17 / 77
17
しおりを挟む
メリディアン侯爵の視線に頷いたアランが続ける。
「お二人は昼休みや放課後などを利用して、星の話をなさっていました。サマンサ嬢の知識は驚くほど深く、殿下は話を聞きながらメモをとるほど傾聴しておられました。サマンサ嬢は話し相手ができたことが嬉しく、殿下は初めて対等に話せる友人を得たことをとても喜んでおられ、まわりの目が気にならないほど夢中で会話をなさっていました」
フェリシア侯爵が鋭い声を出した。
「まわりの目を気にすることなくだと? お前が諫めなくてはいかんだろうが!」
「何度もお諫めは致しましたが、殿下はサマンサ嬢を唯一の友だと言われ……自分が愛しているのはルルーシア嬢だけだから何の心配もないと仰いました。本当にお二人の間にあるのは共通の趣味を持つ者同士の友情だけだと……同じ本を一緒に見るため、適切な距離ではないこともしばしばありましたが、その度に注意はしておりましたが……」
「注意しても噂になった時点でお前の失態だ」
「はい……申し訳ございません」
ロックス侯爵が宥めるように言う。
「ちょっと落ち着けよ。それで? 夜に会っていたというのは本当のことなのか?」
アランが気まずそうに頷いた。
「はい。王宮の北の森にある展望台で星の観察をなさっていました。サマンサ嬢は伯爵邸の別館で乳母と2人で暮らしているそうで、夜に抜け出しても誰にも気付かれないと言っていました。観測に良い晴れた日や、流星が出る日などは王宮の馬車を遣わされて送迎を……」
「王太子自らが送迎を?」
「いえ、馬車を出すだけです。私はずっと王太子殿下の側に居ましたので間違いありません。現地集合で現地解散というのが暗黙のルールで、飲食もせずただひたすら星座の話をしておられました。誓って申し上げますが、2人きりになられたことは一度もありません」
「はぁぁぁ……まったく紛らわしいことをしてくれる。そのことは誰が知っているんだ?」
「裏門の守衛は知っています。あとは夜勤の使用人達でしょうか」
「その場にはお前しかいなかったのか?」
「はい、私だけです」
ドンとテーブルを叩いてメリディアン侯爵が声を荒げた。
「そこがダメなんだ! なぜ公にしない? せめて王宮の使用人を何人か控えさせておけばつまらん噂にはならんだろうが! 学園でもそうだ。王太子が星に興味があると示せば、専門の教師を雇うこともしただろうし、クラブ活動にもできたはずだ!」
ロックス侯爵が宥める。
「だからそれは王太子が隠したがったからだろ? ちょっと2人とも深呼吸しろ」
「あ……ああ、すまん」
フェリシア侯爵が続ける。
「まあいい、2人はただの友達だというお前の言葉を信じよう。もう一度聞くが、愛は無いのだな? 友情なのだな? それは互いにそうなのだな?」
「はい、王太子殿下に関しては家名に誓えます。サマンサ嬢とはあまり話したことが……」
「簡単に我が家の名で誓ってくれるなよ……それなのになぜ側妃にと望んだ?」
父親の言葉に気まずそうな表情を浮かべながらアランが答えた。
「それはサマンサ嬢が王太子殿下に、卒業と同時にワートル男爵に売られると話しをされたからです。だからもう一緒に天体観測はできなくなると言われ、王太子殿下は酷く慌てておられました」
メリディアン侯爵が溜息を吐く。
「それで側妃に召し上げれば阻止できると考えたのか? なんと短絡的な頭なんだ。一番悪手じゃないか。そんなもんとっととワートルを潰せばいいだけなのに」
アランは何も言えず俯くだけだった。
「まさかお前も思いつかなかったのか?」
「父上……そうは言われますが、サマンサ嬢が王太子殿下にその話をしているのを、アリア嬢が見ていまして。しかも泣くサマンサ嬢を王太子殿下が抱きしめて慰めてしまい、お諫めしたので、すぐに離れましたが……私はそのシーンだけを切り取ってルルーシア嬢の耳に入ることを恐れ、すぐにアリア嬢を追ったのです。口止めをしなくてはとそればかり考えていました。しかし教室に行くとすでにアリア嬢は早退していて、慌てて王太子殿下の元に戻り、すぐにルルーシア嬢のもとに向かうように進言しましたが、王太子殿下は王宮に戻ると言われ、どんどん準備を始めてしまわれて……もうどうにもなす術がなく」
メリディアン侯爵が何度目かの溜息を吐きながら、両手で顔を覆った。
フェリシア侯爵が気まずそうに口を開く。
「もしかして王太子が俺に購入して欲しいと言った領地は、結納金の捻出か?」
「はい。そのように後で聞きました」
今度はフェリシア侯爵が盛大な溜息を吐いた。
「すまん、メリディアン。どうやら俺が結納金準備の手助けをしてしまったようだ」
「その領地とは?」
「トール領だ。俺はてっきりルルーシア嬢との結婚準備のために金が必要なのだと思って、祝いのつもりで言い値で買ったんだ。人気のリゾート地だし、隠居して住むにはまあまあかなと思ってなぁ」
「トール領か……あそこはルルーシアが気に入っていたんだ。なあフェリシア、俺に譲ってくれ。いくら出したんだ?」
「5億ルぺ」
「安く買ったな。即金で支払おう」
「ああ、知らなかったとはいえすまん事をした。そうと知っていれば返事をする前にお前に話したのにな」
「いや、事情を知らなかったんだ。私がお前でも同じことをしただろう」
ロックス侯爵が言う。
「まあ不動産の件はゆっくり2人で話せ。なあアラン、事は重大だ。率直に教えてくれ。殿下はサマンサ嬢を側妃として王宮に住まわせるのだな? 側妃として扱うということだな?」
「詳しい話は詰まっていませんが、サマンサ嬢は王太子の側近として働き、その給与からお金を返済する予定だと聞いています。彼女はもともと文官志望でしたし、試験を受けて資格を取ると言っていました。住まいは王宮となるでしょうが」
「側妃を側近にだと? 本当にアホだな。まわりから見れば昼も夜も側から離したくないとしか見えんだろうに。その行動がどれほどルルちゃんを傷つけるのかもわからんのだろうか」
「勝手にすればいいさ。すでにルルはこれ以上ないほど傷ついている。この先何があっても驚かんだろうよ。それにどうせその天体観測ってのは続くんだろ? 別宮を与えるなら、毎晩のように側妃の宮に通う王太子というレッテルが貼られるだけさ」
「いや、これ以上の悪手は無いぞ。別宮は拙い。それこそ側妃にぞっこんという噂になる。それならいっそ本宮に客間を与えて王太子妃の側近にした方が……いや、それは拙い。しかし側妃の経費で借金を払うというのも違うしなぁ。ああ面倒なことだ。アホ王子が!」
「初手を間違うと後処理が大事になるってことが痛いほどわかっただろう。いや、まだわかってないか? アホだから」
メリディアン侯爵が独り言のように言う。
「いっそルルとは白い結婚にしてもらって、側妃に王太子教育を施せばいいんだ。側近に取り立てるほど優秀なら3年も我慢すれば晴れて離婚だ。そうすれば好きなだけ2人で過ごせるぞ。星を眺めようが子作りしようが思いのままだ。そしてルルはロマニアの皇族にでも嫁がせる」
アランが大きな声を出した。
「待ってください! 王太子殿下が愛しておられるのはルルーシア嬢だけです。ルルーシア嬢以外と結婚する意志は持っておられません。それだけは勘弁してあげてください」
「何言ってるんだよ。すでに他の女を娶ると宣言してるじゃないか。アホくさい」
「それは!」
ロックス侯爵が割って入る。
「アホ王子の思いなどどうでもいい。一番大事なのはルルちゃんの気持ちだよ。彼女はどうしたいんだ?」
メリディアン侯爵が苦虫をかみ潰したように言う。
「あの子はつい最近まで王太子を支え、愛し愛される夫婦になることを夢見ていたよ。だからこそ傷ついたんだ。気を失うほどのショックから目覚めて、今はどう思っているんだろうな。私に無理はするなと言っていたから、嫁げと言えばそうするだろうし、婚約破棄だといえば頷くだろう。まあ、あの子は誰よりも一番自分の立場を理解しているから」
「犠牲となる覚悟か? 若い娘にさせて良い覚悟じゃないな」
「ああ、俺たちにできることはこれ以上傷つかないように守ってやることだけだな」
大人たちの会話を聞きながら、アランは再び唇を強くかみしめた。
