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 いつもお読みいただきありがとうございます。
 第50話より1日1話の更新となります。
 よろしくお願いいたします。





「微粒子の集合体なの?」

「そうだよ」

「だったら固めちゃえばいいじゃん」

「固める? どうやって?」

「ゼリーだと固まるまでに時間がかかっちゃうかぁ……。何かないかな」

 シューンが立ち上がった。

「鳥もちは? 鳥もちにくっつけちゃうの」

「なるほど!」

 サリーとシューンが手を取り合って笑った。
 イースが言う。

「なんだ? 鳥もちって」

 サリーが説明した。
 その横でシューンが絵をかいて補足する。

「窓の所にぶら下げておくと、匂いで虫が寄ってくるんだ。それで、そのプラプラしているのに虫が止まると動けなくなるんだよ」

「へぇ~。よく知ってたなぁ」

「うん、だってぼいく……しょに……なんかの本で読んだ」

「そうか、頑張って勉強しているものなぁ。でもどこに売っているんだ?」

「……知らない」

 イースはサリーの顔を見た。
 サリーは真っ青な顔をして、歯を食いしばっていた。

「サリー?」

 ギュッと目を閉じたサリーがゆっくりと口を開ける。

「なんとなくわかりますから作ってみましょうか?」

「ああ、それは助かる」

 イースは嬉しそうに言った。

「ハエトリガミよ出てこ~い! え~い!」

 人が変身するときとは違う、何やら煙のようなものが湧きだして、テーブルの上にポンとハエトリガミが出てきた。

「これって結構強力ですから、触ったりしない方が良いですよ。何かで試してみましょう」

 そう言うとサリーはハエトリガミを広げて周りを見回した。

「先ほどシューン殿下が言ったのは、固形の粘着剤のような物のことで、異国ではそれを投げて野鳥を捕まえたりしていたのだそうです。これは前世の知識ですが、鳥もち自体は随分古くからあったので、殿下が読んだ本にも記載されていたのでしょうね」

 サリーはシューンの顔を見た。
 あからさまにホッとしている。

「ロバート様とマーカス様、すみませんが手伝っていただけますか?」

 二人が頷いた。

「ここをもって弛まないように持っていてもらえますか?」

 サリーは先ほどトーマスが砕いたクッキーの粉をかき集めて握った。

「それっ!」

 サリーは二人が固定しているハエトリガミに向かって、クッキーの粉を投げた。

「お~!」

「すごいな」

 見ていた者たちが感嘆の声を上げる。

「ね? ぜんぶくっついちゃうでしょ? しかも剝がれません。凄い粘着力なのです。間違えて髪の毛などにつけてしまうと、髪を切らなくてはいけなくなるでしょうね」

 王妃が無意識に後退る。

「庭師の方にプレゼントしたら喜ばれるかも……あっ!」

 イースがサリーを見た。

「どうした?」

「これ使えませんか? 人型の時にこれで巻きつけてしまえば捕まえられそうな気がするんですけど」

 ウサキチが言う。

「有効な手段かもしれないが、全てを吸着するのはむりだろうな。奴はどのような形にでもなれるんだ。完全に包み込むのは無理だろう?」

「囲い込む? 囲い込む……ねえウサキチ。今までの邪神って人型の時は普通くらいの大きさなのよね?」

「そうだな、先ほどシューンが言ったように、イースくらいの大きさだ。いや、もう少し大きいかな? でも今回も同じだとは言い切れない」

「なるほどね……ちょっと良いこと考えちゃった。実験してみないといけないから、まだわからないけど」

「なんだ?」

 ウサキチが怪訝な声を出したが、サリーはニコッと笑ってスルーした。

「羽虫作戦はいつ決行ですか?」

 トーマスが答えた。

「すべてシューン殿下とウサキチ殿の判断だろう」

 全員がシューンとウサキチを見た。
 シューンはテーブルに置いていたウサキチを被りながら全員の顔を見回した。

「早い方が良いね。でも……もう少しだけ……待ってほしい」

 そう言ってサリーの顔を見上げるシューン。
 サリーはシューンと手を繋いだ。

「急ぐ必要は無いわ」

 コクッと頷いて微笑むシューンは、どう見ても普通の6歳児だ。
 6歳といえばピカピカの一年生になる年なのだ。
 まだどろんこ遊びが楽しくて仕方がない筈の年なのだ。
 そう思うと、胸が苦しくなって涙が込み上げてしまう。
 サリーはグッと唇をかんだ。

「ゆっくり考えましょうね? それよりバイオリンの練習はできていますか? 来週はみんなの合同誕生日会ですよ? お披露目するのでしょう?」

「あ……うん。頑張る」

「そうね、頑張りましょうね。皆さんとても楽しみにしているみたいですよ?」

 シューンは両親と兄の顔を見た。
 三人ともニコニコと笑っている。

「うん! 頑張るよ。サリー、今から練習するから一緒に来て?」

「はい、殿下」

 こうしてプロジェクト会議は、短期決戦に舵を切って散会した。
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