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王家の痣
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宿に戻ったティナは用意してきたワンピースに着替えてアーレントを抱き上げた。
今回の訪問はアーレントをみんなにお披露目することも目的のひとつだ。
「さあ、アーレント。あなたの家族に会いに行きましょうね」
昼間と同じ騎士が三名同行する中、ティナは予約していたレストランに到着した。
入る前にティナはアーレントを騎士団長に預けた。
「初めからもみくちゃにされると困るから。少しの間抱いていていただけますか?」
「大切にお守りいたします」
「よろしくお願いします」
ティナはゆっくりレストランのドアを開いた。
懐かしい顔ぶれが並んでいる。
まず最初にティナを抱きしめたのはマダムラッテだった。
「ああ、私のロア!すっかり女性になってしまって!残念だけどとても美しいわ・・・それにロージーのこと、ありがとうね。アランから全て聞きました。聖女様?」
アランが微笑みながら側に来た。
「レディティナ。お久しぶりです。その節は本当にありがとうございました」
「アラン様。お元気そうで何よりです」
三人は抱き合って再会を喜んだ。
「さあさあ、積もる話は食事をしながらゆっくりと。ティナロアお嬢様はこちらにお座りくださいね」
しっかり者のリアが場を仕切っている。
その横でジャンがテキパキと料理を取り分けていた。
テラが夫と妹を連れてあいさつに来た。
テラの夫はティナが食堂で働いていた時に何度か顔を見た人だったので、ティナは少し驚いた。
テラの夫もティナのことを覚えていたらしく、照れながら握手を求めてきた。
「まあ、あなたったら本当にティナ様のこと男だとおもっていたのねぇ。ティナ様、これが妹のリアーナといいます」
テラの妹がおずおずとお辞儀をした。
テラに似た顔立ちだが、黒髪ではなく濃い茶色のくせ毛の女の子だった。
ティナはリアーナの頭をぽんぽんと撫でて抱きしめた。
そして立ち上がり集まった人たち全員に向かって言った。
「みんな元気そうで本当に嬉しいです。それに私は今、とても充実した日々を送っています。それもすべてここに来ていただいている皆様のおかげです。できれば食堂のイーサンおじさんとリンダおばさんにも会いたかったけど、今回は急なことだったので・・・」
ティナが涙ぐむ。
ビスタが笑顔で言った。
「私から手紙を出しておきますよ。お二人もティナロアお嬢様のことを心配しておられましたからね」
「ありがとうビスタ。それでは・・・私の方から皆様にひとつご報告があるのですがよろしいですか?」
そういうとティナはレストランの外で待機していた騎士たちを招き入れた。
騎士団長が宝物のように抱いていたアーレントを受け取り皆の前に進む。
「私、母親になりました!この子の名前はアーレントです!」
数秒の沈黙の後、歓喜の嵐が吹き荒れた。
我先にとアーレントに近寄り顔を覗き込む。
皆が口々にアーレントの可愛さを称えた。
マダムラッテが片眉上げてティナに言った。
「ロア?いつの間にお手付きになったの?しかも皇帝の子供だなんて・・・やるわね~」
マダムの言葉にその場にいた全員が固まった。
「さすがマダム。父親までわかっちゃいました?」
「だってそっくりじゃないの。間違いようがないわ。王家の痣はあるの?」
「王家の痣って何ですか?」
「えっ!もしかしてあなた・・・ハーベスト陛下はご存じないの?」
「ええ、まさか妊娠してるなんて思ってなくて・・・そのままバタバタと帰国されましたし。私も王都に行ってからもう本当に忙しくて・・・」
「じゃあ連絡もとってないの?」
「はい。今のところ音信不通状態です」
ビスタが慌てて言った。
「何度もお手紙やご使者の方が来られたのに、お嬢様がまだ伝えてはいけないと仰るので黙っていました」
全員がティナを生ぬるい目で見る。
「だって・・・ハーベスト様もいろいろ忙しそうだったし。国も落ち着いてないのに他国で子供作ってたなんてスキャンダルでしか無いでしょう?迷惑かけたくないもの」
「「「「「それとこれとは話が別です!」」」」」
「はあ・・・すみません・・・あっ!でも、もうすぐアルベッシュ帝国に行くんです。アーレントを連れて。その時会えるようなら会ってもらおうかと・・・」
「「「「「絶対会ってください!」」」」」
「はい、絶対会います・・・っていうか、信じてもらえるかしら」
マダムラッテが笑いながら言う。
「だから王家の痣のことを聞いたのよ?ほんとに知らないのね。ちょっとアーレント様をこちらに貸して?」
そういうとティナからアーレントを受け取ったマダムラッテがアーレントのシャツをまくりあげて背中を出す。
もうすぐ一歳になるアーレントはマダムラッテには重たいのか、アランが代わって抱いた。
「ほら、あるじゃない。これよ?王家の痣。羽のような形でしょう?これはアルベッシュの王族の中でも正当な血統を持つ者にしか出ない痣なの。この痣がないと皇太子としては認められないのよ」
「え~そうなんですか?知らなかった・・・」
「あなた・・・知らなかったとはいえ、かのアルベッシュ帝国の跡継ぎを普通に育てていたのねえ。肝が据わっているというか間が抜けているというか」
「ははは・・・たぶん後者です。なんだか・・・すみません」
ティナはアランからアーレントを受け取りながら冷や汗をかいていた。
今回の訪問はアーレントをみんなにお披露目することも目的のひとつだ。
「さあ、アーレント。あなたの家族に会いに行きましょうね」
昼間と同じ騎士が三名同行する中、ティナは予約していたレストランに到着した。
入る前にティナはアーレントを騎士団長に預けた。
「初めからもみくちゃにされると困るから。少しの間抱いていていただけますか?」
「大切にお守りいたします」
「よろしくお願いします」
ティナはゆっくりレストランのドアを開いた。
懐かしい顔ぶれが並んでいる。
まず最初にティナを抱きしめたのはマダムラッテだった。
「ああ、私のロア!すっかり女性になってしまって!残念だけどとても美しいわ・・・それにロージーのこと、ありがとうね。アランから全て聞きました。聖女様?」
アランが微笑みながら側に来た。
「レディティナ。お久しぶりです。その節は本当にありがとうございました」
「アラン様。お元気そうで何よりです」
三人は抱き合って再会を喜んだ。
「さあさあ、積もる話は食事をしながらゆっくりと。ティナロアお嬢様はこちらにお座りくださいね」
しっかり者のリアが場を仕切っている。
その横でジャンがテキパキと料理を取り分けていた。
テラが夫と妹を連れてあいさつに来た。
テラの夫はティナが食堂で働いていた時に何度か顔を見た人だったので、ティナは少し驚いた。
テラの夫もティナのことを覚えていたらしく、照れながら握手を求めてきた。
「まあ、あなたったら本当にティナ様のこと男だとおもっていたのねぇ。ティナ様、これが妹のリアーナといいます」
テラの妹がおずおずとお辞儀をした。
テラに似た顔立ちだが、黒髪ではなく濃い茶色のくせ毛の女の子だった。
ティナはリアーナの頭をぽんぽんと撫でて抱きしめた。
そして立ち上がり集まった人たち全員に向かって言った。
「みんな元気そうで本当に嬉しいです。それに私は今、とても充実した日々を送っています。それもすべてここに来ていただいている皆様のおかげです。できれば食堂のイーサンおじさんとリンダおばさんにも会いたかったけど、今回は急なことだったので・・・」
ティナが涙ぐむ。
ビスタが笑顔で言った。
「私から手紙を出しておきますよ。お二人もティナロアお嬢様のことを心配しておられましたからね」
「ありがとうビスタ。それでは・・・私の方から皆様にひとつご報告があるのですがよろしいですか?」
そういうとティナはレストランの外で待機していた騎士たちを招き入れた。
騎士団長が宝物のように抱いていたアーレントを受け取り皆の前に進む。
「私、母親になりました!この子の名前はアーレントです!」
数秒の沈黙の後、歓喜の嵐が吹き荒れた。
我先にとアーレントに近寄り顔を覗き込む。
皆が口々にアーレントの可愛さを称えた。
マダムラッテが片眉上げてティナに言った。
「ロア?いつの間にお手付きになったの?しかも皇帝の子供だなんて・・・やるわね~」
マダムの言葉にその場にいた全員が固まった。
「さすがマダム。父親までわかっちゃいました?」
「だってそっくりじゃないの。間違いようがないわ。王家の痣はあるの?」
「王家の痣って何ですか?」
「えっ!もしかしてあなた・・・ハーベスト陛下はご存じないの?」
「ええ、まさか妊娠してるなんて思ってなくて・・・そのままバタバタと帰国されましたし。私も王都に行ってからもう本当に忙しくて・・・」
「じゃあ連絡もとってないの?」
「はい。今のところ音信不通状態です」
ビスタが慌てて言った。
「何度もお手紙やご使者の方が来られたのに、お嬢様がまだ伝えてはいけないと仰るので黙っていました」
全員がティナを生ぬるい目で見る。
「だって・・・ハーベスト様もいろいろ忙しそうだったし。国も落ち着いてないのに他国で子供作ってたなんてスキャンダルでしか無いでしょう?迷惑かけたくないもの」
「「「「「それとこれとは話が別です!」」」」」
「はあ・・・すみません・・・あっ!でも、もうすぐアルベッシュ帝国に行くんです。アーレントを連れて。その時会えるようなら会ってもらおうかと・・・」
「「「「「絶対会ってください!」」」」」
「はい、絶対会います・・・っていうか、信じてもらえるかしら」
マダムラッテが笑いながら言う。
「だから王家の痣のことを聞いたのよ?ほんとに知らないのね。ちょっとアーレント様をこちらに貸して?」
そういうとティナからアーレントを受け取ったマダムラッテがアーレントのシャツをまくりあげて背中を出す。
もうすぐ一歳になるアーレントはマダムラッテには重たいのか、アランが代わって抱いた。
「ほら、あるじゃない。これよ?王家の痣。羽のような形でしょう?これはアルベッシュの王族の中でも正当な血統を持つ者にしか出ない痣なの。この痣がないと皇太子としては認められないのよ」
「え~そうなんですか?知らなかった・・・」
「あなた・・・知らなかったとはいえ、かのアルベッシュ帝国の跡継ぎを普通に育てていたのねえ。肝が据わっているというか間が抜けているというか」
「ははは・・・たぶん後者です。なんだか・・・すみません」
ティナはアランからアーレントを受け取りながら冷や汗をかいていた。
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