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「ごちそうさまでした」
アマデウスがそう言って立ち上がると、ルルーシアも一緒に立ち上がろうとした。
すぐに手を差し出したアマデウスに微笑みかけながら、ルルーシアがメントール伯爵に声を掛ける。
「本当に美味しくいただきましたわ。特産のハッカがサラダをとても爽やかにしてくれて、感動しました。それにメインもデザートも素晴らしくて、つい食べ過ぎてしまいましたもの」
メントール伯爵が嬉しそうな顔で答える。
「王太子妃殿下にそう言っていただけると、我らも心を尽くした甲斐がございます。この後は談話室へ移られますか?」
間髪入れずマリオが答えた。
「父上、我らは側近としての会合がございますので、談話室には参りますが、人払いをお願いします」
サマンサはアリアの指示でこの席には来ていない。
部屋に食事を運んだのもマリオという念の入れようだ。
「ああ、わかった。皆さんの足を引っ張らないようにお前もしっかり頑張りなさい」
頷いて出て行くマリオたちを見送ったメントール一家は、ポカンとした顔をしていた。
長兄が末娘の顔を見て言う。
「マリオってあんなにビシッとした顔だっけ?」
「ううん、マリオお兄様はどちらかと言うと、岩に打ち付けられて気を失った鱒のような目だったもの……驚いたわ」
母親が娘を𠮟る。
「いい加減になさい。そんなことを言うと、マリオと似ていると言われているあなたに返ってくるわよ」
妹が嫌そうな顔で食堂を出た。
それを追って兄も出て行くと、母親が夫に声を掛けた。
「あの青銀の髪の美人が、噂に聞く側妃になる方なのかしら……それにしては正妃様と仲良しみたいだったわね」
父親が妻を諫めた。
「めったなことを口にするなよ? 我が家は王の谷を守ることで安寧を約束されたしがない田舎貴族なんだ。マリオの将来の邪魔になるようなことは言うんじゃない。誰に何を聞かれてもみなさんお元気そうでしたとしか言わないことだ」
「ええ、もちろんですわ。谷を守るだけで貴族でいられるのですものね。それに谷に群生するハッカが領民の暮らしをささえてくれているのですから」
「我らは早く寝るとしよう。見ない聞かない言わないは、田舎貴族が生き残る大切な術だ」
使用人達にも早めに引き上げるように指示を出し、夜間警備は王宮の護衛達に任せて、メントール夫妻は寝室へと入っていく。
その頃2階の談話室に集まった6人は、神妙な顔をしていた。
「理解した? ルルーシア」
「うん、あなたのやろうとしていることは理解したけれど、サマンサ嬢は本当にそれでいいの?」
「はい、むしろそうしていただける方が嬉しいです」
「でも殿下はあなたのことがお好きでしょう? 側妃が亡くなってすぐに新しい側近とそういう仲になったとなれば、さすがの殿下も誹りを免れないわ」
アマデウスが大きな声を出した。
「ルル! 違うから!」
アリアが割って入る。
「はいはい、そこは追々頑張ってください。これを自業自得と申しますのよ? 話を戻しましょうか。この話を進めて構わないということで良いのかしら? 全員納得?」
全員が頷く中、ルルーシアだけが首をひねっていた。
「サマンサ嬢、本当にいいの?」
「はい、妃殿下。私の希望通りでございます」
「ルルーシアは何にそんなに拘っているの?」
アリアの声にルルーシアが答えた。
「何かしら? 自分でも良く分からないけれど……死んでしまうサマンサ嬢が良いと言うなら良いのでしょうね。でもその間の側近はどうするつもり?」
「大変優秀な王太子殿下ですもの、ほんの数か月なら私だけでも何とかなるわ。それに来てくださる文官たちもとても古参で優秀だと聞くし」
「アリアには苦労を掛けるわね」
「もちろんアランとマリオにも手伝ってもらうわ。良いでしょう?」
「もちろんだ」
「妃殿下の業務に支障がない限り全力で手伝うよ」
「じゃあ決まりね。そうなると、明日からの行事も全てサマンサはキャンセルってことで」
サマンサが頷いた。
アマデウスがそう言って立ち上がると、ルルーシアも一緒に立ち上がろうとした。
すぐに手を差し出したアマデウスに微笑みかけながら、ルルーシアがメントール伯爵に声を掛ける。
「本当に美味しくいただきましたわ。特産のハッカがサラダをとても爽やかにしてくれて、感動しました。それにメインもデザートも素晴らしくて、つい食べ過ぎてしまいましたもの」
メントール伯爵が嬉しそうな顔で答える。
「王太子妃殿下にそう言っていただけると、我らも心を尽くした甲斐がございます。この後は談話室へ移られますか?」
間髪入れずマリオが答えた。
「父上、我らは側近としての会合がございますので、談話室には参りますが、人払いをお願いします」
サマンサはアリアの指示でこの席には来ていない。
部屋に食事を運んだのもマリオという念の入れようだ。
「ああ、わかった。皆さんの足を引っ張らないようにお前もしっかり頑張りなさい」
頷いて出て行くマリオたちを見送ったメントール一家は、ポカンとした顔をしていた。
長兄が末娘の顔を見て言う。
「マリオってあんなにビシッとした顔だっけ?」
「ううん、マリオお兄様はどちらかと言うと、岩に打ち付けられて気を失った鱒のような目だったもの……驚いたわ」
母親が娘を𠮟る。
「いい加減になさい。そんなことを言うと、マリオと似ていると言われているあなたに返ってくるわよ」
妹が嫌そうな顔で食堂を出た。
それを追って兄も出て行くと、母親が夫に声を掛けた。
「あの青銀の髪の美人が、噂に聞く側妃になる方なのかしら……それにしては正妃様と仲良しみたいだったわね」
父親が妻を諫めた。
「めったなことを口にするなよ? 我が家は王の谷を守ることで安寧を約束されたしがない田舎貴族なんだ。マリオの将来の邪魔になるようなことは言うんじゃない。誰に何を聞かれてもみなさんお元気そうでしたとしか言わないことだ」
「ええ、もちろんですわ。谷を守るだけで貴族でいられるのですものね。それに谷に群生するハッカが領民の暮らしをささえてくれているのですから」
「我らは早く寝るとしよう。見ない聞かない言わないは、田舎貴族が生き残る大切な術だ」
使用人達にも早めに引き上げるように指示を出し、夜間警備は王宮の護衛達に任せて、メントール夫妻は寝室へと入っていく。
その頃2階の談話室に集まった6人は、神妙な顔をしていた。
「理解した? ルルーシア」
「うん、あなたのやろうとしていることは理解したけれど、サマンサ嬢は本当にそれでいいの?」
「はい、むしろそうしていただける方が嬉しいです」
「でも殿下はあなたのことがお好きでしょう? 側妃が亡くなってすぐに新しい側近とそういう仲になったとなれば、さすがの殿下も誹りを免れないわ」
アマデウスが大きな声を出した。
「ルル! 違うから!」
アリアが割って入る。
「はいはい、そこは追々頑張ってください。これを自業自得と申しますのよ? 話を戻しましょうか。この話を進めて構わないということで良いのかしら? 全員納得?」
全員が頷く中、ルルーシアだけが首をひねっていた。
「サマンサ嬢、本当にいいの?」
「はい、妃殿下。私の希望通りでございます」
「ルルーシアは何にそんなに拘っているの?」
アリアの声にルルーシアが答えた。
「何かしら? 自分でも良く分からないけれど……死んでしまうサマンサ嬢が良いと言うなら良いのでしょうね。でもその間の側近はどうするつもり?」
「大変優秀な王太子殿下ですもの、ほんの数か月なら私だけでも何とかなるわ。それに来てくださる文官たちもとても古参で優秀だと聞くし」
「アリアには苦労を掛けるわね」
「もちろんアランとマリオにも手伝ってもらうわ。良いでしょう?」
「もちろんだ」
「妃殿下の業務に支障がない限り全力で手伝うよ」
「じゃあ決まりね。そうなると、明日からの行事も全てサマンサはキャンセルってことで」
サマンサが頷いた。
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