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14 二律背反
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(にりつはいはん=二つの目的が互いに矛盾している状態)
皇太子妃宮のバルコニーから落ちたリリアは、一命をとりとめたものの、目じりから頬にかけて大きな傷を負ってしまった。
下に植え込みがあったお陰で、この程度で助かったという医者の言葉に、ジェラルドは改めて戦慄を覚えた。
リリアの父である宰相とその補佐を務める長男が呼ばれ、包帯だらけのリリアを見て顔を顰めた。
リリアの愛娘であるマーガレットは母の手を握り泣きじゃくっている。
部屋の隅には、バネッサとロベルトが小さくなって座っており、その横には皇太子が立っていた。
「これはいったいどういうことですか?」
全員を見回してサザーランド公爵が口を開いた。
リリアの兄であるダニエルは、バネッサとジェラルドそっくりの子供を見て、小さく溜息を吐いた。
「宰相、この宮で起きた事故だ。責任は感じているし、できるだけのことはさせてもらう。本当に申し訳なかった」
「皇太子殿下、状況がわからないのですが? ご説明はいただけるのでしょうか?」
「勿論だ。部屋を変えよう。医者も護衛も侍女も残すから安心してほしい」
全員が頷いて部屋を出た。
マーガレットは母親から離れまいと抵抗したが、リリアが静かに眠れないからという言葉に渋々頷いた。
先ほどの部屋に戻り、新しいお茶が配られた。
ジェラルドは静かな口調で、淡々と事実を述べていった。
サザーランド公爵の大きな溜息が部屋に響く。
「確認するが、君たちがそういう関係になったのは、リリアとの結婚話が出る前だということだね? だからそのことは不貞ではないと言うのだね?」
「バネッサは婚約者がいましたから、不貞ではないとは言い切れません。しかし、僕はリリアに会ったことも無かった時期です」
「うん、娘がこういう状況になってしまって、途轍もなく腹立たしいが、一人の男としては君の気持も分からなくはないよ。私がおなじ状況になったら、君と同じような行動をとったかもしれないとさえ思う。それに君の性格とリリアへの愛情は疑う余地もない」
息子であるダニエル・パーシモンが父の言葉を引き取った。
「僕は気づいていたんだ。その子がジェラルドとバネッサの子だってね。でも気づかない振りをした。セイレーン国に書簡を届けに行ったとき、バネッサにも会いに行っただろう? 覚えている? その時に相談に乗るって言えばよかった。澄んだ湖面に一石を投じるべきではないと思ってしまったんだ。何か事情があって相手も納得しているのだろうと……」
「ええ、覚えているわ。懐かしいだろうってバージル国のお菓子を持ってきてくれたわね。あなたの判断は間違っていないわ。私もこのまま暮らすのだと信じていたもの」
ロベルトが口を開く。
「僕も覚えています。ナッツのお菓子をいただいて、僕を抱き上げて笑ってくださった」
ダニエルとバネッサが驚いた顔でロベルトを見た。
「あなたまだ五歳にもなっていなかった頃よ?」
「うん、でも本当に覚えているんだ。この人が僕の本当のお父様なのかなって思ったから。でも抱き上げて下さった時にわかったんだ。この人ではないと……」
「ロベルト……本当のお父さんってどういう意味?」
バネッサが泣きそうな顔で尋ねた。
「お母様には知られないようにしてたけど、使用人や親戚の方達は僕が不貞の子だと言ってたよ。偶然お祖母様と同じ色を持っていたから置いてもらえているだけで、本当はリンガーの血は一滴も入ってないって言われていたんだ」
「虐められていたの? 知らなかったわ……」
「あからさまに虐めることは無かった。お父様も僕を可愛がって下さったから、誰も手は出さなかったよ。でもずっとお母様の悪口を聞かされて、とても辛かった。そんな時にお母様のお友達だという方が来てくださったから印象に残っているんだと思う」
サザーランド公爵が静かに言った。
