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さあお仕事です
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ティナはゆっくりと目を開けた。
アーレントを抱きながら、ティナの顔を覗き込むようにしていたシスターが驚いて声を上げる。
「神官様!ティナロア聖女様がお気づきになりました!神官様」
あまりの声の大きさに驚いたアーレントがぐずり始めた。
「シスター、大丈夫ですから。アーレントをこちらに」
「ああ、私ったら慌ててしまって・・・さあ御子様、母上に抱いていただきましょうね」
とても大切なものを扱うようにアーレントをティナの胸にそっと渡した。
上半身を起こしたティナは渡されたアーレントをぎゅっと抱きしめる。
泣き顔だったアーレントがティナの顔を見てクシュっと笑顔になった。
「ああアーレント。ごめんね、さみしかったね」
ティナがアーレントに頬ずりをしていた時、シスターの声を聴いたフェルナンド神官が部屋に駆け込んできた。
「ティナさん、良かった。お気づきになったのですね・・・過労だったそうですよ?お体は大丈夫ですか?」
(なんだかこっちに戻るたびに聞いている言葉だわね・・・申し訳ない)
「はい、ありがとうございます。フェルナンド神官様・・・ご心配をおかけしました」
フェルナンドは微笑みを湛えながらティナとアーレントを一緒に抱きしめた。
『おいおい、近いぞ!なぜかモヤモヤする』
フェルナンドの後ろに神が立っていた。
抱かれ心地が悪いのか、神の方に行きたいのか・・・アーレントが手を伸ばす。
「私が抱き上げても良いでしょうか」
「あ・・・はい。ありがとうございます」
ティナがアーレントをフェルナンドに渡した。
『今のは絶対俺に抱かれようとしたに決まってる!』
神が拗ねて言った。
『はいはいそうね』
ティナは苦笑いをしながら着衣の中に隠し持っていたノートパソコンを毛布の中で引きずりだした。
『アーレントはこれの角が当たって痛かったのね』
『いや!俺に抱かれたかったんだ!』
『そろそろ作戦会議といきますか。アルは大神官さまと神官様に集合かけてくれる?』
『ああ、その前にアーレントにキスをさせてくれ』
フェルナンドに抱かれたままのアーレントに唇を寄せてから神はスッと消えた。
何事もなかったようにティナはフェルナンドに話しかけた。
「フェルナンド神官様、私が眠っている間に神様からのお声は何も無かったですか?」
「ええ、いつも思うのですがティナさんが倒れているときには気配さえも感じません」
「そうですか・・・」
「ティナさんにはあったのですか?」
「お言葉というよりかなり具体的な夢を見ました。近い将来・・・具体的には三年以内に災害が発生し飢饉が人々を苦しめるという夢です」
「それは・・・何かの啓示なのでしょうか」
「私はそう感じています」
何かを言おうとしたフェルナンドが急に黙って驚いた顔をした。
フェルナンドは必死に神の声を聞こうと集中している。
もちろんティナにもその声は聞こえていた。
『災害に備えよ。飢饉に備えよ。我が子供らを守る使命を与えん』
(なかなか厳かないい感じじゃん)
声が消えた途端、フェルナンドがティナの顔を見た。
慌ててアーレントをシスターに託す。
「ティナさん!」
「ええ、聞こえました。オルフェウス大神官様のところへ向かいましょう」
ティナがそう言ったと同時に部屋のドアが乱暴に開いた。
息を乱したオルフェウスが立っている。
三人は無言のまま頷きあった。
数秒の沈黙の後、オルフェウス大神官が胸の前で十字を切りながら宣言した。
「すぐに取り掛かりましょう!」
アーレントを抱きながら、ティナの顔を覗き込むようにしていたシスターが驚いて声を上げる。
「神官様!ティナロア聖女様がお気づきになりました!神官様」
あまりの声の大きさに驚いたアーレントがぐずり始めた。
「シスター、大丈夫ですから。アーレントをこちらに」
「ああ、私ったら慌ててしまって・・・さあ御子様、母上に抱いていただきましょうね」
とても大切なものを扱うようにアーレントをティナの胸にそっと渡した。
上半身を起こしたティナは渡されたアーレントをぎゅっと抱きしめる。
泣き顔だったアーレントがティナの顔を見てクシュっと笑顔になった。
「ああアーレント。ごめんね、さみしかったね」
ティナがアーレントに頬ずりをしていた時、シスターの声を聴いたフェルナンド神官が部屋に駆け込んできた。
「ティナさん、良かった。お気づきになったのですね・・・過労だったそうですよ?お体は大丈夫ですか?」
(なんだかこっちに戻るたびに聞いている言葉だわね・・・申し訳ない)
「はい、ありがとうございます。フェルナンド神官様・・・ご心配をおかけしました」
フェルナンドは微笑みを湛えながらティナとアーレントを一緒に抱きしめた。
『おいおい、近いぞ!なぜかモヤモヤする』
フェルナンドの後ろに神が立っていた。
抱かれ心地が悪いのか、神の方に行きたいのか・・・アーレントが手を伸ばす。
「私が抱き上げても良いでしょうか」
「あ・・・はい。ありがとうございます」
ティナがアーレントをフェルナンドに渡した。
『今のは絶対俺に抱かれようとしたに決まってる!』
神が拗ねて言った。
『はいはいそうね』
ティナは苦笑いをしながら着衣の中に隠し持っていたノートパソコンを毛布の中で引きずりだした。
『アーレントはこれの角が当たって痛かったのね』
『いや!俺に抱かれたかったんだ!』
『そろそろ作戦会議といきますか。アルは大神官さまと神官様に集合かけてくれる?』
『ああ、その前にアーレントにキスをさせてくれ』
フェルナンドに抱かれたままのアーレントに唇を寄せてから神はスッと消えた。
何事もなかったようにティナはフェルナンドに話しかけた。
「フェルナンド神官様、私が眠っている間に神様からのお声は何も無かったですか?」
「ええ、いつも思うのですがティナさんが倒れているときには気配さえも感じません」
「そうですか・・・」
「ティナさんにはあったのですか?」
「お言葉というよりかなり具体的な夢を見ました。近い将来・・・具体的には三年以内に災害が発生し飢饉が人々を苦しめるという夢です」
「それは・・・何かの啓示なのでしょうか」
「私はそう感じています」
何かを言おうとしたフェルナンドが急に黙って驚いた顔をした。
フェルナンドは必死に神の声を聞こうと集中している。
もちろんティナにもその声は聞こえていた。
『災害に備えよ。飢饉に備えよ。我が子供らを守る使命を与えん』
(なかなか厳かないい感じじゃん)
声が消えた途端、フェルナンドがティナの顔を見た。
慌ててアーレントをシスターに託す。
「ティナさん!」
「ええ、聞こえました。オルフェウス大神官様のところへ向かいましょう」
ティナがそう言ったと同時に部屋のドアが乱暴に開いた。
息を乱したオルフェウスが立っている。
三人は無言のまま頷きあった。
数秒の沈黙の後、オルフェウス大神官が胸の前で十字を切りながら宣言した。
「すぐに取り掛かりましょう!」
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