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具合は悪くないのに邸から出してもらえないルルーシアは、毎日本を読んだり刺しゅうをしたりして過ごしていたが、考えるのはアマデウスのことばかりだった。
「きっとお忙しいのだわ。アリアもそう言ってたもの……」
休んでから2日ほどは、そう言って自分の気持ちを誤魔化していたが、手紙はもとより花やお菓子などを手配する暇も無いのかと思うとやるせない気持ちになる。
「私の体調など殿下にとっては些細なことなのね、きっと」
3日目になると再び食欲が失せ、ベッドから出るのも億劫になってきた。
「今頃はきっとサマンサ嬢とお過ごしなのだわ。学園になど行かなければよかった」
そう呟いては涙を流すルルーシアを見かねたメリディアン侯爵が王城に向かったのは、4日目のことだった。
すぐに謁見の間に通され、国王と王妃が揃って出迎える。
「急なお願いにもかかわらずお時間をいただき、恐悦至極に存じます」
国王が小さく咳払いをしてから口を開く。
「ルルーシア嬢は学園を休んでいると聞いたが、どこか具合が悪いのか?」
「いえ、急な環境の変化に体がついて行かなかったのでしょう。医者によると過労とストレスとのことで、今は家でゆっくりさせております」
今度は王妃が口を開いた。
「ルルちゃんは本当によく頑張っていたもの。やっと終わって気が緩んだのかもしれないわ。卒業資格はすでにあるのだから、ゆっくりとするように伝えてちょうだいね。それにきっととんでもないショックだったでしょう?」
侯爵が顔をあげる。
国王と王妃が顔を見合わせた。
「もしや侯爵、まだ聞き及んでいないのか?」
「はい、殿下は大変お忙しいようで、娘が休んでから一度もおみえではございません。手紙やお見舞いの品なども届かず、娘はとても悲しそうな顔をしております」
「まあ! いくら忙しいからといってそんなことを! 何をやっているのかしら」
王妃の握っている扇がミチミチと音を立てた。
「あれほど気を配れと言ったのに……まあ奴にとっては一大事だったのであろうが、正妃となるルルーシア嬢の承認は絶対に必要なのだから、真っ先に相談すべきことだろう?」
メリディアン侯爵の肩がビクッと震える。
「正妃となるルルーシアの承認? そう仰いましたか?」
国王がバツの悪そうな顔をした。
「まさかまだ伝えていないとは……」
「お相手はサマンサ・フロレンシア伯爵令嬢でしょうか?」
「やはり知っていたか。まあキリアンの話ではかなり噂にもなっていたようだしな」
「そうですか……」
王妃が慌てて口を出す。
「誤解しないでね? これは人助けなの。あの娘は売られそうになっていて、アマディが救わないと死んでしまうかもしれないって焦っただけで……」
侯爵の顔を見た王妃が言葉を止めた。
国王の腕にしがみつくように助けを求めている。
「なあ侯爵、近いうちに皇太子はルルーシア嬢を訪問するだろう。その時にはきちんとことの経緯を話すはずだ。ぜひ冷静に聞いてやって欲しい」
「畏まりました」
深々と頭を下げて部屋を出る侯爵の背中を見ながら、国王と王妃は溜息を吐いた。
「ルルちゃんは納得してくれるかしら」
「あの子は優しい子だ。人助けだと理解すれば許すだろうが、とんでもなく傷つくだろうな」
「心配だわ……やはり侍女かメイドという形で王宮に引き取った方が良くないかしら」
「それはダメさ。それではフロレンシア伯爵の籍から抜けることはできない。親が結婚しろと言ったら拒むことはできまい」
「そうよね……だれか彼女と結婚しても良いという人はいないかしらね」
「5億ルぺも払って何の旨味もない娘を娶るような奴はおらんさ。アマデウスは友人として動いているというが、果たして本当だろうか」
王妃が悲しそうな顔をした。
「ここまでするということは……でも私はあの子を信じてやりたいわ」
「そうか……そうだな。親なら信じてやらないといけない」
「そうよね。あとはルルちゃんの気持ちだけれど、私なら……」
