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 話を終えた4人がロックス侯爵邸から出たころ、ルルーシアとアリアは絶品スイーツに舌鼓を打っていた。

「いや本当に美味し過ぎる。太ったらルルのせいだからね」

「アリアはもう少し太った方が良いのよ」

「あなたもね」

 何個目なのか本人たちにもわからない次のケーキを皿にとりながら、アリアがルルーシアに聞いた。

「ねえルル、学園はどうするつもり?」

「うん……正直言うと迷ってる。だって仲睦まじい二人を見るのは辛いもの」

「さすがにここまでルルを傷つけて、学園では今まで通りってことはないんじゃない?」

「だとしたら余計に拙いわよ。私に隠れて逢瀬を重ねるってことでしょう?」

「それもそうね……でも別れるかもよ?」

「側妃に迎えるのに?」

「ああ……そうよね……」

「でもね、アリア。私は結婚するしかないと思うの。殿下が婚約を破棄したいと仰るなら仕方がないと思ったのだけれど、側妃承認の書類を持ってこられたでしょう? 破棄する意思はないってことよね? だとしたら嫁ぐしかないってことよ」

「まあ王族の結婚なんてそんなもんだとは聞くけれど、あなた達は違うって思ってた」

「私もそう思ってた。独りきりで耐えるのは辛いからキャロを連れて行きたいところなんだけれど、彼女は男爵家でしょ? 王宮の侍女にはなれないのよね」

「優秀なのに出自でダメとか理不尽よね。だから私があなたの側近になろうと思うの」

「え? ロックス侯爵令嬢が側近に? あなたひとりっ子でしょうに」

「だからよ。どうせお婿さんを決められて家を継ぐんだもの。それまでの社会勉強だって言えばお父様は許して下さると思うの」

「私はありがたいけれど、側近試験は難しいって聞くわ」

「多分大丈夫。こう見えても侯爵令嬢ですからね。高位貴族のマナーはマスターしているし、近隣諸国の言葉も日常会話程度なら何とかなるわ。でも戦えと言われたら無理かな……」

「護衛はエディを連れて行くから心配ないわ。彼のお兄さまは近衛騎士として王宮にお務めだし、剣の腕も確かよ」

「オース卿なら安心ね」

「あなたと一緒なら私も頑張れるわ。それに側近になれば王宮に部屋も用意できるでしょ? もちろん通いでも構わないし」

「うん、頑張るわ」

 二人は手を取り合って笑顔で頷きあった。

「まずはアランにどんな試験か聞いてみるわ。あいつは小さい頃から愛想は無いけれど、頭だけは良いから、在学中に側近試験突破してるのよね。融通の利かないオタンコナスの朴念仁なのに頭だけは良いってホント残念な奴」

「彼は優秀よね。見た目も素晴らしいし」

「その優秀な奴がなんで止められなかったかなぁ」

「きっとそれだけ王太子殿下の恋心が強かったのでしょう。アランを責めては可哀想だわ」

「いや、あいつが全部悪い。私があなたの代わりに一発殴っておいたから安心して」

「まあ! アリアったら!」

 2人はコロコロと笑い合い、消えるようにスイーツが減っていく。

「ねえ、嫁ぐとなれば結婚式よね。ウェディングドレスってそろそろ決めないといけない時期でしょう? 王家が準備するの?」

「私は正妃だから王家というより結婚経費として国庫から出るわ。だからこそできるだけシンプルにしてあまり税金は使わないようにしようと思ってるの」

「まあルルーシアは美人だからあまりゴテゴテしない方が似合うかもね」

「そういうわけではないけれど、おととしの災害で国庫金がかなり減ってしまったの。災害なんていつ来るかわからないでしょう? 結婚式でお金を使うよりプールしておいた方が良いに決まってるけれど、さすがに王太子の結婚式が質素すぎるというのも対外的に拙いから、兼ね合いが難しいのよ」

「なるほどね。披露宴は豪華にするけれど、他の経費は抑えたいって事ね? だったらいっそドレスは実家で用意しますってのはどう? ガーデンパーティーにすれば料理が少なくても不自然じゃないし」

「ああ、それはアリかも。今度宰相にでも聞いてみるわ」

「でも侯爵様はとんでもない豪華なやつを選びそうよね……」

 何杯目かの紅茶に手を伸ばそうとしていた時、ルルーシアの部屋がノックされた。
 
「おいおい、若いお嬢さんがこんな遅くにスイーツ食べ放題かい? 美容に悪いぞ?」

「あら、お父様。お出かけでしたの? お夕食はお済になって?」

「いや、これからいただくよ。2人は済ませたのだろう?」

「ええ、お先にいただきましたわ」

「うん、食べられたのなら良かったよ。機嫌も気分も良さそうだね。安心した」

「お陰様でもう大丈夫ですわ。今日はこの部屋でアリアと一緒に眠るつもりなの。良いでしょう? お父様」

「もちろん構わないさ。ああ、アリア嬢、お父上にはお話ししてきたから安心してゆっくりすると良いよ」

 アリアがニコッと笑った。

「ありがとうございます。明日は休校日ですのでお言葉に甘えてゆっくりさせていただきますわ」

 メリディアン侯爵は笑顔で頷いて部屋を後にした。
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