47 / 61
47
しおりを挟む
「それならやりようはあるかもしれない。今ライラの両親は地下牢にいます。解放して帰宅させましょう」
「影を使うか?」
王が言葉を発した。
「よろしくお願いします。私も近くに待機します」
イースが慌てる。
「サムは怪我人だ。君は動くべきじゃない」
サムは首を横に振った。
「シューン殿下をお守りするのが私の望みであり、使命だと思っています。私を前線から外すのだけは勘弁してください」
「しかし……」
サムの決意は固かった。
トーマスが思いついたように言う。
「奴らの通信は、我らと同じで脳内に直接聞こえる感じだろうか」
ウサキチが答える。
「状況から判断してそうだろうな。信者たちが言う『お告げ』とやらがそうなのかもしれない」
「だとしたら例のお守り袋が使えるかもしれない」
全員がトーマスを見た。
「あれをライラの親に持たせて偽の『お告げ』を与えるのです。どう動くか……」
サムが頷く。
「なるほどな。例えば『新しい信者を連れて神殿に来い』とか言ってやれば、動きが掴めるかもしれません」
「しかし、あの布切れを常時持たせる方法が難しいな」
イースの言葉にサリーが言った。
「それこそ『お告げ』を使えば良いのです。気付かれないように持たせておいて、声を聞かせるのですよ。後で黄色い袋を授けるから、何があっても肌身から離すなとか言えば、従うのではないですか?」
「なるほど」
「しかしそうなると、我々の通信もあちらに筒抜けとなるのではないか?」
「そうですね……アジトが判明するまでは使用を控えるしか無いですね」
サリーが難しい顔をした。
あの通信手段は危機的状況の今だからこそ、有効に活用したい。
しかし他に方法がない。
ウサキチに向かってサリーが言った。
「ねえ、他の方法は無いの?」
ウサキチがしょぼくれた声を出す。
「あるにはあるが……」
「出し惜しみしないでよ」
「……同じ方法だよ。私に魂を半分渡す。でもこれは止めた方が良いと思うぞ? 私が消えたらお前たちの魂も半分消えるんだ」
全員が黙り込んだ。
「私は良いわよ?」
サリーがあっけらかんと言った。
ウサキチが慌てる。
「いや、お前が一番ダメだろ。というか、この方法は却下だ」
「じゃあどうするのよ! 時間が無いのよ!」
サリーが半泣きで叫んだ。
シューンが口を開いた。
まだ幼い声で大人でも口にするには覚悟がいる言葉を発する。
「短期決戦に持ち込もう。相手は予定が狂って焦っている。ということは予定より大きくなれていないということだ。まだ小さいうちなら全てを取り込むことは可能だから、早い方がいい。今までならあちらの方からやってきたので、迎え撃つという形だった。しかし今回は奴が育ち切る前に叩きたい。こちらから攻めよう」
サリーはドキッとした。
「シューン……シューン殿下……そんなことしたら……」
「ああ、泣かないでサリー。これは僕にとっても良い事なんだ。奴らもバカじゃない。きっと過去の経験を踏まえて何かしらの対策は立てているだろう。奴らのペースに乗ってやる必要はない。一気に片を付ける」
サリーはテーブルに伏せて泣き出した。
その背中をシューンがゆっくりと撫でる。
まだ紅葉のような小さな手で、一生懸命慰めている。
ウサキチが言葉を発した。
「あのお守り袋が無くても私と通信ができるのはサリーだけだ。そうなるとサリーも最前線に出る必要があるぞ?」
サリーはイースが差し出したハンカチで盛大に鼻をかんでから答えた。
「望むところよ、シューンを一人で行かせたりしない」
サリーの悲痛な覚悟に、もう誰も反論しなかった。
「影を使うか?」
王が言葉を発した。
「よろしくお願いします。私も近くに待機します」
イースが慌てる。
「サムは怪我人だ。君は動くべきじゃない」
サムは首を横に振った。
「シューン殿下をお守りするのが私の望みであり、使命だと思っています。私を前線から外すのだけは勘弁してください」
「しかし……」
サムの決意は固かった。
トーマスが思いついたように言う。
「奴らの通信は、我らと同じで脳内に直接聞こえる感じだろうか」
ウサキチが答える。
「状況から判断してそうだろうな。信者たちが言う『お告げ』とやらがそうなのかもしれない」
「だとしたら例のお守り袋が使えるかもしれない」
全員がトーマスを見た。
「あれをライラの親に持たせて偽の『お告げ』を与えるのです。どう動くか……」
サムが頷く。
「なるほどな。例えば『新しい信者を連れて神殿に来い』とか言ってやれば、動きが掴めるかもしれません」
「しかし、あの布切れを常時持たせる方法が難しいな」
イースの言葉にサリーが言った。
「それこそ『お告げ』を使えば良いのです。気付かれないように持たせておいて、声を聞かせるのですよ。後で黄色い袋を授けるから、何があっても肌身から離すなとか言えば、従うのではないですか?」
「なるほど」
「しかしそうなると、我々の通信もあちらに筒抜けとなるのではないか?」
「そうですね……アジトが判明するまでは使用を控えるしか無いですね」
サリーが難しい顔をした。
あの通信手段は危機的状況の今だからこそ、有効に活用したい。
しかし他に方法がない。
ウサキチに向かってサリーが言った。
「ねえ、他の方法は無いの?」
ウサキチがしょぼくれた声を出す。
「あるにはあるが……」
「出し惜しみしないでよ」
「……同じ方法だよ。私に魂を半分渡す。でもこれは止めた方が良いと思うぞ? 私が消えたらお前たちの魂も半分消えるんだ」
全員が黙り込んだ。
「私は良いわよ?」
サリーがあっけらかんと言った。
ウサキチが慌てる。
「いや、お前が一番ダメだろ。というか、この方法は却下だ」
「じゃあどうするのよ! 時間が無いのよ!」
サリーが半泣きで叫んだ。
シューンが口を開いた。
まだ幼い声で大人でも口にするには覚悟がいる言葉を発する。
「短期決戦に持ち込もう。相手は予定が狂って焦っている。ということは予定より大きくなれていないということだ。まだ小さいうちなら全てを取り込むことは可能だから、早い方がいい。今までならあちらの方からやってきたので、迎え撃つという形だった。しかし今回は奴が育ち切る前に叩きたい。こちらから攻めよう」
サリーはドキッとした。
「シューン……シューン殿下……そんなことしたら……」
「ああ、泣かないでサリー。これは僕にとっても良い事なんだ。奴らもバカじゃない。きっと過去の経験を踏まえて何かしらの対策は立てているだろう。奴らのペースに乗ってやる必要はない。一気に片を付ける」
サリーはテーブルに伏せて泣き出した。
その背中をシューンがゆっくりと撫でる。
まだ紅葉のような小さな手で、一生懸命慰めている。
ウサキチが言葉を発した。
「あのお守り袋が無くても私と通信ができるのはサリーだけだ。そうなるとサリーも最前線に出る必要があるぞ?」
サリーはイースが差し出したハンカチで盛大に鼻をかんでから答えた。
「望むところよ、シューンを一人で行かせたりしない」
サリーの悲痛な覚悟に、もう誰も反論しなかった。
40
お気に入りに追加
1,029
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる