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婚姻は外堀から
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部屋に緊張感が走る。
ティナは無意識でそっとお腹に手を当てた。
先ほどまでの軽さなど微塵も纏わない表情でキアヌが口を開く。
「やはりエイアールですか?」
ハーベストがちらりとティナを見て頷いた。
「しかし証拠は掴めていない。我が国も一枚岩というわけではないのでな・・・裏切者の目星は付けているが」
「やるとしたら来週の?」
「恐らくそうだろう。身重のティナは出席しないということは既に周知の事実だからな。ティナの警護が手薄になった時を狙うのではないかと思う」
「招待ではなく強奪とは・・・思い切った手段をとりますね」
「ああ、まさかそこまでバカだとはな。ティナと腹の子を人質にとれば私にも手は出せないと踏んだのだろう」
「バカですね」
「うん。バカだな」
ティナが心配を口にした。
「マリアンヌ姫のご心痛を思うと・・・お可哀そうに」
ハーベストがティナの手をそっと握った。
「ああ、とても苦しいだろうが彼女は全面的に協力してくれているよ。捕えたスパイの面通しを自ら買って出てくれたお陰でエイアールが黒幕だと知れたしな」
「そうですか・・・最近お顔も拝見してなくて」
「ああ、今ならキアヌ殿下を紹介するという言い訳も使えるぞ?」
キアヌがニコッと微笑んで頷いた。
ハーベストが再び真剣な顔に戻る。
「当日はティナの部屋を厳重に固めるが、それ以外に手がないのが現状だ」
キアヌがそっとティナを見た。
「パーティー当日はずっとこの部屋から出ませんわ。女性騎士達も室内で警護してくれますし、リリアン様も一緒に居ると仰って下さっておりますし」
「そうか・・・まあ確かに他に手はありませんね。リリアン元妃がティナロア嬢と一緒ということは?アーレント皇子はどのように?」
「ああ、パーティーにはアーレントも出席させる。国内では皇太子としてお披露目したが、各国首脳が一同に会するチャンスは見逃せない。調印式が終わったら紹介する予定だ。マリアンヌ姫が連れて入室する事になっている」
「マリアンヌ姫が?」
「アーレントも懐いているし、マリアンヌ姫が言うには自分が盾になれば流石にアーレントには手出ししないだろうと・・・反対したのだが彼女も必死なのだろう」
「もしそれでアーレント皇子にまで危害を加えたとなると・・・身内としては立ち直れないほどのショックでしょうね」
「貴国の場合は兄弟仲が良いからそう思うのだろうが、王族の血縁関係など薄っぺらいものだ。マリアンヌ姫の命などあのバカにとっては只の道具だろう。それでも信じたいとどこかで思っている姫は哀れなものだが」
三人は沈痛な顔で暫し黙り込んだ。
沈黙を破るようにノックの音がして、キリウスにエスコートされたマリアンヌ姫とアーレントが入ってきた。
「母上!宰相殿にも奥方様にも衣装を褒めていただきました!」
苦笑いを浮かべるハーベストとキリウスの横でマリアンヌ姫がカーテシーを披露した。
キアヌが気を利かせてマリアンヌ姫の前に進む。
「何度かお顔は拝見しましたが、言葉を交わすのは初めてですね。私はベルツ王国第二王子のキアヌ・ローレンティオ・ベルツアントと申します。さすがにアルベッシュ帝国の影の皇帝と呼ばれるキリウス宰相殿の奥方だ。お美しい・・・見惚れましたよ」
マリアンヌが恥ずかしそうにお辞儀をした。
キリウスがマリアンヌの横に並んで助け舟を出した。
「ありがとうございます、キアヌ皇子。自国だけでなく我が国の女性たちにも大人気のキアヌ殿に褒められるとは・・・良かったねマリアンヌ」
マリアンヌがおずおずと口を開く。
「ありがたいお言葉でございます。お初にお目に掛ります。私はエイアール国第一皇女マリアンヌ・レイトレット・エイアールと申します」
キアヌがマリアンヌの手を取って甲に口づける。
キリウスの肩がぴくっと動いた。
そんなキリウスに気づいたキアヌが笑いを殺しながら言った。
「それにしてもハーベスト皇帝といい、キリウス宰相といい、いつの間に婚姻されたのですか?お披露目は国内だけでされたのでしょうか?」
キアヌが悪い顔で二人を見る。
キリウスがひとつ咳払いをした。
「いや・・・お恥ずかしい限りで。ハーベストはアーレントという何よりの証拠がいますから、なんと言うか済崩し的な・・・私たちはまだ婚約中の身です」
「おや?アーレントが奥方様と紹介してくれましたが?」
マリアンヌが恥ずかしそうに俯いてしまった。
ティナが慌てて間に入る。
「キアヌ殿下、そういじめないで下さいませ。そう言うとキリウス様が喜んでアーレントにお菓子を渡すものですから、アーレントが味をしめてしまったのですわ」