「君はいろいろ耐えてきたんだね。その年齢で母親のことを悪く言われるのは辛かっただろう。きっとバネッサ夫人を守ろうとしたんだろうね。それにしても……うちの娘にどんな不満があるんだっても言えないし? だって不満なんて無いのだろう? ではなぜうちの娘を裏切ったんだ……とも言えないよな? だって知り合う前の事だもの。私はいったい誰に怒ればいいんだ?」
ジェラルドが言った。
「それは間違いなく僕です。お義父さん、本当に申し訳ありませんでした」
「君はもっとリリアを信頼するべきだった。でも、これは結果論だ。先ほども言ったが、私もおそらく同じ方法を選んだだろうと思うよ」
「僕もそうすると思う……」
妹婿の窮地に同情を禁じ得ない義兄。
ロベルトが静かに言った。
「僕たちのことはもう忘れて下さい。今はマーガレットのお母様の事だけを考えましょう」
拳を握りしめているロベルトに、リリアの父であるサザーランド公爵が言った。
「君の申し出はありがたいが、リリアも大人だ。君の人生を犠牲にしたことを知ったら余計に怒ると思うよ? それよりもどうするのが一番いいのかをみんなで考えようじゃないか。君の意見は自己犠牲の上に成り立っている。それ自体は実に高潔だ。しかし、見方を変えると、みんなの心にずっと消えない傷を残す行為だよ? 今は良くても、きっとここに居る全員が後悔する事になる」
ロベルトが俯き、バネッサが寄り添った。
そんな二人を見たサザーランド公爵が、再び口を開く。
「彼の立場を確固たるものにする方法は無いのかい?」
ジェラルドが話し始めた。
「実は皇太子殿下に紹介してもらって、弁護士に相談したのです。ロベルトを非嫡出子という立場から救うためには、僕が認知をしてから母親であるバネッサと籍を入れるしか無いと言われました。認知するだけなら、戸籍の父親の欄には僕の名が記載されますが、ロベルトは平民のままです。僕が養子に迎えれば貴族籍は取得できますが、戸籍上は非嫡出子のままです」
全員が頭を抱えた。
ふと皇太子妃が言う。
「あなたの権限で何とかならないの?」
皇太子が眉を八の字にして返した。
「戸籍に関しては手を出せない。貴族学園に入ることができるのなら、成績如何によっては王宮で採用することもできるし、将来も明るい。しかし、平民のままとなると出世は望めない。しかも非嫡出子となると、かなり険しい道になるだろうね」
「子供の責任じゃないのに? 考えが古いわ。相変わらず使えないわね!」
「そう言わないでくれよ。僕たちの世代になったら改革の余地もあるけれど、今すぐには無理だ」
アネックス公爵夫人が言った。
「王宮ではそうでしょうけれど、個人での雇用なら大丈夫なのではありませんか? 例えばアネックス家で働いてもらうとか」
今度はダニエルが応えた。
「個人としての雇用にしても、やはり平民という身分では難しいでしょう?我が家もそうですが、侍従長や家令や執事は貴族家の次男や三男です。平民ではありません。侍女も同じです。それを優秀だからと言って慣例を破ると、必ずしっぺ返しが来る。それも採用した側ではなく、採用された側にです。孤立することは間違いない」
「確かにそうですわね……」
皇太子が言った。
「理想としては貴族として嫡出子の身分を取得するってことだな? でもそれだとバネッサの元夫が動き出すのではないの?」
「ええ、知られないうちに囲い込んでしまわないと危ないわ。先日来た弁護士も、私の収入額が低すぎるから養育できないと申し立てれば簡単に引き取れるって言ってましたもの」
「今更なんだよなぁ」
ダニエルの言葉の後に、皇太子妃が口を開いた。
「例えば、パーシモン卿が認知してから他の貴族の養子に入るってどう?子がない家なら喜ぶのではないかしら」
ジェラルドが言う。
「バネッサだけを平民として市井に放置はできませんよ」
バネッサが首を横に振る。
「私は構いません」
ロベルトが慌てて母の手を握った。
「僕だけ貴族になんてならないよ。お母様を捨てては絶対に行けない」
「でもあなたは神学校に行くことを選んだわ? 同じことよ?」
「それは……お父様のために……」
サザーランド公爵が小さな溜息を吐いた。
「タイムリミットは?」
バネッサが答えた。
「教会に返事をする期限は二か月後です」
