51 / 61
50
しおりを挟む
いつもお読みいただきありがとうございます。
第50話より1日1話の更新となります。
よろしくお願いいたします。
「微粒子の集合体なの?」
「そうだよ」
「だったら固めちゃえばいいじゃん」
「固める? どうやって?」
「ゼリーだと固まるまでに時間がかかっちゃうかぁ……。何かないかな」
シューンが立ち上がった。
「鳥もちは? 鳥もちにくっつけちゃうの」
「なるほど!」
サリーとシューンが手を取り合って笑った。
イースが言う。
「なんだ? 鳥もちって」
サリーが説明した。
その横でシューンが絵をかいて補足する。
「窓の所にぶら下げておくと、匂いで虫が寄ってくるんだ。それで、そのプラプラしているのに虫が止まると動けなくなるんだよ」
「へぇ~。よく知ってたなぁ」
「うん、だってぼいく……しょに……なんかの本で読んだ」
「そうか、頑張って勉強しているものなぁ。でもどこに売っているんだ?」
「……知らない」
イースはサリーの顔を見た。
サリーは真っ青な顔をして、歯を食いしばっていた。
「サリー?」
ギュッと目を閉じたサリーがゆっくりと口を開ける。
「なんとなくわかりますから作ってみましょうか?」
「ああ、それは助かる」
イースは嬉しそうに言った。
「ハエトリガミよ出てこ~い! え~い!」
人が変身するときとは違う、何やら煙のようなものが湧きだして、テーブルの上にポンとハエトリガミが出てきた。
「これって結構強力ですから、触ったりしない方が良いですよ。何かで試してみましょう」
そう言うとサリーはハエトリガミを広げて周りを見回した。
「先ほどシューン殿下が言ったのは、固形の粘着剤のような物のことで、異国ではそれを投げて野鳥を捕まえたりしていたのだそうです。これは前世の知識ですが、鳥もち自体は随分古くからあったので、殿下が読んだ本にも記載されていたのでしょうね」
サリーはシューンの顔を見た。
あからさまにホッとしている。
「ロバート様とマーカス様、すみませんが手伝っていただけますか?」
二人が頷いた。
「ここをもって弛まないように持っていてもらえますか?」
サリーは先ほどトーマスが砕いたクッキーの粉をかき集めて握った。
「それっ!」
サリーは二人が固定しているハエトリガミに向かって、クッキーの粉を投げた。
「お~!」
「すごいな」
見ていた者たちが感嘆の声を上げる。
「ね? ぜんぶくっついちゃうでしょ? しかも剝がれません。凄い粘着力なのです。間違えて髪の毛などにつけてしまうと、髪を切らなくてはいけなくなるでしょうね」
王妃が無意識に後退る。
「庭師の方にプレゼントしたら喜ばれるかも……あっ!」
イースがサリーを見た。
「どうした?」
「これ使えませんか? 人型の時にこれで巻きつけてしまえば捕まえられそうな気がするんですけど」
ウサキチが言う。
「有効な手段かもしれないが、全てを吸着するのはむりだろうな。奴はどのような形にでもなれるんだ。完全に包み込むのは無理だろう?」
「囲い込む? 囲い込む……ねえウサキチ。今までの邪神って人型の時は普通くらいの大きさなのよね?」
「そうだな、先ほどシューンが言ったように、イースくらいの大きさだ。いや、もう少し大きいかな? でも今回も同じだとは言い切れない」
「なるほどね……ちょっと良いこと考えちゃった。実験してみないといけないから、まだわからないけど」
「なんだ?」
ウサキチが怪訝な声を出したが、サリーはニコッと笑ってスルーした。
「羽虫作戦はいつ決行ですか?」
トーマスが答えた。
「すべてシューン殿下とウサキチ殿の判断だろう」
全員がシューンとウサキチを見た。
シューンはテーブルに置いていたウサキチを被りながら全員の顔を見回した。
「早い方が良いね。でも……もう少しだけ……待ってほしい」
そう言ってサリーの顔を見上げるシューン。
サリーはシューンと手を繋いだ。
「急ぐ必要は無いわ」
コクッと頷いて微笑むシューンは、どう見ても普通の6歳児だ。
6歳といえばピカピカの一年生になる年なのだ。
まだどろんこ遊びが楽しくて仕方がない筈の年なのだ。
そう思うと、胸が苦しくなって涙が込み上げてしまう。
サリーはグッと唇をかんだ。
「ゆっくり考えましょうね? それよりバイオリンの練習はできていますか? 来週はみんなの合同誕生日会ですよ? お披露目するのでしょう?」
「あ……うん。頑張る」
「そうね、頑張りましょうね。皆さんとても楽しみにしているみたいですよ?」
シューンは両親と兄の顔を見た。
三人ともニコニコと笑っている。
「うん! 頑張るよ。サリー、今から練習するから一緒に来て?」
「はい、殿下」
こうしてプロジェクト会議は、短期決戦に舵を切って散会した。
第50話より1日1話の更新となります。
よろしくお願いいたします。
「微粒子の集合体なの?」
「そうだよ」
「だったら固めちゃえばいいじゃん」
「固める? どうやって?」
「ゼリーだと固まるまでに時間がかかっちゃうかぁ……。何かないかな」
シューンが立ち上がった。
「鳥もちは? 鳥もちにくっつけちゃうの」
「なるほど!」
サリーとシューンが手を取り合って笑った。
イースが言う。
「なんだ? 鳥もちって」
サリーが説明した。
その横でシューンが絵をかいて補足する。
「窓の所にぶら下げておくと、匂いで虫が寄ってくるんだ。それで、そのプラプラしているのに虫が止まると動けなくなるんだよ」
「へぇ~。よく知ってたなぁ」
「うん、だってぼいく……しょに……なんかの本で読んだ」
「そうか、頑張って勉強しているものなぁ。でもどこに売っているんだ?」
「……知らない」
イースはサリーの顔を見た。
サリーは真っ青な顔をして、歯を食いしばっていた。
「サリー?」
ギュッと目を閉じたサリーがゆっくりと口を開ける。
「なんとなくわかりますから作ってみましょうか?」
「ああ、それは助かる」
イースは嬉しそうに言った。
「ハエトリガミよ出てこ~い! え~い!」
人が変身するときとは違う、何やら煙のようなものが湧きだして、テーブルの上にポンとハエトリガミが出てきた。
「これって結構強力ですから、触ったりしない方が良いですよ。何かで試してみましょう」
そう言うとサリーはハエトリガミを広げて周りを見回した。
「先ほどシューン殿下が言ったのは、固形の粘着剤のような物のことで、異国ではそれを投げて野鳥を捕まえたりしていたのだそうです。これは前世の知識ですが、鳥もち自体は随分古くからあったので、殿下が読んだ本にも記載されていたのでしょうね」
サリーはシューンの顔を見た。
あからさまにホッとしている。
「ロバート様とマーカス様、すみませんが手伝っていただけますか?」
二人が頷いた。
「ここをもって弛まないように持っていてもらえますか?」
サリーは先ほどトーマスが砕いたクッキーの粉をかき集めて握った。
「それっ!」
サリーは二人が固定しているハエトリガミに向かって、クッキーの粉を投げた。
「お~!」
「すごいな」
見ていた者たちが感嘆の声を上げる。
「ね? ぜんぶくっついちゃうでしょ? しかも剝がれません。凄い粘着力なのです。間違えて髪の毛などにつけてしまうと、髪を切らなくてはいけなくなるでしょうね」
王妃が無意識に後退る。
「庭師の方にプレゼントしたら喜ばれるかも……あっ!」
イースがサリーを見た。
「どうした?」
「これ使えませんか? 人型の時にこれで巻きつけてしまえば捕まえられそうな気がするんですけど」
ウサキチが言う。
「有効な手段かもしれないが、全てを吸着するのはむりだろうな。奴はどのような形にでもなれるんだ。完全に包み込むのは無理だろう?」
「囲い込む? 囲い込む……ねえウサキチ。今までの邪神って人型の時は普通くらいの大きさなのよね?」
「そうだな、先ほどシューンが言ったように、イースくらいの大きさだ。いや、もう少し大きいかな? でも今回も同じだとは言い切れない」
「なるほどね……ちょっと良いこと考えちゃった。実験してみないといけないから、まだわからないけど」
「なんだ?」
ウサキチが怪訝な声を出したが、サリーはニコッと笑ってスルーした。
「羽虫作戦はいつ決行ですか?」
トーマスが答えた。
「すべてシューン殿下とウサキチ殿の判断だろう」
全員がシューンとウサキチを見た。
シューンはテーブルに置いていたウサキチを被りながら全員の顔を見回した。
「早い方が良いね。でも……もう少しだけ……待ってほしい」
そう言ってサリーの顔を見上げるシューン。
サリーはシューンと手を繋いだ。
「急ぐ必要は無いわ」
コクッと頷いて微笑むシューンは、どう見ても普通の6歳児だ。