「お二人は昼休みや放課後などを利用して、星の話をなさっていました。サマンサ嬢の知識は驚くほど深く、殿下は話を聞きながらメモをとるほど傾聴しておられました。サマンサ嬢は話し相手ができたことが嬉しく、殿下は初めて対等に話せる友人を得たことをとても喜んでおられ、まわりの目が気にならないほど夢中で会話をなさっていました」
フェリシア侯爵が鋭い声を出した。
「まわりの目を気にすることなくだと? お前が諫めなくてはいかんだろうが!」
「何度もお諫めは致しましたが、殿下はサマンサ嬢を唯一の友だと言われ……自分が愛しているのはルルーシア嬢だけだから何の心配もないと仰いました。本当にお二人の間にあるのは共通の趣味を持つ者同士の友情だけだと……同じ本を一緒に見るため、適切な距離ではないこともしばしばありましたが、その度に注意はしておりましたが……」
「注意しても噂になった時点でお前の失態だ」
「はい……申し訳ございません」
ロックス侯爵が宥めるように言う。
「ちょっと落ち着けよ。それで? 夜に会っていたというのは本当のことなのか?」
アランが気まずそうに頷いた。
「はい。王宮の北の森にある展望台で星の観察をなさっていました。サマンサ嬢は伯爵邸の別館で乳母と2人で暮らしているそうで、夜に抜け出しても誰にも気付かれないと言っていました。観測に良い晴れた日や、流星が出る日などは王宮の馬車を遣わされて送迎を……」
「王太子自らが送迎を?」
「いえ、馬車を出すだけです。私はずっと王太子殿下の側に居ましたので間違いありません。現地集合で現地解散というのが暗黙のルールで、飲食もせずただひたすら星座の話をしておられました。誓って申し上げますが、2人きりになられたことは一度もありません」
「はぁぁぁ……まったく紛らわしいことをしてくれる。そのことは誰が知っているんだ?」
「裏門の守衛は知っています。あとは夜勤の使用人達でしょうか」
「その場にはお前しかいなかったのか?」
「はい、私だけです」
ドンとテーブルを叩いてメリディアン侯爵が声を荒げた。
「そこがダメなんだ! なぜ公にしない? せめて王宮の使用人を何人か控えさせておけばつまらん噂にはならんだろうが! 学園でもそうだ。王太子が星に興味があると示せば、専門の教師を雇うこともしただろうし、クラブ活動にもできたはずだ!」
ロックス侯爵が宥める。
「だからそれは王太子が隠したがったからだろ? ちょっと2人とも深呼吸しろ」
「あ……ああ、すまん」
フェリシア侯爵が続ける。
「まあいい、2人はただの友達だというお前の言葉を信じよう。もう一度聞くが、愛は無いのだな? 友情なのだな? それは互いにそうなのだな?」
「はい、王太子殿下に関しては家名に誓えます。サマンサ嬢とはあまり話したことが……」
「簡単に我が家の名で誓ってくれるなよ……それなのになぜ側妃にと望んだ?」
父親の言葉に気まずそうな表情を浮かべながらアランが答えた。
「それはサマンサ嬢が王太子殿下に、卒業と同時にワートル男爵に売られると話しをされたからです。だからもう一緒に天体観測はできなくなると言われ、王太子殿下は酷く慌てておられました」
メリディアン侯爵が溜息を吐く。
「それで側妃に召し上げれば阻止できると考えたのか? なんと短絡的な頭なんだ。一番悪手じゃないか。そんなもんとっととワートルを潰せばいいだけなのに」
アランは何も言えず俯くだけだった。
「まさかお前も思いつかなかったのか?」
「父上……そうは言われますが、サマンサ嬢が王太子殿下にその話をしているのを、アリア嬢が見ていまして。しかも泣くサマンサ嬢を王太子殿下が抱きしめて慰めてしまい、お諫めしたので、すぐに離れましたが……私はそのシーンだけを切り取ってルルーシア嬢の耳に入ることを恐れ、すぐにアリア嬢を追ったのです。口止めをしなくてはとそればかり考えていました。しかし教室に行くとすでにアリア嬢は早退していて、慌てて王太子殿下の元に戻り、すぐにルルーシア嬢のもとに向かうように進言しましたが、王太子殿下は王宮に戻ると言われ、どんどん準備を始めてしまわれて……もうどうにもなす術がなく」
メリディアン侯爵が何度目かの溜息を吐きながら、両手で顔を覆った。
フェリシア侯爵が気まずそうに口を開く。