「あまり時間が無いな……」
再び全員が黙り込んだ時、応接室のドアが勢いよく開けられた。
「リリア夫人が目覚めました!」
ジェラルドがいち早く立ち上がり駆け出した。
皇太子妃宮のバルコニーから落ちたリリアは、一命をとりとめたものの、目じりから頬にかけて大きな傷を負ってしまった。
下に植え込みがあったお陰で、この程度で助かったという医者の言葉に、ジェラルドは改めて戦慄を覚えた。
リリアの父である宰相とその補佐を務める長男が呼ばれ、包帯だらけのリリアを見て顔を顰めた。
リリアの愛娘であるマーガレットは母の手を握り泣きじゃくっている。
部屋の隅には、バネッサとロベルトが小さくなって座っており、その横には皇太子が立っていた。
「これはいったいどういうことですか?」
全員を見回してサザーランド公爵が口を開いた。
リリアの兄であるダニエルは、バネッサとジェラルドそっくりの子供を見て、小さく溜息を吐いた。
「宰相、この宮で起きた事故だ。責任は感じているし、できるだけのことはさせてもらう。本当に申し訳なかった」
「皇太子殿下、状況がわからないのですが? ご説明はいただけるのでしょうか?」
「勿論だ。部屋を変えよう。医者も護衛も侍女も残すから安心してほしい」
全員が頷いて部屋を出た。
マーガレットは母親から離れまいと抵抗したが、リリアが静かに眠れないからという言葉に渋々頷いた。
先ほどの部屋に戻り、新しいお茶が配られた。
ジェラルドは静かな口調で、淡々と事実を述べていった。
サザーランド公爵の大きな溜息が部屋に響く。
「確認するが、君たちがそういう関係になったのは、リリアとの結婚話が出る前だということだね? だからそのことは不貞ではないと言うのだね?」
「バネッサは婚約者がいましたから、不貞ではないとは言い切れません。しかし、僕はリリアに会ったことも無かった時期です」
「うん、娘がこういう状況になってしまって、途轍もなく腹立たしいが、一人の男としては君の気持も分からなくはないよ。私がおなじ状況になったら、君と同じような行動をとったかもしれないとさえ思う。それに君の性格とリリアへの愛情は疑う余地もない」
息子であるダニエル・パーシモンが父の言葉を引き取った。
「僕は気づいていたんだ。その子がジェラルドとバネッサの子だってね。でも気づかない振りをした。セイレーン国に書簡を届けに行ったとき、バネッサにも会いに行っただろう? 覚えている? その時に相談に乗るって言えばよかった。澄んだ湖面に一石を投じるべきではないと思ってしまったんだ。何か事情があって相手も納得しているのだろうと……」
「ええ、覚えているわ。懐かしいだろうってバージル国のお菓子を持ってきてくれたわね。あなたの判断は間違っていないわ。私もこのまま暮らすのだと信じていたもの」
ロベルトが口を開く。
「僕も覚えています。ナッツのお菓子をいただいて、僕を抱き上げて笑ってくださった」
ダニエルとバネッサが驚いた顔でロベルトを見た。
「あなたまだ五歳にもなっていなかった頃よ?」
「うん、でも本当に覚えているんだ。この人が僕の本当のお父様なのかなって思ったから。でも抱き上げて下さった時にわかったんだ。この人ではないと……」
「ロベルト……本当のお父さんってどういう意味?」
バネッサが泣きそうな顔で尋ねた。
「お母様には知られないようにしてたけど、使用人や親戚の方達は僕が不貞の子だと言ってたよ。偶然お祖母様と同じ色を持っていたから置いてもらえているだけで、本当はリンガーの血は一滴も入ってないって言われていたんだ」
「虐められていたの? 知らなかったわ……」
「あからさまに虐めることは無かった。お父様も僕を可愛がって下さったから、誰も手は出さなかったよ。でもずっとお母様の悪口を聞かされて、とても辛かった。そんな時にお母様のお友達だという方が来てくださったから印象に残っているんだと思う」
サザーランド公爵が静かに言った。
「君はいろいろ耐えてきたんだね。その年齢で母親のことを悪く言われるのは辛かっただろう。きっとバネッサ夫人を守ろうとしたんだろうね。それにしても……うちの娘にどんな不満があるんだっても言えないし? だって不満なんて無いのだろう? ではなぜうちの娘を裏切ったんだ……とも言えないよな? だって知り合う前の事だもの。私はいったい誰に怒ればいいんだ?」
