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祈りの力
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静まり返った会場にはティナに駆け寄るナサーリアの靴音と、必死にティナの名を呼ぶハーベストの声だけが響いていた。
『サーリ!頼む・・・ティナを・・・ティナを・・・』
「全力でお助けします!」
余裕のないナサーリアは神への返事を声に出している。
「どいてください!少し離れてください!」
ナサーリアの前にティナに続く道ができた。
「皇帝陛下、そのままティナ様を抱いていてください。アーレント様もそのままで。他の方たちはその場で動かないでください。波動が定まりません!」
少女とは思えないほど冷静な声で的確に指示を出すナサーリア。
その迫力に駆けつけた医師たちでさえ近寄れずにいた。
ナサーリアの体を光が包み、その光がティナに向かって流れていく。
必死の形相のナサーリアの顔には汗が浮かんでいた。
『サーリ、俺はお前に加護を与え続けるから、それをティナに流し込んでくれ』
「はい!」
ナサーリアに覆いかぶさるように、より一層まばゆい光が現れた。
「神様・・・」
『ここに居る全員の力を使え』
「はい!」
光に包まれたままのナサーリアが、壁際に集まって固唾をのんでいる首脳たちに話しかけた。
「皆様のお力を・・・どうか・・・どうか・・・お願いします。神に祈ってください。ティナ様のお命を・・・お助け下さい・・・お願いです・・・お願いですからぁぁぁ・・・」
泣きながら訴えるナサーリアの声に、一人またひとりと跪いて祈り始める。
その場にいる全員が敬虔な祈りを捧げたとき、神が叫んだ。
『サーリ!今だ!力の限り注ぎ込め!』
「はいっ!」
ナサーリアは再びティナに向かって手を伸ばし、より強くなった光の束を注ぎ込んだ。
やがて光の束は帯となり、ティナの体を包み込む。
『サーリご苦労様。よく頑張ったね。ティナは・・・大丈夫だ』
神の声を聞いたナサーリアは微笑みながら意識を失った。
やがて光の帯が薄くなり、ティナの体が浮かび上がってくる。
ハーベストはハッと我に返りティナの体を抱き寄せた。
「ティナ・・・」
ティナは浅い息をしていたが、意識は戻らないままだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰国する首脳たちをキリウスと共に見送りながら、最後にとんでもない事件が起こったことで、かえって各国の結束は強くなったとキアヌは感じていた。
首脳たちは本格的に始動する相互不可侵条約機構と連合軍の活躍に期待を寄せつつも、アルベッシュ帝国皇后への感謝の言葉を口にして帰っていく。
「これも聖女ティナロアの思し召しか・・・」
守り切れなかった事を悔やむのはキアヌだけではない。
ハーベストは一切の政務を拒否し、ティナロアの側から離れない。
アーレントもリリアンもティナの部屋から動かなかった。
主犯はエイアール国であることは、暗殺者の顔を確認したマリアンヌによって断言された。
暗殺者本人も目の当たりにした奇跡に、自らの行いを深く悔い素直に供述している。
キアヌとローマン国王によって捕縛されたエイアール国王は地下牢に収監されている。
慌ててやってきたエイアール国宰相の『王の独断』という言い訳に耳を貸すものはいない。
事務局の業務が本格化するぎりぎりまで滞在していたキアヌが帰国する日がやってきた。
ハロッズ侯爵と聖女ナサーリアはティナの治癒のために残ることになっている。
キアヌは断腸の思いでティナの部屋を訪れた。
「ティナロア嬢・・・私が力不足だったばかりに・・・申し訳ない」
ティナが眠り続けるベッドの横に跪いて、涙ながらに懺悔の言葉を口にするキアヌ。
そのキアヌの肩に手を置いたのはアーレントだった。
「キアヌ殿下。これからの活躍を期待していると母上は言っています。どうぞお体には気を付けられて・・・母の分も・・・母の・・・」
最後は涙で言葉にならなかった。
キアヌはアーレントを抱きしめて声を上げて泣いた。
しばらく泣き続けたキアヌは、ようやくアーレントを離し口を開いた。
「誓うよ・・・我が命にかけて」
ゆっくりと立ち上がったキアヌはティナの頬にそっと指先だけで触れ、それ以上何も言わず部屋を出た。
『サーリ!頼む・・・ティナを・・・ティナを・・・』
「全力でお助けします!」
余裕のないナサーリアは神への返事を声に出している。
「どいてください!少し離れてください!」
ナサーリアの前にティナに続く道ができた。
「皇帝陛下、そのままティナ様を抱いていてください。アーレント様もそのままで。他の方たちはその場で動かないでください。波動が定まりません!」
少女とは思えないほど冷静な声で的確に指示を出すナサーリア。
その迫力に駆けつけた医師たちでさえ近寄れずにいた。
ナサーリアの体を光が包み、その光がティナに向かって流れていく。
必死の形相のナサーリアの顔には汗が浮かんでいた。
『サーリ、俺はお前に加護を与え続けるから、それをティナに流し込んでくれ』
「はい!」
ナサーリアに覆いかぶさるように、より一層まばゆい光が現れた。
「神様・・・」
『ここに居る全員の力を使え』
「はい!」
光に包まれたままのナサーリアが、壁際に集まって固唾をのんでいる首脳たちに話しかけた。
「皆様のお力を・・・どうか・・・どうか・・・お願いします。神に祈ってください。ティナ様のお命を・・・お助け下さい・・・お願いです・・・お願いですからぁぁぁ・・・」
泣きながら訴えるナサーリアの声に、一人またひとりと跪いて祈り始める。
その場にいる全員が敬虔な祈りを捧げたとき、神が叫んだ。
『サーリ!今だ!力の限り注ぎ込め!』
「はいっ!」
ナサーリアは再びティナに向かって手を伸ばし、より強くなった光の束を注ぎ込んだ。
やがて光の束は帯となり、ティナの体を包み込む。
『サーリご苦労様。よく頑張ったね。ティナは・・・大丈夫だ』
神の声を聞いたナサーリアは微笑みながら意識を失った。
やがて光の帯が薄くなり、ティナの体が浮かび上がってくる。
ハーベストはハッと我に返りティナの体を抱き寄せた。
「ティナ・・・」
ティナは浅い息をしていたが、意識は戻らないままだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰国する首脳たちをキリウスと共に見送りながら、最後にとんでもない事件が起こったことで、かえって各国の結束は強くなったとキアヌは感じていた。
首脳たちは本格的に始動する相互不可侵条約機構と連合軍の活躍に期待を寄せつつも、アルベッシュ帝国皇后への感謝の言葉を口にして帰っていく。
「これも聖女ティナロアの思し召しか・・・」
守り切れなかった事を悔やむのはキアヌだけではない。
ハーベストは一切の政務を拒否し、ティナロアの側から離れない。
アーレントもリリアンもティナの部屋から動かなかった。
主犯はエイアール国であることは、暗殺者の顔を確認したマリアンヌによって断言された。
暗殺者本人も目の当たりにした奇跡に、自らの行いを深く悔い素直に供述している。
キアヌとローマン国王によって捕縛されたエイアール国王は地下牢に収監されている。
慌ててやってきたエイアール国宰相の『王の独断』という言い訳に耳を貸すものはいない。
事務局の業務が本格化するぎりぎりまで滞在していたキアヌが帰国する日がやってきた。
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キアヌは断腸の思いでティナの部屋を訪れた。
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ティナが眠り続けるベッドの横に跪いて、涙ながらに懺悔の言葉を口にするキアヌ。
そのキアヌの肩に手を置いたのはアーレントだった。
「キアヌ殿下。これからの活躍を期待していると母上は言っています。どうぞお体には気を付けられて・・・母の分も・・・母の・・・」
最後は涙で言葉にならなかった。
キアヌはアーレントを抱きしめて声を上げて泣いた。
しばらく泣き続けたキアヌは、ようやくアーレントを離し口を開いた。
「誓うよ・・・我が命にかけて」
ゆっくりと立ち上がったキアヌはティナの頬にそっと指先だけで触れ、それ以上何も言わず部屋を出た。
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