「ん? お前ならどうする?」
「婚約破棄一択ね」
国王と王妃は再び盛大な溜息を吐いた。
「きっとお忙しいのだわ。アリアもそう言ってたもの……」
休んでから2日ほどは、そう言って自分の気持ちを誤魔化していたが、手紙はもとより花やお菓子などを手配する暇も無いのかと思うとやるせない気持ちになる。
「私の体調など殿下にとっては些細なことなのね、きっと」
3日目になると再び食欲が失せ、ベッドから出るのも億劫になってきた。
「今頃はきっとサマンサ嬢とお過ごしなのだわ。学園になど行かなければよかった」
そう呟いては涙を流すルルーシアを見かねたメリディアン侯爵が王城に向かったのは、4日目のことだった。
すぐに謁見の間に通され、国王と王妃が揃って出迎える。
「急なお願いにもかかわらずお時間をいただき、恐悦至極に存じます」
国王が小さく咳払いをしてから口を開く。
「ルルーシア嬢は学園を休んでいると聞いたが、どこか具合が悪いのか?」
「いえ、急な環境の変化に体がついて行かなかったのでしょう。医者によると過労とストレスとのことで、今は家でゆっくりさせております」
今度は王妃が口を開いた。
「ルルちゃんは本当によく頑張っていたもの。やっと終わって気が緩んだのかもしれないわ。卒業資格はすでにあるのだから、ゆっくりとするように伝えてちょうだいね。それにきっととんでもないショックだったでしょう?」
侯爵が顔をあげる。
国王と王妃が顔を見合わせた。
「もしや侯爵、まだ聞き及んでいないのか?」
「はい、殿下は大変お忙しいようで、娘が休んでから一度もおみえではございません。手紙やお見舞いの品なども届かず、娘はとても悲しそうな顔をしております」
「まあ! いくら忙しいからといってそんなことを! 何をやっているのかしら」
王妃の握っている扇がミチミチと音を立てた。
「あれほど気を配れと言ったのに……まあ奴にとっては一大事だったのであろうが、正妃となるルルーシア嬢の承認は絶対に必要なのだから、真っ先に相談すべきことだろう?」
メリディアン侯爵の肩がビクッと震える。
「正妃となるルルーシアの承認? そう仰いましたか?」
国王がバツの悪そうな顔をした。
「まさかまだ伝えていないとは……」
「お相手はサマンサ・フロレンシア伯爵令嬢でしょうか?」
「やはり知っていたか。まあキリアンの話ではかなり噂にもなっていたようだしな」
「そうですか……」
王妃が慌てて口を出す。
「誤解しないでね? これは人助けなの。あの娘は売られそうになっていて、アマディが救わないと死んでしまうかもしれないって焦っただけで……」
侯爵の顔を見た王妃が言葉を止めた。
国王の腕にしがみつくように助けを求めている。
「なあ侯爵、近いうちに皇太子はルルーシア嬢を訪問するだろう。その時にはきちんとことの経緯を話すはずだ。ぜひ冷静に聞いてやって欲しい」
「畏まりました」
深々と頭を下げて部屋を出る侯爵の背中を見ながら、国王と王妃は溜息を吐いた。
「ルルちゃんは納得してくれるかしら」
「あの子は優しい子だ。人助けだと理解すれば許すだろうが、とんでもなく傷つくだろうな」
「心配だわ……やはり侍女かメイドという形で王宮に引き取った方が良くないかしら」
「それはダメさ。それではフロレンシア伯爵の籍から抜けることはできない。親が結婚しろと言ったら拒むことはできまい」
「そうよね……だれか彼女と結婚しても良いという人はいないかしらね」
「5億ルぺも払って何の旨味もない娘を娶るような奴はおらんさ。アマデウスは友人として動いているというが、果たして本当だろうか」
王妃が悲しそうな顔をした。
「ここまでするということは……でも私はあの子を信じてやりたいわ」
「そうか……そうだな。親なら信じてやらないといけない」
「そうよね。あとはルルちゃんの気持ちだけれど、私なら……」
「ん? お前ならどうする?」
「婚約破棄一択ね」
国王と王妃は再び盛大な溜息を吐いた。
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