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アマデウスとアランは3年A組で、ルルーシアとアリアは3年D組だ。
ここローレンティア王立貴族学園は、男女別のクラスわけになっており、AからCが男子生徒、DからFが女子生徒である。
クラスわけは純然たる成績順で、AとDが最上位クラスで1年に1度クラス替えがされる。
王宮で幼いころから高度な教育を受けているアマデウスにとって、学園は友人を作るために来ているようなもので、テストで首位を譲ることなどあり得ないことだった。
一方12歳で皇太子の婚約者に選ばれたルルーシアは、学園を卒業するまでの6年間で、全ての皇太子妃教育を終了する必要があった。
王族であれば15年かけて取得する内容を、6年間で修めなくてはならないのだ。
並大抵の苦労でできるような内容ではなかった。
そのため本来なら15歳で入学する貴族学園にも、ほとんど登校することができず、孤独に耐えながら勉強だけの日々を送るルルーシアにとって、週に一度開催される皇太子とのお茶会だけが心の拠り所だった。
しかし、最高学年になってすぐの頃から、そのお茶会も学校行事や公務と重なり中止になることが増えていく。
それでも歯を食いしばって耐え抜いたルルーシアは、遂に皇太子妃教育の全過程で及第点をとることに成功し、卒業まで1年を切ってはいるが、ようやく学園に登校できるようになった。
そして初めての登校日に目撃した皇太子の姿……
それはルルーシアの心を砕くには十分すぎるほどの破壊力だった。
久しぶりにルルーシアと食事ができると上機嫌だった皇太子が、彼女の早退を知りショックを受けていた頃、当のルルーシアは父親の執務室で泣き崩れていた。
「お父様、アマデウス皇太子殿下はもう……」
苦虫を嚙み潰した顔で、ルルーシアの父であるメリディアン侯爵は深いため息を吐いた。
「何かの間違いでは無いのかい? 皇太子殿下はどう見てもお前にぞっこんだろう?」
「きっとそう見せておられただけなのですわ。王族としての責務を全うしておられたのだと思います。だって……だってお父様、今夜もお二人は会う約束をなさっていましたわ」
「今夜だと?」
侯爵は驚いてしまい、持っていた書類をとり落とした。
執事長が慌てて書類をかき集める。
「ええ、場所も時間も存じませんが、確かに『今夜、いつもの場所でいつもの時間に待っている』とおっしゃいましたもの」
「まさか……もうそこまでの仲ということか?」
ルルーシアが再び泣き崩れた。
「お父様、どうか、どうかお願いです。殿下との婚約を無かったことにして下さいまし。そして愛し合うお二人が結婚できるように、私をどこか遠い街の修道院に送ってくださいまし」
「ルルーシア……ああ、可哀そうなルルーシア。でもね、お前もわかっているだろう? なぜお前が婚約者に選ばれたのか、そしてそれが覆すことができないほど重要なことなのか」
「お父様……」
メリディアン侯爵は泣きじゃくる愛娘の肩を抱くしかなかった。
翌朝、無理して登校しなくて良いという父親に首を振ってみせたルルーシアは、メリディアン侯爵家の家紋がついた馬車に乗り込んだ。
「では行って参ります」
「何かあったらすぐに帰ってきなさい」
馬車が走り出した途端に暗い表情になったルルーシアに、専属侍女のキャロラインが心配そうに話しかけた。
「お嬢様、ご無理はなさらない方がよろしいかと……」
「ええ、心配かけてごめんなさいね。でも私ってずっと一人でお勉強していたでしょう? 学園に行くのが夢だったのよ。だから頑張りたいの」
「本当に良く頑張られましたもの。講師の方もとても感心しておられましたわ。1年近くも余裕を残すなんてすばらしいと仰っていましたもの」
「まあ、ありがたいお言葉だけれど、きっと気を遣ってくださったのだと思うわ。だって王妃様は1年半も学園に通われたそうよ」
「あの方は特別でございましょう。生まれた時から皇太子妃となるべく育てられたと聞き及んでおりますわ」
「生まれた時から……きっと国王陛下と王妃殿下って何の問題もなくご成婚なさったのでしょうね……互いを信じて互いだけを愛して……羨ましいわ」
「お嬢様……」
ルルーシアが悲しそうな笑顔を浮かべた。
ここローレンティア王立貴族学園は、男女別のクラスわけになっており、AからCが男子生徒、DからFが女子生徒である。
クラスわけは純然たる成績順で、AとDが最上位クラスで1年に1度クラス替えがされる。
王宮で幼いころから高度な教育を受けているアマデウスにとって、学園は友人を作るために来ているようなもので、テストで首位を譲ることなどあり得ないことだった。
一方12歳で皇太子の婚約者に選ばれたルルーシアは、学園を卒業するまでの6年間で、全ての皇太子妃教育を終了する必要があった。
王族であれば15年かけて取得する内容を、6年間で修めなくてはならないのだ。
並大抵の苦労でできるような内容ではなかった。
そのため本来なら15歳で入学する貴族学園にも、ほとんど登校することができず、孤独に耐えながら勉強だけの日々を送るルルーシアにとって、週に一度開催される皇太子とのお茶会だけが心の拠り所だった。
しかし、最高学年になってすぐの頃から、そのお茶会も学校行事や公務と重なり中止になることが増えていく。
それでも歯を食いしばって耐え抜いたルルーシアは、遂に皇太子妃教育の全過程で及第点をとることに成功し、卒業まで1年を切ってはいるが、ようやく学園に登校できるようになった。
そして初めての登校日に目撃した皇太子の姿……
それはルルーシアの心を砕くには十分すぎるほどの破壊力だった。
久しぶりにルルーシアと食事ができると上機嫌だった皇太子が、彼女の早退を知りショックを受けていた頃、当のルルーシアは父親の執務室で泣き崩れていた。
「お父様、アマデウス皇太子殿下はもう……」
苦虫を嚙み潰した顔で、ルルーシアの父であるメリディアン侯爵は深いため息を吐いた。
「何かの間違いでは無いのかい? 皇太子殿下はどう見てもお前にぞっこんだろう?」
「きっとそう見せておられただけなのですわ。王族としての責務を全うしておられたのだと思います。だって……だってお父様、今夜もお二人は会う約束をなさっていましたわ」
「今夜だと?」
侯爵は驚いてしまい、持っていた書類をとり落とした。
執事長が慌てて書類をかき集める。
「ええ、場所も時間も存じませんが、確かに『今夜、いつもの場所でいつもの時間に待っている』とおっしゃいましたもの」
「まさか……もうそこまでの仲ということか?」
ルルーシアが再び泣き崩れた。
「お父様、どうか、どうかお願いです。殿下との婚約を無かったことにして下さいまし。そして愛し合うお二人が結婚できるように、私をどこか遠い街の修道院に送ってくださいまし」
「ルルーシア……ああ、可哀そうなルルーシア。でもね、お前もわかっているだろう? なぜお前が婚約者に選ばれたのか、そしてそれが覆すことができないほど重要なことなのか」
「お父様……」
メリディアン侯爵は泣きじゃくる愛娘の肩を抱くしかなかった。
翌朝、無理して登校しなくて良いという父親に首を振ってみせたルルーシアは、メリディアン侯爵家の家紋がついた馬車に乗り込んだ。
「では行って参ります」
「何かあったらすぐに帰ってきなさい」
馬車が走り出した途端に暗い表情になったルルーシアに、専属侍女のキャロラインが心配そうに話しかけた。
「お嬢様、ご無理はなさらない方がよろしいかと……」
「ええ、心配かけてごめんなさいね。でも私ってずっと一人でお勉強していたでしょう? 学園に行くのが夢だったのよ。だから頑張りたいの」
「本当に良く頑張られましたもの。講師の方もとても感心しておられましたわ。1年近くも余裕を残すなんてすばらしいと仰っていましたもの」
「まあ、ありがたいお言葉だけれど、きっと気を遣ってくださったのだと思うわ。だって王妃様は1年半も学園に通われたそうよ」
「あの方は特別でございましょう。生まれた時から皇太子妃となるべく育てられたと聞き及んでおりますわ」
「生まれた時から……きっと国王陛下と王妃殿下って何の問題もなくご成婚なさったのでしょうね……互いを信じて互いだけを愛して……羨ましいわ」
「お嬢様……」
ルルーシアが悲しそうな笑顔を浮かべた。
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