6歳といえばピカピカの一年生になる年なのだ。
まだどろんこ遊びが楽しくて仕方がない筈の年なのだ。
そう思うと、胸が苦しくなって涙が込み上げてしまう。
サリーはグッと唇をかんだ。
「ゆっくり考えましょうね? それよりバイオリンの練習はできていますか? 来週はみんなの合同誕生日会ですよ? お披露目するのでしょう?」
「あ……うん。頑張る」
「そうね、頑張りましょうね。皆さんとても楽しみにしているみたいですよ?」
シューンは両親と兄の顔を見た。
三人ともニコニコと笑っている。
「うん! 頑張るよ。サリー、今から練習するから一緒に来て?」
「はい、殿下」
こうしてプロジェクト会議は、短期決戦に舵を切って散会した。
36
お気に入りに追加
1,036
あなたにおすすめの小説
【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
大陸を制覇し、全盛を極めたアティン帝国を一夜にして滅ぼした『大災厄』―――正体のわからぬ大災害の話は、御伽噺として世に広まっていた。
うっかり『大災厄』の正体を知った魔術師――ルリアージェ――は、大陸9つの国のうち、3つの国から追われることになる。逃亡生活の邪魔にしかならない絶世の美形を連れた彼女は、徐々に覇権争いに巻き込まれていく。
まさか『大災厄』を飼うことになるなんて―――。
真面目なようで、不真面目なファンタジーが今始まる!
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※2022/05/13 第10回ネット小説大賞、一次選考通過
※2019年春、エブリスタ長編ファンタジー特集に選ばれました(o´-ω-)o)ペコッ
ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!
カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!!
祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。
「よし、とりあえず叩いてみよう!!」
ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。
※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!
ヒトナードラゴンじゃありません!~人間が好きって言ったら変竜扱いされたのでドラゴン辞めて人間のフリして生きていこうと思います~
Mikura
ファンタジー
冒険者「スイラ」の正体は竜(ドラゴン)である。
彼女は前世で人間の記憶を持つ、転生者だ。前世の人間の価値観を持っているために同族の竜と価値観が合わず、ヒトの世界へやってきた。
「ヒトとならきっと仲良くなれるはず!」
そう思っていたスイラだがヒトの世界での竜の評判は最悪。コンビを組むことになったエルフの青年リュカも竜を心底嫌っている様子だ。
「どうしよう……絶対に正体が知られないようにしなきゃ」
正体を隠しきると決意するも、竜である彼女の力は規格外過ぎて、ヒトの域を軽く超えていた。バレないよねと内心ヒヤヒヤの竜は、有名な冒険者となっていく。
いつか本当の姿のまま、受け入れてくれる誰かを、居場所を探して。竜呼んで「ヒトナードラゴン」の彼女は今日も人間の冒険者として働くのであった。
魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います
町島航太
ファンタジー
異常なお人好しである高校生雨宮良太は、見ず知らずの少女を通り魔から守り、死んでしまう。
善行と幸運がまるで釣り合っていない事を哀れんだ転生の女神ダネスは、彼を丁度平和な魔法の世界へと転生させる。
しかし、転生したと同時に魔王軍が復活。更に、良太自身も転生した家系的にも、人間的にもあり得ない闇の魔法属性を持って生まれてしまうのだった。
存在を疎んだ父に地下牢に入れられ、虐げられる毎日。そんな日常を壊してくれたのは、まさかの新魔王の幹部だった。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる