【完結】歴史が変わりますが神の願いなのでどうぞご了承ください

志波 連

文字の大きさ
上 下
125 / 184

自爆する瞬間

しおりを挟む
全員の前にお茶が配られメイド達が退出した後、会議が始まった。
最初に口を開いたのはキアヌ第二王子だ。

「皆も知っている通り国王陛下は病のため国政を行える状況ではない。しかし兄上がおられる限り問題はないから安心してほしい。ただし、我が国の現状を鑑みるに、そうそう余裕があるわけではないのだ。できるだけ速やかに問題を解決しなければならない」

ハロッズ侯爵が手を挙げて発言した。

「今回の聖女誘拐事件については大変遺憾でしたが、救出に向かった騎士たちには怪我も無く、無事に解決できました。シルバー辺境伯についてなのですが・・・」

ユリア第一王子が話を遮った。

「キアヌから聞いている。聖女の誘拐は身代金目当ての夜盗の仕業であり、聖女を守ろうとしたシルバー辺境伯の息子と嫁、母親が命を落とした。残念な事だが聖女を守ったのだ。心残りは無かろう。一人残されたシルバー辺境伯は寂しかろうがな」

「殿下・・・感謝申し上げます」

ユリアはにっこりと頷いた。

「それで?彼はなんといっているのだ?」

「ジャンは・・・いえ、シルバー辺境伯は各地の辺境伯を取り纏め、不可侵条約締結に向けて命を賭けると申しております」

「うむ。彼ならば安心して委ねられよう。ひとつ光明が見えたな。それで?水害対策の方はどうだ?」

ロバート伯爵が立ち上がり、テーブルに大きな地図を広げた。

「過去の水害発生地域を徹底的に調査いたしました。我が国における水害の元凶はアルベッシュ国にあるこの山・・・ルイーダ山だと推察できます」

キアヌ殿下が目を見張った。

「我が国だけの問題ではないのか」

「はい・・・と申しましても、実害を被るのは我が国の民のみです。今のところ川下にある我が国の農耕地に放水路を作り対策していますが、根本的な対策とは言えません」

「具体的に説明せよ」

「はい、この左右の川は幅が狭く浅くて流れは緩やかです。そしてこの真ん中の川は切り立った崖の底を流れており、落差も大きく激流といっても良いほどなのですが、普段は流れが速いだけでさほどの水量ではありません」

「それで?」

キアヌが先を急がせる。

「ルイーダ山に降った雨が三本の川に流れ込むのですが、左右の川が増水すると真ん中の川に流れ込みます。それが一気に駆け下り村を飲み込む・・・これが水害の原因です」

ユリア第一王子がじっと目を閉じて考え込んで口を開いた。

「真ん中の川だけ深い谷・・・もしかしたら真ん中が本来の主川だったのではないか?左右は支川?人工的なもの?だから浅い・・・」

ワンド伯爵が手を挙げた。

「その予想は正しいと推察できます。ここをご覧ください」

ペンで地図を指す。

「この支川の横はかなり広い農耕地です。おそらく農業水を引き込むために作った川ではないでしょうか。畑の土地は一段高くして、水車で水を引き込むのかもしれません。一段高くしているのは余分の水を川に戻すためでしょう」

「だとすると・・・ルイーダ山の保水量を超えたものは一気に真ん中の川に流れ込むのか」

ロバート伯爵が頷きながら発言する。

「しかも我が国に入る直前に滝つぼのようになっている場所があり、数十年に一度の割合で、この滝つぼに溜まった土砂と一緒に大量の水が一気に押し寄せるのです」

「土砂を含んだ鉄砲水とは・・・しかもその場所が他国となると・・・厄介だな」

ずっと黙って聞いていたティナが手を挙げた。

「滝つぼがあるのですね?その周りはどうなっているのでしょうか」

ロバート伯爵が応える。

「周りは切り立った崖です」

地図の余白に絵をかいて説明した。
その絵を見てティナはにやっと笑った。

「そこにダムを作りましょう。アルベッシュ国と共同開発するのです」

「ダム?」

「ええ、ダムです。一旦そこに貯水して、災害にならない程度の水量に調節して排水するシステムを構築します。これなら土砂を溜め込むこともないので鉄砲水は防げるはずです」

全員の頭の上にはてなマークが浮かんでいるのがティナには見えた。

「これにはアルベッシュ国の協力が絶対に必要です。う~ん・・・出来れば費用は折半してほしいところですよね。あっちはお金持ちでしょう?それにルイーダ山への植林も必要ですし」

「植林?」

全員があっけにとられている。

「やることいっぱいあるなぁ・・・そうですねぇ・・・何なら私が言って話してきましょうか?ちょいと知り合いもいるし」

「「「はぁぁぁぁ?」」」

「あれ?へへへ・・・もしかして私って自分の首締めてるかも?」

ティナが頭をポリポリと掻く。
その横でナサーリアはぐっすりと眠っていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...