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マリアンヌの正論

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キアヌ達との会議から帰ってきたキリウスが顔色の悪いティナを心配して駆け寄った。

「どうしました?レディティナ。お顔が真っ青です」

「ごめんなさい・・・ちょっと見てはいけないものを見てしまって・・・」

「見てはいけないもの?」

「後でゆっくりお話ししますね・・・今日の会議はいかがでしたか?」

「会議は順調ですよ。なぜかこちらからの提案を遠慮なさるのです・・・ベルツ王国はそんなに裕福なお国ではないと思っていたのですが」

「ええ、裕福というわけではありませんね。次期国王ユリア殿下と第二王子のキアヌ殿下がご相談になったのでしょう。あまり大きな借りを作るのに躊躇されているのでは?」

「なるほど・・・大きな借りといっても我が帝国にとっては微々たるものですし、何より我が帝国にとっても良い施策なのですが」

「そこはあちらも矜持があるのでしょうね。私からもお口添えをいたしましょう」

「ええ、お願いします。費用がかさむことより早く進めることの方が重要なのです」

「わかりました。ところでハーベスト様は?」

「ああ、あいつも頑張っていますよ。エイアール国の第一皇女マリアンヌ姫とお茶会です」

「なるほど・・・ハーベスト様とお茶会ってイメージができませんわね」

「ははは・・・なんだかあいつが不憫になってきたな」

二人が紅茶とともにそんなおしゃべりを楽しんでいるとノックもなく宰相執務室のドアが乱暴に開いた。

「ああ、居たか・・・予想外の展開だ」

「ハーベスト様?」

「ああ、ティナ。少し落ち着かなくては・・・抱きしめてもいいですか?」

返事も聞かずに座っているティナを軽々と抱き上げてソファーに座り膝に乗せ、ぎゅっと抱きしめるハーベスト。
その姿を無言で見つめるキリウスが放つ殺気で護衛騎士たちは黙って部屋を出て行った。

「どうしたんだハーベスト・・・」

「ああ、今までマリアンヌ姫の説得をしていたのだが・・・」

そこまで言うとハーベストはティナの飲み残しの紅茶をぐっと一息で飲み干し、ソファーで眠るアーレントをじっと見た。
ひとつ息を吐いて口を開こうとしたとき、ドアがノックされマリアンヌ姫が入ってきた。

「お邪魔いたしますわ」

マリアンヌは扇で口元を隠しながら優雅な所作で近寄ってくる。
途中で侍女を下がらせ、部屋の中には四人と眠るアーレントだけとなった。
ティナが立ち上がり挨拶をする。

「初めまして。エイアール国の最も美しい花マリアンヌ皇女殿下にご挨拶申し上げます。私はベルツ王国で伯爵位を拝命しておりますティナロア・ランバーツでございますわ。お会いできて恐悦至極でございます」

少し冷ややかな表情でティナの挨拶を受けたマリアンヌ皇女がゆっくりと口を開いた。

「ご丁寧な挨拶、恐れ入りますわ。先ほどハーベスト陛下のお話を伺って是非にもお会いしたいと思いましたの。ご同席させていただいても?」

「勿論でございます」

キリウスが立ち上がりマリアンヌ姫をエスコートしてソファに座らせた。
ティナはさっと立ち上がり紅茶を用意する。
静かな所作でハーベストとマリアンヌ皇女の前にティーカップを置いた。
キリウスのカップにお代わりの紅茶を注いでから、まだ眠るアーレントを抱き上げた。

「まあ、本当に可愛らしい!そのお子がハーベスト様の?」

「はい、アーレントと申します」

マリアンヌは頬を赤らめていそいそと立ち上がり、ティナに抱かれて眠り続けるアーレントを覗き込んだ。
きちんと手入れされた美しい指先でぷにぷにしたアーレントの頬を優しくつつく。

「まあ・・・まるで天使ですわね。それにハーベスト陛下にそっくりですわ」

そんなマリアンヌの感想を聞きながら、ハーベストは蕩けた顔をしている。
そんなハーベストの顔を一瞥し、マリアンヌが強い口調で言った。

「でも、それとこれとは話が別ですわ!私、先ほどお伺いしたプランには反対ですの!」

マリアンヌの爆弾発言に三人がぴくっと固まった。
キリウスがおずおずと口を開く。

「マリアンヌ姫・・・理由をお伺いしても?」

「勿論ですわ!それをお話しするために参りましたのよ」

ハーベストとティナ、キリウスとマリアンヌがそれぞれ隣り合って座り向かい合った。
紅茶を一口含み、意を決する様に息を吐いたマリアンヌ皇女が口を開いた。
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