ジェラルドが言った。
「それは間違いなく僕です。お義父さん、本当に申し訳ありませんでした」
「君はもっとリリアを信頼するべきだった。でも、これは結果論だ。先ほども言ったが、私もおそらく同じ方法を選んだだろうと思うよ」
「僕もそうすると思う……」
妹婿の窮地に同情を禁じ得ない義兄。
ロベルトが静かに言った。
「僕たちのことはもう忘れて下さい。今はマーガレットのお母様の事だけを考えましょう」
拳を握りしめているロベルトに、リリアの父であるサザーランド公爵が言った。
「君の申し出はありがたいが、リリアも大人だ。君の人生を犠牲にしたことを知ったら余計に怒ると思うよ? それよりもどうするのが一番いいのかをみんなで考えようじゃないか。君の意見は自己犠牲の上に成り立っている。それ自体は実に高潔だ。しかし、見方を変えると、みんなの心にずっと消えない傷を残す行為だよ? 今は良くても、きっとここに居る全員が後悔する事になる」
ロベルトが俯き、バネッサが寄り添った。
そんな二人を見たサザーランド公爵が、再び口を開く。
「彼の立場を確固たるものにする方法は無いのかい?」
ジェラルドが話し始めた。
「実は皇太子殿下に紹介してもらって、弁護士に相談したのです。ロベルトを非嫡出子という立場から救うためには、僕が認知をしてから母親であるバネッサと籍を入れるしか無いと言われました。認知するだけなら、戸籍の父親の欄には僕の名が記載されますが、ロベルトは平民のままです。僕が養子に迎えれば貴族籍は取得できますが、戸籍上は非嫡出子のままです」
全員が頭を抱えた。
ふと皇太子妃が言う。
「あなたの権限で何とかならないの?」
皇太子が眉を八の字にして返した。
「戸籍に関しては手を出せない。貴族学園に入ることができるのなら、成績如何によっては王宮で採用することもできるし、将来も明るい。しかし、平民のままとなると出世は望めない。しかも非嫡出子となると、かなり険しい道になるだろうね」
「子供の責任じゃないのに? 考えが古いわ。相変わらず使えないわね!」
「そう言わないでくれよ。僕たちの世代になったら改革の余地もあるけれど、今すぐには無理だ」
アネックス公爵夫人が言った。
「王宮ではそうでしょうけれど、個人での雇用なら大丈夫なのではありませんか? 例えばアネックス家で働いてもらうとか」
今度はダニエルが応えた。
「個人としての雇用にしても、やはり平民という身分では難しいでしょう?我が家もそうですが、侍従長や家令や執事は貴族家の次男や三男です。平民ではありません。侍女も同じです。それを優秀だからと言って慣例を破ると、必ずしっぺ返しが来る。それも採用した側ではなく、採用された側にです。孤立することは間違いない」
「確かにそうですわね……」
皇太子が言った。
「理想としては貴族として嫡出子の身分を取得するってことだな? でもそれだとバネッサの元夫が動き出すのではないの?」
「ええ、知られないうちに囲い込んでしまわないと危ないわ。先日来た弁護士も、私の収入額が低すぎるから養育できないと申し立てれば簡単に引き取れるって言ってましたもの」
「今更なんだよなぁ」
ダニエルの言葉の後に、皇太子妃が口を開いた。
「例えば、パーシモン卿が認知してから他の貴族の養子に入るってどう?子がない家なら喜ぶのではないかしら」
ジェラルドが言う。
「バネッサだけを平民として市井に放置はできませんよ」
バネッサが首を横に振る。
「私は構いません」
ロベルトが慌てて母の手を握った。
「僕だけ貴族になんてならないよ。お母様を捨てては絶対に行けない」
「でもあなたは神学校に行くことを選んだわ? 同じことよ?」
「それは……お父様のために……」
サザーランド公爵が小さな溜息を吐いた。
「タイムリミットは?」
バネッサが答えた。
「教会に返事をする期限は二か月後です」
「あまり時間が無いな……」
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