「もしかして王太子が俺に購入して欲しいと言った領地は、結納金の捻出か?」
「はい。そのように後で聞きました」
今度はフェリシア侯爵が盛大な溜息を吐いた。
「すまん、メリディアン。どうやら俺が結納金準備の手助けをしてしまったようだ」
「その領地とは?」
「トール領だ。俺はてっきりルルーシア嬢との結婚準備のために金が必要なのだと思って、祝いのつもりで言い値で買ったんだ。人気のリゾート地だし、隠居して住むにはまあまあかなと思ってなぁ」
「トール領か……あそこはルルーシアが気に入っていたんだ。なあフェリシア、俺に譲ってくれ。いくら出したんだ?」
「5億ルぺ」
「安く買ったな。即金で支払おう」
「ああ、知らなかったとはいえすまん事をした。そうと知っていれば返事をする前にお前に話したのにな」
「いや、事情を知らなかったんだ。私がお前でも同じことをしただろう」
ロックス侯爵が言う。
「まあ不動産の件はゆっくり2人で話せ。なあアラン、事は重大だ。率直に教えてくれ。殿下はサマンサ嬢を側妃として王宮に住まわせるのだな? 側妃として扱うということだな?」
「詳しい話は詰まっていませんが、サマンサ嬢は王太子の側近として働き、その給与からお金を返済する予定だと聞いています。彼女はもともと文官志望でしたし、試験を受けて資格を取ると言っていました。住まいは王宮となるでしょうが」
「側妃を側近にだと? 本当にアホだな。まわりから見れば昼も夜も側から離したくないとしか見えんだろうに。その行動がどれほどルルちゃんを傷つけるのかもわからんのだろうか」
「勝手にすればいいさ。すでにルルはこれ以上ないほど傷ついている。この先何があっても驚かんだろうよ。それにどうせその天体観測ってのは続くんだろ? 別宮を与えるなら、毎晩のように側妃の宮に通う王太子というレッテルが貼られるだけさ」
「いや、これ以上の悪手は無いぞ。別宮は拙い。それこそ側妃にぞっこんという噂になる。それならいっそ本宮に客間を与えて王太子妃の側近にした方が……いや、それは拙い。しかし側妃の経費で借金を払うというのも違うしなぁ。ああ面倒なことだ。アホ王子が!」
「初手を間違うと後処理が大事になるってことが痛いほどわかっただろう。いや、まだわかってないか? アホだから」
メリディアン侯爵が独り言のように言う。
「いっそルルとは白い結婚にしてもらって、側妃に王太子教育を施せばいいんだ。側近に取り立てるほど優秀なら3年も我慢すれば晴れて離婚だ。そうすれば好きなだけ2人で過ごせるぞ。星を眺めようが子作りしようが思いのままだ。そしてルルはロマニアの皇族にでも嫁がせる」
アランが大きな声を出した。
「待ってください! 王太子殿下が愛しておられるのはルルーシア嬢だけです。ルルーシア嬢以外と結婚する意志は持っておられません。それだけは勘弁してあげてください」
「何言ってるんだよ。すでに他の女を娶ると宣言してるじゃないか。アホくさい」
「それは!」
ロックス侯爵が割って入る。
「アホ王子の思いなどどうでもいい。一番大事なのはルルちゃんの気持ちだよ。彼女はどうしたいんだ?」
メリディアン侯爵が苦虫をかみ潰したように言う。
「あの子はつい最近まで王太子を支え、愛し愛される夫婦になることを夢見ていたよ。だからこそ傷ついたんだ。気を失うほどのショックから目覚めて、今はどう思っているんだろうな。私に無理はするなと言っていたから、嫁げと言えばそうするだろうし、婚約破棄だといえば頷くだろう。まあ、あの子は誰よりも一番自分の立場を理解しているから」
「犠牲となる覚悟か? 若い娘にさせて良い覚悟じゃないな」
「ああ、俺たちにできることはこれ以上傷つかないように守ってやることだけだな」
大人たちの会話を聞きながら、アランは再び唇を強くかみしめた。
3,204
お気に入りに追加
4,900
あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
〈完結〉「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる