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サーリの爆弾発言
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奇跡を目の当たりにした人間ってこんな顔をするんだな~とティナは呑気にその様子を見ていた。
ユリアが頬を紅潮させて言う。
「温かい何かが入ってくるのがわかる・・・痺れがとれた?」
車椅子に腰かけたまま不自由だった方の足を曲げ伸ばして確認している。
ナサーリアは小さく息を吐いて手をおろした。
「どうですか?少しは痛みがとれましたか?」
「ああ、なんだか温かい手で包まれているような心地よさだった。痛みは・・・無いな・・・ああ!痛みが無いぞ!」
ユリアが立ち上がろうとする。
キアヌが慌ててユリアを止めた。
「兄上!急に動かれてはせっかくの効果が消えませんか?」
「キアヌ、心配してくれてありがとう。たとえ消えたとしても元に戻ったというだけだ。試してみたいのだ。ダメだろうか」
「兄上・・・それではせめて私の手に掴まってください」
「ああ、そうさせてもらおう。立つぞ?」
キアヌはユリアを支えようと腕に力を込めた。
「あれ?兄上・・・」
ユリアはキアヌの腕に手を載せているだけで寄りかかってはこなかった。
「うん・・・立てるな。まあ、立てるのは今までも出来たのだが、かなり痛かった。それが今は・・・凄いな・・・これが神の御力か」
ナサーリアはティナの顔を見てニコッと微笑んだ。
ハロッズ侯爵が娘の頭を撫でながら言う。
「ナサーリアはまだこの力の制御が上手くできません。訓練を重ねたらもっと多くの人々を癒すことができるでしょう」
キアヌが口を開く。
「この力は聖女ティナロアには無いということか?」
ティナが落ち着いて返答する。
「はい、ございません。先日フェルナンド神官様の傷を癒したのも私ではありません。あの時は神が私を媒体としてフェルナンド神官様に癒しの力をお使いになりました。私は聖女ではありませんので、神の力が体に流れた瞬間、気を失いかけました。ほんの三つ数えるだけの時間でさえそうなったのです」
フェルナンド神官が続けた。
「あの時・・・私はあまりの痛みに意識を失っていましたが・・・なんといいますか・・・これ以上の幸福感は無いほどに気持ちが高揚している夢を見ました。どう表現すれば良いのでしょう?全身の筋肉に力が溜まり、それが一か所に集められ一気に解放されるような・・・」
(それって・・・フェルナンド・・・あの時イっちゃったってこと?)
『ティナ・・・』
『アル、この会話漏れてないよね?』
『ああ、今はお前とだけつなげてる』
『ねえねえ!彼はあの時オルガスムス感じちゃったって事よね?』
『それは俺にはわからないが・・・意識が戻って部屋に入った後、すぐに風呂に入ったな』
『あらあらイッちゃったのね・・・ふふふ・・・夢精ってことかしら』
『ティナ・・・お前・・・』
それきり神の声は聞こえなくなった。
ティナはフェルナンドの顔を盗み見た。
当の本人は神とティナの会話など知る由もなく、澄んだ目で立っていた。
ティナは笑い顔を隠すために後ろを向いて咳込むふりをした。
ユリアが真面目な顔で言う。
「そうか・・・ナサーリアは自らの意志で神の御力を使えるが、ティナロアにはそれができないということだな?でも、ティナロアも神を宿せばできるのだろう?」
『二度は無い。ティナロアが命を落とす危険がある』
神の声が四人の頭の中に聞こえた。
オルフェウス大神官が口に出した。
「神は・・・二度は無いと・・・」
「なぜだ?」
「ティナロア様が・・・命を落とすほどの危険があると仰せです」
「そうか・・・それは絶対だめだ。なるほど・・・」
フェルナンド神官が発言した。
「神の声はティナロア様にだけ届くことが多いのです。今回のような画期的な案もおそらくティナロア様にだけ神が教示なさったのだと思います。ティナロア様はまさに神に選ばれし女性なのです」
ナサーリアが無邪気な顔で言った。
「そうですよ?だってティナロア様は神様の愛する伴侶ですもの」
「「「「伴侶?」」」」
全員の口が開いていた。
ティナは気まずく俯いた。
ユリアが頬を紅潮させて言う。
「温かい何かが入ってくるのがわかる・・・痺れがとれた?」
車椅子に腰かけたまま不自由だった方の足を曲げ伸ばして確認している。
ナサーリアは小さく息を吐いて手をおろした。
「どうですか?少しは痛みがとれましたか?」
「ああ、なんだか温かい手で包まれているような心地よさだった。痛みは・・・無いな・・・ああ!痛みが無いぞ!」
ユリアが立ち上がろうとする。
キアヌが慌ててユリアを止めた。
「兄上!急に動かれてはせっかくの効果が消えませんか?」
「キアヌ、心配してくれてありがとう。たとえ消えたとしても元に戻ったというだけだ。試してみたいのだ。ダメだろうか」
「兄上・・・それではせめて私の手に掴まってください」
「ああ、そうさせてもらおう。立つぞ?」
キアヌはユリアを支えようと腕に力を込めた。
「あれ?兄上・・・」
ユリアはキアヌの腕に手を載せているだけで寄りかかってはこなかった。
「うん・・・立てるな。まあ、立てるのは今までも出来たのだが、かなり痛かった。それが今は・・・凄いな・・・これが神の御力か」
ナサーリアはティナの顔を見てニコッと微笑んだ。
ハロッズ侯爵が娘の頭を撫でながら言う。
「ナサーリアはまだこの力の制御が上手くできません。訓練を重ねたらもっと多くの人々を癒すことができるでしょう」
キアヌが口を開く。
「この力は聖女ティナロアには無いということか?」
ティナが落ち着いて返答する。
「はい、ございません。先日フェルナンド神官様の傷を癒したのも私ではありません。あの時は神が私を媒体としてフェルナンド神官様に癒しの力をお使いになりました。私は聖女ではありませんので、神の力が体に流れた瞬間、気を失いかけました。ほんの三つ数えるだけの時間でさえそうなったのです」
フェルナンド神官が続けた。
「あの時・・・私はあまりの痛みに意識を失っていましたが・・・なんといいますか・・・これ以上の幸福感は無いほどに気持ちが高揚している夢を見ました。どう表現すれば良いのでしょう?全身の筋肉に力が溜まり、それが一か所に集められ一気に解放されるような・・・」
(それって・・・フェルナンド・・・あの時イっちゃったってこと?)
『ティナ・・・』
『アル、この会話漏れてないよね?』
『ああ、今はお前とだけつなげてる』
『ねえねえ!彼はあの時オルガスムス感じちゃったって事よね?』
『それは俺にはわからないが・・・意識が戻って部屋に入った後、すぐに風呂に入ったな』
『あらあらイッちゃったのね・・・ふふふ・・・夢精ってことかしら』
『ティナ・・・お前・・・』
それきり神の声は聞こえなくなった。
ティナはフェルナンドの顔を盗み見た。
当の本人は神とティナの会話など知る由もなく、澄んだ目で立っていた。
ティナは笑い顔を隠すために後ろを向いて咳込むふりをした。
ユリアが真面目な顔で言う。
「そうか・・・ナサーリアは自らの意志で神の御力を使えるが、ティナロアにはそれができないということだな?でも、ティナロアも神を宿せばできるのだろう?」
『二度は無い。ティナロアが命を落とす危険がある』
神の声が四人の頭の中に聞こえた。
オルフェウス大神官が口に出した。
「神は・・・二度は無いと・・・」
「なぜだ?」
「ティナロア様が・・・命を落とすほどの危険があると仰せです」
「そうか・・・それは絶対だめだ。なるほど・・・」
フェルナンド神官が発言した。
「神の声はティナロア様にだけ届くことが多いのです。今回のような画期的な案もおそらくティナロア様にだけ神が教示なさったのだと思います。ティナロア様はまさに神に選ばれし女性なのです」
ナサーリアが無邪気な顔で言った。
「そうですよ?だってティナロア様は神様の愛する伴侶ですもの」
「「「「伴侶?」」」」
全員の口が開いていた。
ティナは気まずく俯いた。
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