162 / 184
計画は順調です
しおりを挟む
ランバーツ伯爵を死に追いやり、その娘であったティナロアを屋敷と共に売り飛ばした後妻母娘が、抜けることのできない蟻地獄に嵌り込んで行くのと反比例する様に、キアヌ達の交渉は実を結んでいった。
実務者レベルでの調整も進み、工事業者による現地調査も終盤を迎えている。
人命に関わる案件のため、治山工事とダム工事はほぼ同時進行で進められることになった。
帝国側の責任者と共に、治山工事にはロバート伯爵が、ダム工事にはワンド伯爵が責任者として出張る。
キアヌは皇宮内に用意された管理事務所に詰め、報告されてくる進捗状況の把握や必要物資の調達指示など、寝る間も惜しんで奮闘していた。
そのうちに帰る時間も惜しくなったキアヌは事務所内にベッドを持ち込んで泊まり込むようになる。
そうなるとベルツ王国が借り上げている家にはティナの護衛騎士とメイド達だけが済むことになり、キリウスの心配が増えてしまった。
「ティナ嬢、そろそろ城に越してきませんか?キアヌ殿もほとんど帰っていない今、ティナ嬢だけ家に帰るという必要性もないでしょう」
「それはそうなのですが・・・屋台のこともありますし」
「まだ続けるのですか?そもそも私にコンタクトをとるという目的は果たしているのですから閉めても良いのでは?」
「確かに・・・でもなかなか人気があって・・・」
「閉めにくいですか。まあティナ嬢のフィッシュバーガーは最高ですからね。わからなくも無いですけど・・・地元の民に屋台の権利とレシピを売ってはどうですか?」
「売る?レシピを?」
「ええ、すぐに買い手は着くと思いますが・・・いっそ私が買い取って誰かにやらせようかな・・・うん。それがいいかも」
「キリウス様がオーナーに?」
「ええ、どうですか?」
「キリウス様なら信頼できますし、何の問題もありませんがご迷惑ではないですか?」
「いいえ。むしろ市井の動きや思想も探れる絶好の拠点となりますから、ありがたいのですが・・・どうですか?」
「はい、そのお話に乗りました!」
「ははは、あの頃のティナ嬢を思い出しますね。あなたはとても苦労をなさったのでしょうが、私にとってはとても平和で楽しい時間でしたよ」
「苦労というほどでは無いですし、そのことが無ければ今の私はありませんから。そうですね、確かに今となっては良い思い出ですわね」
「今だから言いますけど・・・私は本気であなたのことが好きだったのですよ?」
「っう・・・すみません・・・そういったことにはさっぱり疎くて・・・ごめんなさい」
「いいえ、そんなあなただからこそ思いを寄せたのです」
ティナが真っ赤な顔をして俯いていたらバンという大きな音がして宰相執務室の扉が開いた。
「アーレント~!!!父様だぞ~。お菓子を持ってきたぞ~」
にやけた顔でハーベストが籠を抱えて入ってくる。
床で遊んでいるアーレントの前に籠を置いたハーベストはティナに近づき抱き寄せた。
「まあハーベスト様!あんなにお菓子ばかり与えては食事をしなくなってしまうと申し上げましたでしょう?」
「いいではありませんかティナ。アーレントがお菓子に夢中になってくれている間はあなたを独占できるのですから」
ハーベストはぎゅっとティナを抱きしめて胸に顔を埋めてティナの香りを満喫している。
「もう・・・困った皇帝さまだこと」
キリウスが額に手をやりながらハーベストに言った。
「お前・・・仕事は終わったのか?」
キリウスの声にティナの胸の谷間から顔を上げたハーベストがぼそっと返事をする。
「なんだ、お前そこにいたのか。ティナと一緒にいるなんて羨ましい奴だな」
「ここは俺の執務室だからな」
「・・・フンっ!」
「なんだ?せっかき良い話を纏めてやったのに」
「良い話?なんだそれ」
「ティナ嬢に関することだ。そろそろ屋敷を引き払ってこちらに居を移してもらう」
「本当か!キリウス!」
「ああ、近いうちに引っ越してもらうよ」
「それは嬉しい!私の部屋の隣はずっとティナのために開けてあるからな。今日からでも問題ない」
「あのなぁ・・・お前の隣って・・・無理に決まってるだろ?まずはリリベル妃には何かしらの理由をつけて本宮に戻ってもらい、その侍女としてティナロア嬢を迎え入れる」
「なるほど・・・で、俺は毎晩ティナの部屋に帰るのだな?」
「まあ、そうなると貴族たちの噂になるだろうな。ハーベストは父親の側妃に夢中だと」
「うっ・・・流石にそれは・・・困る」
「ははは~今更お前が悪評を気にするか?心配するな、手は考えてある」
「ここまで待たされたんだ。お前に全部任せるよ」
「ああ、それが賢明だろう・・・っていうか、お前なぁ・・・人と話している時くらいティナ嬢を離せ!」
「なぜ?」
「・・・いや・・・なんでもない。ああ!そういえばレナードから連絡があったんだ!」