「なるほど!外堀から・・・さすがの戦略ですね」
全員が明るく笑った。
ティナは無意識でそっとお腹に手を当てた。
先ほどまでの軽さなど微塵も纏わない表情でキアヌが口を開く。
「やはりエイアールですか?」
ハーベストがちらりとティナを見て頷いた。
「しかし証拠は掴めていない。我が国も一枚岩というわけではないのでな・・・裏切者の目星は付けているが」
「やるとしたら来週の?」
「恐らくそうだろう。身重のティナは出席しないということは既に周知の事実だからな。ティナの警護が手薄になった時を狙うのではないかと思う」
「招待ではなく強奪とは・・・思い切った手段をとりますね」
「ああ、まさかそこまでバカだとはな。ティナと腹の子を人質にとれば私にも手は出せないと踏んだのだろう」
「バカですね」
「うん。バカだな」
ティナが心配を口にした。
「マリアンヌ姫のご心痛を思うと・・・お可哀そうに」
ハーベストがティナの手をそっと握った。
「ああ、とても苦しいだろうが彼女は全面的に協力してくれているよ。捕えたスパイの面通しを自ら買って出てくれたお陰でエイアールが黒幕だと知れたしな」
「そうですか・・・最近お顔も拝見してなくて」
「ああ、今ならキアヌ殿下を紹介するという言い訳も使えるぞ?」
キアヌがニコッと微笑んで頷いた。
ハーベストが再び真剣な顔に戻る。
「当日はティナの部屋を厳重に固めるが、それ以外に手がないのが現状だ」
キアヌがそっとティナを見た。
「パーティー当日はずっとこの部屋から出ませんわ。女性騎士達も室内で警護してくれますし、リリアン様も一緒に居ると仰って下さっておりますし」
「そうか・・・まあ確かに他に手はありませんね。リリアン元妃がティナロア嬢と一緒ということは?アーレント皇子はどのように?」
「ああ、パーティーにはアーレントも出席させる。国内では皇太子としてお披露目したが、各国首脳が一同に会するチャンスは見逃せない。調印式が終わったら紹介する予定だ。マリアンヌ姫が連れて入室する事になっている」
「マリアンヌ姫が?」
「アーレントも懐いているし、マリアンヌ姫が言うには自分が盾になれば流石にアーレントには手出ししないだろうと・・・反対したのだが彼女も必死なのだろう」
「もしそれでアーレント皇子にまで危害を加えたとなると・・・身内としては立ち直れないほどのショックでしょうね」
「貴国の場合は兄弟仲が良いからそう思うのだろうが、王族の血縁関係など薄っぺらいものだ。マリアンヌ姫の命などあのバカにとっては只の道具だろう。それでも信じたいとどこかで思っている姫は哀れなものだが」
三人は沈痛な顔で暫し黙り込んだ。
沈黙を破るようにノックの音がして、キリウスにエスコートされたマリアンヌ姫とアーレントが入ってきた。
「母上!宰相殿にも奥方様にも衣装を褒めていただきました!」
苦笑いを浮かべるハーベストとキリウスの横でマリアンヌ姫がカーテシーを披露した。
キアヌが気を利かせてマリアンヌ姫の前に進む。
「何度かお顔は拝見しましたが、言葉を交わすのは初めてですね。私はベルツ王国第二王子のキアヌ・ローレンティオ・ベルツアントと申します。さすがにアルベッシュ帝国の影の皇帝と呼ばれるキリウス宰相殿の奥方だ。お美しい・・・見惚れましたよ」
マリアンヌが恥ずかしそうにお辞儀をした。
キリウスがマリアンヌの横に並んで助け舟を出した。
「ありがとうございます、キアヌ皇子。自国だけでなく我が国の女性たちにも大人気のキアヌ殿に褒められるとは・・・良かったねマリアンヌ」
マリアンヌがおずおずと口を開く。
「ありがたいお言葉でございます。お初にお目に掛ります。私はエイアール国第一皇女マリアンヌ・レイトレット・エイアールと申します」
キアヌがマリアンヌの手を取って甲に口づける。
キリウスの肩がぴくっと動いた。
そんなキリウスに気づいたキアヌが笑いを殺しながら言った。
「それにしてもハーベスト皇帝といい、キリウス宰相といい、いつの間に婚姻されたのですか?お披露目は国内だけでされたのでしょうか?」
キアヌが悪い顔で二人を見る。
キリウスがひとつ咳払いをした。
「いや・・・お恥ずかしい限りで。ハーベストはアーレントという何よりの証拠がいますから、なんと言うか済崩し的な・・・私たちはまだ婚約中の身です」
「おや?アーレントが奥方様と紹介してくれましたが?」
マリアンヌが恥ずかしそうに俯いてしまった。
ティナが慌てて間に入る。
「キアヌ殿下、そういじめないで下さいませ。そう言うとキリウス様が喜んでアーレントにお菓子を渡すものですから、アーレントが味をしめてしまったのですわ」
「なるほど!外堀から・・・さすがの戦略ですね」
全員が明るく笑った。
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