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いざ背水の陣
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ケヴィンに宝石を託した二人はジュリアの教会に向かった。
ジュリアにはアルフレッドと結婚して遠くに行くとだけ告げて、後のことはケヴィンに相談すれば良いと伝えた。
教会はティナが考えていたより美しかった。
派手な装飾は一切なく、清貧という言葉がしっくりくるような質素な作りだ。
アルフレッドが満足そうにティナに言った。
「まさに神の住処だな。空気が清らかだ」
「そうね。理想的な教会だわ」
「満足した?」
「ええ、とても満足よ。もう思い残すことは・・・無いわね」
「そうだ、ティナ。ジュリアに俺たちの結婚式をしてもらわないか?」
「まあ!それは素晴らしいプランだわ。私もウェディングドレスって着てみたかったし」
「いいな。俺好みのドレスにしても良いだろう?俺は何を着ようか?」
「そうね・・・純白のテールコートなんてどう?」
「そうだな、軍服とか夜会服なら今から飽きるほど見ることになるからな。ジュリアに言って明日にでも式を挙げよう」
「楽しみだわ。お花もたくさん飾ってね」
「任せてくれ。お前のイメージ通りに仕立てるよ」
結婚式の話を聞いたジュリアはとても驚いていたが、心から喜んでくれた。
朝の光の中でアルフレッドにエスコートされて祭壇まで歩くティナは光り輝いていた。
ジュリアと二人の神官が見守る中、永遠の愛を誓いキスをする二人。
招待客は誰もいない結婚式が、祝福の光に包まれながら厳かに執り行われた。
「ティナ、必ず幸せにする。ずっとお前だけを愛し続けると我が名に賭けて誓おう」
「アル・・・愛してるわ。ずっとずっと愛してる」
微笑みながら見つめあう二人を見て、純白の神官服を着たジュリアが号泣していた。
「姉さん。おめでとう・・・もう会えないなんて言わないでよ?姉さんがどこに行っても僕は絶対に忘れないし、ずっとずっと待っている・・・姉さん、愛してるよ」
「ありがとうジュリア。私も天涯孤独の身ではなかったことが分かっただけでも嬉しいのに、あなたみたいな純真な心を持つ弟がいたことが誇らしいわ。私もあなたを愛してる。絶対に忘れない。ずっとずっと見守っているからね」
二人は涙ながらに抱き合い別れを惜しんだ。
「さあ、もう家に帰ろう。そして時間が許す限りお前を堪能させてくれ」
「っもうアルったら・・・嬉しいけど」
「後のことは任せてくれ。お前の葬儀はゼロアに依頼する。あの家や土地はゼロアの教会に寄付するんだったな?墓はあの丘の上に小さいのを用意するから」
「うん、よろしくね。それからジュリアの存在はやっぱりゼロアに言わないで。私がティナだということも知らせないままにしたいの」
「いいのか?」
「うん。もう全部終わった事よ。今更だわ」
「わかった。ティナの思うようにすればいい」
「ありがとうアル。愛してるわ」
「ああ、我が永遠の伴侶、愛しのティナ」
それから二日間、二人は寝食を忘れて愛し合った。
あちらの世界に持ち込む最後のアイテムは歴史書に決めて準備は済んでいる。
あまりにも激しいアルフレッドの愛撫に気を失いそうになるティナ。
ティナが意識を手放す直前にアルフレッドは最後のアイテムをティナに持たせた。
心も体も幸せの絶頂の中で、ティナは現世での最後を迎えた。
「はあっぁぁぁぁ・・・アル・・・もう・・・・ダメよ。またいっちゃう・・・」
教会の自室で目覚めたティナはなんとも色っぽい声を出して目覚めた。
「ティナロア様?大丈夫ですか?」
見守っていたシスターが真っ赤な顔をして戸惑っている。
「へっ?あっ・・・ああ・・・ごめんなさい。ただいま帰りました」
「・・・お帰りなさいませ?・・・アーレント様をお連れしましょう」
「ええ、お願いします。もし寝ていたら後でもいいですから」
こうして帰る場所を自ら閉じたティナの新たな人生がスタートした。
アーレントを迎えに行ったシスターの背中を見送りながら、ティナは小さく微笑んだ。
体を休めるという言い訳で二日ほどアーレントと過ごしたティナだったが、そろそろ行動を起こさなくてはならない。
アーレントの食事はシスターに任せてティナはペンダントを握った。
『アル?上手くいったの?』
『ああ、明日がお前の葬式だ。ゼロアと母親は酷く驚いていたが・・・二人とも口には出さないがお前のこと分かっていたみたいだな。俺はあえて否定も肯定もしないかった』
『うん。ありがとうね』
『お前の墓は名前だけ彫らせるよう手配したよ。あとピアノの形の飾り模様を入れた』
『あら素敵!何から何までありがとう。私の死に顔はきれいだったかしら?』
『ああ、それはもう欲情するほど色っぽくて、とても美しかったよ』
『またあなたに抱いてもらえるのは何年先かしらね・・・』
『そうだな。残念だけど俺が頼んだことだ。我慢するよ。ティナ・・・お前は最高にいい女だ。ティナロアの体も顔も悪くは無いが、大人のティナと比べるとやっぱガキだしな』
『私がアルの棲む世界にいったら姿は選べるの?』
『うん、どちらでもご自由に』
『アルはどっちが好み?』
『それは断然大人の女、ティナ・ブロウズだな』
『でも写真も残らなかったから、忘れちゃうかもね』
『大丈夫。俺が覚えてるから』
『体の隅々まで知ってるものね?』
『ああ、絶対に忘れないよ。手触りも味も匂いもな』
寄り添うことはできても触れ合うことはできない時間があと何年続くのだろうと話していた時、小さな足音がして自室のドアが開き、アーレントが顔をのぞかせる。
ティナは椅子から立ち上がりアーレントを抱きしめた。
触れ合う感触は無いがアルフレッドの気配を間近に感じる。
『アーレントの可愛さは絶好調だな!』
『そうね。あちらに帰れないことを少し悔やむ気持ちがきれいに吹っ飛んだわ』
この世界で使命を果たしつつ、我が子を守り抜くことを改めて決意したティナだった。
ジュリアにはアルフレッドと結婚して遠くに行くとだけ告げて、後のことはケヴィンに相談すれば良いと伝えた。
教会はティナが考えていたより美しかった。
派手な装飾は一切なく、清貧という言葉がしっくりくるような質素な作りだ。
アルフレッドが満足そうにティナに言った。
「まさに神の住処だな。空気が清らかだ」
「そうね。理想的な教会だわ」
「満足した?」
「ええ、とても満足よ。もう思い残すことは・・・無いわね」
「そうだ、ティナ。ジュリアに俺たちの結婚式をしてもらわないか?」
「まあ!それは素晴らしいプランだわ。私もウェディングドレスって着てみたかったし」
「いいな。俺好みのドレスにしても良いだろう?俺は何を着ようか?」
「そうね・・・純白のテールコートなんてどう?」
「そうだな、軍服とか夜会服なら今から飽きるほど見ることになるからな。ジュリアに言って明日にでも式を挙げよう」
「楽しみだわ。お花もたくさん飾ってね」
「任せてくれ。お前のイメージ通りに仕立てるよ」
結婚式の話を聞いたジュリアはとても驚いていたが、心から喜んでくれた。
朝の光の中でアルフレッドにエスコートされて祭壇まで歩くティナは光り輝いていた。
ジュリアと二人の神官が見守る中、永遠の愛を誓いキスをする二人。
招待客は誰もいない結婚式が、祝福の光に包まれながら厳かに執り行われた。
「ティナ、必ず幸せにする。ずっとお前だけを愛し続けると我が名に賭けて誓おう」
「アル・・・愛してるわ。ずっとずっと愛してる」
微笑みながら見つめあう二人を見て、純白の神官服を着たジュリアが号泣していた。
「姉さん。おめでとう・・・もう会えないなんて言わないでよ?姉さんがどこに行っても僕は絶対に忘れないし、ずっとずっと待っている・・・姉さん、愛してるよ」
「ありがとうジュリア。私も天涯孤独の身ではなかったことが分かっただけでも嬉しいのに、あなたみたいな純真な心を持つ弟がいたことが誇らしいわ。私もあなたを愛してる。絶対に忘れない。ずっとずっと見守っているからね」
二人は涙ながらに抱き合い別れを惜しんだ。
「さあ、もう家に帰ろう。そして時間が許す限りお前を堪能させてくれ」
「っもうアルったら・・・嬉しいけど」
「後のことは任せてくれ。お前の葬儀はゼロアに依頼する。あの家や土地はゼロアの教会に寄付するんだったな?墓はあの丘の上に小さいのを用意するから」
「うん、よろしくね。それからジュリアの存在はやっぱりゼロアに言わないで。私がティナだということも知らせないままにしたいの」
「いいのか?」
「うん。もう全部終わった事よ。今更だわ」
「わかった。ティナの思うようにすればいい」
「ありがとうアル。愛してるわ」
「ああ、我が永遠の伴侶、愛しのティナ」
それから二日間、二人は寝食を忘れて愛し合った。
あちらの世界に持ち込む最後のアイテムは歴史書に決めて準備は済んでいる。
あまりにも激しいアルフレッドの愛撫に気を失いそうになるティナ。
ティナが意識を手放す直前にアルフレッドは最後のアイテムをティナに持たせた。
心も体も幸せの絶頂の中で、ティナは現世での最後を迎えた。
「はあっぁぁぁぁ・・・アル・・・もう・・・・ダメよ。またいっちゃう・・・」
教会の自室で目覚めたティナはなんとも色っぽい声を出して目覚めた。
「ティナロア様?大丈夫ですか?」
見守っていたシスターが真っ赤な顔をして戸惑っている。
「へっ?あっ・・・ああ・・・ごめんなさい。ただいま帰りました」
「・・・お帰りなさいませ?・・・アーレント様をお連れしましょう」
「ええ、お願いします。もし寝ていたら後でもいいですから」
こうして帰る場所を自ら閉じたティナの新たな人生がスタートした。
アーレントを迎えに行ったシスターの背中を見送りながら、ティナは小さく微笑んだ。
体を休めるという言い訳で二日ほどアーレントと過ごしたティナだったが、そろそろ行動を起こさなくてはならない。
アーレントの食事はシスターに任せてティナはペンダントを握った。
『アル?上手くいったの?』
『ああ、明日がお前の葬式だ。ゼロアと母親は酷く驚いていたが・・・二人とも口には出さないがお前のこと分かっていたみたいだな。俺はあえて否定も肯定もしないかった』
『うん。ありがとうね』
『お前の墓は名前だけ彫らせるよう手配したよ。あとピアノの形の飾り模様を入れた』
『あら素敵!何から何までありがとう。私の死に顔はきれいだったかしら?』
『ああ、それはもう欲情するほど色っぽくて、とても美しかったよ』
『またあなたに抱いてもらえるのは何年先かしらね・・・』
『そうだな。残念だけど俺が頼んだことだ。我慢するよ。ティナ・・・お前は最高にいい女だ。ティナロアの体も顔も悪くは無いが、大人のティナと比べるとやっぱガキだしな』
『私がアルの棲む世界にいったら姿は選べるの?』
『うん、どちらでもご自由に』
『アルはどっちが好み?』
『それは断然大人の女、ティナ・ブロウズだな』
『でも写真も残らなかったから、忘れちゃうかもね』
『大丈夫。俺が覚えてるから』
『体の隅々まで知ってるものね?』
『ああ、絶対に忘れないよ。手触りも味も匂いもな』
寄り添うことはできても触れ合うことはできない時間があと何年続くのだろうと話していた時、小さな足音がして自室のドアが開き、アーレントが顔をのぞかせる。
ティナは椅子から立ち上がりアーレントを抱きしめた。
触れ合う感触は無いがアルフレッドの気配を間近に感じる。
『アーレントの可愛さは絶好調だな!』
『そうね。あちらに帰れないことを少し悔やむ気持ちがきれいに吹っ飛んだわ』
この世界で使命を果たしつつ、我が子を守り抜くことを改めて決意したティナだった。
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