実務者レベルでの調整も進み、工事業者による現地調査も終盤を迎えている。
人命に関わる案件のため、治山工事とダム工事はほぼ同時進行で進められることになった。
帝国側の責任者と共に、治山工事にはロバート伯爵が、ダム工事にはワンド伯爵が責任者として出張る。
キアヌは皇宮内に用意された管理事務所に詰め、報告されてくる進捗状況の把握や必要物資の調達指示など、寝る間も惜しんで奮闘していた。
そのうちに帰る時間も惜しくなったキアヌは事務所内にベッドを持ち込んで泊まり込むようになる。
そうなるとベルツ王国が借り上げている家にはティナの護衛騎士とメイド達だけが済むことになり、キリウスの心配が増えてしまった。
「ティナ嬢、そろそろ城に越してきませんか?キアヌ殿もほとんど帰っていない今、ティナ嬢だけ家に帰るという必要性もないでしょう」
「それはそうなのですが・・・屋台のこともありますし」
「まだ続けるのですか?そもそも私にコンタクトをとるという目的は果たしているのですから閉めても良いのでは?」
「確かに・・・でもなかなか人気があって・・・」
「閉めにくいですか。まあティナ嬢のフィッシュバーガーは最高ですからね。わからなくも無いですけど・・・地元の民に屋台の権利とレシピを売ってはどうですか?」
「売る?レシピを?」
「ええ、すぐに買い手は着くと思いますが・・・いっそ私が買い取って誰かにやらせようかな・・・うん。それがいいかも」
「キリウス様がオーナーに?」
「ええ、どうですか?」
「キリウス様なら信頼できますし、何の問題もありませんがご迷惑ではないですか?」
「いいえ。むしろ市井の動きや思想も探れる絶好の拠点となりますから、ありがたいのですが・・・どうですか?」
「はい、そのお話に乗りました!」
「ははは、あの頃のティナ嬢を思い出しますね。あなたはとても苦労をなさったのでしょうが、私にとってはとても平和で楽しい時間でしたよ」
「苦労というほどでは無いですし、そのことが無ければ今の私はありませんから。そうですね、確かに今となっては良い思い出ですわね」
「今だから言いますけど・・・私は本気であなたのことが好きだったのですよ?」
「っう・・・すみません・・・そういったことにはさっぱり疎くて・・・ごめんなさい」
「いいえ、そんなあなただからこそ思いを寄せたのです」
ティナが真っ赤な顔をして俯いていたらバンという大きな音がして宰相執務室の扉が開いた。
「アーレント~!!!父様だぞ~。お菓子を持ってきたぞ~」
にやけた顔でハーベストが籠を抱えて入ってくる。
床で遊んでいるアーレントの前に籠を置いたハーベストはティナに近づき抱き寄せた。
「まあハーベスト様!あんなにお菓子ばかり与えては食事をしなくなってしまうと申し上げましたでしょう?」
「いいではありませんかティナ。アーレントがお菓子に夢中になってくれている間はあなたを独占できるのですから」
ハーベストはぎゅっとティナを抱きしめて胸に顔を埋めてティナの香りを満喫している。
「もう・・・困った皇帝さまだこと」
キリウスが額に手をやりながらハーベストに言った。
「お前・・・仕事は終わったのか?」
キリウスの声にティナの胸の谷間から顔を上げたハーベストがぼそっと返事をする。
「なんだ、お前そこにいたのか。ティナと一緒にいるなんて羨ましい奴だな」
「ここは俺の執務室だからな」
「・・・フンっ!」
「なんだ?せっかき良い話を纏めてやったのに」
「良い話?なんだそれ」
「ティナ嬢に関することだ。そろそろ屋敷を引き払ってこちらに居を移してもらう」
「本当か!キリウス!」
「ああ、近いうちに引っ越してもらうよ」
「それは嬉しい!私の部屋の隣はずっとティナのために開けてあるからな。今日からでも問題ない」
「あのなぁ・・・お前の隣って・・・無理に決まってるだろ?まずはリリベル妃には何かしらの理由をつけて本宮に戻ってもらい、その侍女としてティナロア嬢を迎え入れる」
「なるほど・・・で、俺は毎晩ティナの部屋に帰るのだな?」
「まあ、そうなると貴族たちの噂になるだろうな。ハーベストは父親の側妃に夢中だと」
「うっ・・・流石にそれは・・・困る」
「ははは~今更お前が悪評を気にするか?心配するな、手は考えてある」
「ここまで待たされたんだ。お前に全部任せるよ」
「ああ、それが賢明だろう・・・っていうか、お前なぁ・・・人と話している時くらいティナ嬢を離せ!」
「なぜ?」
「・・・いや・・・なんでもない。ああ!そういえばレナードから連絡があったんだ!」
13
お気に入りに追加
296
あなたにおすすめの小説

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる