じゃなかったの?」

「私は一人娘だから最初から枠外だったわ」

「なるほど……」

 ロックス侯爵が苦々しい顔をした。

「まだ諦めていなかったとはな」

 アランが肩を竦める。

「フェリシア家の調査では、正妃の仕事は無理だと判断した結果が今回の動きのようです」

 ロックス侯爵が溜息を吐いた。

「まずは殿下と噂のあった優秀な女子生徒を側妃にさせ、ルルちゃんと殿下の仲を裂くと同時に、我が娘を後釜にという筋書だろうが、なんともお粗末だよ。小者だが真面目に働くならそっとしておくつもりだったのに」

 マリオがロックスに聞いた。

「そもそもサマンサは目をつけられていたという事ですか?」

「そこはニワトリが先かタマゴが先かだが、おそらく殿下と仲のよい女子生徒がいるという噂を聞きつけて、利用できると思ったのだろうな。だから陰で変態に彼女を売り込んだのだろうさ。そしてあのクソ親がそれに乗った」

「しかし、それだけでサマンサが思うように動いたとは……ああ、なるほど。偶然を装って少しずつ誘導していったということですか。では今王宮で頻繫に「ばったり出会って立ち話」というのも指示出し?」

 アリアが頷いた。

「そういうこと。でもね、ふたりの会話を聞いたキャロが言っていたけれど、宰相はサマンサは本当に死んだって思っているみたい。バカなんじゃない?わざわざ目立つ髪色に誘導したっていうのに、お構いなしだもの。サマンサは諦めて、カレンを釣ろうとしているようだって聞いたわ」

「マジか……確かに良く化けてはいるけれど、普通分かるだろ?」

 アランがアリアを見る。

「彼女は乗るかな」

「乗ってくれないと計画がパァよ。苦労して泳がせているのに」

「乗る前にこちらにタレこむってこともあるんじゃない?」

 マリオが希望的見解を述べた。

「それなら情状酌量の余地はあるけれど、乗るなら殺す」

 ひゅっという音がマリオの口から洩れる。
 あとの三人は平然とした顔をしていた。
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