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夜会の前日、いつものようにふらりと外に出たローラは、ゆっくりと大通りに向かう。
街路樹として植えられている柳の枝が風に揺れ、揶揄うようにローラの頬をかすめた。
「ローラ、こっち」
幹の影から声だけが聞こえ、ローラは微笑みを浮かべて駆け寄った。
「イース! 待った?」
「いや、それほどでもないさ。それより上手くいってるのか?」
「うん、予定通り明日の夜のパーティーに参加できるよ。長女っていうのが一緒に行くんだ。まあトロそうな女だからすぐに撒けるさ。それよりイースの衣裳は? 準備できた?」
「ああ、この前店に来て酔いつぶれてた男のサイズがぴったりだった。身包みはがしてゴミ捨て場に投げてやった。銭もたっぷり持ってやがったぜ」
「そりゃ笑えるわ。じゃあ手筈通りね? エヴァンス伯爵だからね。忘れちゃだめだよ」
「任せとけって。それよりお前ちゃんと門番に言っておけよ? でないと入れてもらえないからな。名前はどうする?」
「あたいはバカだから名前まで変えちゃミスっちまう。イースで良いんじゃない?バレやしないさ」
「それもそうだな。二度と会うことも無いんだ。じゃあイースって使用人が忘れ物を届けに来るから入れてやってくれって言うんだぞ?」
「大丈夫さ。それであたいは金持ちそうな男を捕まえて、庭に行けばいいんだったね? 後はイースに任せれば良いんだよね? きっと誰かがあたいに張り付いているからさ。そう長い時間は抜けられないと思うんだ」
「そうだな。連れて来てくれさえすればいい。もしそいつが使えなかったら、庭で爆竹を鳴らすから、爆発音が聞こえたら次の奴を見繕って連れてこい」
「うん、わかった。爆発音だね? 爆竹っていうの?」
「ああ、東の国から来た商人から巻き上げたんだ。何度か使ったけどなかなか凄い音だ」
「へぇぇ……。聞いてみたい」
「明日の夜は失敗の合図だから、鳴らないことを祈っとけ。また今度いくらでも鳴らしてやるよ。金さえ入ればこっちのモンだ。後は二人で幸せになるだけさ」
「幸せになれるんだね。うん、あたい頑張るよ」
「ああ、頑張れ。さあ、もう行け。怪しまれて良いことは無い」
「わかった。あたいのドレス姿を見たら、イースだって驚くよ? 期待してて」
「ああ、楽しみだ。俺の貴族姿も見ものだぜ?」
二人は軽く抱き合って別れた。
屋敷に戻ったローラは門番に告げた。
「戻ったよ。開けておくれよ」
「はいはい、それにしてもこんな夜遅くによく一人で出歩けるもんだ」
「夜が怖いのは悪い奴だけさ。夜はきれいだ。醜いものを全部隠してくれるからね」
「へぇ、そんなものかい? まあいい。さっさと屋敷に戻ってくれ」
ローラはフンと鼻を鳴らして屋敷に向かった。
ロビーを突っ切り階段に足を掛けたローラを、ドナルドが呼び止めた。
「いよいよ明日だな。いつメダルを返してくれるんだ?」
「ああ、明後日の朝、出て行く前に返してやるよ。いるんだろ?」
「私は不在だ。だから今返せ」
「そりゃダメさ。かあちゃんを見捨てた男を信じるものか」
ドナルドは拳を握り、歯を食いしばった。
「早く寝ろ。明後日の朝は、お前が出て行くまで居ることにする」
「ははは! 最初からそうすりゃ良いんだ。バカなおっさんだねぇ、あたいの父親は」
ドナルドは殴りたい衝動を抑えるために、持てる理性をかき集めた。
そんなドナルドを置き去りに、卑猥な鼻歌を歌いながらローラは階段を上がっていった。
夜会当日、朝から顔も体も磨き上げられたローラは、とても美しかった。
届いたドレスもよく似合い、黙って立っていれば成長したマリアだと言っても誰も疑うことは無いだろう。
落ち着いた色調で目立たないように配慮したリリーブランが、ローラの部屋に来た。
「準備はできたの?」
「ああ、入っておくれ」
ドレスアップしたローラの姿に、一瞬だけ立ち竦んだリリーブランだったが、気を取り直して言った。
「言葉遣いに気を付けて。できないなら声を出してはダメよ? 守れる?」
「ああ、大丈夫だ。もし話さなくちゃいけなくなっても、あんたにしか話さないよ。それでいいんだろ?」
「絶対に私の側を離れないでね」
「分かっているさ、リリーブランお姉さま」
「ええ、それならいいわ。今夜だけあなたを妹のマリアとして扱うわ。さあ、行きましょう」
二人はメイドを連れて馬車に乗り込んだ。
本来ならメイドの同伴は許されないが、田舎で長期療養をしていたマリアの体調を慮ってのことだと、ドナルドが主催者に申し入れて許可が下りている。
メイドは地味なドレス姿で控え、無表情を貫いていた。
「あんた達も行くんだろ? もっと派手な恰好をすりゃ、いい男を引っ掛けられるんじゃないかい?」
ローラの言葉に苦々しい顔をしたメイドを、リリーブランが窘めた。
「夜会ってそういう場じゃないのよ。お互いの親交を深めつつ、情報交換をする場なの。そんなはしたないことをいうのはお止めなさい」
「はいはい、オネエサマ」
それ以降は誰も口をきかず、馬車はゆっくりとスノウ伯爵家の門をくぐった。
リリーブランが招待状を出し、会場へと向かった。
その後を静かに歩いていたローラが、リリーブランの手を取った。
「どうしたの?」
「馬車んとこにハンカチを落としちまった。取ってくるからここで待っていてくれ」
「メイドに行かせるわ」
「すぐそこだから自分で行くさ。あたいのハンカチなんて知らないだろう?」
リリーブランは少し迷ったが頷いた。
「早く行ってきなさい」
リリーブランと二人のメイドは少しだけ速足で馬車に向かうローラの後姿を見ていた。
馬車の前でしゃがんだローラは、近くにいた門番に話しかけている。
拾ってもらったお礼でも言っているのだろうと思った三人は、疑うこともなくその場で待っていた。
「お待たせ。ごめんね」
「いいわ。あったの?ハンカチは」
「ああ、あの門番のおっさんが拾ってくれていたんだ。ちゃんとお礼も言ったよ」
「なんていったの?」
「疑り深いなぁ。ちゃんとしたさ。あら拾って下さったのね、ありがとう。どうだ?」
「え……いいわ。さあ、行くわよ」
「ああ、ワクワクするな」
ローラは生まれて初めて、キャンドルライトが煌めく華やかな世界へと足を踏み入れた。
「あんまりきょろきょろしていると悪目立ちするわよ」
「だって普通びっくりするだろ?貴族って凄いんだな。見てみろよ、あのばばあ。頭に鳥でも飼ってんじゃねえか?」
「バカなこと言ってないで。さあ、来るわよ。挨拶だけは自分でしなさい」
リリーブランの姿を見つけた数人の令嬢が、手を振りながら近づいてきたと同時に、ローラは扇を広げて顔を半分隠した。
「まあ! いつぶりかしら? お元気でいらして?」
「ごきげんよう。本当に久しぶりね」
「会えて嬉しいわ。ん? こちらは?」
「えっ……ええ、妹のマリアよ。ずっと母の実家で療養していたのだけれど、体調も良くなってきたし、遅らせていたデビュタントも今年できそうだから、練習も兼ねて連れて来たの」
「まあ、そうだったのね。初めまして、マリア嬢。私はお姉さまの友人でレーナというの。体調が戻って良かったわね」
ローラが扇を閉じて、優雅なカーテシーを披露した。
「ごきげんよう、レーナ様。マ……マリアです」
話が続かないことに疑問を覚えたレーナが、リリーブランの顔を見た。
「ごめんなさいね。こういう場が本当に初めてで、とても緊張しているの。主催者にご挨拶だけしてくるから、後でゆっくりお話ししましょうね」
肩を竦めて姉妹を見送ったレーナは、顔を扇で隠しながらも、きょろきょろと周りを見回しているマリアを見てクスっと笑った。
「本当に場慣れしていないわね。まるで捨て猫みたいに周りを気にしているわ。ふふふ」
デビュー前の自分もそうだったなぁなどと考えながら、レーナは話しかけてきた他の友人との会話に気持ちを移した。
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「ローラ、こっち」
幹の影から声だけが聞こえ、ローラは微笑みを浮かべて駆け寄った。
「イース! 待った?」
「いや、それほどでもないさ。それより上手くいってるのか?」
「うん、予定通り明日の夜のパーティーに参加できるよ。長女っていうのが一緒に行くんだ。まあトロそうな女だからすぐに撒けるさ。それよりイースの衣裳は? 準備できた?」
「ああ、この前店に来て酔いつぶれてた男のサイズがぴったりだった。身包みはがしてゴミ捨て場に投げてやった。銭もたっぷり持ってやがったぜ」
「そりゃ笑えるわ。じゃあ手筈通りね? エヴァンス伯爵だからね。忘れちゃだめだよ」
「任せとけって。それよりお前ちゃんと門番に言っておけよ? でないと入れてもらえないからな。名前はどうする?」
「あたいはバカだから名前まで変えちゃミスっちまう。イースで良いんじゃない?バレやしないさ」
「それもそうだな。二度と会うことも無いんだ。じゃあイースって使用人が忘れ物を届けに来るから入れてやってくれって言うんだぞ?」
「大丈夫さ。それであたいは金持ちそうな男を捕まえて、庭に行けばいいんだったね? 後はイースに任せれば良いんだよね? きっと誰かがあたいに張り付いているからさ。そう長い時間は抜けられないと思うんだ」
「そうだな。連れて来てくれさえすればいい。もしそいつが使えなかったら、庭で爆竹を鳴らすから、爆発音が聞こえたら次の奴を見繕って連れてこい」
「うん、わかった。爆発音だね? 爆竹っていうの?」
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「明日の夜は失敗の合図だから、鳴らないことを祈っとけ。また今度いくらでも鳴らしてやるよ。金さえ入ればこっちのモンだ。後は二人で幸せになるだけさ」
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「ああ、頑張れ。さあ、もう行け。怪しまれて良いことは無い」
「わかった。あたいのドレス姿を見たら、イースだって驚くよ? 期待してて」
「ああ、楽しみだ。俺の貴族姿も見ものだぜ?」
二人は軽く抱き合って別れた。
屋敷に戻ったローラは門番に告げた。
「戻ったよ。開けておくれよ」
「はいはい、それにしてもこんな夜遅くによく一人で出歩けるもんだ」
「夜が怖いのは悪い奴だけさ。夜はきれいだ。醜いものを全部隠してくれるからね」
「へぇ、そんなものかい? まあいい。さっさと屋敷に戻ってくれ」
ローラはフンと鼻を鳴らして屋敷に向かった。
ロビーを突っ切り階段に足を掛けたローラを、ドナルドが呼び止めた。
「いよいよ明日だな。いつメダルを返してくれるんだ?」
「ああ、明後日の朝、出て行く前に返してやるよ。いるんだろ?」
「私は不在だ。だから今返せ」
「そりゃダメさ。かあちゃんを見捨てた男を信じるものか」
ドナルドは拳を握り、歯を食いしばった。
「早く寝ろ。明後日の朝は、お前が出て行くまで居ることにする」
「ははは! 最初からそうすりゃ良いんだ。バカなおっさんだねぇ、あたいの父親は」
ドナルドは殴りたい衝動を抑えるために、持てる理性をかき集めた。
そんなドナルドを置き去りに、卑猥な鼻歌を歌いながらローラは階段を上がっていった。
夜会当日、朝から顔も体も磨き上げられたローラは、とても美しかった。
届いたドレスもよく似合い、黙って立っていれば成長したマリアだと言っても誰も疑うことは無いだろう。
落ち着いた色調で目立たないように配慮したリリーブランが、ローラの部屋に来た。
「準備はできたの?」
「ああ、入っておくれ」
ドレスアップしたローラの姿に、一瞬だけ立ち竦んだリリーブランだったが、気を取り直して言った。
「言葉遣いに気を付けて。できないなら声を出してはダメよ? 守れる?」
「ああ、大丈夫だ。もし話さなくちゃいけなくなっても、あんたにしか話さないよ。それでいいんだろ?」
「絶対に私の側を離れないでね」
「分かっているさ、リリーブランお姉さま」
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二人はメイドを連れて馬車に乗り込んだ。
本来ならメイドの同伴は許されないが、田舎で長期療養をしていたマリアの体調を慮ってのことだと、ドナルドが主催者に申し入れて許可が下りている。
メイドは地味なドレス姿で控え、無表情を貫いていた。
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それ以降は誰も口をきかず、馬車はゆっくりとスノウ伯爵家の門をくぐった。
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「なんていったの?」
「疑り深いなぁ。ちゃんとしたさ。あら拾って下さったのね、ありがとう。どうだ?」
「え……いいわ。さあ、行くわよ」
「ああ、ワクワクするな」
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